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第12話 王室 〜 Sofia Flapping ep1
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ケネトの謀略が渦巻く頃、そんなことは露ほども知らない平常運転のソフィア。
このときソフィアは16歳。
「お外に出た~い」
「ソフィア姫? それならば、中庭の植物園のお花が今大変見頃ですわ」
「違~う。ターニャ、私は街に出掛けたいの」
「それはどのようなご用件でしょうか?」
「買い物したい。映画観たい。お茶したい。本屋さんで本を見たい。ウィンドウショッピングした~い」
「何度も申し上げておりますが、欲しいものがあれば、仰っていただければ、可能な範囲で善処いたします。もし姫さまが外出なさる場合は、行く先々を吟味検討の上、厳戒態勢を敷く必要がございます」
ソフィアは、飽き飽きした変わり映えしない王宮ではなく、見たことのない、一瞬一瞬が変化に富む世界、通り過ぎる知らない人たち、その行動に予測し得ない変化をもたらす乗り物、見たこともない食べ物の嗅いだことのない匂いと味わったことのない食感、それらすべてが眩い体験となるような、そんな世界に足を踏み入れたい。ただそれだけの願いなのだが、厳戒態勢を敷かれてしまっては、途端に目映さも消し飛んでしまいそうな予感を抱くソフィア。
「うっ」
「それに、仮に今の姫さまのご意向を実現すべく行動したならば、我々は良いとしても、行く先々の国民の皆様方に多大なる行動制限を強いることになってしまいますが、それでもかまいませんか?」
「うぐっ、誰にも迷惑は掛けたくないわ」
「それならば、お慎みいただきますようお願いいたしますね。ソフィア姫?」
「むぅ、やはりぶらりもダメなのね。それなら、コレとコレとコレが欲しいわ。入手困難な日本製よ? 果たして手に入るのかしら?」
「ウフフッ、姫さまのお求めのものはこちらでよろしかったかしら?」
「なっ! なぜ今ここに?」
「姫さまがお求めになるもの、その傾向と対策は常に万全ですの。何年お仕えしているとお思いですか?」
「傾向と対策? 私は受験か何かなの? って、こ、これ! まだ日本でしか手に入らないはずじゃあ? キャー、これはマニア垂涎の超レアものだよ? あぁぁーっ、これはまだ発売前のはずなのに?」
「あぁ、これは失礼。間違えました。まだお見せする予定ではないものが混じっていたようです。お下げしますね。それに言ったではありませんか? 対策は万全ですと。日本に強力なコネクションも確立済なので」
「あ、あ、あ、持って行かないで~。ターニャ!」
「では慎ましく過ごしていただけますか?」
「するする、するから~。困らせたりしないから」
「わかりました。では、こちらをどうぞ!」
「ありがとう、ターニャ。しばらくお部屋に籠もるから、ゆっくり休んでらしてもいいのよ?」
まだまだ遊び盛りな年頃だが、自由に出歩くことのできないソフィアの目に留まるのは、ゲーム、アニメ、マンガで、特に秀逸なものを世に送り出す『日本もの』だ。
「あー、コレコレ。このアニメのビデオ、欲しかったんだぁ! よくターニャはわかったわね。しかもβ派だって。世の中、VHS派が席巻しているから、ビデオテープの入手も困難なくらいなのにね」
このときはすでに一族の伝説的歴史を理解し、日本人の血を引くことからも、さらに日本贔屓をしてしまいがちなのだが、贔屓目に見なくても、日本製のクォリティーは高い。だからこそ、内心で誇らしく思う自分を認めている。やっぱり日本はいい。
「日本人が作ったものは、なんでいちいち心に刺さるのかしら? あ、刺さるって痛い意味ではなくて、心に響いていつまでも残ってるような? そんな感じ。私にも日本人の血が混じってるから惹かれるのかしら? いや、アニメについては、最近少しずつ世界が影響を受け始めてるらしいからね。いつかアニメ大国として、世界を席巻する日がきっと来るよね? うん。間違いないね」
このときソフィアは16歳。
「お外に出た~い」
「ソフィア姫? それならば、中庭の植物園のお花が今大変見頃ですわ」
「違~う。ターニャ、私は街に出掛けたいの」
「それはどのようなご用件でしょうか?」
「買い物したい。映画観たい。お茶したい。本屋さんで本を見たい。ウィンドウショッピングした~い」
「何度も申し上げておりますが、欲しいものがあれば、仰っていただければ、可能な範囲で善処いたします。もし姫さまが外出なさる場合は、行く先々を吟味検討の上、厳戒態勢を敷く必要がございます」
ソフィアは、飽き飽きした変わり映えしない王宮ではなく、見たことのない、一瞬一瞬が変化に富む世界、通り過ぎる知らない人たち、その行動に予測し得ない変化をもたらす乗り物、見たこともない食べ物の嗅いだことのない匂いと味わったことのない食感、それらすべてが眩い体験となるような、そんな世界に足を踏み入れたい。ただそれだけの願いなのだが、厳戒態勢を敷かれてしまっては、途端に目映さも消し飛んでしまいそうな予感を抱くソフィア。
「うっ」
「それに、仮に今の姫さまのご意向を実現すべく行動したならば、我々は良いとしても、行く先々の国民の皆様方に多大なる行動制限を強いることになってしまいますが、それでもかまいませんか?」
「うぐっ、誰にも迷惑は掛けたくないわ」
「それならば、お慎みいただきますようお願いいたしますね。ソフィア姫?」
「むぅ、やはりぶらりもダメなのね。それなら、コレとコレとコレが欲しいわ。入手困難な日本製よ? 果たして手に入るのかしら?」
「ウフフッ、姫さまのお求めのものはこちらでよろしかったかしら?」
「なっ! なぜ今ここに?」
「姫さまがお求めになるもの、その傾向と対策は常に万全ですの。何年お仕えしているとお思いですか?」
「傾向と対策? 私は受験か何かなの? って、こ、これ! まだ日本でしか手に入らないはずじゃあ? キャー、これはマニア垂涎の超レアものだよ? あぁぁーっ、これはまだ発売前のはずなのに?」
「あぁ、これは失礼。間違えました。まだお見せする予定ではないものが混じっていたようです。お下げしますね。それに言ったではありませんか? 対策は万全ですと。日本に強力なコネクションも確立済なので」
「あ、あ、あ、持って行かないで~。ターニャ!」
「では慎ましく過ごしていただけますか?」
「するする、するから~。困らせたりしないから」
「わかりました。では、こちらをどうぞ!」
「ありがとう、ターニャ。しばらくお部屋に籠もるから、ゆっくり休んでらしてもいいのよ?」
まだまだ遊び盛りな年頃だが、自由に出歩くことのできないソフィアの目に留まるのは、ゲーム、アニメ、マンガで、特に秀逸なものを世に送り出す『日本もの』だ。
「あー、コレコレ。このアニメのビデオ、欲しかったんだぁ! よくターニャはわかったわね。しかもβ派だって。世の中、VHS派が席巻しているから、ビデオテープの入手も困難なくらいなのにね」
このときはすでに一族の伝説的歴史を理解し、日本人の血を引くことからも、さらに日本贔屓をしてしまいがちなのだが、贔屓目に見なくても、日本製のクォリティーは高い。だからこそ、内心で誇らしく思う自分を認めている。やっぱり日本はいい。
「日本人が作ったものは、なんでいちいち心に刺さるのかしら? あ、刺さるって痛い意味ではなくて、心に響いていつまでも残ってるような? そんな感じ。私にも日本人の血が混じってるから惹かれるのかしら? いや、アニメについては、最近少しずつ世界が影響を受け始めてるらしいからね。いつかアニメ大国として、世界を席巻する日がきっと来るよね? うん。間違いないね」
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