5 / 6
落日
しおりを挟む
日が傾いてきた。時があまりなかった。
人家もないこのような山中で夜を迎えるのはあまりにも危険で、またいたずらに兵の消耗を招くことでもあった。
一行の数はすでに百人を切っていた。そのうちの十余名が女と子供であった。
勝頼は家臣の一人を呼び、武田家重代の御旗と『楯なしの鎧』を託しひそかに落ち延びさせた。
嫡子の信勝は十六歳の若さであった。
勝頼は相伝の家宝とともに信勝をも落ち延びさせたかったが、信勝はそれをきっぱりと拒んだ。
「この甲斐の地にもはや武田の誇りはありませぬ。譜代の家臣や御親類衆でさえも時勢を伺って裏切ったり、逃げ散ったりする者ばかり……。そのような場所にひとり生残って何の望みがありましょう。私は父上のお側で、最期の槍働きをお目にかけて武田家最期の当主として恥ずかしくないよう見事に散ってみせる所存にございます!」
「そうか」
勝頼は重ねて落ち延びよとは云わなかった。
亡き父、信玄から武田家直系の証である「信」の一字を授けられた我が子がそれに相応しく育っていることが誇らしく嬉しく、また、それだけに哀しかった。
佐奈は勝頼がやって来るのを見るとくず折れるようにその場に平伏した。
「御館さま……申し訳ございませぬ……」
か細い声はそのまま嗚咽となった。
「姫」
勝頼は嫁いできた当初の呼び名で佐奈を呼び、やさしく抱き起こした。
佐奈の黒目がちの瞳には涙が溢れていた。
「何を泣くことがある。詫びねばならぬのは余の方だというのに」
「なれど……」
勝頼は、手を伸ばして指先で佐奈の涙を拭った。
「そなたの兄を恨んではおらぬ。自国の利益を考え、その時々で手を結ぶ相手を変えてゆくのは世の習いだ。現に余とて上杉の乱の折にそなたの兄、景虎どのを見捨てた」
「いいえ、あのときは……」
「そうだ。あの時も、そなたは武田の国を思うて決めたことだと余のしたことを責めなかった。一国の将としてやむをえないことだったのだと分かってくれ、余のそばに残ると云うてくれた。此度もそれと同じだ。氏政どのは相模の国を守るために決断されたのだ。恨んではならぬ」
「御館さま……」
喉を震わせて泣き出した佐奈のからだを勝頼はそっと抱き寄せた。
「ただ、惜しむらくはこうなった今、そなたを故郷まで送っていってやることが出来なくなったことだ。物見の知らせでは、もう数刻もせぬうちに滝川一益率いる織田の軍勢がこの一帯を囲むであろう。そうなってはもうどこにも逃げ場はない。今ならばまだ囲みが手薄なところもあろう。北条からそなたに従ってきた早野内匠守、剣持但馬守らに一隊をつけるゆえ、今すぐにこの場を発て。人数が多ければ人目につく。他の女子どもは置いて、藤野ひとりを連れて発て」
「嫌です!」
勝頼の言葉が終らぬうちに佐奈は叫んだ。
「姫」
「嫌です! 嫌っ!!」
云うなり佐奈は人目も憚らず勝頼の胸に縋りついた。
「分からぬことをいって困らせるな。もう本当に時がないのだ。こうして言い争っている時間も惜しい。敵はすぐそこまで迫っているのだぞ」
「分からないことを仰っているのは御館さまの方にございます。今になってそのようなことを仰せになるくらいなら何故私をここまでお連れになりました? ここで御館さまとお別れして、小田原へ帰りつけたとしてもそれで佐奈がのうのうと一人で生きてゆかれるとお思いなのですか!」
「分かっている! 余とてそなたと別れたくはない。しかし、我らを追っているのは織田方の兵だけではない。麓の集落の土民たちをもが落人狩りと称して手に手に鎌や鋤鍬を持ち山へ入って来ているという。軍律の厳しい織田の正規軍ならばいざ知らずそのような者どもの手に、万が一、そなたが落ちるようなことがあらば……」
勝頼は佐奈をみつめると言葉を詰まらせた。
佐奈はじっと勝頼を見つめ返した。
絶世の美女だといわれた亡き信玄公の側室、諏訪御寮人。
その生母にそっくりだという切れ長で涼やかな瞳が切なさを湛えて佐奈をみつめていた。
(御館さまはお優しい……)
佐奈は胸が痛いほどそう思った。
この期に及んでもただひたすらに佐奈の身を案じてくれている。
その優しさが嬉しくて、哀しかった。
佐奈の胸に今まで感じたどの瞬間よりも強い、勝頼への思慕が湧き上がってきた。
こんな風に想われたらもうそれだけでいい。
何もいらない。
このからだも、命も。しっかりと胸に確かめたばかりの幸福も、愛しさも。
すべてを手放して、運命の手に委ねることが出来る。
もう何もいらない。
「御館さま…」
静かに佐奈が懐から取り出したものを見て勝頼は目をみひらいた。
それは一振りの懐剣であった。
嫁いでいく佐奈に、兄の氏政が贈ってくれた亡き正室──勝頼には異母姉にあたる黄梅院の形見の品であった。紫苑色の絹に包まれたその紐を佐奈はするすると解いた。
中から繊細な装飾を施した美しい鞘が現れた。
佐奈は、その鞘を払うと黒髪をひと房つかんでためらいもなく切り落とした。
声を失ってそれを見ている勝頼の面前で佐奈は、
「これへ」
と声をかけて離れた場所で控えていた早野内匠守以下、小田原から従ってきた家臣四人を側へ呼んだ。
佐奈は、髪の束を四つに分けて、それぞれ男たちに渡した。
「今日までよく仕えてくれました。でもここでお別れです。あなた達は今すぐにここを発ち小田原を目指しなさい」
「御台さま……」
「最後に私の願いをもう一つだけ聞いて欲しいのです。この髪を小田原の兄上にお届けして。佐奈は父上の娘として──兄上の妹として恥ずかしくない立派な最期を遂げましたとお伝えしてちょうだい。……お恨みはいたしません、と……そうお伝えして」
最年長の剣持但馬守は、
「姫さまをお一人残して帰ったとあっては、御館さまの御前に出る顔がございませぬ。どうかお供をお許し下さいませ」
と申し出た。佐奈はそれを小さく頷いて許した。
「髪はそのまま持っていて。本当は貴方にこそ小田原に戻って欲しかったのだけれど。あちらに待っている家族もいるでしょうに」
「本当に会いたいと願う者は皆、あちらにいるような年になってしまいました。このうえ姫さまにまで遅れをとったとあっては亡き御本城さまに会わせる顔がございませんからな」
そう言って低く笑った剣持但馬守は、父、氏康が重用していた家臣であり、佐奈にとっても幼い頃から愛情深く仕えてくれた実の伯父のような存在だった。
男たちは佐奈の髪を押し頂くようにして受け取るとそれぞれ懐紙に包んで丁寧に懐に入れた。
剣持以外の三人は、
「では御前、失礼致します」
と短く云うと勝頼に深く一礼した後、佐奈に頭を下げて退がっていった。
佐奈はその後ろ姿に深々と頭を下げた。
周りじゅうを敵に囲まれた山中を脱出するのはいかに手練れの男たちとて命懸けのことであろう。
それでも佐奈は自分の意志を、こうなったのは他の誰でもない佐奈自身が選んだ道で誰かに強いられたわけではないこと、決して後悔などはしていないことを故郷の者たちに知っておいて欲しかった。
佐奈は勝頼を振り返った。
「北条の姫はたった今、小田原へ向けて発ちました。今、ここにいるのは武田家当主の正室。御館さまの妻にございます。決してあなた様の御名を穢すような真似は致しません。最期までお供させて下さいませ」
声は静かだったが一歩も退かない気迫に満ちていた。
佐奈が胸元でかざした懐剣が夕陽を浴びてきらきらと光った。
「まったく……強情な」
勝頼は溜息を洩らした。
佐奈の我儘を困りながらも最後には聞き入れてくれる時の顔だった。
「勝手にせよ」
呟くように云った声音には愛しさが籠もっていた。
佐奈は勝頼に縋りついた。
「……ありがとうございます」
新府を出て以来、怖いのは勝頼を失うことだけであった。
顔を見る度抱きしめられる度ごとにこれが最後になるのではないのかと。
部屋を出てゆく背中を見送ったきり、離れ離れになってもう二度と会うことが出来なくなるのではないのかと。
死ぬのは怖くない。
けれど、勝頼のいなくなった後の世にひとり残されることを思うとそれだけで全身の血が凍りついてしまいそうなほど怖かった。
勝頼は最期まで側にいることを許してくれた。
これでどこまでも一緒にゆける。
もう二度と、一人取り残されることに脅えることはないのだ。
だったらもう何も怖くない。
人家もないこのような山中で夜を迎えるのはあまりにも危険で、またいたずらに兵の消耗を招くことでもあった。
一行の数はすでに百人を切っていた。そのうちの十余名が女と子供であった。
勝頼は家臣の一人を呼び、武田家重代の御旗と『楯なしの鎧』を託しひそかに落ち延びさせた。
嫡子の信勝は十六歳の若さであった。
勝頼は相伝の家宝とともに信勝をも落ち延びさせたかったが、信勝はそれをきっぱりと拒んだ。
「この甲斐の地にもはや武田の誇りはありませぬ。譜代の家臣や御親類衆でさえも時勢を伺って裏切ったり、逃げ散ったりする者ばかり……。そのような場所にひとり生残って何の望みがありましょう。私は父上のお側で、最期の槍働きをお目にかけて武田家最期の当主として恥ずかしくないよう見事に散ってみせる所存にございます!」
「そうか」
勝頼は重ねて落ち延びよとは云わなかった。
亡き父、信玄から武田家直系の証である「信」の一字を授けられた我が子がそれに相応しく育っていることが誇らしく嬉しく、また、それだけに哀しかった。
佐奈は勝頼がやって来るのを見るとくず折れるようにその場に平伏した。
「御館さま……申し訳ございませぬ……」
か細い声はそのまま嗚咽となった。
「姫」
勝頼は嫁いできた当初の呼び名で佐奈を呼び、やさしく抱き起こした。
佐奈の黒目がちの瞳には涙が溢れていた。
「何を泣くことがある。詫びねばならぬのは余の方だというのに」
「なれど……」
勝頼は、手を伸ばして指先で佐奈の涙を拭った。
「そなたの兄を恨んではおらぬ。自国の利益を考え、その時々で手を結ぶ相手を変えてゆくのは世の習いだ。現に余とて上杉の乱の折にそなたの兄、景虎どのを見捨てた」
「いいえ、あのときは……」
「そうだ。あの時も、そなたは武田の国を思うて決めたことだと余のしたことを責めなかった。一国の将としてやむをえないことだったのだと分かってくれ、余のそばに残ると云うてくれた。此度もそれと同じだ。氏政どのは相模の国を守るために決断されたのだ。恨んではならぬ」
「御館さま……」
喉を震わせて泣き出した佐奈のからだを勝頼はそっと抱き寄せた。
「ただ、惜しむらくはこうなった今、そなたを故郷まで送っていってやることが出来なくなったことだ。物見の知らせでは、もう数刻もせぬうちに滝川一益率いる織田の軍勢がこの一帯を囲むであろう。そうなってはもうどこにも逃げ場はない。今ならばまだ囲みが手薄なところもあろう。北条からそなたに従ってきた早野内匠守、剣持但馬守らに一隊をつけるゆえ、今すぐにこの場を発て。人数が多ければ人目につく。他の女子どもは置いて、藤野ひとりを連れて発て」
「嫌です!」
勝頼の言葉が終らぬうちに佐奈は叫んだ。
「姫」
「嫌です! 嫌っ!!」
云うなり佐奈は人目も憚らず勝頼の胸に縋りついた。
「分からぬことをいって困らせるな。もう本当に時がないのだ。こうして言い争っている時間も惜しい。敵はすぐそこまで迫っているのだぞ」
「分からないことを仰っているのは御館さまの方にございます。今になってそのようなことを仰せになるくらいなら何故私をここまでお連れになりました? ここで御館さまとお別れして、小田原へ帰りつけたとしてもそれで佐奈がのうのうと一人で生きてゆかれるとお思いなのですか!」
「分かっている! 余とてそなたと別れたくはない。しかし、我らを追っているのは織田方の兵だけではない。麓の集落の土民たちをもが落人狩りと称して手に手に鎌や鋤鍬を持ち山へ入って来ているという。軍律の厳しい織田の正規軍ならばいざ知らずそのような者どもの手に、万が一、そなたが落ちるようなことがあらば……」
勝頼は佐奈をみつめると言葉を詰まらせた。
佐奈はじっと勝頼を見つめ返した。
絶世の美女だといわれた亡き信玄公の側室、諏訪御寮人。
その生母にそっくりだという切れ長で涼やかな瞳が切なさを湛えて佐奈をみつめていた。
(御館さまはお優しい……)
佐奈は胸が痛いほどそう思った。
この期に及んでもただひたすらに佐奈の身を案じてくれている。
その優しさが嬉しくて、哀しかった。
佐奈の胸に今まで感じたどの瞬間よりも強い、勝頼への思慕が湧き上がってきた。
こんな風に想われたらもうそれだけでいい。
何もいらない。
このからだも、命も。しっかりと胸に確かめたばかりの幸福も、愛しさも。
すべてを手放して、運命の手に委ねることが出来る。
もう何もいらない。
「御館さま…」
静かに佐奈が懐から取り出したものを見て勝頼は目をみひらいた。
それは一振りの懐剣であった。
嫁いでいく佐奈に、兄の氏政が贈ってくれた亡き正室──勝頼には異母姉にあたる黄梅院の形見の品であった。紫苑色の絹に包まれたその紐を佐奈はするすると解いた。
中から繊細な装飾を施した美しい鞘が現れた。
佐奈は、その鞘を払うと黒髪をひと房つかんでためらいもなく切り落とした。
声を失ってそれを見ている勝頼の面前で佐奈は、
「これへ」
と声をかけて離れた場所で控えていた早野内匠守以下、小田原から従ってきた家臣四人を側へ呼んだ。
佐奈は、髪の束を四つに分けて、それぞれ男たちに渡した。
「今日までよく仕えてくれました。でもここでお別れです。あなた達は今すぐにここを発ち小田原を目指しなさい」
「御台さま……」
「最後に私の願いをもう一つだけ聞いて欲しいのです。この髪を小田原の兄上にお届けして。佐奈は父上の娘として──兄上の妹として恥ずかしくない立派な最期を遂げましたとお伝えしてちょうだい。……お恨みはいたしません、と……そうお伝えして」
最年長の剣持但馬守は、
「姫さまをお一人残して帰ったとあっては、御館さまの御前に出る顔がございませぬ。どうかお供をお許し下さいませ」
と申し出た。佐奈はそれを小さく頷いて許した。
「髪はそのまま持っていて。本当は貴方にこそ小田原に戻って欲しかったのだけれど。あちらに待っている家族もいるでしょうに」
「本当に会いたいと願う者は皆、あちらにいるような年になってしまいました。このうえ姫さまにまで遅れをとったとあっては亡き御本城さまに会わせる顔がございませんからな」
そう言って低く笑った剣持但馬守は、父、氏康が重用していた家臣であり、佐奈にとっても幼い頃から愛情深く仕えてくれた実の伯父のような存在だった。
男たちは佐奈の髪を押し頂くようにして受け取るとそれぞれ懐紙に包んで丁寧に懐に入れた。
剣持以外の三人は、
「では御前、失礼致します」
と短く云うと勝頼に深く一礼した後、佐奈に頭を下げて退がっていった。
佐奈はその後ろ姿に深々と頭を下げた。
周りじゅうを敵に囲まれた山中を脱出するのはいかに手練れの男たちとて命懸けのことであろう。
それでも佐奈は自分の意志を、こうなったのは他の誰でもない佐奈自身が選んだ道で誰かに強いられたわけではないこと、決して後悔などはしていないことを故郷の者たちに知っておいて欲しかった。
佐奈は勝頼を振り返った。
「北条の姫はたった今、小田原へ向けて発ちました。今、ここにいるのは武田家当主の正室。御館さまの妻にございます。決してあなた様の御名を穢すような真似は致しません。最期までお供させて下さいませ」
声は静かだったが一歩も退かない気迫に満ちていた。
佐奈が胸元でかざした懐剣が夕陽を浴びてきらきらと光った。
「まったく……強情な」
勝頼は溜息を洩らした。
佐奈の我儘を困りながらも最後には聞き入れてくれる時の顔だった。
「勝手にせよ」
呟くように云った声音には愛しさが籠もっていた。
佐奈は勝頼に縋りついた。
「……ありがとうございます」
新府を出て以来、怖いのは勝頼を失うことだけであった。
顔を見る度抱きしめられる度ごとにこれが最後になるのではないのかと。
部屋を出てゆく背中を見送ったきり、離れ離れになってもう二度と会うことが出来なくなるのではないのかと。
死ぬのは怖くない。
けれど、勝頼のいなくなった後の世にひとり残されることを思うとそれだけで全身の血が凍りついてしまいそうなほど怖かった。
勝頼は最期まで側にいることを許してくれた。
これでどこまでも一緒にゆける。
もう二度と、一人取り残されることに脅えることはないのだ。
だったらもう何も怖くない。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説


夢占
水無月麻葉
歴史・時代
時は平安時代の終わり。
伊豆国の小豪族の家に生まれた四歳の夜叉王姫は、高熱に浮かされて、無数の人間の顔が蠢く闇の中、家族みんなが黄金の龍の背中に乗ってどこかへ向かう不思議な夢を見た。
目が覚めて、夢の話をすると、父は吉夢だと喜び、江ノ島神社に行って夢解きをした。
夢解きの内容は、夜叉王の一族が「七代に渡り権力を握り、国を動かす」というものだった。
父は、夜叉王の吉夢にちなんで新しい家紋を「三鱗」とし、家中の者に披露した。
ほどなくして、夜叉王の家族は、夢解きのとおり、鎌倉時代に向けて、歴史の表舞台へと駆け上がる。
夜叉王自身は若くして、政略結婚により武蔵国の大豪族に嫁ぐことになったが、思わぬ幸せをそこで手に入れる。
しかし、運命の奔流は容赦なく彼女をのみこんでゆくのだった。

永き夜の遠の睡りの皆目醒め
七瀬京
歴史・時代
近藤勇の『首』が消えた……。
新撰組の局長として名を馳せた近藤勇は板橋で罪人として処刑されてから、その首を晒された。
しかし、その首が、ある日忽然と消えたのだった……。
近藤の『首』を巡り、過去と栄光と男たちの愛憎が交錯する。
首はどこにあるのか。
そして激動の時代、男たちはどこへ向かうのか……。
※男性同士の恋愛表現がありますので苦手な方はご注意下さい
毛利隆元 ~総領の甚六~
秋山風介
歴史・時代
えー、名将・毛利元就の目下の悩みは、イマイチしまりのない長男・隆元クンでございました──。
父や弟へのコンプレックスにまみれた男が、いかにして自分の才覚を知り、毛利家の命運をかけた『厳島の戦い』を主導するに至ったのかを描く意欲作。
史実を捨てたり拾ったりしながら、なるべくポップに書いておりますので、歴史苦手だなーって方も読んでいただけると嬉しいです。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
春暁に紅緋の華散る ~はるあかつきにくれなひのはなちる~
ささゆき細雪
歴史・時代
払暁に生まれた女児は鎌倉を滅ぼす……鶴岡八幡宮で神託を受けた二代将軍源頼家は産み落とされた女児を御家人のひとりである三浦義村の娘とし、彼の息子を自分の子だと偽り、育てることにした。
ふたりは乳兄妹として、幼いころから秘密を共有していた。
ときは建保六年。
十八歳になった三浦家の姫君、唯子は神託のせいで周囲からはいきおくれの忌み姫と呼ばれてはいるものの、穏やかに暮らしている。ひとなみに恋もしているが、相手は三代将軍源実朝、血の繋がりを持つ叔父で、けして結ばれてはならないひとである。
また、元服して三浦義唯という名を持ちながらも公暁として生きる少年は、御台所の祖母政子の命によって鎌倉へ戻り、鶴岡八幡宮の別当となった。だが、未だに剃髪しない彼を周囲は不審に思い、還俗して唯子を妻に迎えるのではないか、将軍位を狙っているのではないかと憶測を絶やさない。
噂を聞いた唯子は真相を確かめに公暁を訪ねるも、逆に求婚されて……
鎌倉を滅ぼすと予言された少女を巡り、義理の父子が火花を散らす。
顔に牡丹の緋色の花を持つときの将軍に叶わぬ恋をした唯子が選んだ未来とは?

深川猿江五本松 人情縄のれん
高辻 穣太郎
歴史・時代
十代家治公最晩年の江戸。深川の外れ猿江町は、近くを流れる小名木川にまで迫り出した、大名屋敷の五本の松の木から五本松町とも呼ばれていた。この町に十八歳の娘が独りで切り盛りをする、味噌田楽を売り物にした縄のれんが有った。その名は「でん留」。そこには毎日様々な悩みを抱えた常連達が安い酒で一日の憂さを晴らしにやってくる。持ち前の正義感の為に先祖代々の禄を失ったばかりの上州牢人、三村市兵衛はある夜、慣れない日雇い仕事の帰りにでん留に寄る。挫折した若い牢人が、逆境にも負けず明るく日々を生きるお春を始めとした街の人々との触れ合いを通して、少しづつ己の心を取り戻していく様を描く。しかし、十一代家斉公の治世が始まったあくる年の世相は決して明るくなく、日本は空前の大飢饉に見舞われ江戸中に打ちこわしが発生する騒然とした世相に突入してゆく。お春や市兵衛、でん留の客達、そして公儀御先手弓頭、長谷川平蔵らも、否応なしにその大嵐に巻き込まれていくのであった。
(完結はしておりますが、少々、気になった点などは修正を続けさせていただいております:5月9日追記)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる