3 / 66
第一章 初恋は婚約破棄から
2.公爵令嬢アマーリアは打ち明ける
しおりを挟む
蜂の巣をつついたような騒ぎになったその場からアマーリアを連れ出したのは、その日の婚約披露パーティーの主役の一人のはずだったアンジェリカと、その相手クレイグの妹であるミレディだった。
二人はアマーリアとは幼馴染であり、貴族の子弟たちが通う王立学院の同級生でもある。
茫然としているラルフに
「クルーガーさま。今日のところはこれで失礼いたしますわね」
と微笑みかけ、
「え、ちょっと待ってよ。私、まだクルーガーさまにお話が……」
と言いかけるアマーリアを両側から引きずるようにして退場すると有無を言わせずに馬車に押し込んだ。
着いたところはアンジェリカの邸であるエイベル公爵家だった。
突然の帰宅に目を丸くしている使用人たちにお茶の用意を頼んで、部屋で三人きりになった途端、アンジェリカが盛大に溜息をついた。
「まったく。人の晴れの日を見事にぶち壊しにしてくれたものだわね」
「ごめんなさい、アンジェ。私ったらつい……」
「あなたじゃないわよ。あのバカ王太子のことよ」
アンジェリカは憤然と言った。
「前々から賢いとは思っていなかったけど、あそこまでバカだとはね。呆れてものも言えないわ」
「そうよ。あんな場所で婚約破棄を言い渡すなんて。内々に、とか言ってたけど意味が分からないわ。リアのことを侮辱するのにもほどがあるわ」
気の優しいミレディは言いながら涙ぐんでいる。
「だいたい何なの、あのマリエッタとかいう男爵令嬢。あの人にリアが嫌がらせしたですって。よくもあんなでたらめを」
「最近、王太子殿下があの方と親しくしていらっしゃるっていう噂は聞いていたけれど、まさかこんなことになるなんて。それにしてもリアったらびっくりしたわ。いくらショックだったとはいえ、まさかあんな事をするなんて」
ミレディが白いハンカチを目に押し当てながら言った。
「そう? 私はちょっとスッキリしたわよ。殿下のあのぽかんとした間の抜けた顔ったら。まあ、でも確かにやり過ぎといえばやり過ぎよね。この後のことはどうするつもりよ」
顔を覗き込んで尋ねるアンジェリカに、アマーリアは首を傾げた。
「この後って?」
「だから、あの場の勢いとはいえ、あのクルーガーさま……だっけ? に告白めいたことをしたことよ。バカ王太子に一泡吹かせるために言ったんだろうけど、皆の前であんなでたらめ言うなんて。いくら咄嗟のこととはいえ、ちょっとあなたらしくなかったんじゃないの?」
「仕方がないわよ、アンジェ。それだけリアは殿下の裏切りがショックだったのよ」
「え、え? どういうこと?」
アマーリアは目を丸くして親友たちを交互に見た。
「でたらめって? 裏切りがショックって……二人とも何のお話をしてるの」
「何ってあなたと殿下のお話でしょう?」
「いくら何でも、あの場で他の男性に気があるような嘘をつくのはちょっとまずかったんじゃないの?」
「嘘じゃないわ」
アマーリアは毅然として言った。
「嘘なんかじゃないわ。私は本当にあの方──ラルフ・クルーガーさまをお慕いしているの」
「…………」
しばらくの沈黙のあと、アンジェリカとミレディは同時に
「えええええっ!?」
と叫び声をあげた。
「う、嘘じゃないって……お慕いしてるって……それ、だってあなたはアドリアン殿下の婚約者で、未来の王太子妃じゃないの。どうするのよ!!」
「あら。それは先ほど殿下の方から解消して下さったじゃないの」
アマーリアはにっこりと笑って紅茶のカップを口に運んだ。
「そうでなければ、いくら私でもとてもあの場であんな勇気は出せなかったわ。本当に殿下にはいくら御礼を申し上げても足りないわ」
「御礼って……あなた殿下から言われたあの酷い言葉を忘れたの? マリエッタ嬢を苛めただとか根も葉もない」
「マリエッタ嬢? それはどなた?」
アンジェリカとミレディは顔を見合わせ、それからがっくりと首を垂れた。
「……聞いてなかったのね」
「そうね。リアはそういう子よね」
アマーリアの、集中力があるといえば聞こえはいいが何かに気をとられると、それ以外のことに対する注意がすっぽりと抜け落ちてしまう癖は、二人は幼い頃から嫌というほど知っていた。
「そ、それじゃあ、あなたがあのクルーガーさまを好きだっていうのは本当のことなのね?」
アンジェリカが気を取り直すように、紅茶を一口飲んでから言った。
「ええ、もちろんよ」
「お慕いしていたっていつから? 私たちまったく何も聞いてないわよ」
「だってあの方と出逢った時、私は王太子殿下の婚約者で、いずれは殿下のお妃になることが決められていて……だからこの想いは誰にも言わないまま、忘れるしかないと思っていたの」
そう言ってアマーリアは両手を組み合わせると、潤んだ瞳を夢見るように遠くへ向けた。
アマーリアが語った二人の出会いはこうだった。
数ヶ月前。侍女のシェリルと一緒に、乳母への誕生祝いを買いに街へ出かけたアマーリアは自分と同じ年頃の少女が、数人の男たちに絡まれている場面に遭遇した。
どうやら彼女をお茶か、もっとよからぬ社交の場に誘おうとしていたらしい断られた男たちは、断られると突然、態度を豹変させ、
「なんだよ、この不細工が!」
「おまえみたいな女、誰が誘うか。本気にするなよ!」
などと罵り始めた。
周囲には多くの人がいたが、男たちの柄の悪い風貌を恐れてか誰もがみて見ぬふりをしていた。
そこへ割って入ったのがアマーリアだった。
「ああ……想像がつくわ」
アンジェリカがこめかみを押さえて言った。
「リアのことだから思いっきり怒らせるようなこと言ったんでしょ」
「あら。私はただ『女性に対してその態度はあんまりではありませんか? このお嬢さんに謝罪して下さい』と言っただけよ」
「それだけ?」
「ええ。『他の方のことをとやかく言えるご容貌ではないようですけれど? 鏡をご覧になったことがないの?』とも言った気がするけど、本当にそれだけよ」
「十分言ってるじゃないの」
案の定、男たちはいきり立ち、アマーリアがお忍びで庶民風の格好をしていたこともあり、遠慮なく痛めつけようと取り囲んだ。
そこに助けに入ってくれたのが、王都配備の騎士として見回り中だったラルフ・クルーガーだったのだ。
二人はアマーリアとは幼馴染であり、貴族の子弟たちが通う王立学院の同級生でもある。
茫然としているラルフに
「クルーガーさま。今日のところはこれで失礼いたしますわね」
と微笑みかけ、
「え、ちょっと待ってよ。私、まだクルーガーさまにお話が……」
と言いかけるアマーリアを両側から引きずるようにして退場すると有無を言わせずに馬車に押し込んだ。
着いたところはアンジェリカの邸であるエイベル公爵家だった。
突然の帰宅に目を丸くしている使用人たちにお茶の用意を頼んで、部屋で三人きりになった途端、アンジェリカが盛大に溜息をついた。
「まったく。人の晴れの日を見事にぶち壊しにしてくれたものだわね」
「ごめんなさい、アンジェ。私ったらつい……」
「あなたじゃないわよ。あのバカ王太子のことよ」
アンジェリカは憤然と言った。
「前々から賢いとは思っていなかったけど、あそこまでバカだとはね。呆れてものも言えないわ」
「そうよ。あんな場所で婚約破棄を言い渡すなんて。内々に、とか言ってたけど意味が分からないわ。リアのことを侮辱するのにもほどがあるわ」
気の優しいミレディは言いながら涙ぐんでいる。
「だいたい何なの、あのマリエッタとかいう男爵令嬢。あの人にリアが嫌がらせしたですって。よくもあんなでたらめを」
「最近、王太子殿下があの方と親しくしていらっしゃるっていう噂は聞いていたけれど、まさかこんなことになるなんて。それにしてもリアったらびっくりしたわ。いくらショックだったとはいえ、まさかあんな事をするなんて」
ミレディが白いハンカチを目に押し当てながら言った。
「そう? 私はちょっとスッキリしたわよ。殿下のあのぽかんとした間の抜けた顔ったら。まあ、でも確かにやり過ぎといえばやり過ぎよね。この後のことはどうするつもりよ」
顔を覗き込んで尋ねるアンジェリカに、アマーリアは首を傾げた。
「この後って?」
「だから、あの場の勢いとはいえ、あのクルーガーさま……だっけ? に告白めいたことをしたことよ。バカ王太子に一泡吹かせるために言ったんだろうけど、皆の前であんなでたらめ言うなんて。いくら咄嗟のこととはいえ、ちょっとあなたらしくなかったんじゃないの?」
「仕方がないわよ、アンジェ。それだけリアは殿下の裏切りがショックだったのよ」
「え、え? どういうこと?」
アマーリアは目を丸くして親友たちを交互に見た。
「でたらめって? 裏切りがショックって……二人とも何のお話をしてるの」
「何ってあなたと殿下のお話でしょう?」
「いくら何でも、あの場で他の男性に気があるような嘘をつくのはちょっとまずかったんじゃないの?」
「嘘じゃないわ」
アマーリアは毅然として言った。
「嘘なんかじゃないわ。私は本当にあの方──ラルフ・クルーガーさまをお慕いしているの」
「…………」
しばらくの沈黙のあと、アンジェリカとミレディは同時に
「えええええっ!?」
と叫び声をあげた。
「う、嘘じゃないって……お慕いしてるって……それ、だってあなたはアドリアン殿下の婚約者で、未来の王太子妃じゃないの。どうするのよ!!」
「あら。それは先ほど殿下の方から解消して下さったじゃないの」
アマーリアはにっこりと笑って紅茶のカップを口に運んだ。
「そうでなければ、いくら私でもとてもあの場であんな勇気は出せなかったわ。本当に殿下にはいくら御礼を申し上げても足りないわ」
「御礼って……あなた殿下から言われたあの酷い言葉を忘れたの? マリエッタ嬢を苛めただとか根も葉もない」
「マリエッタ嬢? それはどなた?」
アンジェリカとミレディは顔を見合わせ、それからがっくりと首を垂れた。
「……聞いてなかったのね」
「そうね。リアはそういう子よね」
アマーリアの、集中力があるといえば聞こえはいいが何かに気をとられると、それ以外のことに対する注意がすっぽりと抜け落ちてしまう癖は、二人は幼い頃から嫌というほど知っていた。
「そ、それじゃあ、あなたがあのクルーガーさまを好きだっていうのは本当のことなのね?」
アンジェリカが気を取り直すように、紅茶を一口飲んでから言った。
「ええ、もちろんよ」
「お慕いしていたっていつから? 私たちまったく何も聞いてないわよ」
「だってあの方と出逢った時、私は王太子殿下の婚約者で、いずれは殿下のお妃になることが決められていて……だからこの想いは誰にも言わないまま、忘れるしかないと思っていたの」
そう言ってアマーリアは両手を組み合わせると、潤んだ瞳を夢見るように遠くへ向けた。
アマーリアが語った二人の出会いはこうだった。
数ヶ月前。侍女のシェリルと一緒に、乳母への誕生祝いを買いに街へ出かけたアマーリアは自分と同じ年頃の少女が、数人の男たちに絡まれている場面に遭遇した。
どうやら彼女をお茶か、もっとよからぬ社交の場に誘おうとしていたらしい断られた男たちは、断られると突然、態度を豹変させ、
「なんだよ、この不細工が!」
「おまえみたいな女、誰が誘うか。本気にするなよ!」
などと罵り始めた。
周囲には多くの人がいたが、男たちの柄の悪い風貌を恐れてか誰もがみて見ぬふりをしていた。
そこへ割って入ったのがアマーリアだった。
「ああ……想像がつくわ」
アンジェリカがこめかみを押さえて言った。
「リアのことだから思いっきり怒らせるようなこと言ったんでしょ」
「あら。私はただ『女性に対してその態度はあんまりではありませんか? このお嬢さんに謝罪して下さい』と言っただけよ」
「それだけ?」
「ええ。『他の方のことをとやかく言えるご容貌ではないようですけれど? 鏡をご覧になったことがないの?』とも言った気がするけど、本当にそれだけよ」
「十分言ってるじゃないの」
案の定、男たちはいきり立ち、アマーリアがお忍びで庶民風の格好をしていたこともあり、遠慮なく痛めつけようと取り囲んだ。
そこに助けに入ってくれたのが、王都配備の騎士として見回り中だったラルフ・クルーガーだったのだ。
0
お気に入りに追加
2,620
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる