俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム

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番外編 聖女様②

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 目の前のスケルトン50体くらいを、聖女様が範囲魔法で一瞬にして消し去った。スケルトンだって生きて(?)いる。さぞかし心を痛めてると思ったんだけど……。

「気ん持ちいいぃぃぃーっ!」

 聖女様は別人かと思うほどに恍惚こうこつな表情を浮かべていた。

「あの、聖女様……?」

「……はっ!? ごめんなさい、私としたことが、つい……」

「い、いえ。さすが聖女様です。あんなにいたスケルトンが一瞬で消え去りました」

 聖女様はとても神秘的で、透き通るような白い肌と銀髪が光り輝き、顔立ちはモデルかと思うほどに整っている。20歳になったばかりなんだっけ。

 それが今や、マンガで例えるなら「ぐへへ……」みたいな表情をしていて、超嬉しそうだ。よだれを垂らしていないだろうな?

「おい! また向こうからスケルトンの大群が来やがったぞ!」

 パーティーメンバーの屈強な戦士が大声で注意を促す。ざっと30体といったところか。

「聖女様、今度は俺達パーティーに任せて下さい!」

「いいえ、やはりアンデッドには光属性が有効ですから、私にお任せを」

 聖女様はそう言うと、またもや最前列におどり出て、詠唱を始めた。

「ホーリーバースト!」

 ホーリーバーストとは、30センチくらいの光の玉を相手に飛ばして、触れた瞬間に爆発するという、なかなかに派手な魔法だ。だがそれで相手を倒した時は、見ている俺ですらスカッとするんだ。範囲魔法もいいけど、スカッと度はこっちの方が上だろうな。

 聖女様が放った光の玉が1体のスケルトンに触れた瞬間、激しい爆発が起きた! そしてそこにスケルトンの姿は無く、跡形もなく消え去っていた。

「ヒャッハー! これが聖女の力よっ! 次は誰かしら!」

 どんな精神状態だと「ヒャッハー!」なんて言葉が出てくるんだよ……。

 その後も聖女様はホーリーバーストを繰り返し、スケルトンを全滅させたのだった。時間がかかるので次からは範囲魔法を使って下さい。


 そして俺達はダンジョン攻略に成功したんだけど……。

「私、フルーツパフェがいいわ」

 ダンジョン攻略した帰りに、俺と聖女様は二人でカフェに来ている。どうしてこうなった? 可愛い女の子と二人でカフェだなんて、ちょっとしたデートなんだけど全然そんな気がしない。

 大勢いた護衛はどこへ行ったのかというと、店の外で待機中だ。なんだかずっと拳銃を突きつけられているような気分になって、落ち着かない。

「ちょっと聞いてくれる? 私、聖女なんだけどさぁー、毎日毎日教会でお祈りばっかりなの。でもいい加減ツラくなってくるじゃない?」

「そ、そうでしょうね……」

「だからさ、ちょうど暴れたいなと思ってたんだよねー」

 聖女とは? もっとこう、おしとやかで気品があって、争いなんて好まない、とても尊い存在なんだと思っていた。

 実際に異世界で目の当たりにすると、マンガやラノベで描かれている聖女様は幻想なんだなということがよく分かる。

 その後も俺は少しの間、聖女様のグチに付き合わされた。みんな陰で苦労してるんだなぁ……。


「あ、もうこんな時間かぁー。私もう帰らなきゃ。話聞いてくれてありがとね」

「えっ!? もうですか? まだ来て10分くらいですよ?」

「うん、だから代わりを呼んであるの。じゃあね」

 そう言い残して聖女様は店から出ていった。それから1分後くらいに、1人の人物が姿を見せた。

「げっ! なんでアンタがいるのよ!?」

 それは今日『欠席』したはずの如月だった。
 
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