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番外編 聖女様①
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【まえがき】
ここまで読んでくださりありがとうございます! 予想以上に多くの方に読んでもらえましたので、感謝を込めてここでしか読めないエピソードを公開します。第33話で少し話が出た、異世界でアンデッドダンジョンに挑むエピソードです。これ以外にも、別のエピソードも公開する予定です。引き続きよろしくお願いします。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
次に攻略予定のダンジョンがアンデッド系の魔物ばかりだと、俺達の冒険者パーティーは宿に着いてから知った。すると今朝になって如月が部屋に閉じこもってしまったのだ。俺は今、ドア越しに如月を説得している。
「どうした如月? 体調不良か?」
「ま、まあそんなところね。だから今日はどこにも行けないわ」
「大丈夫か? でも今日行かないと次の街への到着が遅れてしまう。期限付きだから早くしないと」
「……おなか痛い」
「分かった、メンバーから万能薬を貰って来る。あれなら速攻で治るからな」
「ちょっ、ちょっと待って! やっぱり頭痛も痛いかも。それになんだか熱っぽくて熱いかも」
「日本語がおかしいな。でも大丈夫だ。なんといっても万能薬だからな」
「まっ、待って待って! やっぱり体調が悪いのは気のせいかも。悪いのは機嫌よ!」
「自信たっぷりに言い切ることじゃない!」
「えーっと、そうじゃなくて……何があるかな?」
「何があるかな?」って言ってる時点でウソ確定なこと、気がついてないのだろうか。
「もしかして、霊的なものが恐いのか?」
突如として無音状態になった。肯定なのだろう。
「だってあんなもの得体が知れないし、単純に見た目が気持ち悪くてしょうがないもの」
「なるほどな、気持ちは分かる。考え方を変えてみようか。例えばスケルトンがいたとする。当然見た目は白骨だ。そこでだな、頭の中でコイツはどんな顔だったのか想像してみるんだ。もしかしたら超イケメンかもしれないと思うと、平気だろう?」
「イケメンなんてそんなにたくさんいないわよ」
「ゾンビやゴーストだって元は人間だと思うと、仲間だと思えてこないか?」
「思えるわけないじゃない」
夢が無さすぎる。もうちょっと考えみてほしいところなんだけど。
「とにかく、出てきてくれ。このままじゃ聖女様が最前線に出るという珍事が起きそうだ」
「聖女様がお城の外に出るわけないじゃない。私がいなくても、あのメンバーなら楽勝でしょ。とにかく今日は欠席するからね! おやすみ!」
「学校かよ! それに朝になったばっかだぞ!」
結局、如月は部屋から出てこなかった。
(困ったな、聖女様になんて説明しよう……)
俺は今、王国の教会に来ている。なんでも聖女様は、毎日ここで祈りを捧げているらしい。俺が持つ聖女様のイメージとピッタリだ。
聖女様はとても神秘的で、透き通るような白い肌と銀髪が光り輝き、顔立ちはモデルかと思うほどに整っている。
「聖女様、申し訳ございません。勇者キサラギの説得に失敗しました」
俺は申し訳なさそうに聖女様へ報告をした。
「いえ、あなたのせいではありませんよ。きっとキサラギ様にも事情があるのでしょう」
確かに事情はあるんだけど、話すわけにはいかないな……。
そしてダンジョン攻略当日。俺がいつものパーティーメンバー四人とダンジョンに入ろうとすると、俺達が来た道から大勢がこちらに向かって来ているので、待ってみることにした。
そして俺達の前で立ち止まった人々の中心には、聖女様がいた。
「ちょっ……聖女様、何してるんですか!?」
「私も加勢に来ました」
確かにアンデッドには光属性魔法が有効だ。そしてそれを使いこなせるのは、如月と現地人である聖女様だけ。だからって聖女様がこんな最前線に来るものなのか? まあ護衛も大勢いることだし大丈夫か?
そしてダンジョン内に入ってしばらくすると、50体はいるであろう、剣と盾を持ったスケルトンの大群と遭遇してしまった。
「チッ……数が多すぎる!」
パーティーメンバーである屈強な戦士ですら、その数に圧倒されているなか、一人の人物が前に躍り出た。それは聖女様だった。俺はすかさず聖女様に話しかける。
「聖女様! 危険です! 下がっていてください!」
「大丈夫ですよ。私の魔法で一掃して差し上げましょう」
すると聖女様は詠唱に入った。
「ホーリーディメンション!」
聖女様がそう言い放った瞬間、目の前にまばゆい光が放たれ、あんなにいたスケルトンの大群が、一瞬にして消えていく様子がハッキリと確認できた。
「あの聖女様、大丈夫ですか?」
俺がそう声をかけると聖女様は、少し下を向いて元気がなさそうに見えた。無理もない。スケルトンとはいえ、あんな大量の生き物(?)を一瞬で消し去ってしまったんだ。罪悪感のようなものがあるのだろう。よく見ると少し震えているようにも見える。
「聖女様、少し休みますか?」
「……いぃ」
「えっ?」
「気ん持ちいいぃぃぃーっ!」
聖女様は別人かと思うほどに恍惚な表情を浮かべていた。
ここまで読んでくださりありがとうございます! 予想以上に多くの方に読んでもらえましたので、感謝を込めてここでしか読めないエピソードを公開します。第33話で少し話が出た、異世界でアンデッドダンジョンに挑むエピソードです。これ以外にも、別のエピソードも公開する予定です。引き続きよろしくお願いします。
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次に攻略予定のダンジョンがアンデッド系の魔物ばかりだと、俺達の冒険者パーティーは宿に着いてから知った。すると今朝になって如月が部屋に閉じこもってしまったのだ。俺は今、ドア越しに如月を説得している。
「どうした如月? 体調不良か?」
「ま、まあそんなところね。だから今日はどこにも行けないわ」
「大丈夫か? でも今日行かないと次の街への到着が遅れてしまう。期限付きだから早くしないと」
「……おなか痛い」
「分かった、メンバーから万能薬を貰って来る。あれなら速攻で治るからな」
「ちょっ、ちょっと待って! やっぱり頭痛も痛いかも。それになんだか熱っぽくて熱いかも」
「日本語がおかしいな。でも大丈夫だ。なんといっても万能薬だからな」
「まっ、待って待って! やっぱり体調が悪いのは気のせいかも。悪いのは機嫌よ!」
「自信たっぷりに言い切ることじゃない!」
「えーっと、そうじゃなくて……何があるかな?」
「何があるかな?」って言ってる時点でウソ確定なこと、気がついてないのだろうか。
「もしかして、霊的なものが恐いのか?」
突如として無音状態になった。肯定なのだろう。
「だってあんなもの得体が知れないし、単純に見た目が気持ち悪くてしょうがないもの」
「なるほどな、気持ちは分かる。考え方を変えてみようか。例えばスケルトンがいたとする。当然見た目は白骨だ。そこでだな、頭の中でコイツはどんな顔だったのか想像してみるんだ。もしかしたら超イケメンかもしれないと思うと、平気だろう?」
「イケメンなんてそんなにたくさんいないわよ」
「ゾンビやゴーストだって元は人間だと思うと、仲間だと思えてこないか?」
「思えるわけないじゃない」
夢が無さすぎる。もうちょっと考えみてほしいところなんだけど。
「とにかく、出てきてくれ。このままじゃ聖女様が最前線に出るという珍事が起きそうだ」
「聖女様がお城の外に出るわけないじゃない。私がいなくても、あのメンバーなら楽勝でしょ。とにかく今日は欠席するからね! おやすみ!」
「学校かよ! それに朝になったばっかだぞ!」
結局、如月は部屋から出てこなかった。
(困ったな、聖女様になんて説明しよう……)
俺は今、王国の教会に来ている。なんでも聖女様は、毎日ここで祈りを捧げているらしい。俺が持つ聖女様のイメージとピッタリだ。
聖女様はとても神秘的で、透き通るような白い肌と銀髪が光り輝き、顔立ちはモデルかと思うほどに整っている。
「聖女様、申し訳ございません。勇者キサラギの説得に失敗しました」
俺は申し訳なさそうに聖女様へ報告をした。
「いえ、あなたのせいではありませんよ。きっとキサラギ様にも事情があるのでしょう」
確かに事情はあるんだけど、話すわけにはいかないな……。
そしてダンジョン攻略当日。俺がいつものパーティーメンバー四人とダンジョンに入ろうとすると、俺達が来た道から大勢がこちらに向かって来ているので、待ってみることにした。
そして俺達の前で立ち止まった人々の中心には、聖女様がいた。
「ちょっ……聖女様、何してるんですか!?」
「私も加勢に来ました」
確かにアンデッドには光属性魔法が有効だ。そしてそれを使いこなせるのは、如月と現地人である聖女様だけ。だからって聖女様がこんな最前線に来るものなのか? まあ護衛も大勢いることだし大丈夫か?
そしてダンジョン内に入ってしばらくすると、50体はいるであろう、剣と盾を持ったスケルトンの大群と遭遇してしまった。
「チッ……数が多すぎる!」
パーティーメンバーである屈強な戦士ですら、その数に圧倒されているなか、一人の人物が前に躍り出た。それは聖女様だった。俺はすかさず聖女様に話しかける。
「聖女様! 危険です! 下がっていてください!」
「大丈夫ですよ。私の魔法で一掃して差し上げましょう」
すると聖女様は詠唱に入った。
「ホーリーディメンション!」
聖女様がそう言い放った瞬間、目の前にまばゆい光が放たれ、あんなにいたスケルトンの大群が、一瞬にして消えていく様子がハッキリと確認できた。
「あの聖女様、大丈夫ですか?」
俺がそう声をかけると聖女様は、少し下を向いて元気がなさそうに見えた。無理もない。スケルトンとはいえ、あんな大量の生き物(?)を一瞬で消し去ってしまったんだ。罪悪感のようなものがあるのだろう。よく見ると少し震えているようにも見える。
「聖女様、少し休みますか?」
「……いぃ」
「えっ?」
「気ん持ちいいぃぃぃーっ!」
聖女様は別人かと思うほどに恍惚な表情を浮かべていた。
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