俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム

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第47話 もう一度

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 このまま四人で遊びたいと主張する結瑠璃ゆるりちゃんを、如月きさらぎが説得してくれたことにより、これからは俺と日向ひなたさんの二人きりで過ごせることになった。

「それじゃ私と結瑠璃は映画を観に行くから、今度は最初から四人で遊びましょうね」

「楽しかったです! また遊んでくださいね!」

「如月さん、結瑠璃ちゃん、またね!」

 こうして如月姉妹と別れた。ここからは正真正銘、日向さんと二人きりの時間だ。

 時刻は午後三時になっていた。まだここで過ごすことができそうだ。

「先輩、もう一度ラノベを見に行きませんか?」

 到着して早々に結瑠璃ちゃんと会ったので、ほとんど本を見る暇なんて無かったのだ。
 実質、ほとんど日向さんと二人きりでは過ごしていない。

「やっぱりワクワクしますね!」

「女性向けの作品が並んでいるところへ行ってみようか」

 日向さんと並んでタイトルと表紙を確認していく。日向さんの位置はいつも俺の右側だ。

 やはり悪役令嬢ものや、異世界恋愛ものが多い。もふもふも少し目立つだろうか。
 一通り見て回ると、一際目立つ表紙があった。そこにはイケメンが二人描かれている。BLボーイズラブ作品だ。さすがにBLはご遠慮したい。

「先輩、この表紙見てください! 絵がすごく綺麗で、どちらもイケメンですよ!」

「絵が綺麗な作品は俺も好きだな。本当だ、確かにどちらもイケメンだ」

(……ん? どちらもイケメン?)

 それは俺がさっきまで見ていたBL作品だった。これは日向さんに確認していいのか迷う。

「日向さん、この作品のジャンルって何になるの?」

「BLですね!」

 ド直球な答えが返って来た。日向さんに聞こうか迷っていた、俺の方がおかしいんじゃないかと思うくらいの、気持ちのいい返答だ。

「日向さんはこういうのも見るの?」

「私はあんまりは見ないですね」

「ちょっとは見るんだね」

「私の場合は感情移入はできないので、イケメン同士の日常を覗かせてもらってる、といった感じですね」

「日常を覗かせてもらう、か。確かに日常系は大まかなストーリーとかは無くても、見てるだけで楽しかったりするね」

「先輩はこういった作品を見たりすることあるんですか?」

「BL? 見ないよ」

「そっ、それは分かります! 女の子同士の作品のことです」

 これはまた難しい質問が飛んで来たものだ。正直、見るんだがどう答えたものか。女の子が百合ゆり作品をどう思ってるのか分からん。かといって嘘をつくのも、ちょっとな。

「アニメがあれば見るけど、本を買ってまでは見ないね」

 俺は正直に答えた。やっぱり嘘をつきたくないからだ。

「そうなんですね。男の人は作品に出てくる女の子が多ければ多いほど、喜ぶものだと思ってました」

「確かにそういう一面もあるけど、俺はスポーツとか男の友情がテーマの作品も見るよ。あと、俺は全世界の男代表じゃないから、本当に人によるんじゃないかな」

「それならハーレムはどうですか?」

「それは好き」

 俺はそれがさも当たり前かのように即答していた。もしかすると重大なミスをおかしてしまったのかもしれない。日向さんの反応を恐る恐る確認してみる。

「ですよね! 全然おかしいことじゃないですよ! モテたいのは誰だって一緒だと思います!」

(なんかなぐさめられてる?)

「あー、さっきも言ったけど俺は男の代表じゃないから、男みんながそうじゃないからね」

「レストランではハーレムでしたね!」

「控えめに言って最高だった」

 少しからかわれている気がしなくもないが、会話が心地よい。やっぱり日向さんと話すのが好きだ。

 それからも時間をかけてラノベを選んだ結果、お互いに二冊ほど購入した。

 それでも時間があったので、他の店舗も見て回った。日向さんが好むファッションや雑貨などを知ることができた。

 日向さんは何かを買う前に、時間をかけて選ぶようだ。お金は無限ではない。金銭感覚というものは、一緒に過ごすうえで大切なことだ。

 それでいて欲しいものは、しっかりと買うようだ。俺の価値観や考え方に近い。ますます日向さんを身近に感じた時間だった。

 そろそろ夕食の時間帯になってきたので、俺はある提案をした。それは俺が行きたいレストランを伝えるというものだ。

 そこは俺がどうしても今日行きたい場所。一ヶ月以上前のあの日。俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた日。日向さんと初めてプライベートで出かけた時に行ったレストランだ。
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