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第42話 後輩が核心をついてくる
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さっきから日向さんが大きな声を出している。日向さんが言うには俺のせいらしい。体調が悪化したら大変なので、早く休んでもらおう。
「日向さん、もうそれくらいにして今日はゆっくりと休んだらどうかな」
「いいえ、まだです。まだまだ先輩に言いたいことがあります」
日向さんはベッドで横になり、体を右に向けたまま俺と話している。
「ここからが本題なんですけどね」
どうやら俺がいろいろと怒られたのは、本題ではなかったらしい。それはいいとしても、過去のトラウマのせいで男性が苦手という、なかなかに強烈な話が出たと思うんだけど、それすらも本題じゃないんだ。
「先輩って、如月さんのことどう思ってるんですか?」
意外だった。まさかそんなことを聞かれるだなんて。
如月は異世界では有名人だったので、直接の面識は無い日向さんでも、如月が異世界帰りだと知っている。逆に如月は日向さんも異世界帰りだとは知らない。
「前にも言ったけど如月とは、異世界で冒険者パーティーを組んでいたから、戦友って感じかな」
「戦友、ですか。それってつまり友達のように思ってるということですか?」
「そうなるね」
「でも如月さんって可愛いですよね。明るくて気さくで優しくて小柄で、ほら、胸だって大きくて。私だってあのくらい大きければいいのに」
『ほら』の意味が分からんけど、ここはどう返すべきなんだろう。日向さんから言ってきたんだから、今は胸の話をするのは大丈夫だろう。
だからといって「日向さんくらいの大きさがちょうどいい」とか言ったら、それはそれでいろいろとマズい。
「胸の大きさは関係無いけど、確かに如月と話していると楽しいな」
「そうですよね、先輩と如月さんが話しているところを見ると、いつもすごく楽しそうです」
「それは如月が俺に対して、変なことしか言わないからだね。それに楽しいってのは、本当に男友達みたいに気を使わず、バカ話ができるって意味だよ」
「それなら私と話す時はどうですか?」
「日向さんと話す時は、どんな話をすれば楽しんでもらえるのか、どんな口調で話そうか、嫌な気分にさせないだろうか、とかをいつもよりも考える」
「それって特別ってことですか?」
「特別だね」
俺がそう言うと日向さんは、体ごと反対側を向いてしまった。当然、表情を見ることはできない。
その状態のまま、お互い無言の時が流れた。おそらくは1分も経っていないだろう。再び日向さんが体ごと俺の方へ向き直した。
「今日の予定が無くなったのは残念だったけど、これはこれで体調を崩してよかったのかも」
「俺としては、いつもみたいに元気な日向さんを見たいな」
「それは本当にごめんなさい」
「いやいや! 責めてるんじゃなくてね! さっきいろいろよく考えると言ったばかりなのに、早速これだ!」
「私は慌てた先輩、可愛くて好きですよ?」
「男としては、可愛いって言われるの喜んでいいのか分からないよ」
なんだか今日の日向さんはいつもと違う。なんというか俺、からかわれてるのだろうか。
「そうですかー、先輩にとって如月さんはお友達なんですね! 私も如月さん大好きです!」
たまに日向さんと如月の二人で女子会をしているみたいだし、二人ともコミュ力が高いから仲良くなるのが早かったのだろう。
「安心したらなんだか眠たくなっちゃいました。先輩、私ちょっとだけ寝ますね」
「それがいいよ。体調不良の時は寝るのが一番だからね。よく寝ればなんとかなる」
「先輩、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
日向さんは仰向けになって寝る姿勢になったようだ。俺は邪魔しないように、しばらく静かにしていた。
(……いや、寝られたらダメじゃん!)
そうだった! 今、日向さんに寝られたら俺はどうすればいいんだ? マンションのセキュリティはしっかりしているけど、寝ている日向さんを残してこのまま帰るのも、それはそれで心配だし、かといって起きるまでここに居ても、何をしていいのか分からない。
(俺が帰ってからにしてもらおう)
一言、帰ると伝えようと日向さんを見たけど、すでに眠っていた。いくらなんでも無防備すぎる。
(寝顔めちゃくちゃ可愛いな)
改めて日向さんを見ると、彼氏がいないことが奇跡みたいだ。こうなっては起こすわけにもいかない。
仕方がないので、日向さんが目を覚ますまで、余計なことを考えないためにも、Web小説の全然興味が無いジャンルを読んで、じっくり考察してみたりして過ごした。
そうしているうちに、日向さんが目を覚ました。
「……うーん、あれ? 先輩? もしかして、ずっと居てくれたんですか?」
「寝ている日向さんを残して帰るのも心配だったから」
「私の寝顔、変じゃなかったですか?」
「可愛いと思った」
「ホントに変なところで積極的なんだから!」
本当に今日は怒られてばかりだ。
時計を見ると1時間しか経っていなかった。今度こそ帰ろう。
「俺帰るよ。今日のことは気にしないで。来週を楽しみにしてるよ」
「本当にありがとうございました! もし先輩が寝込んだら、次は私が看病に行きますね!」
日向さんがフラグを立てた。それもいいかもしれないけど、やっぱりお互い元気な状態で会いたいから、今はそのフラグをバキバキに折ってやろう。
「日向さん、もうそれくらいにして今日はゆっくりと休んだらどうかな」
「いいえ、まだです。まだまだ先輩に言いたいことがあります」
日向さんはベッドで横になり、体を右に向けたまま俺と話している。
「ここからが本題なんですけどね」
どうやら俺がいろいろと怒られたのは、本題ではなかったらしい。それはいいとしても、過去のトラウマのせいで男性が苦手という、なかなかに強烈な話が出たと思うんだけど、それすらも本題じゃないんだ。
「先輩って、如月さんのことどう思ってるんですか?」
意外だった。まさかそんなことを聞かれるだなんて。
如月は異世界では有名人だったので、直接の面識は無い日向さんでも、如月が異世界帰りだと知っている。逆に如月は日向さんも異世界帰りだとは知らない。
「前にも言ったけど如月とは、異世界で冒険者パーティーを組んでいたから、戦友って感じかな」
「戦友、ですか。それってつまり友達のように思ってるということですか?」
「そうなるね」
「でも如月さんって可愛いですよね。明るくて気さくで優しくて小柄で、ほら、胸だって大きくて。私だってあのくらい大きければいいのに」
『ほら』の意味が分からんけど、ここはどう返すべきなんだろう。日向さんから言ってきたんだから、今は胸の話をするのは大丈夫だろう。
だからといって「日向さんくらいの大きさがちょうどいい」とか言ったら、それはそれでいろいろとマズい。
「胸の大きさは関係無いけど、確かに如月と話していると楽しいな」
「そうですよね、先輩と如月さんが話しているところを見ると、いつもすごく楽しそうです」
「それは如月が俺に対して、変なことしか言わないからだね。それに楽しいってのは、本当に男友達みたいに気を使わず、バカ話ができるって意味だよ」
「それなら私と話す時はどうですか?」
「日向さんと話す時は、どんな話をすれば楽しんでもらえるのか、どんな口調で話そうか、嫌な気分にさせないだろうか、とかをいつもよりも考える」
「それって特別ってことですか?」
「特別だね」
俺がそう言うと日向さんは、体ごと反対側を向いてしまった。当然、表情を見ることはできない。
その状態のまま、お互い無言の時が流れた。おそらくは1分も経っていないだろう。再び日向さんが体ごと俺の方へ向き直した。
「今日の予定が無くなったのは残念だったけど、これはこれで体調を崩してよかったのかも」
「俺としては、いつもみたいに元気な日向さんを見たいな」
「それは本当にごめんなさい」
「いやいや! 責めてるんじゃなくてね! さっきいろいろよく考えると言ったばかりなのに、早速これだ!」
「私は慌てた先輩、可愛くて好きですよ?」
「男としては、可愛いって言われるの喜んでいいのか分からないよ」
なんだか今日の日向さんはいつもと違う。なんというか俺、からかわれてるのだろうか。
「そうですかー、先輩にとって如月さんはお友達なんですね! 私も如月さん大好きです!」
たまに日向さんと如月の二人で女子会をしているみたいだし、二人ともコミュ力が高いから仲良くなるのが早かったのだろう。
「安心したらなんだか眠たくなっちゃいました。先輩、私ちょっとだけ寝ますね」
「それがいいよ。体調不良の時は寝るのが一番だからね。よく寝ればなんとかなる」
「先輩、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
日向さんは仰向けになって寝る姿勢になったようだ。俺は邪魔しないように、しばらく静かにしていた。
(……いや、寝られたらダメじゃん!)
そうだった! 今、日向さんに寝られたら俺はどうすればいいんだ? マンションのセキュリティはしっかりしているけど、寝ている日向さんを残してこのまま帰るのも、それはそれで心配だし、かといって起きるまでここに居ても、何をしていいのか分からない。
(俺が帰ってからにしてもらおう)
一言、帰ると伝えようと日向さんを見たけど、すでに眠っていた。いくらなんでも無防備すぎる。
(寝顔めちゃくちゃ可愛いな)
改めて日向さんを見ると、彼氏がいないことが奇跡みたいだ。こうなっては起こすわけにもいかない。
仕方がないので、日向さんが目を覚ますまで、余計なことを考えないためにも、Web小説の全然興味が無いジャンルを読んで、じっくり考察してみたりして過ごした。
そうしているうちに、日向さんが目を覚ました。
「……うーん、あれ? 先輩? もしかして、ずっと居てくれたんですか?」
「寝ている日向さんを残して帰るのも心配だったから」
「私の寝顔、変じゃなかったですか?」
「可愛いと思った」
「ホントに変なところで積極的なんだから!」
本当に今日は怒られてばかりだ。
時計を見ると1時間しか経っていなかった。今度こそ帰ろう。
「俺帰るよ。今日のことは気にしないで。来週を楽しみにしてるよ」
「本当にありがとうございました! もし先輩が寝込んだら、次は私が看病に行きますね!」
日向さんがフラグを立てた。それもいいかもしれないけど、やっぱりお互い元気な状態で会いたいから、今はそのフラグをバキバキに折ってやろう。
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