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第36話 忘れたくない一日
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「ずっとあなたが好きでした。私と付き合ってください」
二人きりの観覧車の中で如月から告白された。
本当に不意打ちだった。まさか俺が告白される日がくるとは、思ってもいなかった。こんなにも嬉しいものだなんて。
「如月、ありがとう。凄く嬉しい。ただ俺は如月とは仲のいい友達でいたいんだ」
それと同時にこんなにも早く、断りの言葉が出てくるなんて思わなかった。俺の中では前から答えは決まっていたんだ。
「振られちゃったか」
如月は他人事のように言う。心の中では泣いているのかもしれない。
俺だったら心の中では絶対に泣いている。いや、泣いた。それどころか本当に泣いたことだってある。
きっと如月は俺を後ろめたい気持ちにさせないため、わざと淡々と言っているのだろう。
普段は強気でめちゃくちゃに見えるけど、本当は人の気持ちを大切にする、かわいくて優しい女の子なんだ。
俺と如月が乗る観覧車が頂上まで来た。ドラマやマンガならここで、隣に座ったりキスしたりといった展開があるんだろうけど、この状況でそんなことがあるわけない。気まずすぎる。
むしろスピードアップしてくれねえかな、とさえ思ってしまう。
(こういう時は振った側がなんとかしないと)
「如月? ああは言ったけど、決して嫌いとかじゃないからな? あ……あとはあれだ、告白されたのが初めてで、驚いて速攻で断ったけど、考えるまでもないということではなくてだな。断られることなら百戦錬磨なんだが——」
俺は過去一番の早口になっていたかもしれない。すると正面に座っている如月が言葉を漏らした。
「プッ……」
その直後、如月は思い切りよく笑った。ついさっき振られたとは思えないほどに。
「アンタ早口で何言ってんの!? 断られることなら百戦錬磨って、メンタル強すぎでしょ! あー! 笑った!」
どうしてそこまで明るく振る舞えるんだ? 絶対につらいはずなのに。百戦錬磨の俺が言うんだから間違いない。
「私なら心配いらないからね。むしろ分かってたというか、つい言っちゃったというか。ほら、観覧車って恋人がイチャつくイメージがあるじゃない? そういうのってなんとなく憧れるなって思ってて、ふと思い出しちゃったというか——」
今度は如月が早口になっていたので、俺は笑いをこらえることが出来なかった。それを見て如月は「うっ……うるさいわね!」と言って、フンッ! と顔をそらした。
ついさっき振った側と振られた側だということが嘘みたいだ。
「そうだ、結瑠璃にお説教しないとね。あの子の嫌いなトマト料理を食べさせるってのもいいかも」
「結瑠璃ちゃん泣くぞ」
結瑠璃ちゃんがお姉ちゃんのために、いろいろ動いていたことを俺は知っている。全ては大好きなお姉ちゃんのため。そこに悪意などあるはずがない。もちろん如月だって、そんなことは分かっているだろう。
気がつけば観覧車は一周していた。俺と如月は観覧車を降りて、結瑠璃ちゃんのもとへ。そして結瑠璃ちゃんが俺に言う。
「観覧車、楽しかったですね!」
「君乗ってないよね!」
「お姉ちゃんと一緒だから、楽しいに決まってます!」
結瑠璃ちゃんは笑顔なのに、俺は笑顔で返せない。変な間が空いてしまいそうになったが、如月がそれを防ぐかのように結瑠璃ちゃんに語りかけた。
「もちろん楽しかったわよ。次に来た時は結瑠璃も一緒に乗ろうね」
「うん!」
今この場には気づかいが溢れている。こうやって知らないうちに、誰かに助けられていたんだなと、実感した一日だった。
そして如月が好意をストレートに伝えてくれた忘れられない、いや、忘れたくない一日となった。
次の日の朝。今日は月曜日だ。また今日から仕事の日々。ただでさえ足取りが重くなる。
それに加えて、どんな態度で如月と接していいのか分からない。
やっぱり普段通りに振る舞うのが一番だが、そんなことが俺にできるだろうか。
あ、そういえば如月の席は俺の左隣だった。会社、休みたい。
二人きりの観覧車の中で如月から告白された。
本当に不意打ちだった。まさか俺が告白される日がくるとは、思ってもいなかった。こんなにも嬉しいものだなんて。
「如月、ありがとう。凄く嬉しい。ただ俺は如月とは仲のいい友達でいたいんだ」
それと同時にこんなにも早く、断りの言葉が出てくるなんて思わなかった。俺の中では前から答えは決まっていたんだ。
「振られちゃったか」
如月は他人事のように言う。心の中では泣いているのかもしれない。
俺だったら心の中では絶対に泣いている。いや、泣いた。それどころか本当に泣いたことだってある。
きっと如月は俺を後ろめたい気持ちにさせないため、わざと淡々と言っているのだろう。
普段は強気でめちゃくちゃに見えるけど、本当は人の気持ちを大切にする、かわいくて優しい女の子なんだ。
俺と如月が乗る観覧車が頂上まで来た。ドラマやマンガならここで、隣に座ったりキスしたりといった展開があるんだろうけど、この状況でそんなことがあるわけない。気まずすぎる。
むしろスピードアップしてくれねえかな、とさえ思ってしまう。
(こういう時は振った側がなんとかしないと)
「如月? ああは言ったけど、決して嫌いとかじゃないからな? あ……あとはあれだ、告白されたのが初めてで、驚いて速攻で断ったけど、考えるまでもないということではなくてだな。断られることなら百戦錬磨なんだが——」
俺は過去一番の早口になっていたかもしれない。すると正面に座っている如月が言葉を漏らした。
「プッ……」
その直後、如月は思い切りよく笑った。ついさっき振られたとは思えないほどに。
「アンタ早口で何言ってんの!? 断られることなら百戦錬磨って、メンタル強すぎでしょ! あー! 笑った!」
どうしてそこまで明るく振る舞えるんだ? 絶対につらいはずなのに。百戦錬磨の俺が言うんだから間違いない。
「私なら心配いらないからね。むしろ分かってたというか、つい言っちゃったというか。ほら、観覧車って恋人がイチャつくイメージがあるじゃない? そういうのってなんとなく憧れるなって思ってて、ふと思い出しちゃったというか——」
今度は如月が早口になっていたので、俺は笑いをこらえることが出来なかった。それを見て如月は「うっ……うるさいわね!」と言って、フンッ! と顔をそらした。
ついさっき振った側と振られた側だということが嘘みたいだ。
「そうだ、結瑠璃にお説教しないとね。あの子の嫌いなトマト料理を食べさせるってのもいいかも」
「結瑠璃ちゃん泣くぞ」
結瑠璃ちゃんがお姉ちゃんのために、いろいろ動いていたことを俺は知っている。全ては大好きなお姉ちゃんのため。そこに悪意などあるはずがない。もちろん如月だって、そんなことは分かっているだろう。
気がつけば観覧車は一周していた。俺と如月は観覧車を降りて、結瑠璃ちゃんのもとへ。そして結瑠璃ちゃんが俺に言う。
「観覧車、楽しかったですね!」
「君乗ってないよね!」
「お姉ちゃんと一緒だから、楽しいに決まってます!」
結瑠璃ちゃんは笑顔なのに、俺は笑顔で返せない。変な間が空いてしまいそうになったが、如月がそれを防ぐかのように結瑠璃ちゃんに語りかけた。
「もちろん楽しかったわよ。次に来た時は結瑠璃も一緒に乗ろうね」
「うん!」
今この場には気づかいが溢れている。こうやって知らないうちに、誰かに助けられていたんだなと、実感した一日だった。
そして如月が好意をストレートに伝えてくれた忘れられない、いや、忘れたくない一日となった。
次の日の朝。今日は月曜日だ。また今日から仕事の日々。ただでさえ足取りが重くなる。
それに加えて、どんな態度で如月と接していいのか分からない。
やっぱり普段通りに振る舞うのが一番だが、そんなことが俺にできるだろうか。
あ、そういえば如月の席は俺の左隣だった。会社、休みたい。
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