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第27話 休日
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日向さんと夏祭りに行ってから、なんだか仕事にやる気がみなぎっている。いや、常にやる気は100パーセントなんだけど、今は120パーセントといった感じだ。
さらに最近は気分が晴れやかだ。プライベートが充実しているからだろうか。会社の人気者の日向さんと夏祭りに行ったことが何だか信じられない。
充実しているといっても、相変わらず休日は一人で過ごすことが多いけど。そんな俺にとって世の中に、おひとりさま文化が広まりつつあるのはありがたい。一人は悪いことではないのだ。
もし俺の友達にイケメンモテ男子がいるとして、相談したら『さっさと告れ』と怒られるかもしれない。でも実際にいる俺の一番の親友は恋愛レベル1だ。
しかも日向さんからのメッセージ返信を心待ちにしている時に、ただ『酔ってる』という内容のクッソどうでもいいメッセージを、実に紛らわしいタイミングで送ってくるような奴だ。
レベル1がレベル1にアドバイスをもらっても何も変わらんだろう。それに誰かに相談したとして、結局のところどうするか決めるのは自分だ。
今日は休日。さすがに何もしないのはもったいない。まだ昼過ぎだ。とりあえず俺は本屋へ行くことにした。
俺は本はなるべく紙媒体で買うようにしている。もちろん電子書籍は電子書籍の良さがある。ただ俺は、紙のページをめくる時のワクワク感が好きなのだ。
まずはタウン情報誌のコーナーへと足を運ぶ。俺の行動範囲は広くない。だから本やテレビでの店舗情報などの情報収集は必要になる。
購入候補をいくつかピックアップし保留にしてからラノベコーナーへ。
新刊をチェックすると、面白そうなものがいくつかある。全部買うわけにもいかないので絵とタイトルで判断するしかない。
棚を一通り見て回っていると、横に人がいるので避けようとしてその人物を見た。それは如月だった。それともう一人、女性が一緒だ。
どうやら如月も俺に気がついたらしい。友達と一緒なので声をかけない方がいいと思った俺は、無言で去ろうとしたが目が合った。
さすがにそうなると無視できないので、あいさつしようとしたら如月から声をかけてきた。
「アンタもラノベを買いに来たの?」
「俺はとりあえず見に来たって感じだな。何か面白そうなものはあったか?」
「うーん、今のところは無いわね。アンタは何か見つけたの?」
「いくつかあったけど、どれを買うか悩むな」
「それなら全部買えばいいじゃない」
「そういうわけにもいかんだろ」
如月らしい暴論だが、ある意味正しいのかもしれない。如月の金銭感覚が分からん。よっぽどいい暮らしをしてるんだろうか。
「友達と来てるなら俺はこれで。またな」
俺が横を通り過ぎようとするとTシャツの裾をつままれた。
「この子は友達じゃないわよ」
「そうなのか?」
そんなこと言っていいのか如月。お互い友達だと思ってたのに、そう思ってたのは片方だけだったなんて悲しすぎるぞ。
「はじめまして。如月(きさらぎ)結瑠璃(ゆるり)といいます」
そう自己紹介した彼女は、黒いミディアムヘアをセンターで分けていて、背が高い。おそらく160センチ後半だろう。ややつり目なのは如月に似ている。凛とした印象の美人だ。
「お姉さんですか」
俺がそう言うと、すねに何かがぶつかった。
「いてっ! いつもすねを蹴るんじゃない!」
「どこをどう見ればそう見えるの? 『この子』って言ったでしょ。妹よ」
「なんとなく背が高い方が姉だと思うだろ」
「まあ、私もこの子と同じくらい若く見えるということね」
「それはそうだな」
「まっ、またアンタは平然と!」
「自分で言ったんじゃないか」
妹さんは不思議そうにこちらを見ている。普段の姉の姿と違うのだろうか。
「如月、妹さんもラノベ読むのか?」
「私が勧めたのよ。この子は元々マンガやアニメが好きではあったんだけどね」
「私が買いたいマンガがあったから、今日はお姉ちゃんに付き合ってもらったんです」
「そうなんですか。頼れるお姉ちゃんですね」
会社の同僚の妹との接し方なんて分からないぞ。困った時はとりあえず敬語で話していれば間違いはないだろう。
「邪魔したら悪いから俺はこれで。またな」
俺が背を向けて帰ろうとしたら、またもやTシャツの裾をつままれた。
「だからなんでアンタは帰ろうとするの」
「言葉そのままの理由なんだけど」
「せっかくなんだから本を選ぶの手伝ってよ」
「女性向けはあまり知らないから、戦力になるかは分からないぞ。それに妹さんの意見も聞いてみないと」
「私からもお願いしていいですか?」
お願いされたら協力するしかない。そして妹さんが買ったマンガは、異世界恋愛ものだった。イケメン貴族達が主人公の女の子にアプローチするという内容だ。男性向けなら、男主人公がかわいい女の子数人からアプローチされるのと同じこと。
それから俺と如月がラノベを一冊ずつ買って買い物が終わった。たいしたことはしてないけど、俺は如月と妹さんからお礼を言われた。
「今日はみんないい買い物ができたな。読んだら感想聞かせてくれ。またな」
俺が軽く手を上げてから如月達に背を向けようとすると、妙に負荷がかかって振り返れない。すでにTシャツの裾をつままれていた。
俺、もう三回も「またな」って言ってるんだけど……。全然帰してくれない。
「ちょうどいい時間だから何か食べに行くわよ」
「えっと、妹さんは?」
「行きましょう」
妹さんのコミュ力も高いようだ。
さらに最近は気分が晴れやかだ。プライベートが充実しているからだろうか。会社の人気者の日向さんと夏祭りに行ったことが何だか信じられない。
充実しているといっても、相変わらず休日は一人で過ごすことが多いけど。そんな俺にとって世の中に、おひとりさま文化が広まりつつあるのはありがたい。一人は悪いことではないのだ。
もし俺の友達にイケメンモテ男子がいるとして、相談したら『さっさと告れ』と怒られるかもしれない。でも実際にいる俺の一番の親友は恋愛レベル1だ。
しかも日向さんからのメッセージ返信を心待ちにしている時に、ただ『酔ってる』という内容のクッソどうでもいいメッセージを、実に紛らわしいタイミングで送ってくるような奴だ。
レベル1がレベル1にアドバイスをもらっても何も変わらんだろう。それに誰かに相談したとして、結局のところどうするか決めるのは自分だ。
今日は休日。さすがに何もしないのはもったいない。まだ昼過ぎだ。とりあえず俺は本屋へ行くことにした。
俺は本はなるべく紙媒体で買うようにしている。もちろん電子書籍は電子書籍の良さがある。ただ俺は、紙のページをめくる時のワクワク感が好きなのだ。
まずはタウン情報誌のコーナーへと足を運ぶ。俺の行動範囲は広くない。だから本やテレビでの店舗情報などの情報収集は必要になる。
購入候補をいくつかピックアップし保留にしてからラノベコーナーへ。
新刊をチェックすると、面白そうなものがいくつかある。全部買うわけにもいかないので絵とタイトルで判断するしかない。
棚を一通り見て回っていると、横に人がいるので避けようとしてその人物を見た。それは如月だった。それともう一人、女性が一緒だ。
どうやら如月も俺に気がついたらしい。友達と一緒なので声をかけない方がいいと思った俺は、無言で去ろうとしたが目が合った。
さすがにそうなると無視できないので、あいさつしようとしたら如月から声をかけてきた。
「アンタもラノベを買いに来たの?」
「俺はとりあえず見に来たって感じだな。何か面白そうなものはあったか?」
「うーん、今のところは無いわね。アンタは何か見つけたの?」
「いくつかあったけど、どれを買うか悩むな」
「それなら全部買えばいいじゃない」
「そういうわけにもいかんだろ」
如月らしい暴論だが、ある意味正しいのかもしれない。如月の金銭感覚が分からん。よっぽどいい暮らしをしてるんだろうか。
「友達と来てるなら俺はこれで。またな」
俺が横を通り過ぎようとするとTシャツの裾をつままれた。
「この子は友達じゃないわよ」
「そうなのか?」
そんなこと言っていいのか如月。お互い友達だと思ってたのに、そう思ってたのは片方だけだったなんて悲しすぎるぞ。
「はじめまして。如月(きさらぎ)結瑠璃(ゆるり)といいます」
そう自己紹介した彼女は、黒いミディアムヘアをセンターで分けていて、背が高い。おそらく160センチ後半だろう。ややつり目なのは如月に似ている。凛とした印象の美人だ。
「お姉さんですか」
俺がそう言うと、すねに何かがぶつかった。
「いてっ! いつもすねを蹴るんじゃない!」
「どこをどう見ればそう見えるの? 『この子』って言ったでしょ。妹よ」
「なんとなく背が高い方が姉だと思うだろ」
「まあ、私もこの子と同じくらい若く見えるということね」
「それはそうだな」
「まっ、またアンタは平然と!」
「自分で言ったんじゃないか」
妹さんは不思議そうにこちらを見ている。普段の姉の姿と違うのだろうか。
「如月、妹さんもラノベ読むのか?」
「私が勧めたのよ。この子は元々マンガやアニメが好きではあったんだけどね」
「私が買いたいマンガがあったから、今日はお姉ちゃんに付き合ってもらったんです」
「そうなんですか。頼れるお姉ちゃんですね」
会社の同僚の妹との接し方なんて分からないぞ。困った時はとりあえず敬語で話していれば間違いはないだろう。
「邪魔したら悪いから俺はこれで。またな」
俺が背を向けて帰ろうとしたら、またもやTシャツの裾をつままれた。
「だからなんでアンタは帰ろうとするの」
「言葉そのままの理由なんだけど」
「せっかくなんだから本を選ぶの手伝ってよ」
「女性向けはあまり知らないから、戦力になるかは分からないぞ。それに妹さんの意見も聞いてみないと」
「私からもお願いしていいですか?」
お願いされたら協力するしかない。そして妹さんが買ったマンガは、異世界恋愛ものだった。イケメン貴族達が主人公の女の子にアプローチするという内容だ。男性向けなら、男主人公がかわいい女の子数人からアプローチされるのと同じこと。
それから俺と如月がラノベを一冊ずつ買って買い物が終わった。たいしたことはしてないけど、俺は如月と妹さんからお礼を言われた。
「今日はみんないい買い物ができたな。読んだら感想聞かせてくれ。またな」
俺が軽く手を上げてから如月達に背を向けようとすると、妙に負荷がかかって振り返れない。すでにTシャツの裾をつままれていた。
俺、もう三回も「またな」って言ってるんだけど……。全然帰してくれない。
「ちょうどいい時間だから何か食べに行くわよ」
「えっと、妹さんは?」
「行きましょう」
妹さんのコミュ力も高いようだ。
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