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第20話 帰り道
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如月の歓迎会が終わった。こういう時に決まって選択肢が現れる。『二次会に行くか行かないか』だ。俺はそこに『そもそも二次会なんて開かない』という選択肢がなぜ無いのか毎回不思議に思う。
なんとなく断りづらいので、俺は毎回飲み過ぎたことを理由に参加していない。
日向さんと如月に聞いてみたところ、二人とも参加しないと答えた。
全員が店の外に出たので俺達三人が帰ろうとすると、他の社員の声が聞こえてきた。
「如月さん、二次会行かないの?」
「俺もうちょっと如月さんと話したいわー」
「ねえ、如月さんも行こうよー」
男女それぞれが如月を二次会に誘っている。如月はコミュ力が高いから、それも納得できる。
「うぅ、もう! あんなに誘ってくれるなんて嬉しいじゃない!」
如月のコミュ力は高い。意図せず人の輪の中心になることもあるだろう。というか、もうすでに如月が中心になっているような気すらしてきた。
「やっぱり私は二次会に参加することにしたわ。二人ともまたね」
如月は俺達に手を振ると、「やっぱり参加するー!」と言いながら茶色がかったふわふわポニーテールを揺らしてみんなの所へ向かって行った。
二次会に参加するメンバーは主任をはじめ十人ほど。約50%の参加率だ。これは高いのではないだろうか。
俺と日向さんは「お疲れ様でした」と言ってから、二人で駅まで歩き出した。
(どうする、これは二人だけで二軒目に行こうか? でも日向さんはお酒が得意ではないし、食事ならもう済ませたし、うかつな事はできないし)
俺が脳をフル回転させていると、日向さんが俺に寄りかかってきた。髪が少し頬に触れるどころじゃない、肩と肩がぶつかるほどだ。
(マジかっ! これはまさか!)
「ごめんなさい! ちょっとフラついちゃいました」
そう言った日向さんはすぐに体勢を立て直したが、顔が赤くなっている。これは恥ずかしいのではなく酒に酔っている時の赤さだ。
見る限りそこまでフラついてるわけじゃないし、きちんと話ができているけど心配ではある。
「俺達も帰ろうか」
駅に着いた俺達は電車を待つ。まだ終電の時間ではないが俺と日向さんの家は逆方向だ。
でも日向さんと初めて二人で食事して映画を観た日、日向さんを送るために俺の家とは逆方向の終電に乗った。
なので日向さんは俺と家が近いと思ってるはず。当然今日も家の近くまで送るつもりだ。俺にはテレポートがあるし俺一人ならどうにでもなる。
電車が来たので俺達はなるべく周りに人がいない空席を探して隣同士で座った。
「日向さん、そんなにもお酒が得意じゃないんだね」
「あの量なら大丈夫だと思ったんですけどね」
「なんで得意じゃないものを飲もうと思ったの?」
「先輩が美味しそうに飲むのがいけないんですよ」
「俺のせい!?」
「そうです、先輩のせいです! だから私をしっかり家まで送ってください」
「始めからそのつもりだよ」
俺がそう言うと日向さんが俺に少しだけ体を寄せた。日向さんの髪が俺の頬に触れ、肩に心地よい重さがかかる。電車内の冷房では上がる体温を抑えきれないだろう。
最寄り駅に着くまで俺達はそのまま会話をすることは無かった。
同じ駅で電車を降りた俺達は日向さんの家の近くまで歩き出した。
やがて前回別れた場所に到着すると、俺は日向さんにこう言った。
「確か前はここで別れたよね。念のため家に着いたら連絡してくれるかな」
「いいえ、連絡はしません」
「なんで!?」
「最後まで付き合ってもらうからです」
「最後までって、家まで?」
「そうです。夜道を女の子一人で歩かせる気ですか?」
「そんなことはないよ!」
「それなら決まりですね!」
そう言ってフフン! と誇らしげに俺の前を歩き出した日向さん。だけどたまにフラついて格好がつかない様子に少し笑ってしまった。
ほんの3分ほどでマンションに到着すると、日向さんがマンションをバックに両手を広げて俺に向かってこう言った。
「どうですか! ここが私の家です!」
「やっぱりちょっと酔ってる?」
「酔ってませんっ! それよりもこの場所をしっかりと覚えていてくださいね」
「もちろん覚えたけど、なんで?」
「だってテレポートは行ったことがあってイメージできる場所じゃないとダメなんですよね」
「そうだね」
「これでもう私の家までテレポートで来られますね!」
「うん、いつでも行けるよ」
こうしてテレポートの行き先に日向さんの家が加わった。本当にゲームみたいだな。
俺は日向さんがお礼を言って中に入って行くのを見届けた後、逆方向の俺の家まで電車で帰ることにした。
日向さんは俺と家が近いと思っている。テレポートで帰るのは不自然だ。日向さんは魔法を察知できるから、すぐにバレてしまう。
俺が駅へと歩き出してすぐに日向さんからのメッセージが届いた。
『無事、部屋に着きました!』
律儀に報告してくれた日向さん。なんだか今日はこのまま終わらせたくなかった俺は、最寄り駅へと向かう電車の中で日向さんとメッセージのやり取りを続けたのだった。
なんとなく断りづらいので、俺は毎回飲み過ぎたことを理由に参加していない。
日向さんと如月に聞いてみたところ、二人とも参加しないと答えた。
全員が店の外に出たので俺達三人が帰ろうとすると、他の社員の声が聞こえてきた。
「如月さん、二次会行かないの?」
「俺もうちょっと如月さんと話したいわー」
「ねえ、如月さんも行こうよー」
男女それぞれが如月を二次会に誘っている。如月はコミュ力が高いから、それも納得できる。
「うぅ、もう! あんなに誘ってくれるなんて嬉しいじゃない!」
如月のコミュ力は高い。意図せず人の輪の中心になることもあるだろう。というか、もうすでに如月が中心になっているような気すらしてきた。
「やっぱり私は二次会に参加することにしたわ。二人ともまたね」
如月は俺達に手を振ると、「やっぱり参加するー!」と言いながら茶色がかったふわふわポニーテールを揺らしてみんなの所へ向かって行った。
二次会に参加するメンバーは主任をはじめ十人ほど。約50%の参加率だ。これは高いのではないだろうか。
俺と日向さんは「お疲れ様でした」と言ってから、二人で駅まで歩き出した。
(どうする、これは二人だけで二軒目に行こうか? でも日向さんはお酒が得意ではないし、食事ならもう済ませたし、うかつな事はできないし)
俺が脳をフル回転させていると、日向さんが俺に寄りかかってきた。髪が少し頬に触れるどころじゃない、肩と肩がぶつかるほどだ。
(マジかっ! これはまさか!)
「ごめんなさい! ちょっとフラついちゃいました」
そう言った日向さんはすぐに体勢を立て直したが、顔が赤くなっている。これは恥ずかしいのではなく酒に酔っている時の赤さだ。
見る限りそこまでフラついてるわけじゃないし、きちんと話ができているけど心配ではある。
「俺達も帰ろうか」
駅に着いた俺達は電車を待つ。まだ終電の時間ではないが俺と日向さんの家は逆方向だ。
でも日向さんと初めて二人で食事して映画を観た日、日向さんを送るために俺の家とは逆方向の終電に乗った。
なので日向さんは俺と家が近いと思ってるはず。当然今日も家の近くまで送るつもりだ。俺にはテレポートがあるし俺一人ならどうにでもなる。
電車が来たので俺達はなるべく周りに人がいない空席を探して隣同士で座った。
「日向さん、そんなにもお酒が得意じゃないんだね」
「あの量なら大丈夫だと思ったんですけどね」
「なんで得意じゃないものを飲もうと思ったの?」
「先輩が美味しそうに飲むのがいけないんですよ」
「俺のせい!?」
「そうです、先輩のせいです! だから私をしっかり家まで送ってください」
「始めからそのつもりだよ」
俺がそう言うと日向さんが俺に少しだけ体を寄せた。日向さんの髪が俺の頬に触れ、肩に心地よい重さがかかる。電車内の冷房では上がる体温を抑えきれないだろう。
最寄り駅に着くまで俺達はそのまま会話をすることは無かった。
同じ駅で電車を降りた俺達は日向さんの家の近くまで歩き出した。
やがて前回別れた場所に到着すると、俺は日向さんにこう言った。
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「いいえ、連絡はしません」
「なんで!?」
「最後まで付き合ってもらうからです」
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「そうです。夜道を女の子一人で歩かせる気ですか?」
「そんなことはないよ!」
「それなら決まりですね!」
そう言ってフフン! と誇らしげに俺の前を歩き出した日向さん。だけどたまにフラついて格好がつかない様子に少し笑ってしまった。
ほんの3分ほどでマンションに到着すると、日向さんがマンションをバックに両手を広げて俺に向かってこう言った。
「どうですか! ここが私の家です!」
「やっぱりちょっと酔ってる?」
「酔ってませんっ! それよりもこの場所をしっかりと覚えていてくださいね」
「もちろん覚えたけど、なんで?」
「だってテレポートは行ったことがあってイメージできる場所じゃないとダメなんですよね」
「そうだね」
「これでもう私の家までテレポートで来られますね!」
「うん、いつでも行けるよ」
こうしてテレポートの行き先に日向さんの家が加わった。本当にゲームみたいだな。
俺は日向さんがお礼を言って中に入って行くのを見届けた後、逆方向の俺の家まで電車で帰ることにした。
日向さんは俺と家が近いと思っている。テレポートで帰るのは不自然だ。日向さんは魔法を察知できるから、すぐにバレてしまう。
俺が駅へと歩き出してすぐに日向さんからのメッセージが届いた。
『無事、部屋に着きました!』
律儀に報告してくれた日向さん。なんだか今日はこのまま終わらせたくなかった俺は、最寄り駅へと向かう電車の中で日向さんとメッセージのやり取りを続けたのだった。
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