18 / 58
第18話 飲み会はチャンス
しおりを挟む
如月の歓迎会が始まってから1時間ほど経った。そろそろ行動力の数値が高い人達が席を離れて自由に移動し始める頃だ。
会社の飲み会はけっこう出会いのきっかけになるようで、うちの会社にもそれで結婚までいった人達が何組かいると聞いたことがある。
そして俺が懸念していた事態が起きた。遠くの席に居た男性社員がこっちに向かって来たかと思うと、日向さんの右隣に半ばムリやり座って日向さんに話しかけてきたのだった。
「あのー、すみません、日向さんですよね?」
明らかに20代前半だろう。イケメンなことに加え、黒髪ツーブロックであることによりさらに清潔感にブーストがかかっている。
俺も顔は知っているんだけど、仕事での関わりが無いため名前も分からない。
「僕、何度か日向さんと話したことがあるんですけど覚えてますか?」
「はい、覚えてますよ」
飲み会なので周りが騒がしいけど、さすがに隣に居れば嫌でも会話が聞こえてくる。
「もうずいぶん前の話なのに覚えててくれて良かったです」
そうなんだよ、日向さんって会話をよく覚えてるんだよな。俺はコーヒーはあまり飲まなくて炭酸が好きとか、いわばどうでもいい情報なのに。
「それであの時の話なんですけど——」
「ごめんなさい! お話したことは覚えてるんですけど、内容までは思い出せないかも」
あー、これは恥ずかしいパターンだ。お互いの熱量が違うから、男は内容まで覚えてるけど女の子はそこまでは覚えてないっていう。
名乗らないのも彼の中ではもう知り合いになっているからなのだろう。
日向さんにとってはいろんな男性社員から話しかけられることは日常茶飯事なんだろうな。話の内容までは覚えてられないよ。
「そうですよね、かなり前のことですからね。全然気にしないで下さい」
それでもイケメン君(仮)はめげずに日向さんに話しかける。
「あの時はお酒の話になったんですよ」
ここで俺の勘が働いた。イケメン君は日向さんをデートに誘おうとしている。
もちろん根拠は無いけどそうでないなら、わざわざ日向さんに話しかけに来る理由が無いだろう。
でももしそうだとして、俺がそれを遮っていいのか? 同じ会社だから少なくとも、どこの誰だか分からないということはない。
だけど同じ会社だからこそ、相手が誰であれ確執が生まれるのは避けたい。
そういえば如月はどうしているんだと思い左隣を見ると如月の姿は無く、ただの空間だった。しかも数人分も空いている。
(いねぇし!)
その向こうに如月は居た。周りには男性社員が何人かおり、まるで逆ハーレムのようだ。
そうだ忘れていた、如月も容姿端麗でかわいいのだ。さらに俺以外への対応は丁寧なため、さぞかしいい子に見えることだろうな。
周りに女性社員もいるし大丈夫だろう。それに如月だし。変なことにはならないはず。
再び日向さんに目を向けると、イケメン君との会話が続いていた。
「——そうなんですね、お酒ってそんなにも種類があるんですか」
「そうなんですよ! 僕、今カクテルにハマっていまして!」
イケメン君のテンションが上がったと同時に日向さんが俺の方に体を寄せてきた。ストレートロングの黒髪が俺の頬に少しだけ触れる。
そして俺は決めた。『話を遮ろう』と。かといって「この子に手を出すな!」なんて方法は取れない。よし、イケメン君と友達になろう。
話に少し間が空いた隙を見計らって俺はイケメン君にも聞こえるように日向さんに話しかけた。
「日向さん、グラスが空いてるけど何か頼もうか? 確かお酒は飲めないんだよね。ウーロン茶以外だとジュースもかなり種類があるよ」
俺がそう言うと日向さんがこっちを見て元気よくこう言った。
「私、ウーロン茶が好きなのでウーロン茶をお願いします!」
俺はすかさずイケメン君に向かって話しかけた。相手が誰であれ初対面のため敬語だ。
「何か飲みますか? 一緒に注文しますよ」
「じゃ、じゃあ僕もウーロン茶で」
(カクテルじゃないんかい!)
俺はタッチパネルでウーロン茶を3つ注文した。さらに俺は間髪入れずにイケメン君に話しかけた。
「こうやって話すのは初めてですよね。フロアが広いと顔だけ知ってるという人が多くなりますよね」
話題のすり替えである。あとはイケメン君が乗ってくれるかどうかだが。
「そうですよね。僕もそう思います。確か日向さんの隣の席の方ですよね?」
意外なことにイケメン君から話を膨らませてきてくれた。
「よく知ってますね、そうなんですよ。一応、先輩やってます。せっかくの機会なんで別のチームの話を聞いてみたいですね。例えばウチのチームの話なんですけど——」
俺はちょっとした笑い話を交えつつ、日向さんと三人でお互いのチームの話をした。
見る限りイケメン君が怒っている様子は無い。イケメン君からすれば日向さんと会話ができて、より覚えてもらえて良かったと思うんだけど、どうだろう。
少し強引だったかもしれないが、イケメン君とちょっと仲良くなった。全部俺の妄想かもしれないし、邪魔する権利なんてないけど、日向さんが困っている姿を見たくない気持ちの方が強かったんだ。
会社の飲み会はけっこう出会いのきっかけになるようで、うちの会社にもそれで結婚までいった人達が何組かいると聞いたことがある。
そして俺が懸念していた事態が起きた。遠くの席に居た男性社員がこっちに向かって来たかと思うと、日向さんの右隣に半ばムリやり座って日向さんに話しかけてきたのだった。
「あのー、すみません、日向さんですよね?」
明らかに20代前半だろう。イケメンなことに加え、黒髪ツーブロックであることによりさらに清潔感にブーストがかかっている。
俺も顔は知っているんだけど、仕事での関わりが無いため名前も分からない。
「僕、何度か日向さんと話したことがあるんですけど覚えてますか?」
「はい、覚えてますよ」
飲み会なので周りが騒がしいけど、さすがに隣に居れば嫌でも会話が聞こえてくる。
「もうずいぶん前の話なのに覚えててくれて良かったです」
そうなんだよ、日向さんって会話をよく覚えてるんだよな。俺はコーヒーはあまり飲まなくて炭酸が好きとか、いわばどうでもいい情報なのに。
「それであの時の話なんですけど——」
「ごめんなさい! お話したことは覚えてるんですけど、内容までは思い出せないかも」
あー、これは恥ずかしいパターンだ。お互いの熱量が違うから、男は内容まで覚えてるけど女の子はそこまでは覚えてないっていう。
名乗らないのも彼の中ではもう知り合いになっているからなのだろう。
日向さんにとってはいろんな男性社員から話しかけられることは日常茶飯事なんだろうな。話の内容までは覚えてられないよ。
「そうですよね、かなり前のことですからね。全然気にしないで下さい」
それでもイケメン君(仮)はめげずに日向さんに話しかける。
「あの時はお酒の話になったんですよ」
ここで俺の勘が働いた。イケメン君は日向さんをデートに誘おうとしている。
もちろん根拠は無いけどそうでないなら、わざわざ日向さんに話しかけに来る理由が無いだろう。
でももしそうだとして、俺がそれを遮っていいのか? 同じ会社だから少なくとも、どこの誰だか分からないということはない。
だけど同じ会社だからこそ、相手が誰であれ確執が生まれるのは避けたい。
そういえば如月はどうしているんだと思い左隣を見ると如月の姿は無く、ただの空間だった。しかも数人分も空いている。
(いねぇし!)
その向こうに如月は居た。周りには男性社員が何人かおり、まるで逆ハーレムのようだ。
そうだ忘れていた、如月も容姿端麗でかわいいのだ。さらに俺以外への対応は丁寧なため、さぞかしいい子に見えることだろうな。
周りに女性社員もいるし大丈夫だろう。それに如月だし。変なことにはならないはず。
再び日向さんに目を向けると、イケメン君との会話が続いていた。
「——そうなんですね、お酒ってそんなにも種類があるんですか」
「そうなんですよ! 僕、今カクテルにハマっていまして!」
イケメン君のテンションが上がったと同時に日向さんが俺の方に体を寄せてきた。ストレートロングの黒髪が俺の頬に少しだけ触れる。
そして俺は決めた。『話を遮ろう』と。かといって「この子に手を出すな!」なんて方法は取れない。よし、イケメン君と友達になろう。
話に少し間が空いた隙を見計らって俺はイケメン君にも聞こえるように日向さんに話しかけた。
「日向さん、グラスが空いてるけど何か頼もうか? 確かお酒は飲めないんだよね。ウーロン茶以外だとジュースもかなり種類があるよ」
俺がそう言うと日向さんがこっちを見て元気よくこう言った。
「私、ウーロン茶が好きなのでウーロン茶をお願いします!」
俺はすかさずイケメン君に向かって話しかけた。相手が誰であれ初対面のため敬語だ。
「何か飲みますか? 一緒に注文しますよ」
「じゃ、じゃあ僕もウーロン茶で」
(カクテルじゃないんかい!)
俺はタッチパネルでウーロン茶を3つ注文した。さらに俺は間髪入れずにイケメン君に話しかけた。
「こうやって話すのは初めてですよね。フロアが広いと顔だけ知ってるという人が多くなりますよね」
話題のすり替えである。あとはイケメン君が乗ってくれるかどうかだが。
「そうですよね。僕もそう思います。確か日向さんの隣の席の方ですよね?」
意外なことにイケメン君から話を膨らませてきてくれた。
「よく知ってますね、そうなんですよ。一応、先輩やってます。せっかくの機会なんで別のチームの話を聞いてみたいですね。例えばウチのチームの話なんですけど——」
俺はちょっとした笑い話を交えつつ、日向さんと三人でお互いのチームの話をした。
見る限りイケメン君が怒っている様子は無い。イケメン君からすれば日向さんと会話ができて、より覚えてもらえて良かったと思うんだけど、どうだろう。
少し強引だったかもしれないが、イケメン君とちょっと仲良くなった。全部俺の妄想かもしれないし、邪魔する権利なんてないけど、日向さんが困っている姿を見たくない気持ちの方が強かったんだ。
120
お気に入りに追加
584
あなたにおすすめの小説

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる