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第18話 飲み会はチャンス
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如月の歓迎会が始まってから1時間ほど経った。そろそろ行動力の数値が高い人達が席を離れて自由に移動し始める頃だ。
会社の飲み会はけっこう出会いのきっかけになるようで、うちの会社にもそれで結婚までいった人達が何組かいると聞いたことがある。
そして俺が懸念していた事態が起きた。遠くの席に居た男性社員がこっちに向かって来たかと思うと、日向さんの右隣に半ばムリやり座って日向さんに話しかけてきたのだった。
「あのー、すみません、日向さんですよね?」
明らかに20代前半だろう。イケメンなことに加え、黒髪ツーブロックであることによりさらに清潔感にブーストがかかっている。
俺も顔は知っているんだけど、仕事での関わりが無いため名前も分からない。
「僕、何度か日向さんと話したことがあるんですけど覚えてますか?」
「はい、覚えてますよ」
飲み会なので周りが騒がしいけど、さすがに隣に居れば嫌でも会話が聞こえてくる。
「もうずいぶん前の話なのに覚えててくれて良かったです」
そうなんだよ、日向さんって会話をよく覚えてるんだよな。俺はコーヒーはあまり飲まなくて炭酸が好きとか、いわばどうでもいい情報なのに。
「それであの時の話なんですけど——」
「ごめんなさい! お話したことは覚えてるんですけど、内容までは思い出せないかも」
あー、これは恥ずかしいパターンだ。お互いの熱量が違うから、男は内容まで覚えてるけど女の子はそこまでは覚えてないっていう。
名乗らないのも彼の中ではもう知り合いになっているからなのだろう。
日向さんにとってはいろんな男性社員から話しかけられることは日常茶飯事なんだろうな。話の内容までは覚えてられないよ。
「そうですよね、かなり前のことですからね。全然気にしないで下さい」
それでもイケメン君(仮)はめげずに日向さんに話しかける。
「あの時はお酒の話になったんですよ」
ここで俺の勘が働いた。イケメン君は日向さんをデートに誘おうとしている。
もちろん根拠は無いけどそうでないなら、わざわざ日向さんに話しかけに来る理由が無いだろう。
でももしそうだとして、俺がそれを遮っていいのか? 同じ会社だから少なくとも、どこの誰だか分からないということはない。
だけど同じ会社だからこそ、相手が誰であれ確執が生まれるのは避けたい。
そういえば如月はどうしているんだと思い左隣を見ると如月の姿は無く、ただの空間だった。しかも数人分も空いている。
(いねぇし!)
その向こうに如月は居た。周りには男性社員が何人かおり、まるで逆ハーレムのようだ。
そうだ忘れていた、如月も容姿端麗でかわいいのだ。さらに俺以外への対応は丁寧なため、さぞかしいい子に見えることだろうな。
周りに女性社員もいるし大丈夫だろう。それに如月だし。変なことにはならないはず。
再び日向さんに目を向けると、イケメン君との会話が続いていた。
「——そうなんですね、お酒ってそんなにも種類があるんですか」
「そうなんですよ! 僕、今カクテルにハマっていまして!」
イケメン君のテンションが上がったと同時に日向さんが俺の方に体を寄せてきた。ストレートロングの黒髪が俺の頬に少しだけ触れる。
そして俺は決めた。『話を遮ろう』と。かといって「この子に手を出すな!」なんて方法は取れない。よし、イケメン君と友達になろう。
話に少し間が空いた隙を見計らって俺はイケメン君にも聞こえるように日向さんに話しかけた。
「日向さん、グラスが空いてるけど何か頼もうか? 確かお酒は飲めないんだよね。ウーロン茶以外だとジュースもかなり種類があるよ」
俺がそう言うと日向さんがこっちを見て元気よくこう言った。
「私、ウーロン茶が好きなのでウーロン茶をお願いします!」
俺はすかさずイケメン君に向かって話しかけた。相手が誰であれ初対面のため敬語だ。
「何か飲みますか? 一緒に注文しますよ」
「じゃ、じゃあ僕もウーロン茶で」
(カクテルじゃないんかい!)
俺はタッチパネルでウーロン茶を3つ注文した。さらに俺は間髪入れずにイケメン君に話しかけた。
「こうやって話すのは初めてですよね。フロアが広いと顔だけ知ってるという人が多くなりますよね」
話題のすり替えである。あとはイケメン君が乗ってくれるかどうかだが。
「そうですよね。僕もそう思います。確か日向さんの隣の席の方ですよね?」
意外なことにイケメン君から話を膨らませてきてくれた。
「よく知ってますね、そうなんですよ。一応、先輩やってます。せっかくの機会なんで別のチームの話を聞いてみたいですね。例えばウチのチームの話なんですけど——」
俺はちょっとした笑い話を交えつつ、日向さんと三人でお互いのチームの話をした。
見る限りイケメン君が怒っている様子は無い。イケメン君からすれば日向さんと会話ができて、より覚えてもらえて良かったと思うんだけど、どうだろう。
少し強引だったかもしれないが、イケメン君とちょっと仲良くなった。全部俺の妄想かもしれないし、邪魔する権利なんてないけど、日向さんが困っている姿を見たくない気持ちの方が強かったんだ。
会社の飲み会はけっこう出会いのきっかけになるようで、うちの会社にもそれで結婚までいった人達が何組かいると聞いたことがある。
そして俺が懸念していた事態が起きた。遠くの席に居た男性社員がこっちに向かって来たかと思うと、日向さんの右隣に半ばムリやり座って日向さんに話しかけてきたのだった。
「あのー、すみません、日向さんですよね?」
明らかに20代前半だろう。イケメンなことに加え、黒髪ツーブロックであることによりさらに清潔感にブーストがかかっている。
俺も顔は知っているんだけど、仕事での関わりが無いため名前も分からない。
「僕、何度か日向さんと話したことがあるんですけど覚えてますか?」
「はい、覚えてますよ」
飲み会なので周りが騒がしいけど、さすがに隣に居れば嫌でも会話が聞こえてくる。
「もうずいぶん前の話なのに覚えててくれて良かったです」
そうなんだよ、日向さんって会話をよく覚えてるんだよな。俺はコーヒーはあまり飲まなくて炭酸が好きとか、いわばどうでもいい情報なのに。
「それであの時の話なんですけど——」
「ごめんなさい! お話したことは覚えてるんですけど、内容までは思い出せないかも」
あー、これは恥ずかしいパターンだ。お互いの熱量が違うから、男は内容まで覚えてるけど女の子はそこまでは覚えてないっていう。
名乗らないのも彼の中ではもう知り合いになっているからなのだろう。
日向さんにとってはいろんな男性社員から話しかけられることは日常茶飯事なんだろうな。話の内容までは覚えてられないよ。
「そうですよね、かなり前のことですからね。全然気にしないで下さい」
それでもイケメン君(仮)はめげずに日向さんに話しかける。
「あの時はお酒の話になったんですよ」
ここで俺の勘が働いた。イケメン君は日向さんをデートに誘おうとしている。
もちろん根拠は無いけどそうでないなら、わざわざ日向さんに話しかけに来る理由が無いだろう。
でももしそうだとして、俺がそれを遮っていいのか? 同じ会社だから少なくとも、どこの誰だか分からないということはない。
だけど同じ会社だからこそ、相手が誰であれ確執が生まれるのは避けたい。
そういえば如月はどうしているんだと思い左隣を見ると如月の姿は無く、ただの空間だった。しかも数人分も空いている。
(いねぇし!)
その向こうに如月は居た。周りには男性社員が何人かおり、まるで逆ハーレムのようだ。
そうだ忘れていた、如月も容姿端麗でかわいいのだ。さらに俺以外への対応は丁寧なため、さぞかしいい子に見えることだろうな。
周りに女性社員もいるし大丈夫だろう。それに如月だし。変なことにはならないはず。
再び日向さんに目を向けると、イケメン君との会話が続いていた。
「——そうなんですね、お酒ってそんなにも種類があるんですか」
「そうなんですよ! 僕、今カクテルにハマっていまして!」
イケメン君のテンションが上がったと同時に日向さんが俺の方に体を寄せてきた。ストレートロングの黒髪が俺の頬に少しだけ触れる。
そして俺は決めた。『話を遮ろう』と。かといって「この子に手を出すな!」なんて方法は取れない。よし、イケメン君と友達になろう。
話に少し間が空いた隙を見計らって俺はイケメン君にも聞こえるように日向さんに話しかけた。
「日向さん、グラスが空いてるけど何か頼もうか? 確かお酒は飲めないんだよね。ウーロン茶以外だとジュースもかなり種類があるよ」
俺がそう言うと日向さんがこっちを見て元気よくこう言った。
「私、ウーロン茶が好きなのでウーロン茶をお願いします!」
俺はすかさずイケメン君に向かって話しかけた。相手が誰であれ初対面のため敬語だ。
「何か飲みますか? 一緒に注文しますよ」
「じゃ、じゃあ僕もウーロン茶で」
(カクテルじゃないんかい!)
俺はタッチパネルでウーロン茶を3つ注文した。さらに俺は間髪入れずにイケメン君に話しかけた。
「こうやって話すのは初めてですよね。フロアが広いと顔だけ知ってるという人が多くなりますよね」
話題のすり替えである。あとはイケメン君が乗ってくれるかどうかだが。
「そうですよね。僕もそう思います。確か日向さんの隣の席の方ですよね?」
意外なことにイケメン君から話を膨らませてきてくれた。
「よく知ってますね、そうなんですよ。一応、先輩やってます。せっかくの機会なんで別のチームの話を聞いてみたいですね。例えばウチのチームの話なんですけど——」
俺はちょっとした笑い話を交えつつ、日向さんと三人でお互いのチームの話をした。
見る限りイケメン君が怒っている様子は無い。イケメン君からすれば日向さんと会話ができて、より覚えてもらえて良かったと思うんだけど、どうだろう。
少し強引だったかもしれないが、イケメン君とちょっと仲良くなった。全部俺の妄想かもしれないし、邪魔する権利なんてないけど、日向さんが困っている姿を見たくない気持ちの方が強かったんだ。
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