2 / 4
1.外に出よう!
しおりを挟む
「魔人の項目……魔人の項目……」
私は今、研究施設の図書館にて魔人の本を探している。私自身が知り得る魔人の知識など雀の涙程だ。魔法にばかり目を向けてきたせいだ。
「あった!」
見つけるとすぐさま手に取り、1番近くにある椅子に座り本を開く。目次や前書きなどと言ったどうでもいいのをすっ飛ばし、目的の所を読む。
種族名:魔人
概要:どういった経緯で生まれるのか、またどこで生しているのか、何も分かっていない。謎に包まれた種族である。目撃情報の殆どが人型で、若干浅黒いという外見は共通されているようだ。
彼らの特徴としては、第一に膨大な魔力の量が挙げられる。一般的な魔術師の魔力量を10とすると彼らの魔力量はおよそ10000だと言われる。
「……」
私はそこまで読むと、まだ長々と続くこの解説書を閉じた。そしておもむろに立ち上がり大きく息を吸い込む。
「やったーーー!!!!!」
おそらく、今まで生きてきてこんなに大声をだして叫んだのは初めてだと思う。
「やったやったやったやったーー!!!!」
本当に心からの叫びだった。まるで小さな頃に戻ったかのように、腹の底から嬉しさを声に出していた。
「これでまだまだ研究できる!!!!」
これに尽きるのである。さっきの解説書通りだとすると、魔力量が1000倍になったのだ。今まで魔力不足で出来なかった実験などまたやりたい放題なのだ。
「楽しくなってきたあああああ!!!」
もはややる気に満ち溢れ、うちから湧いてくる熱い衝動を抑えられない。
よく考えてみれば魔人の兆候はあったのかも知らない。あり得ない時期の魔力量増大や、妙に身体が軽くなったりだとか……。
とにかく私は既に研究をするき満々なのだ。
図書館の扉を勢いよくあけ、閉めるのも忘れて研究室へ向かう。
「うおおおおおおお!!!!」
体が若返ったせいか、精神も若い頃に戻ったように感じる。雄叫びをあげるのは若者の特権である。
そして研究室の前にたどり着いた。
私はまたもや急いで扉を開け、そこら中に積み重ねられた資料や本を片っ端からのぞいていく。さて、どんな研究を始めてやろうか。魔力量が1番必要なのは詠唱魔法だ、こいつをさらに昇華させてやろうか……。
などと考えていたが、私はふと思い立った。
「外に出ればいいのでは……?」
そう、この部屋にある資料たちはもう随分と前のものだ。そんな所からただ魔力量が増えただけで出来る研究など、たかが知れてるだろう。
それに比べて、外はどうだ。もはやこんな資料たちでは考えもつかないような知識だらけに違いない。
そうと決まると、私はすぐさま支度を始めた。
まず、この角を隠すために大きめのフードを被った。そして浅黒い肌、魔紋を隠すためにこれまた少し大きめの、暗い色のローブを羽織る。
私の若い頃は、研究者らしく筋肉などは無いし身長も大きくなかった。そのせいか、改めて鏡で自分を見てみるとまるで子供のようだ。
特に、この大きなフードがそう見させている。
「学会で舐められないだろうか……」
若干の不安が残りつつも、私の支度をする手が止まる事は無かった。それほど、私はワクワクしていたのだ。
ある程度の荷物をリュックの中に入れた。
金貨10枚、これである程度は生活出来るはずだ。宿に半年は泊まれる額だったはず。
小さなナイフ、旅といえばナイフと相場が決まっているのだ。それにこれは母の形見だ。離す訳にはいかない。
少しの食料、魔人になってから気が付いたのだが食事が殆ど必要なくなったのだ。おそらく、人間では無いからだろう。
これだけの荷物を持ち、私はこの研究施設を後にすべく立ち上がった。
「…………おさらばか」
思い入れのある施設だ。
ただ研究をするだけでは無かった。挫折もあったし、喜びもあった。ここには心がこもっていた。
「ありがとう、帰ってくるから、待っていてくれ」
私はそう言い残し、ここに初めて入ってきて以来触れていない外への扉に手をかけた。
私は今、研究施設の図書館にて魔人の本を探している。私自身が知り得る魔人の知識など雀の涙程だ。魔法にばかり目を向けてきたせいだ。
「あった!」
見つけるとすぐさま手に取り、1番近くにある椅子に座り本を開く。目次や前書きなどと言ったどうでもいいのをすっ飛ばし、目的の所を読む。
種族名:魔人
概要:どういった経緯で生まれるのか、またどこで生しているのか、何も分かっていない。謎に包まれた種族である。目撃情報の殆どが人型で、若干浅黒いという外見は共通されているようだ。
彼らの特徴としては、第一に膨大な魔力の量が挙げられる。一般的な魔術師の魔力量を10とすると彼らの魔力量はおよそ10000だと言われる。
「……」
私はそこまで読むと、まだ長々と続くこの解説書を閉じた。そしておもむろに立ち上がり大きく息を吸い込む。
「やったーーー!!!!!」
おそらく、今まで生きてきてこんなに大声をだして叫んだのは初めてだと思う。
「やったやったやったやったーー!!!!」
本当に心からの叫びだった。まるで小さな頃に戻ったかのように、腹の底から嬉しさを声に出していた。
「これでまだまだ研究できる!!!!」
これに尽きるのである。さっきの解説書通りだとすると、魔力量が1000倍になったのだ。今まで魔力不足で出来なかった実験などまたやりたい放題なのだ。
「楽しくなってきたあああああ!!!」
もはややる気に満ち溢れ、うちから湧いてくる熱い衝動を抑えられない。
よく考えてみれば魔人の兆候はあったのかも知らない。あり得ない時期の魔力量増大や、妙に身体が軽くなったりだとか……。
とにかく私は既に研究をするき満々なのだ。
図書館の扉を勢いよくあけ、閉めるのも忘れて研究室へ向かう。
「うおおおおおおお!!!!」
体が若返ったせいか、精神も若い頃に戻ったように感じる。雄叫びをあげるのは若者の特権である。
そして研究室の前にたどり着いた。
私はまたもや急いで扉を開け、そこら中に積み重ねられた資料や本を片っ端からのぞいていく。さて、どんな研究を始めてやろうか。魔力量が1番必要なのは詠唱魔法だ、こいつをさらに昇華させてやろうか……。
などと考えていたが、私はふと思い立った。
「外に出ればいいのでは……?」
そう、この部屋にある資料たちはもう随分と前のものだ。そんな所からただ魔力量が増えただけで出来る研究など、たかが知れてるだろう。
それに比べて、外はどうだ。もはやこんな資料たちでは考えもつかないような知識だらけに違いない。
そうと決まると、私はすぐさま支度を始めた。
まず、この角を隠すために大きめのフードを被った。そして浅黒い肌、魔紋を隠すためにこれまた少し大きめの、暗い色のローブを羽織る。
私の若い頃は、研究者らしく筋肉などは無いし身長も大きくなかった。そのせいか、改めて鏡で自分を見てみるとまるで子供のようだ。
特に、この大きなフードがそう見させている。
「学会で舐められないだろうか……」
若干の不安が残りつつも、私の支度をする手が止まる事は無かった。それほど、私はワクワクしていたのだ。
ある程度の荷物をリュックの中に入れた。
金貨10枚、これである程度は生活出来るはずだ。宿に半年は泊まれる額だったはず。
小さなナイフ、旅といえばナイフと相場が決まっているのだ。それにこれは母の形見だ。離す訳にはいかない。
少しの食料、魔人になってから気が付いたのだが食事が殆ど必要なくなったのだ。おそらく、人間では無いからだろう。
これだけの荷物を持ち、私はこの研究施設を後にすべく立ち上がった。
「…………おさらばか」
思い入れのある施設だ。
ただ研究をするだけでは無かった。挫折もあったし、喜びもあった。ここには心がこもっていた。
「ありがとう、帰ってくるから、待っていてくれ」
私はそう言い残し、ここに初めて入ってきて以来触れていない外への扉に手をかけた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
angel observer
蒼上愛三(あおうえあいみ)
ファンタジー
2997年、世界は崩壊し人類は進化した種と、退化した種に二分化している。その世界に辛うじて存在している少女ヒルデ、彼女には、産まれた場所も両親の記憶もない。ただ記憶しているのは、自らが悪魔であることだけだった。しかし、この世界に存在し続けるためには、人間に信仰あるいは恐れられる必要があったのだ。進化した種は、欲という概念を探求という概念に転換して行きまた、退化した種は、理性を捨てただ本能的欲求を満たすためだけに存在していた。そのため、ヒルデの存在理由が徐々に失われつつあった。そんなある日ヒルデは、崩れ去ったコロシアムの真ん中に一つの洋ドアがそびえ立っているのを発見する。ヒルデがそのドアを開けるとそこは2019年の日本のとある事務所であった。そこには、一人の男が昼寝をしていた、彼の名は、若田利彦。寝起き開口一番の言葉は、「天使を観測してくれないか」であった。日本の抱える自然災害は、天使による人類削減のための審判だった。ヒルデは未来を変えるため、人類を救うため、若田利彦と天使を観測することを決意する。
転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。
まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。
温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。
異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか?
魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。
平民なんですがもしかして私って聖女候補?
脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか?
常に何処かで大食いバトルが開催中!
登場人物ほぼ甘党!
ファンタジー要素薄め!?かもしれない?
母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥
◇◇◇◇
現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。
しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい!
転生もふもふのスピンオフ!
アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で…
母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される
こちらもよろしくお願いします。
転生したらチートスライムになりまして。~前世の前世も悲惨だった事を思い出したので三周目の人生はモンスター生活を満喫します~
As-me.com
ファンタジー
サレーナの人生はツラく悲惨なものだった。
自分を虐げる美しい姉と両親。さらにはそんな姉に罪を擦り付けられて家から追放されたサレーナだったが、森の奥でモンスターに食べられてしまい絶命してしまう。
……ん?なんかおかしくない?どうなってるの、これーっ?!
※この作品は一部【本編・スピンオフ完結】婚約者を断捨離しよう!~バカな子ほど可愛いとは言いますけれど、我慢の限界です~の番外編とリンクしております。
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる