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一章

プロローグ 私は魔法が嫌いだ

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私の生まれは魔女の里だ。
里の全員が魔女だ。
魔女は多種多様な魔法を操り、人々に幸せをもたらし、世の中に平和を持たらすことができる人のことを言う。
だから私は魔女も魔法が大好きだ。
いつか自分も魔法を使えるようになって、誰かの役に立つことができるんだと、本気で思っていた。
しかし現実はそうじゃなかった。
二人のお母さんも、四人いるおばあちゃんも、お姉ちゃんも、妹も、みんな魔女だ。
でも私は違う。
私だけ魔法が使えないんだ。
私に魔法を扱うことのできる力は顕現しなかった。
お母さんも私の力が顕現しないことを心配して、いろいろと検査をしてくれた。
しかしそれでも原因はつかめなかった。
お母さんが言うには私には魔力というものはあるらしい。
魔力は魔法を顕現させるための力の量の単位のことである。
「そんなの...いらない!魔法が使えないなら、全部いらない!!」
私はその日、家を飛び出した。
里を抜けて、一心不乱に森の中を走った。
走って、走って、走って、走った。
崖があった。
「はは...」
私は乾いた笑みを浮かべて、崖のほうへと近づいた。
ここで死んだら、私は解放される。
そう思って、崖の中に飛び込んだ。
訪れる浮遊感に、高揚感さえ覚えた。
しかし
「【アリヴェーラ】」
その一言で、私の体は落ちることをやめた。
宙に浮かんだまま静止したのだ。
私はお母さんかおばあちゃんの誰かが止めに来たのだと思った。
しかし家族の誰でもなかった。
黒いとんがり帽子に、銀の長い髪、黒のローブに身をまとった魔女だった。
「こんなところになんで君みたいな子供がいるの?」
「・・・」
その魔女は尋ねてきた。
「自殺か。君はなんとも無意味なことをするね」
「なんで止めるの?」
「意味なんてないよ。ただ人が目の前で死ぬのを見過ごせないだけ」
「離して。死なせてよ」
「それは無理。でもその代わりに話くらいなら聞いてあげる」
「話したら、死なせてくれるの?」
「それは私が決めることじゃない」
「・・・魔法が使えないの」
話してみたくなった。
この人は私の話を適当にうなずいて、聞いているだけ。
うんうんと私の話を聞き流して、話が終わるのを待っていた。
「君、魔法が嫌いなの?」
「うん」
「いいね。私の弟子になる気はない?」
魔女が私の手を握った。
とても冷たくて、まるで人間の手ではないようだった。
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