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「っていうかさ、さっきから見つめ合いすぎなんじゃないの?あれから何分たったと思ってるんだよ!」
「いくら婚約してるからって、その距離はどうかと思いますよ。」
「さっ、邪魔者は帰りますよー。」
ぶつくさと文句を垂れる幼馴染のルークとウィリアムが、セレナに引きずられていくのを横目で見やる。
魔法が解けたあの日と同じ中庭の四阿で、リリアーナを見つめる。
これまでなら自分の立場を弁え、自重するところだが、今はそんなことどうでもいい。
目の前に座る、愛しい婚約者から目を離したくない。
十年前の、あの日のことを思い出す。
婚約者を選ぶために開かれた誕生日会の会場で、リリアーナに出会ったあの日のことを。
リリアーナは一人、中庭に佇んでいた。
初めて見た時、妖精が迷い込んだのだと思った。
咲き乱れる季節の花々を背景に、不慣れな様子で戸惑っている彼女の姿は、会場内で一際目を引いた。
目を奪われたのは私だけではなく、一緒にいたルークとウィリアムも同じだったと思う。
そして、誰かとぶつかり、転んでしまった彼女に一番最初に駆け寄ったのが私だった。
あの時、一番最初に辿り着けて良かったと、心から思う。
もし、別の人間が彼女を助け起こしてたなら、その者が魅了魔法にかかったかもしれないのだから。
リリアーナに出会えたのは、私にとって幸運そのものだった。
彼女を婚約者として認めてもらうためならば、どんな努力も惜しくはなかった。
リリアーナに教えるためだと思えば、それまで苦手だった勉強も語学もダンスも、全てを頑張れた。
あの幼い日にかけられた恋の魔法は、確かに私を成長させてくれたのだ。
これまで、遠慮がちにしか目を合わさなかったリリアーナが、真っ赤に頬を染めて、私を見つめている。
そんな彼女を抱き寄せ、その唇にそっとキスする。
魅了の魔法は解けたかもしれないが、私がリリアーナを愛する気持ちは変わらないだろう。
真実の愛という魔法は、永遠に解けることはないのだから。
「いくら婚約してるからって、その距離はどうかと思いますよ。」
「さっ、邪魔者は帰りますよー。」
ぶつくさと文句を垂れる幼馴染のルークとウィリアムが、セレナに引きずられていくのを横目で見やる。
魔法が解けたあの日と同じ中庭の四阿で、リリアーナを見つめる。
これまでなら自分の立場を弁え、自重するところだが、今はそんなことどうでもいい。
目の前に座る、愛しい婚約者から目を離したくない。
十年前の、あの日のことを思い出す。
婚約者を選ぶために開かれた誕生日会の会場で、リリアーナに出会ったあの日のことを。
リリアーナは一人、中庭に佇んでいた。
初めて見た時、妖精が迷い込んだのだと思った。
咲き乱れる季節の花々を背景に、不慣れな様子で戸惑っている彼女の姿は、会場内で一際目を引いた。
目を奪われたのは私だけではなく、一緒にいたルークとウィリアムも同じだったと思う。
そして、誰かとぶつかり、転んでしまった彼女に一番最初に駆け寄ったのが私だった。
あの時、一番最初に辿り着けて良かったと、心から思う。
もし、別の人間が彼女を助け起こしてたなら、その者が魅了魔法にかかったかもしれないのだから。
リリアーナに出会えたのは、私にとって幸運そのものだった。
彼女を婚約者として認めてもらうためならば、どんな努力も惜しくはなかった。
リリアーナに教えるためだと思えば、それまで苦手だった勉強も語学もダンスも、全てを頑張れた。
あの幼い日にかけられた恋の魔法は、確かに私を成長させてくれたのだ。
これまで、遠慮がちにしか目を合わさなかったリリアーナが、真っ赤に頬を染めて、私を見つめている。
そんな彼女を抱き寄せ、その唇にそっとキスする。
魅了の魔法は解けたかもしれないが、私がリリアーナを愛する気持ちは変わらないだろう。
真実の愛という魔法は、永遠に解けることはないのだから。
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