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断罪の日がやって来たのは、それから数日後のことだった。
謁見の間には、国王陛下夫妻、ユージーン殿下、私の父、宰相閣下が待っていた。
そして、何故かユージーン様のご学友の皆様も集まっていらした。
殿下の左隣には、光魔法の使い手として有名な聖女セレナ様。
そして、右隣には宰相閣下の御令嬢エリーゼ様。
さらに、その三人を挟むように、殿下が信頼されている護衛騎士のウィリアム様と、一千年に一度とも言われる稀代の天才魔術師ルーク様が立っていらした。
殿下を挟んで立つこの御二方の御令嬢のどちらかが、この魔法を解いたのだろうか。
そう考えると軋むように胸が痛むが、そんなことを言える立場ではないのは分かっている。
私はそんな胸の内が外に出てしまわないよう、精一杯の謝意を込めて頭を下げた。
最初に声を上げたのは、宰相閣下だった。
「クローデン侯は上手く隠したつもりだったろうが、リリアーナ嬢の生母の妹という人物から証言も取れております。国王陛下、この父娘が結託して王太子殿下を惑わしたのは明白であります!」
「リリアーナ様は魅了魔法で殿下を惑わしていたのですわ!そうでなければ、ユージーン様がわたくしを退けて、リリアーナ様を婚約者に選ぶなんて愚行をするはずがありませんもの。」
エリーゼ様は、そう言って私を睨みつけた。
その言葉が胸に突き刺さる。
確かに、私がユージーン殿下に選ばれたのは魅了魔法のためであり、それがなければ何も持たない私なんかに目を止めてくれる人などいるわけがないのだ。
と、その時、殿下を挟んで立つセレナ様が、エリーゼ様に飛びかからんばかりの勢いで口を出した。
「はあ?例えリリアーナ様が選ばれなかったとしても、あんたみたいな性悪女が婚約者に選ばれるわけないでしょ!私のこと平民出身だって、散々いじめ抜いてくれたこと忘れていないわよ!これ以上、リリアーナ様を馬鹿にするようなこと口にしたら、あんたの家の領地だけ結界を外してやるから!」
セレナ様の勢いは止まらず、そのままエリーゼ様に掴み掛かろうとし、またエリーゼ様も応戦する様子が見てとれた。
それを、間に挟まれたユージーン殿下が止めている。
よく見れば、二人の御令嬢の髪型やドレスは既に乱れており、この掴み合いが今始まったわけではないことを示していた。
確かに、以前から仲が良くないことは知っていたけれど、私が入る前に何かあったのだろう。
私が狼狽えていると、その様子に気づいたウィリアム様がこちらに近寄ってきた。
「ささ、リリアーナ様、こんなところに長居は無用です。早速、私の実家へ行きましょう。我が領地は王都とは違い、とても穏やかな場所です。きっと、リリアーナ様も気に入られると思いますよ。どうぞご安心ください。」
そう言って、ウィリアム様が私の目の前で跪いた。
謁見の間には、国王陛下夫妻、ユージーン殿下、私の父、宰相閣下が待っていた。
そして、何故かユージーン様のご学友の皆様も集まっていらした。
殿下の左隣には、光魔法の使い手として有名な聖女セレナ様。
そして、右隣には宰相閣下の御令嬢エリーゼ様。
さらに、その三人を挟むように、殿下が信頼されている護衛騎士のウィリアム様と、一千年に一度とも言われる稀代の天才魔術師ルーク様が立っていらした。
殿下を挟んで立つこの御二方の御令嬢のどちらかが、この魔法を解いたのだろうか。
そう考えると軋むように胸が痛むが、そんなことを言える立場ではないのは分かっている。
私はそんな胸の内が外に出てしまわないよう、精一杯の謝意を込めて頭を下げた。
最初に声を上げたのは、宰相閣下だった。
「クローデン侯は上手く隠したつもりだったろうが、リリアーナ嬢の生母の妹という人物から証言も取れております。国王陛下、この父娘が結託して王太子殿下を惑わしたのは明白であります!」
「リリアーナ様は魅了魔法で殿下を惑わしていたのですわ!そうでなければ、ユージーン様がわたくしを退けて、リリアーナ様を婚約者に選ぶなんて愚行をするはずがありませんもの。」
エリーゼ様は、そう言って私を睨みつけた。
その言葉が胸に突き刺さる。
確かに、私がユージーン殿下に選ばれたのは魅了魔法のためであり、それがなければ何も持たない私なんかに目を止めてくれる人などいるわけがないのだ。
と、その時、殿下を挟んで立つセレナ様が、エリーゼ様に飛びかからんばかりの勢いで口を出した。
「はあ?例えリリアーナ様が選ばれなかったとしても、あんたみたいな性悪女が婚約者に選ばれるわけないでしょ!私のこと平民出身だって、散々いじめ抜いてくれたこと忘れていないわよ!これ以上、リリアーナ様を馬鹿にするようなこと口にしたら、あんたの家の領地だけ結界を外してやるから!」
セレナ様の勢いは止まらず、そのままエリーゼ様に掴み掛かろうとし、またエリーゼ様も応戦する様子が見てとれた。
それを、間に挟まれたユージーン殿下が止めている。
よく見れば、二人の御令嬢の髪型やドレスは既に乱れており、この掴み合いが今始まったわけではないことを示していた。
確かに、以前から仲が良くないことは知っていたけれど、私が入る前に何かあったのだろう。
私が狼狽えていると、その様子に気づいたウィリアム様がこちらに近寄ってきた。
「ささ、リリアーナ様、こんなところに長居は無用です。早速、私の実家へ行きましょう。我が領地は王都とは違い、とても穏やかな場所です。きっと、リリアーナ様も気に入られると思いますよ。どうぞご安心ください。」
そう言って、ウィリアム様が私の目の前で跪いた。
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