49 / 65
三章 湯けむり温泉、ぬるぬるおふろ
地獄へ向かう片道切符
しおりを挟む航には、綾瀬が何を考えているか手に取るように分かる。困惑。
でも相手は綾瀬だ。普通ならば航の手のひらの上で思った通りに踊ってくれる……でも、彼は予想外の言動で相手を惑わす。それは生来の頓珍漢から来る予測不能の行動。
「できるわけないだろ! 俺は好きな人……凛ちゃんとしかこんな事しない!」
九割の確率でそう言うと思っていた。それはそうだろう。いきなり告白されて、一度だけでいいから抱いてほしいなんて言われても……ホイホイとヤろうなんて常人は言わない。綾瀬は常識だけはあるのだ。
だから航も考えた。どうすれば一度だけでも綾瀬とそういう行為ができるのか。
「……じゃあさ、僕の気持ちはどうなるの? 僕は、好きな人と好きな子が愛し合ってるのを見てるだけなの……?」
ぐっ、と綾瀬が言葉に詰まった。優しい。思いやりがある。そんな綾瀬の性格を最大限に利用した。半分くらいは本心だったが、良心に訴えかけるような言葉を熱っぽく囁く。それは食虫植物が自らの欲求を満たすためだけの、甘言。罠。瓶子草の葉の表面の蜜腺。
「で、でも……凛ちゃんも言ってた。絶対裏切らないでねって……!」
「今は凛は寝てるんだよ……日頃の疲れがたっぷりたまっている所に、温泉での性行為。そして食事……凛は寝起きが悪いから、一度寝たら起きない……おねがい、一度だけでいいんだ」
「でも……!」
「少しだけ、つっこんで、かき回すだけでいいよ。それだけで、僕は、僕は十分だ……」
「うっ……」
双子葉植物綱ウツボカズラ目サラセニア科、サラセニア・ドラキュラ。吸血鬼の名を冠した、見た目はむっくりとした葉が特徴的で、葉脈が鮮やかな品種。その植物に酷似した航が、全力で綾瀬という獲物を捕らえに行く。
首に手を回し、浴衣の間から手を潜り込ませる。絡みつく。抱きつく。お酒で火照った身体を押しつける。綾瀬の腕がおずおずと回される。
「い、一度だけだ……!」
航はしおらしく綾瀬の胸に顔を埋め、無意識のうちにニタリと微笑んだ。
それは二度と抜け出せない、サラセニアの筒状の葉。すべりやすいうえに、毛が下向きに逆立って生えていて……落ちた獲物をじわじわと溶かして消化吸収する。一度犯した過ちは命を持ってしてもあがなえない。綾瀬が凛を裏切って航と関係を持つという事……それは、地獄へ向かう片道切符だ。
綾瀬は悲しそうな顔をしている。本人も一応こういうのは良くないと思っているのかまだためらいはある。健気なふりをした航にすっかり騙されている。
航がテーブルに居眠りでもするような恰好で顔を埋めて、四つん這いになる。おずおずと指でならされて、つっこまれた。それは、大好きな凛にバレないように素早く行われる……愛情のかけらもない行為。それは航も想定内だ。
「……んっ、ん、んん…………ア、ああっ!?」
ぐちゅ、と音がして、後ろから綾瀬の性器が突っ込まれる。綾瀬と航にとって予想外だったのは、お互いのカラダの相性が良すぎることだった。人より少しだけ狭い航のナカと、いつも凛のナカを蹂躙する綾瀬の性器が、まるでジグソーパズルのピースのようにフィットする。
綾瀬と一ノ瀬兄弟二人のカラダの相性は抜群だった。ざらざらとふかふかの所を抜けて、ぎゅぽ、と奥の襞が綾瀬の性器をおいしそうに咥える。
「あっ、ああっ、あんっ……りんの、届かなかった所にっ、あたってるっ!」
「声が大きいって……!」
「ん、んむ、んん……はっ、はあっ、はあっ……!」
綾瀬が航の口のを押さえる。航はまるで無理矢理犯されているようでぞくぞくとした。ぐぢゅっ、ぐぢゅっ、という音が響く。航はちらりとふすまを見た。耳を澄ますと、凛の寝息が聞こえてくる。その可愛らしい音に少しばかりの罪悪感を抱きつつ……でも、綾瀬の性器で奥を突かれる気持ち良さに逆らえない。
ごめんね、凛。お兄ちゃんは今……凛専用の場所に、違う人のおちんちんを入れられて、ぐちゃぐちゃにされてる……!
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる