えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜

楠ノ木雫

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◇29 強行突破がお約束みたいになってないか?

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 玄関最初の部屋から隣の部屋に入ると何もない白い部屋があり、その目の前に頑丈そうな扉が出てきた。さっきの玄関のドアより頑丈そうかも。


『さっきのと同じ匂いする!』

「紋様同じようなやつだな。これどうやって開けるんだ?」


 ここも、強行突破? と言っても、こんなに頑丈ってことは中を見られたくないって事だ。

 やっぱり、神聖ハンマー? でも中がどうなってるか分からないから壊しちゃったりしたらどうしよう。木工ハンマーでいくか?

 なんて悩んでいたら、いきなりこんな表示が出た。


 ______________

 【深森の魔女の祝福】自動発動

 ______________



 感じた。背後から何か来ていたことに。

 だから、手に握っていた木工ハンマーをそれめがけて振った。

 当たった感覚と、それから大きな音と共に建物が揺れた。あ、壁に穴が開いてる。人一人よりちょっと大きめくらいの大きさ。うん、やっぱり何か背後に迫ってきてたんだ。悪魔か?

 そんなことを考えているすきに、さっき空いた穴から何かが入ってきた。


 ______________

 【深森の魔女の祝福】自動発動

 ______________


 
 さっきのように戻ってきていた……こいつは悪魔か。いろいろと人間ぽいけど人間じゃないところもいくつもある悪魔だ。尻尾もあるし、何より両手の指先には鋭そうな長い爪が生えている。

 そいつが俺に飛び掛かろうとしていて、それを何かのバリアが止めたみたいだ。この【深森の魔女の祝福】ってやつか。あっぶねぇな、これがなかったら俺その爪に刺されてたってことだよな。


「ほぉ、俺の攻撃を止めるか」

「悪魔か」

「お前は獣人か。獣人はいらねぇな」

「は?」

「という事でお前はいらない。ここの場所がバレちまったから……死んでくれ」


 今度は口を大きく俺のほうに開けていて、その中から何やら青白い光が。


「死ね」

「【全反射の鏡】!!」


 口から俺に向かって放たれた青白い光。けど、俺のスキルが間に合ってその光は奴のほうに跳ね返った。

 うめき声を出しながら後退していき、逃がさないようそいつを追いかけ……


「ハァッ!!」

「ヴッッ!?」


 頭めがけて木工ハンマーを振り落とした。メキッと音を立ててから、今度はこの建物の床が割れ地面まで落ちていってしまった。あちゃ、床ぬけちったな。まぁ俺んちじゃないしいっか。悪魔んちだし。

 さて、どうするか。まぁ死ねって言われちゃったから殺さないといけないわけであって……俺死にたくないしな。


「【武器召喚】――神器ノ剣」


 穴が開いてしまった床の中から……あ、いた。剣飛ばすか? いや、でも回収が面倒だし……あ。


「【超能力】」


 なんとも便利なスキルばかりだ。床下の地面にめり込んじゃってるやつに手を向け、掴んだような感覚で手を動かした。それを、上に向ける。あ、出来た。手に感覚もある。

 床下から奴の腕を掴んで引っ張り出しては見たけれど、これ、子供たちのいる場所聞いたほうがよかったかな。ここにいるって確証は持ってないし。もしかしたらあの部屋にいるかもしれないってだけだし。


『どうするんだ? 食うか?』

「お前腹減ったのか?」

『美味しくなさそう』

「いや、腹壊すからやめろ」


 後でバリスにはコロッケもどきを用意しよう。結構頑張ってくれたし。


「ッ……グゥゥゥ!!」

『あ』

「おっと」


 動き出したので、超能力で腕を掴んでいたほうの手を強く締めた。待て待てこれで逃げられたらたまったもんじゃねぇぞ。

 けど暴れるのでつい手にあった神器ノ剣を投げて刺してしまったのだ。

 当然苦しみだす悪魔。あっちゃぁ色々と聞きたかったのに。まぁでもトロワが相手してるやつの一人に聞けばいっか。


「マオ、ウ……サマ、ァ……」


 うげぇ、またお前も魔王様って言うのかよ。気色悪いな、おい。

 よし、消えてったな。とりあえずあの扉を開けないとだな。


「これ、木工ハンマーでいけるか?」

『いけるんじゃないか?』


 ……ちょん、くらいで一回試してみよう。じいちゃんのチートステータスは侮れないからな。

 という事で、ちょん、と扉を叩いた。叩いた、というよりは触った、って感じか。

 メキッ……


「……」

『……』


 侮れねぇな、チートステータス。メキッてへこんだぞ。だいぶ。じゃあこれ何回も繰り返せば……


「出来た!!」


 鍵とか取っ手はなかったけど、蝶番とかが取れて扉だけが中に倒れた。だいぶ歪んだ扉がな。


「いたっ!!」


 なんかここ甘ったるい匂いするな。まぁそれより子供達が……全部で19人? 5人のはずなんだけど……

 子供たちは気を失っているみたいで、部屋の中にそのまま転がされているみたいで。そのまま部屋から出せばいっか。

 けど、一番気になったものが部屋の中心にあった。


「なんだこれ」



 ______________

 名前:ベラスティン水晶
 種類:魔法道具
 ランク:S
 魔力を吸収・蓄積することが出来る。
 現在 52,339/100,000

 ______________



 なんだこれ、魔力吸収? 魔力を集めるためのものか。しかも5つも転がってる。あいつら、魔力を集めてたのか? 子供達から? でも人間って他の種族より魔力の量が多いんだっけ。


 ______________

 【魔法無効化】自動発動中

 ______________



 おっとっと、俺も魔力吸われそうになってる感じ? まぁ魔力∞なもんですからたとえ吸われたところで困らないんだけどさ。


「これ、どうしたらいい?」

『壊す?』

「お前の頭にはそれしかないのか?」


 でもまぁそれもいいかもしれないけど。こんなに小さな子供達から奪った魔力なんて絶対使わせたくないし。でも、どうしてこんなものが必要だったんだろう。自分たちので溜めればよかったんじゃなかったのか?

 まぁそこらへんは分からないけどさ。まぁとりあえずこれは壊しとこう。


「トロワ~!」


『あ~ルアン~!』


「……」


 玄関で戦っていた、いや、遊んでいたトロワ。その周りは……なんか水のロープみたいなので首を絞められたり宙ぶらりんにされたり頭に水の球をかぶせられて呼吸させてもらえなくなってたりと悲惨な状態だった。

 なんか、敵ではあったんだけど可哀そうになってしまった。けど、あれ? そいつら生きてる?


「トロワ」

『なんか死んじゃった』


 いや、そうじゃなくて。でも悪魔って消えるんじゃないのか? あ。今か。パラパラと灰になってきえてったんだけど。

 死んじゃった、って言ってたけど自決しちゃった感じ? 神器じゃないと死なないんじゃなくて? 話聞きだそうと思ってたけど死んじゃったのならしょうがないな。

 という事で、無事事が済んだみたいだ。でも、この19人の子供達、どうすっかな。俺運べねぇぞ。

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