えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜

楠ノ木雫

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◇22 貿易大国・サイシス王国

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 ドイール達に教えてもらった、これから向かう国《サイシス王国》

 海に面していてしかも貿易大国らしい。じゃあ、何か面白いものとかがあるかもしれない。


「はぁ~、やっぱりドラゴンで空を飛ぶっていいね~!」

『ドラゴンではなく龍だ』

「え? そこって違いあるの?」

『気に食わん』


 あ、そうなんだ。アグスティンにも好き嫌いがあるんだな。あ、お風呂も苦手なの知ってるけど。

 じゃあ、ドラゴンも龍も一緒ってことか。


『と言っても、ドラゴンの中に龍っていう種類があるって感じなのよ』

「え、そうなの?」

『ドラゴンの中に、龍と竜っていうものがあって、格付けされてる感じね。龍が上ね』


 へぇ~そういうのって色々あるんだな~。格付けって魔獣とかにもあるんだ。

 あ、そういえばエルフお姉さんがシシスゴマンダーが火属性の竜と似たトカゲの魔獣サラマンダーの同類って言ってたな。じゃあシシスゴマンダーとかサラマンダーは竜の分類には入らないってこと? 似てるって言ってたし。

 じゃあ、格下の竜っていったいどんだけ強いんだろ。俺出くわしたらどうしよう……いや、たぶん大丈夫だな。木工ハンマーじゃなくて神聖ハンマー取り出して振ればいいだけじゃん。よし、いつでもこいっ! ……いや、こなくていいや。怖いからアグスティンで十分だ。あ、アグスティンのお友達ならいいけど。いや、いるのか?


『ルアン~! 見えてきたぞ~! あれか?』

「お! 多分あれだろ!」


 防壁みたいなのがあって、門があって、人が並んでる。その隣には荷馬車も並んでる。あそこだな。

 じゃあその手前のところで降りよう、とアグスティンに伝えて降りてもらった。けどさ、急降下は本当にやめてほしい。落ちることはないけどビビるからやめて、本当に。

 さて、ここはあらかじめ通貨をドイール達に聞いたから袋にGゴールドと、あとここの通貨のEsイースを入れておいた。ちゃーんと持ってますとも。ドイール達に交換してやろうかと言われたけど上手く断ってたんだよね。

 財布と、その他諸々をティーファス王国で買ったデカいバッグに詰め込み門に進んだ。


「お前立ち大人しくしてろよ?」

『はーい!』

『え~』

「後で飴玉やるから」

『え! ほんと!』


 そう、トロワは今飴玉がお気に入りなのである。あの国でいろいろと大量買いしておいたから、余程のことがない限りなくなることはないだろう。バリスの好きなコロッケ的なもんも購入済み。だから二人を黙らせる方法はあるということだ。

 ちなみにアグスティンはとてもお利口さんだ。静かにしてろって言ったらちゃんと黙っててくれる。お前ら二人アグスティンを見習えと言いたいところだが、きっと言っても聞かないのは分かってるからこっちの方法を取ったほうが早い。


「おや、獣人の方ですか」


 またまた話しかけられた。列の前の人だ。列に並ぶと話しかけるのは普通のことなのか?

 話しかけてきたのは50代くらいの男性。丸い耳と長くてふさふさしたしっぽが生えてる。触り心地がよさそうでそっちに目が行きそうだけど我慢しよう。


「どちらから?」

「ティーファス王国です」

「ほぉ! ではドワーフの国を通ってきたのですね」

「あ、はい」

「大変だったでしょう。目、つけられませんでしたか?」

「え? あ、はい、大丈夫でした。すぐにこっちに来たので」

「そうでしたか、それはよかった。あの連中はすぐに何かあると酒で勝負を吹っ掛けますからね。ドワーフが酒に強いことを分かってて勝負を受けるなんて、負けにいくようなものですからね」


 あ、そうなんだ。確かに異世界ファンタジーじゃ美味い酒を好むって設定とかってあったな。酒豪っていうのもあった。けど、この世界でも同じなんだ。気を付けよう。

 彼は友人に会いに来たのだとか。と言っても友人は人間らしい。


「次の方、身分証と一万Esを」


 ティーファス王国だと9千Gだった。けど、GとEsの差ってどんな感じなのかわかんないからなぁ。でもそもそも物の値段の相場とか分からないしなぁ。なんて思いつつ、ティーファス王国の役場で作った身分証のパスポートと金貨を渡した。

 あ、門番さん人間だ。頭に耳生えてないししっぽもないし、耳も長くないし、身長は俺より低くない。正真正銘の俺がよく知る見た目だ。


「はい、確認しました。どうぞ」

「あ、はい」


 パスポートを返され、門をくぐった。

 あ、ドイール達が言ってたのはこれか、と思った。

 入った瞬間に見たのは……


「……おいおい、バスかよ」


 この世界には馬車がある。というか、乗り物は馬車くらいだ。あとは馬に直接乗るくらいか。平民たちは、何人も乗れる公共の大きな馬車を使ってた。電車みたいに時間を決めて回ってる感じの馬車だ。

 けれど、ここの乗り物はちょっと違った。

 動かしてるのは馬じゃない。そう、普通の馬車の馬の場所には大きな石がある。御者がその石の後ろに座り、石から生えてる紐を持って動かしてる。あぁ、馬を動かす紐みたいな?

 とにかく、あれは窓を取り外された変なバスだ。うん、そう思うことにしよう。

 しかも、地面が石で整備されてる。アスファルトではないけれど、バス? の乗り心地は良さそうだな。道がガタガタだとお尻痛くなりそうだしな。俺は乗らないけど。


『ねーぇールアン! 早く飴ちょうだいっ!』

「あーはいはい、今日の宿見つけてからな」

『え~! 早く早くっ!!』


 やばいな、二人が限界寸前だな。早く宿見つけないと。


「こんにちは、お兄さん」


 いきなり話しかけられた。知らない、人間のお姉さんだ。


「もしかして、ここ来たの初めて?」

「え? あ、はい」

「お兄さん一人でしょ? じゃあ私、案内してあげよっか」

「えっ」

「ここら辺広いから初めての人は迷っちゃうよ? じゃあ行こ♡」

「えっちょっ!?」


 いきなり腕に抱きつかれて歩かされてしまった。ちょい待ち、どういう事だよこれは。なんで名前も知らない男の案内をするわけ? もしかして、なんか騙されちゃったりしちゃう感じ? え、それはダメだって!! 異世界来て早々に騙されたりとかってそりゃ辛いって!!


「あの、俺一人で大丈夫ですから」

「遠慮しないで~」

「あの、本当に大丈夫ですから」


 やばい、肩に乗ってるトロワの機嫌が悪くなってきたぞ。これは早急にお姉さんと離れないといけない。


「あの、じゃあ良さそうな宿だけ教えてもらってもいいですか。大きな宿じゃなくて、こぢんまりした宿」

「こぢんまり? じゃあ私のおすすめの宿に案内してあげるね」


 と、今度は手を繋がれて連れてかれてしまったのだ。

 こぢんまりした宿を選んだのは、あまり目立ちたくなかったから。ティーファス王国でだってちょっとやっちまたって思ってたんだから、今回は何事もなく静かに過ごしたい。

 まぁ、宿探しの手間が省けるか。そう思ってたんだけど……


「え、ここっすか」

「うん、ここ♡」


 なんか、デカくないか? てか、モロ旅館でしょこれ。旅館だよねこれ!


「あ、はい、ありがとうございます」

「じゃあ周辺のお店とかも教えてあげよっか」

「いえ結構です」


 と、握られていた手を振り払って逃げた。

 こんなところに泊まれるか。無理だって。

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