上 下
22 / 39

◇22 貿易大国・サイシス王国

しおりを挟む
 ドイール達に教えてもらった、これから向かう国《サイシス王国》

 海に面していてしかも貿易大国らしい。じゃあ、何か面白いものとかがあるかもしれない。


「はぁ~、やっぱりドラゴンで空を飛ぶっていいね~!」

『ドラゴンではなく龍だ』

「え? そこって違いあるの?」

『気に食わん』


 あ、そうなんだ。アグスティンにも好き嫌いがあるんだな。あ、お風呂も苦手なの知ってるけど。

 じゃあ、ドラゴンも龍も一緒ってことか。


『と言っても、ドラゴンの中に龍っていう種類があるって感じなのよ』

「え、そうなの?」

『ドラゴンの中に、龍と竜っていうものがあって、格付けされてる感じね。龍が上ね』


 へぇ~そういうのって色々あるんだな~。格付けって魔獣とかにもあるんだ。

 あ、そういえばエルフお姉さんがシシスゴマンダーが火属性の竜と似たトカゲの魔獣サラマンダーの同類って言ってたな。じゃあシシスゴマンダーとかサラマンダーは竜の分類には入らないってこと? 似てるって言ってたし。

 じゃあ、格下の竜っていったいどんだけ強いんだろ。俺出くわしたらどうしよう……いや、たぶん大丈夫だな。木工ハンマーじゃなくて神聖ハンマー取り出して振ればいいだけじゃん。よし、いつでもこいっ! ……いや、こなくていいや。怖いからアグスティンで十分だ。あ、アグスティンのお友達ならいいけど。いや、いるのか?


『ルアン~! 見えてきたぞ~! あれか?』

「お! 多分あれだろ!」


 防壁みたいなのがあって、門があって、人が並んでる。その隣には荷馬車も並んでる。あそこだな。

 じゃあその手前のところで降りよう、とアグスティンに伝えて降りてもらった。けどさ、急降下は本当にやめてほしい。落ちることはないけどビビるからやめて、本当に。

 さて、ここはあらかじめ通貨をドイール達に聞いたから袋にGゴールドと、あとここの通貨のEsイースを入れておいた。ちゃーんと持ってますとも。ドイール達に交換してやろうかと言われたけど上手く断ってたんだよね。

 財布と、その他諸々をティーファス王国で買ったデカいバッグに詰め込み門に進んだ。


「お前立ち大人しくしてろよ?」

『はーい!』

『え~』

「後で飴玉やるから」

『え! ほんと!』


 そう、トロワは今飴玉がお気に入りなのである。あの国でいろいろと大量買いしておいたから、余程のことがない限りなくなることはないだろう。バリスの好きなコロッケ的なもんも購入済み。だから二人を黙らせる方法はあるということだ。

 ちなみにアグスティンはとてもお利口さんだ。静かにしてろって言ったらちゃんと黙っててくれる。お前ら二人アグスティンを見習えと言いたいところだが、きっと言っても聞かないのは分かってるからこっちの方法を取ったほうが早い。


「おや、獣人の方ですか」


 またまた話しかけられた。列の前の人だ。列に並ぶと話しかけるのは普通のことなのか?

 話しかけてきたのは50代くらいの男性。丸い耳と長くてふさふさしたしっぽが生えてる。触り心地がよさそうでそっちに目が行きそうだけど我慢しよう。


「どちらから?」

「ティーファス王国です」

「ほぉ! ではドワーフの国を通ってきたのですね」

「あ、はい」

「大変だったでしょう。目、つけられませんでしたか?」

「え? あ、はい、大丈夫でした。すぐにこっちに来たので」

「そうでしたか、それはよかった。あの連中はすぐに何かあると酒で勝負を吹っ掛けますからね。ドワーフが酒に強いことを分かってて勝負を受けるなんて、負けにいくようなものですからね」


 あ、そうなんだ。確かに異世界ファンタジーじゃ美味い酒を好むって設定とかってあったな。酒豪っていうのもあった。けど、この世界でも同じなんだ。気を付けよう。

 彼は友人に会いに来たのだとか。と言っても友人は人間らしい。


「次の方、身分証と一万Esを」


 ティーファス王国だと9千Gだった。けど、GとEsの差ってどんな感じなのかわかんないからなぁ。でもそもそも物の値段の相場とか分からないしなぁ。なんて思いつつ、ティーファス王国の役場で作った身分証のパスポートと金貨を渡した。

 あ、門番さん人間だ。頭に耳生えてないししっぽもないし、耳も長くないし、身長は俺より低くない。正真正銘の俺がよく知る見た目だ。


「はい、確認しました。どうぞ」

「あ、はい」


 パスポートを返され、門をくぐった。

 あ、ドイール達が言ってたのはこれか、と思った。

 入った瞬間に見たのは……


「……おいおい、バスかよ」


 この世界には馬車がある。というか、乗り物は馬車くらいだ。あとは馬に直接乗るくらいか。平民たちは、何人も乗れる公共の大きな馬車を使ってた。電車みたいに時間を決めて回ってる感じの馬車だ。

 けれど、ここの乗り物はちょっと違った。

 動かしてるのは馬じゃない。そう、普通の馬車の馬の場所には大きな石がある。御者がその石の後ろに座り、石から生えてる紐を持って動かしてる。あぁ、馬を動かす紐みたいな?

 とにかく、あれは窓を取り外された変なバスだ。うん、そう思うことにしよう。

 しかも、地面が石で整備されてる。アスファルトではないけれど、バス? の乗り心地は良さそうだな。道がガタガタだとお尻痛くなりそうだしな。俺は乗らないけど。


『ねーぇールアン! 早く飴ちょうだいっ!』

「あーはいはい、今日の宿見つけてからな」

『え~! 早く早くっ!!』


 やばいな、二人が限界寸前だな。早く宿見つけないと。


「こんにちは、お兄さん」


 いきなり話しかけられた。知らない、人間のお姉さんだ。


「もしかして、ここ来たの初めて?」

「え? あ、はい」

「お兄さん一人でしょ? じゃあ私、案内してあげよっか」

「えっ」

「ここら辺広いから初めての人は迷っちゃうよ? じゃあ行こ♡」

「えっちょっ!?」


 いきなり腕に抱きつかれて歩かされてしまった。ちょい待ち、どういう事だよこれは。なんで名前も知らない男の案内をするわけ? もしかして、なんか騙されちゃったりしちゃう感じ? え、それはダメだって!! 異世界来て早々に騙されたりとかってそりゃ辛いって!!


「あの、俺一人で大丈夫ですから」

「遠慮しないで~」

「あの、本当に大丈夫ですから」


 やばい、肩に乗ってるトロワの機嫌が悪くなってきたぞ。これは早急にお姉さんと離れないといけない。


「あの、じゃあ良さそうな宿だけ教えてもらってもいいですか。大きな宿じゃなくて、こぢんまりした宿」

「こぢんまり? じゃあ私のおすすめの宿に案内してあげるね」


 と、今度は手を繋がれて連れてかれてしまったのだ。

 こぢんまりした宿を選んだのは、あまり目立ちたくなかったから。ティーファス王国でだってちょっとやっちまたって思ってたんだから、今回は何事もなく静かに過ごしたい。

 まぁ、宿探しの手間が省けるか。そう思ってたんだけど……


「え、ここっすか」

「うん、ここ♡」


 なんか、デカくないか? てか、モロ旅館でしょこれ。旅館だよねこれ!


「あ、はい、ありがとうございます」

「じゃあ周辺のお店とかも教えてあげよっか」

「いえ結構です」


 と、握られていた手を振り払って逃げた。

 こんなところに泊まれるか。無理だって。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

『ブリーフスキル』実は最強でした

なまぱすた 気味磨呂
ファンタジー
ある日ブリーフを愛用している俺が異世界召喚された。ブリーフを愛用していたからかスキルはブリーフのことばかりそんな俺が最強に.... 現実世界ではいじめられっ子だった変わったあだ名のブリーフマン。(名前を教える気はないらしい)だがいつの間にか異世界に転移してしまいなりたくはなかった冒険者となる。 冒険者になってみたもののそう上手くはいかず悲惨な毎日を送ることに… スライムにすら苦戦するブリーフマンだが自分の一風かわったスキルを有効活用し何とか戦いを乗り越えていく。 最弱だったブリーフマン。なりたくは無かった冒険者。だが仲間と共に苦難を乗り越え、特殊なスキルを使い神々へと戦いを挑む。 最初は下手くそですがだんだん面白くなっていきますんで最後まで読んでくれたら嬉しいです

地球で死ぬのは嫌なので異世界から帰らないことにしました

蒼衣ユイ/広瀬由衣
ファンタジー
ぶちぶちと音を立てながら縮み消えていく骨と肉。溢れ続ける血に浮かぶ乳白色をしたゼリー状の球体。 この異常死が《神隠し》から生還した人間の末路である。 現代医学では助けられないこの事件は《魔法犯罪UNCLAMP》と称されるようになった。 そんなある日、女子高生の各務結衣は異世界《魔法大国ヴァーレンハイト皇国》で目を覚ました。 しかしその姿は黄金に輝く月の瞳に、炎が燃え盛るような深紅のロングウェーブという、皇女アイリスの姿だった。 自分がUNCLAMPである事に気付き、地球に戻ったらあの凄惨な死を遂げる恐怖を突きつけられる。 結衣は地球に戻らないために、地球に戻ってしまう原因を把握すべく行動に出る。 illust SNC様(Twitter @MamakiraSnc)

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

処理中です...