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◇14 精霊使いっているんだぁ。
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「ねぇ君、一緒に食べない?」
「……はい?」
ドイールと別れてから買い物をして手にいっぱいの荷物で宿に帰り、腹を空かせながら宿の婆さんから夕食を受け取ったところで、声をかけられた。
……そう、あの美人エルフお姉さんに。
いきなり話しかけるものだから、マジで吃驚している最中だ。だってこんなに美人のエルフさんに、一緒に食べない? だなんて言われたら期待するに決まってんじゃん。
でもなぁ、人の前で食事するとなるとこいつらが食えないんだよな。絶対後で煩くなる。ほら、トロワ睨んでくるし。
でも、なぁ……
「分かりました」
「うん、ありがと」
……美人に声をかけられると、断れないのは当たり前である。
こいつらの飯は……今日買ってきたコロッケもどきを部屋に行ってから食わせるか。何かあった時の為に取っておこうと思ってたけど、まさかここで出てくることになるとは。まぁ明日また買ってくればいっか。
ちょっと待っててね、と婆さんの所に向かっていった美人エルフお姉さん。そのタイミングで、トロワ達が不満をぶつけてきた。
『私達のごはんは!』
「お前達は食わなくてもいいんだろ?」
『やだやだやだ~!』
「文句言うな」
『とか言って~、ルアンも鼻の下伸ばしてたじゃな~!』
「してね~し!」
『ルアンはああいった女性が好みだったのだな』
「煩いっ!」
『あ~否定しなかった~!』
「……黙ってろ!」
ったく、煩いっつの!! あ、戻ってきた!?
食堂の席に俺達は座った。そういえば他の客いないな。朝は見たんだけど、まだ来てないのか。
そう思っていたら、エルフお姉さんが懐から何かを出してきた。あれ、これドイールが持ってた噓発見器(?)とおんなじじゃん。色は違うけど。あれは水色だったけど、これはオレンジだ。
「幻影の玉」
「……」
「これで今私達が話す事は漏洩しないわ」
「……何で、そんなものを出してきたんです?」
「そうねぇ、ちょっと聞きたい事があって。あぁ、私はシエナ。見た目の通り、エルフよ」
「……ルアンです」
「ルアンね。じゃあ、そこの二匹も紹介してほしいな」
「えっ」
彼女が指をさしたのは、俺の右肩の上と、頭の上。そこには、トロワとバリスが乗っている。陰身魔法がかかってるはずなんだけど、どうして見えたんだ? でも、左肩に乗ってるアグスティンには気付いてないのか? 二匹って言ってたし。
「あぁ、警戒しないで。隠してるみたいだけど、私はハイエルフで精霊使いだから気付いただけよ」
「精霊使い、ですか」
「えぇ、ほら」
掌を上にして手を前に出してきたお姉さん。すると、掌に光る魔法陣のようなものが出現し、その上に小さな妖精みたいなものが出現した。今のトロワと同じくらいか。トロワと同じように背中に羽が生えてる。緑のワンピースを着た女の子だ。
「ピクシーよ。この子は風属性の下位精霊」
へぇ、下位精霊か。精霊の中でも階級とかってあるのか。そういうの聞いた事なかったな。
「これも必要よね」
「えっ?」
もう一つ、今度は細長くしま模様の石を出してきた。これは、精霊を隠すものらしい。魔力を注ぐ事により一定範囲内の精霊が範囲外の人達には見えないようになるそうだ。
けど、これはどうしたものか。陰身魔法がかかっててもこの人にはバレてる訳だし……
『ルアン~!』
「えっ」
『なんだぁ? こいつ』
あーあ、喋っちゃった。これじゃあもう見せるしかないだろ。
お前らぁ、今日は晩飯なしだかんな。そう思いつつ陰身魔法を二人だけ解除した。アグスティンには気付いてないみたいだから、そのままにしよう。
「えっ、ウンディーネと、カーバンクル……!?」
「え?」
「最上位精霊が、二匹も……しかも、一体どれだけ召喚継続してるのよ……?」
あ、そういう感じなのね。こいつら最初じいちゃんと精霊契約してたけど、じいちゃん勇者だったもんな。勇者と精霊契約してるって言ったら凄い精霊に決まってるもんな。
けど俺、やっちまった?
『ねーねールアン~! 腹減った~!』
「我慢しろ」
『え~!』
「ったく」
まぁ、エルフのお姉さんには気付かれちゃったわけだし、バリスがテーブルの上でゴロゴロし出したし、いいよな。そう思い俺の夕飯の肉をひと切れ口に突っ込んでやった。もぐもぐ嬉しそうに一切れを食べるバリス。これで黙ったな。
『ルアン! ルアン! 私も!』
「はいはい、ほら」
『あーん♡』
ったく、知らない人の前でよくやるよなこいつら。分かっててやってんのか。
ちらり、と目の前の人を見てみたら、なんか驚いているようで。てか、結構驚いてません? 普通精霊ってこんな感じじゃないの?
「仲、いいのね?」
「あ、すみませんうるさくて」
「いいわ、気にしないで。私、最上位精霊と会うのはこれが初めてなんだけど、気難しいんじゃないかって勝手に思ってたから、ちょっと意外に思っただけよ」
「あ、そう、ですか……あの、それで?」
「あ、そうね。君ってギルド入ってるの?」
「え? いえ、入ってませんけど」
いきなり、ギルドの話か?
「え、そうなの? 君、結構魔力多いはずなのに勿体ない」
「あ、まぁ、そういう人が沢山いるところが苦手と言いますか」
「最上位精霊を二匹も、しかもずっと継続して召喚できるほどの魔力の持ち主なのであれば、ソロでもやっていけると思うんだけど?」
やばいな、いきなりギルド勧誘をされるとは思わなかった。でも、例え美人に紹介されたとしても、入りたくないんだよなぁ。
これで見つかって連れ戻されたら、いや、またアグスティンにお願いして逃げるけど。でも、一回その手を使っちったから何か対策でも立ててるのかもしれない。
となると、あの二つを渡せとまた要求される。それに皇子もやらせられるなんてまっぴらごめんだ。
「入る気はないので、すみませんが断らせてください」
「あぁ、勧誘とかじゃないから。ただ私が君みたいな大物と一緒に仕事がしたいなって思っただけだから、気にしないで」
「あ、そ、ですか……」
なぁんだ、そういうやつか。驚かせないでくださいよ、全く。
でも、一緒に仕事したいって思って下さった事ちょっと、いやだいぶ嬉しっす。だけど、大物、ですか。あぁ、まぁ、間違ってはいないけど、それはステータス上であって俺はここに来て3日しか経ってないただの若造っす。
「それでね、ちょっと手伝ってほしい事があるんだけどいいかな」
「え? 手伝い、ですか」
「うん、ちょっと困っててね。実は私、《テワルシス草》を手に入れたくてね」
テワルシス草ぅ? じいちゃんの無限倉庫にそんなもんあったかな? 多すぎてどこに何があるのか全く分からないんだよな。まぁでもじいちゃんも全部把握してるか分からないけど。適当に突っ込んだってやつもあるだろ、あんな性格だったし。
「エルフが薬作りのプロだって事は知ってるでしょ。勿論その植物も薬を作る過程で一番重要な材料なんだけど、それを手に入れるにはちょっと厄介なの。
それは普通の市場や店には出回らないものでね。だから直接採取しに行かないといけないんだけど……そこには厄介な魔獣がいるの。シシスゴマンダーって言えばわかるかしら」
「あー、ごめんなさい、そういうの疎くて」
「あぁ、ごめんなさい。じゃあサラマンダーなら分かるかしら。火属性の竜と似たトカゲの魔獣なんだけど、鱗が硬い上に動きが早くて、A級ランクの私でもまず倒せない。シシスゴマンダーって魔獣は、サラマンダーと同系統の雷属性のトカゲって事よ」
「そのシシスゴマンダーの生息地に欲しい植物があるって事ですね」
「そう。でも倒せなくても採取さえしてしまえばいいのよ。だから、私がシシスゴマンダーを引きつける代わりに君には採取をお願いしたい」
どう? と言われましても……
ギルドのランク付けはよく分からないから、A級ってどれくらいの力なのかは分からないけど、そのエルフさんでも倒せないトカゲを引き付けるだなんて絶対危ないじゃん。
でも、そんなリスクを負ってまで薬を作りたいって事だよな。
「何で俺なんです?」
「ん? あぁ、まぁ君が私に普通に接してくれたからかな。ここは獣人の国だから、エルフはあまり歓迎されてないの。だからギルドでも一緒にパーティーを組んでくれる人がいなくて。だから、君が承諾してくれると嬉しいわ」
「はい、やります」
やばい、あの微笑みにやられた。即答してしまった。おい、トロワ、なんだその目は。呆れ顔? 仕方ねぇだろ、あの美人エルフさんの最強スマイルに勝てる訳ないだろ?
と、思っていたらクスクス笑ってるエルフの美人さん。え、そこ笑うとこ?
「いやぁ、ごめんごめん。報酬の話すらしてないのに了承してくれるとは思ってもみなかったよ。君ってお人好しなのかな?」
やば、そういえば聞いてなかった。でも、俺としては報酬とかって大事なことじゃないんだよな。人助けってやつ? ネコ耳親子といい、やっぱ情が湧きやすいんだよな、俺って。
「じゃあ報酬の話をしよっか。私としては、前金としてこれを用意したんだけど、どうかな」
お姉さんが出してきたのは、とある小瓶。ファンタジーでありそうな瓶が、10個?
てか、その小さな袋から出してきたよな。普通だったら大きさからしてこんなに入らないはずなのに、どうなってんだ?
「あぁ、これ? これは収納魔法道具だよ。これに入れると、この袋以上の量の物が入るんだ。まぁでもあまり出回ってないから知らないのは無理ないね」
俺の無限倉庫とおんなじ感じか。なるほど、こんなものもあるんだ。嘘発見器にこの幻影の玉といい、この世界の魔法道具はすごいものばかりだ。
「それで、こっちね。これは、〝神秘の秘薬〟よ。ランクはS、飲む事によって体力、魔力を全回復出来るわ。私はエルフで調剤師スキルを持ってるから効果は保証するわ。それを前金として10本。それなら、採取に行く際使うことが出来るでしょ?」
ふむ、確かにそうだ。そのモンスターすんごく強いって言ってたし、そこで死んだら元も子もない。
______________
名前:神秘の秘薬
種類:回復アイテム
ランク:S
服用する事によってHP、MPが回復する。
服用した後のクールタイムは発生しない。
______________
一応鑑定してみたけど、うん、この人が言っていた通りだ。しかも、昨日貰った回復ポーションはクールタイム10秒だったのにこれは発生しないのか。さすがS級だな。
「それと、無事採取が完了して帰れた後には、200万G支払うわ」
「えっ、にっ200万!?」
「命懸けの仕事なんですもの、当然の報酬よ」
これ、本当にいいのか……? こんなに貰っちゃって。
まぁ、俺としても今あるじいちゃんのお金が底をつく時が来るだろうから稼いでおく必要はあるけどさ。俺が安心して生活できる分だけ稼ぎたいとは思ってるけど……こんなに貰っていいのか?
「あ、足りない?」
「あ、いえ、十分です! むしろ多いくらいです!」
「そう? じゃあ引き受けてくれる?」
「はい!」
と、いう事でエルフお姉さんの手伝いをする事になった。
これが、波乱の幕開けとなることは、今の俺には想像も出来なかった。
「……はい?」
ドイールと別れてから買い物をして手にいっぱいの荷物で宿に帰り、腹を空かせながら宿の婆さんから夕食を受け取ったところで、声をかけられた。
……そう、あの美人エルフお姉さんに。
いきなり話しかけるものだから、マジで吃驚している最中だ。だってこんなに美人のエルフさんに、一緒に食べない? だなんて言われたら期待するに決まってんじゃん。
でもなぁ、人の前で食事するとなるとこいつらが食えないんだよな。絶対後で煩くなる。ほら、トロワ睨んでくるし。
でも、なぁ……
「分かりました」
「うん、ありがと」
……美人に声をかけられると、断れないのは当たり前である。
こいつらの飯は……今日買ってきたコロッケもどきを部屋に行ってから食わせるか。何かあった時の為に取っておこうと思ってたけど、まさかここで出てくることになるとは。まぁ明日また買ってくればいっか。
ちょっと待っててね、と婆さんの所に向かっていった美人エルフお姉さん。そのタイミングで、トロワ達が不満をぶつけてきた。
『私達のごはんは!』
「お前達は食わなくてもいいんだろ?」
『やだやだやだ~!』
「文句言うな」
『とか言って~、ルアンも鼻の下伸ばしてたじゃな~!』
「してね~し!」
『ルアンはああいった女性が好みだったのだな』
「煩いっ!」
『あ~否定しなかった~!』
「……黙ってろ!」
ったく、煩いっつの!! あ、戻ってきた!?
食堂の席に俺達は座った。そういえば他の客いないな。朝は見たんだけど、まだ来てないのか。
そう思っていたら、エルフお姉さんが懐から何かを出してきた。あれ、これドイールが持ってた噓発見器(?)とおんなじじゃん。色は違うけど。あれは水色だったけど、これはオレンジだ。
「幻影の玉」
「……」
「これで今私達が話す事は漏洩しないわ」
「……何で、そんなものを出してきたんです?」
「そうねぇ、ちょっと聞きたい事があって。あぁ、私はシエナ。見た目の通り、エルフよ」
「……ルアンです」
「ルアンね。じゃあ、そこの二匹も紹介してほしいな」
「えっ」
彼女が指をさしたのは、俺の右肩の上と、頭の上。そこには、トロワとバリスが乗っている。陰身魔法がかかってるはずなんだけど、どうして見えたんだ? でも、左肩に乗ってるアグスティンには気付いてないのか? 二匹って言ってたし。
「あぁ、警戒しないで。隠してるみたいだけど、私はハイエルフで精霊使いだから気付いただけよ」
「精霊使い、ですか」
「えぇ、ほら」
掌を上にして手を前に出してきたお姉さん。すると、掌に光る魔法陣のようなものが出現し、その上に小さな妖精みたいなものが出現した。今のトロワと同じくらいか。トロワと同じように背中に羽が生えてる。緑のワンピースを着た女の子だ。
「ピクシーよ。この子は風属性の下位精霊」
へぇ、下位精霊か。精霊の中でも階級とかってあるのか。そういうの聞いた事なかったな。
「これも必要よね」
「えっ?」
もう一つ、今度は細長くしま模様の石を出してきた。これは、精霊を隠すものらしい。魔力を注ぐ事により一定範囲内の精霊が範囲外の人達には見えないようになるそうだ。
けど、これはどうしたものか。陰身魔法がかかっててもこの人にはバレてる訳だし……
『ルアン~!』
「えっ」
『なんだぁ? こいつ』
あーあ、喋っちゃった。これじゃあもう見せるしかないだろ。
お前らぁ、今日は晩飯なしだかんな。そう思いつつ陰身魔法を二人だけ解除した。アグスティンには気付いてないみたいだから、そのままにしよう。
「えっ、ウンディーネと、カーバンクル……!?」
「え?」
「最上位精霊が、二匹も……しかも、一体どれだけ召喚継続してるのよ……?」
あ、そういう感じなのね。こいつら最初じいちゃんと精霊契約してたけど、じいちゃん勇者だったもんな。勇者と精霊契約してるって言ったら凄い精霊に決まってるもんな。
けど俺、やっちまった?
『ねーねールアン~! 腹減った~!』
「我慢しろ」
『え~!』
「ったく」
まぁ、エルフのお姉さんには気付かれちゃったわけだし、バリスがテーブルの上でゴロゴロし出したし、いいよな。そう思い俺の夕飯の肉をひと切れ口に突っ込んでやった。もぐもぐ嬉しそうに一切れを食べるバリス。これで黙ったな。
『ルアン! ルアン! 私も!』
「はいはい、ほら」
『あーん♡』
ったく、知らない人の前でよくやるよなこいつら。分かっててやってんのか。
ちらり、と目の前の人を見てみたら、なんか驚いているようで。てか、結構驚いてません? 普通精霊ってこんな感じじゃないの?
「仲、いいのね?」
「あ、すみませんうるさくて」
「いいわ、気にしないで。私、最上位精霊と会うのはこれが初めてなんだけど、気難しいんじゃないかって勝手に思ってたから、ちょっと意外に思っただけよ」
「あ、そう、ですか……あの、それで?」
「あ、そうね。君ってギルド入ってるの?」
「え? いえ、入ってませんけど」
いきなり、ギルドの話か?
「え、そうなの? 君、結構魔力多いはずなのに勿体ない」
「あ、まぁ、そういう人が沢山いるところが苦手と言いますか」
「最上位精霊を二匹も、しかもずっと継続して召喚できるほどの魔力の持ち主なのであれば、ソロでもやっていけると思うんだけど?」
やばいな、いきなりギルド勧誘をされるとは思わなかった。でも、例え美人に紹介されたとしても、入りたくないんだよなぁ。
これで見つかって連れ戻されたら、いや、またアグスティンにお願いして逃げるけど。でも、一回その手を使っちったから何か対策でも立ててるのかもしれない。
となると、あの二つを渡せとまた要求される。それに皇子もやらせられるなんてまっぴらごめんだ。
「入る気はないので、すみませんが断らせてください」
「あぁ、勧誘とかじゃないから。ただ私が君みたいな大物と一緒に仕事がしたいなって思っただけだから、気にしないで」
「あ、そ、ですか……」
なぁんだ、そういうやつか。驚かせないでくださいよ、全く。
でも、一緒に仕事したいって思って下さった事ちょっと、いやだいぶ嬉しっす。だけど、大物、ですか。あぁ、まぁ、間違ってはいないけど、それはステータス上であって俺はここに来て3日しか経ってないただの若造っす。
「それでね、ちょっと手伝ってほしい事があるんだけどいいかな」
「え? 手伝い、ですか」
「うん、ちょっと困っててね。実は私、《テワルシス草》を手に入れたくてね」
テワルシス草ぅ? じいちゃんの無限倉庫にそんなもんあったかな? 多すぎてどこに何があるのか全く分からないんだよな。まぁでもじいちゃんも全部把握してるか分からないけど。適当に突っ込んだってやつもあるだろ、あんな性格だったし。
「エルフが薬作りのプロだって事は知ってるでしょ。勿論その植物も薬を作る過程で一番重要な材料なんだけど、それを手に入れるにはちょっと厄介なの。
それは普通の市場や店には出回らないものでね。だから直接採取しに行かないといけないんだけど……そこには厄介な魔獣がいるの。シシスゴマンダーって言えばわかるかしら」
「あー、ごめんなさい、そういうの疎くて」
「あぁ、ごめんなさい。じゃあサラマンダーなら分かるかしら。火属性の竜と似たトカゲの魔獣なんだけど、鱗が硬い上に動きが早くて、A級ランクの私でもまず倒せない。シシスゴマンダーって魔獣は、サラマンダーと同系統の雷属性のトカゲって事よ」
「そのシシスゴマンダーの生息地に欲しい植物があるって事ですね」
「そう。でも倒せなくても採取さえしてしまえばいいのよ。だから、私がシシスゴマンダーを引きつける代わりに君には採取をお願いしたい」
どう? と言われましても……
ギルドのランク付けはよく分からないから、A級ってどれくらいの力なのかは分からないけど、そのエルフさんでも倒せないトカゲを引き付けるだなんて絶対危ないじゃん。
でも、そんなリスクを負ってまで薬を作りたいって事だよな。
「何で俺なんです?」
「ん? あぁ、まぁ君が私に普通に接してくれたからかな。ここは獣人の国だから、エルフはあまり歓迎されてないの。だからギルドでも一緒にパーティーを組んでくれる人がいなくて。だから、君が承諾してくれると嬉しいわ」
「はい、やります」
やばい、あの微笑みにやられた。即答してしまった。おい、トロワ、なんだその目は。呆れ顔? 仕方ねぇだろ、あの美人エルフさんの最強スマイルに勝てる訳ないだろ?
と、思っていたらクスクス笑ってるエルフの美人さん。え、そこ笑うとこ?
「いやぁ、ごめんごめん。報酬の話すらしてないのに了承してくれるとは思ってもみなかったよ。君ってお人好しなのかな?」
やば、そういえば聞いてなかった。でも、俺としては報酬とかって大事なことじゃないんだよな。人助けってやつ? ネコ耳親子といい、やっぱ情が湧きやすいんだよな、俺って。
「じゃあ報酬の話をしよっか。私としては、前金としてこれを用意したんだけど、どうかな」
お姉さんが出してきたのは、とある小瓶。ファンタジーでありそうな瓶が、10個?
てか、その小さな袋から出してきたよな。普通だったら大きさからしてこんなに入らないはずなのに、どうなってんだ?
「あぁ、これ? これは収納魔法道具だよ。これに入れると、この袋以上の量の物が入るんだ。まぁでもあまり出回ってないから知らないのは無理ないね」
俺の無限倉庫とおんなじ感じか。なるほど、こんなものもあるんだ。嘘発見器にこの幻影の玉といい、この世界の魔法道具はすごいものばかりだ。
「それで、こっちね。これは、〝神秘の秘薬〟よ。ランクはS、飲む事によって体力、魔力を全回復出来るわ。私はエルフで調剤師スキルを持ってるから効果は保証するわ。それを前金として10本。それなら、採取に行く際使うことが出来るでしょ?」
ふむ、確かにそうだ。そのモンスターすんごく強いって言ってたし、そこで死んだら元も子もない。
______________
名前:神秘の秘薬
種類:回復アイテム
ランク:S
服用する事によってHP、MPが回復する。
服用した後のクールタイムは発生しない。
______________
一応鑑定してみたけど、うん、この人が言っていた通りだ。しかも、昨日貰った回復ポーションはクールタイム10秒だったのにこれは発生しないのか。さすがS級だな。
「それと、無事採取が完了して帰れた後には、200万G支払うわ」
「えっ、にっ200万!?」
「命懸けの仕事なんですもの、当然の報酬よ」
これ、本当にいいのか……? こんなに貰っちゃって。
まぁ、俺としても今あるじいちゃんのお金が底をつく時が来るだろうから稼いでおく必要はあるけどさ。俺が安心して生活できる分だけ稼ぎたいとは思ってるけど……こんなに貰っていいのか?
「あ、足りない?」
「あ、いえ、十分です! むしろ多いくらいです!」
「そう? じゃあ引き受けてくれる?」
「はい!」
と、いう事でエルフお姉さんの手伝いをする事になった。
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