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最終章 故郷
◇27 え、マジでこれで行くの……?
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ヴィンスの故郷に着いたのは、次の日の昼。また入国で何かひと悶着あるのかと思いきや、何かスムーズに何事もなく入らせてもらっちゃった。この船にヴィンセント殿下が乗っていらっしゃるって分かっているからこその対応なのかな。
「……本当にこれでいいの?」
「ばっちりだ」
「……」
まさか、2年前に着た振袖を引っ張り出すとは思いもしなかった。成人式で着たやつだ。まぁ、私自身派手なものはあまり好きではないから振袖も青と白のシンプルなもの。着方もお母さんに教えてもらったのを思い出して何とか着たけど。
あ、実はお母さん着物の先生してたの。だからいくつか着物あるんだけど、私にはちょっと大人っぽ過ぎるからこれにした。というか、一応自分でこれ着てるしな。
だけどだ、周りには振袖を着た人が一人もいないのにこれを着て外を出歩けと、そう言いたいのか。
はぁ、なんて事をさせるんだこのイケメン王子様は。まぁ背に腹は代えられないから着たけどさ。
足袋と草履も履いて、さ、いざ出陣じゃ。
「ほら行くぞ」
「……」
「何だよ、今更ビビってんのか?」
「はぁ? 違うし! ビビってないし!」
「んじゃ大丈夫だな、頼みますよ日本王国の王女さんよ」
「……それ、やめない?」
「それで行ったほうが何かといいって言ったの覚えてないのか」
「……はぁい」
なんか、手を掴まれたんですけど。これ、エスコートってやつ? 殿下様も大変ですこと。
まぁ、言わずもがな。視線が凄い。まぁ、もし振袖を着ていなかったとしてもこうなっていたのかもしれない。だって隣にはこの国の王子様がいらっしゃるんだし。
でもこれ、本当に居心地悪いな。
「どした」
「いや、ヴィンス、苦労してんのね」
「分かるか」
「うん」
船から降りるとなんか道の先に両サイドに何人も並ぶ人達。何か頭下げられちゃってるんですけど。
「おかえりなさいませ、サーセスト王国第一王子殿下」
「サーセスト王国にようこそ、お客様」
うわぁ、お客様ですって。私の事お客様ですって。怖いんですけど、逆に。
「お待ちしてましたよ、殿下」
あ、また会った。あの護衛役の人。何か隣に馬車みたいなのあるんだけど。これに乗れと、そう言ってるの?
乗れ、とヴィンスに言われよっこいしょと頑張って乗った。振袖着るの久々だから段差登るの気を付けないといけないのに。
まぁ、馬車に乗って扉が閉じて、やっと息を付けた。
「殿下が国を出た理由が分かった気がします」
「殿下やめろ」
「はいはい」
そんなに嫌か。わがままめ。まぁこれから嫌という程殿下殿下呼ばれるからな。私はやめてあげよう。
なんか、馬車って初めて乗ったけどそんなに乗り心地が悪いわけじゃないのね。まぁ王子様が乗るんだから最高級なんだろうけど、それでも乗り心地はいい。
「緊張してるのか?」
「いやいやいや、こんなの初めて過ぎて緊張どころの騒ぎじゃないんですけど」
「あははっ、別に取って食いやしないから安心しなって」
いやいやいや、緊張しない方がおかしいって。だってあれよ? こんなたっかい馬車に乗せられて目の前にはこの国の王子様よ? 振袖着せられてるだけでも恥ずかしいってのにさぁ、なんて事させてくれとんじゃ。全く。
「ほら、着いたぞ」
「でっ……」
……っっっっっっっっか!! え、アレがお城!? デカすぎやしませんか!? え、今から私達あそこ行くの!?
「……帰らせてい……」
「ただけるわけないだろ?」
めっちゃくちゃ良い笑顔で肩掴んでくるんですけど。今の写真撮りたかった。めちゃくちゃ好みの顔だから余計よね。イケメン万歳。
はぁ、平常心平常心。そんな事を心の中で唱え続けた。何か馬鹿な事やってんなってヴィンスは思っただろう。だがしかし、今の私はそんなヴィンスに言い返すような余裕はこれっぽっちもないわけで。
馬車が停まると、どっくんどっくんと心臓破裂寸前。扉が開いて、先に降りてってしまったヴィンス。ほら降りろ、と手を差し出してくれて、あぁもうこれ逃げられないと腹をくくったのだが……
「おかえりなさいませ、ヴィンセント第一王子殿下。いらっしゃいませ、お客様」
はい、破裂しました。私の心臓。口が塞がらなかったけど、何とかして平常心を保たなきゃいけないと念じた。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
……すっげぇ、使用人さん? メイドさん? 達に頭下げられちゃってるより何より、ここから見上げるお城、迫力ありすぎる。すごい、これ絶対世界文化遺産に登録されるレベルよ。
「アホ、見上げてるな、歩け」
だなんて小声で言われ我に返り、歩いた。だってしょうがないじゃん、こんなの初めて見たんだから。
お城の中は煌びやか。下には真っ赤な絨毯が敷かれ、天井には大きすぎるシャンデリア。うわぁ、何百万するんだろ、あれ。いや、憶いってるかも。
「陛下は」
「謁見室にてお二人をお待ちです。ですので、殿下はまずお着替えを。お客様は私がお連れいたします」
あの、ヴィンスさんよ。すんごく呆れた目してません? それどういう事です?
「待ってろ」
と、一言残してさっさと行ってしまった。
え、私一人置いてくの? 着替えする為? まぁ今着てるのラモストエリス国で買ったやつだけど。王様に会うからそれじゃダメだって事ね。無礼だよね。
「ではお客様、こちらへどうぞ」
「えっ?」
と、違う所に案内されてしまった。
客間とかそういう所かな。
そう思っていた私が甘かった。
「……は、じめ、まして……江口、奈央、と申します……」
「サーセスト王国国王陛下、並びに王妃殿下でございます」
「初めまして、ナオさん」
わぁお、待ってろって言ってたのに何で私こんな所に連れてきたの? さっきの使用人さん、出てこい?
「……本当にこれでいいの?」
「ばっちりだ」
「……」
まさか、2年前に着た振袖を引っ張り出すとは思いもしなかった。成人式で着たやつだ。まぁ、私自身派手なものはあまり好きではないから振袖も青と白のシンプルなもの。着方もお母さんに教えてもらったのを思い出して何とか着たけど。
あ、実はお母さん着物の先生してたの。だからいくつか着物あるんだけど、私にはちょっと大人っぽ過ぎるからこれにした。というか、一応自分でこれ着てるしな。
だけどだ、周りには振袖を着た人が一人もいないのにこれを着て外を出歩けと、そう言いたいのか。
はぁ、なんて事をさせるんだこのイケメン王子様は。まぁ背に腹は代えられないから着たけどさ。
足袋と草履も履いて、さ、いざ出陣じゃ。
「ほら行くぞ」
「……」
「何だよ、今更ビビってんのか?」
「はぁ? 違うし! ビビってないし!」
「んじゃ大丈夫だな、頼みますよ日本王国の王女さんよ」
「……それ、やめない?」
「それで行ったほうが何かといいって言ったの覚えてないのか」
「……はぁい」
なんか、手を掴まれたんですけど。これ、エスコートってやつ? 殿下様も大変ですこと。
まぁ、言わずもがな。視線が凄い。まぁ、もし振袖を着ていなかったとしてもこうなっていたのかもしれない。だって隣にはこの国の王子様がいらっしゃるんだし。
でもこれ、本当に居心地悪いな。
「どした」
「いや、ヴィンス、苦労してんのね」
「分かるか」
「うん」
船から降りるとなんか道の先に両サイドに何人も並ぶ人達。何か頭下げられちゃってるんですけど。
「おかえりなさいませ、サーセスト王国第一王子殿下」
「サーセスト王国にようこそ、お客様」
うわぁ、お客様ですって。私の事お客様ですって。怖いんですけど、逆に。
「お待ちしてましたよ、殿下」
あ、また会った。あの護衛役の人。何か隣に馬車みたいなのあるんだけど。これに乗れと、そう言ってるの?
乗れ、とヴィンスに言われよっこいしょと頑張って乗った。振袖着るの久々だから段差登るの気を付けないといけないのに。
まぁ、馬車に乗って扉が閉じて、やっと息を付けた。
「殿下が国を出た理由が分かった気がします」
「殿下やめろ」
「はいはい」
そんなに嫌か。わがままめ。まぁこれから嫌という程殿下殿下呼ばれるからな。私はやめてあげよう。
なんか、馬車って初めて乗ったけどそんなに乗り心地が悪いわけじゃないのね。まぁ王子様が乗るんだから最高級なんだろうけど、それでも乗り心地はいい。
「緊張してるのか?」
「いやいやいや、こんなの初めて過ぎて緊張どころの騒ぎじゃないんですけど」
「あははっ、別に取って食いやしないから安心しなって」
いやいやいや、緊張しない方がおかしいって。だってあれよ? こんなたっかい馬車に乗せられて目の前にはこの国の王子様よ? 振袖着せられてるだけでも恥ずかしいってのにさぁ、なんて事させてくれとんじゃ。全く。
「ほら、着いたぞ」
「でっ……」
……っっっっっっっっか!! え、アレがお城!? デカすぎやしませんか!? え、今から私達あそこ行くの!?
「……帰らせてい……」
「ただけるわけないだろ?」
めっちゃくちゃ良い笑顔で肩掴んでくるんですけど。今の写真撮りたかった。めちゃくちゃ好みの顔だから余計よね。イケメン万歳。
はぁ、平常心平常心。そんな事を心の中で唱え続けた。何か馬鹿な事やってんなってヴィンスは思っただろう。だがしかし、今の私はそんなヴィンスに言い返すような余裕はこれっぽっちもないわけで。
馬車が停まると、どっくんどっくんと心臓破裂寸前。扉が開いて、先に降りてってしまったヴィンス。ほら降りろ、と手を差し出してくれて、あぁもうこれ逃げられないと腹をくくったのだが……
「おかえりなさいませ、ヴィンセント第一王子殿下。いらっしゃいませ、お客様」
はい、破裂しました。私の心臓。口が塞がらなかったけど、何とかして平常心を保たなきゃいけないと念じた。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
……すっげぇ、使用人さん? メイドさん? 達に頭下げられちゃってるより何より、ここから見上げるお城、迫力ありすぎる。すごい、これ絶対世界文化遺産に登録されるレベルよ。
「アホ、見上げてるな、歩け」
だなんて小声で言われ我に返り、歩いた。だってしょうがないじゃん、こんなの初めて見たんだから。
お城の中は煌びやか。下には真っ赤な絨毯が敷かれ、天井には大きすぎるシャンデリア。うわぁ、何百万するんだろ、あれ。いや、憶いってるかも。
「陛下は」
「謁見室にてお二人をお待ちです。ですので、殿下はまずお着替えを。お客様は私がお連れいたします」
あの、ヴィンスさんよ。すんごく呆れた目してません? それどういう事です?
「待ってろ」
と、一言残してさっさと行ってしまった。
え、私一人置いてくの? 着替えする為? まぁ今着てるのラモストエリス国で買ったやつだけど。王様に会うからそれじゃダメだって事ね。無礼だよね。
「ではお客様、こちらへどうぞ」
「えっ?」
と、違う所に案内されてしまった。
客間とかそういう所かな。
そう思っていた私が甘かった。
「……は、じめ、まして……江口、奈央、と申します……」
「サーセスト王国国王陛下、並びに王妃殿下でございます」
「初めまして、ナオさん」
わぁお、待ってろって言ってたのに何で私こんな所に連れてきたの? さっきの使用人さん、出てこい?
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