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第五章 太陽さんご無沙汰です
◇22 こんなに大変なのね
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今日もとっても素敵な晴天。
「あち”~~~~~溶けそうだよシャロン君ん”~~~~~!」
マジで死にそうです。海の上ってこんなに暑いの? それともこの異世界が異常気象なの?
そんな時、何かが落ちる音がした。
「……お前、何してんの」
「は?」
ちょっと遠くから、ヴィンスの声がした。
今私が何をしてるのかって? 大きなバケツを見つけたから氷と水を入れて足を突っ込んでただけ。あぁあと手にはアイスね。
でも、何でそんな反応なのよ。
口、あんぐりしてるけど。
「……それ、船の外でやるなよ。あと誰か見てるとき以外」
「は?」
「おいシャロンこっち来い」
と、言われたけれどシャロン君はヴィンスに見向きもしなかった。聞いてないふり、と言ったほうがいいか。
「シャ~ロ~ン~!!」
と言われても、そっぽを向いていて。え、何々これどういう状況よ。
「どしたの」
「……」
心なしか、ヴィンスさんほっぺた赤くなってません? 暑いから?
「……それ、お前の国じゃどうだか知らないけど、こっちじゃ足出すの、裸見せてるのと一緒だからな」
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
え、うっそ、なにそれ!?
じゃあ短パン履けないじゃん!! こんな夏に短パン履けないとか地獄でしょ!!
「……スケベ」
「それはこっちのセリフだアホ。さっさと仕舞え」
「え、やだ」
「んだと?」
「熱中症で死んじゃう」
「……はぁぁぁ、あと5分な」
「10分」
「経ったら仕舞え」
「はーい」
ちぇ、氷水冷たくて気持ちよかったのに。
……あ。
じゃあ浅い氷水ならズボン履いてても大丈夫? 今私スカートでめくってるけど、ズボンで足首ちょっとまくればOKじゃない?
という事でやってみました。
「ヴィンス~! これならOK?」
「……はいはい、降参。だけど船だけだからな。外じゃダメだからな」
「は~い!」
やったぁ! ヴィンスからOKもらえた!
これで夏を越せそうです。
「それより、お前今日やる事あったろ」
「あ、そういえば」
暑さで忘れてたよ。
ほら、と渡してくれたタオルで足を拭き、サンダルを履いた。そして冷暗所に。
冷暗所に置いてある袋。結構大きいんだけど、中身は……
「これで油作るのか」
「うん、オリーブって言うの」
そう、これからオリーブオイルを作ります!
そろそろ油がギリギリになってきたし、もうこんなに集まったから作っちゃおうと思ってたんだ。
「こんなにいっぱい使うのか」
「こんなにあっても出来る油は少しなんだよ」
「マジかよ」
「で、これも根気のいる作業ですのでヴィンスさんよろしくお願いします」
「まぁそうだろうと思った」
「けど量が量だから私も一緒にやるから安心してね」
という事で、オリーブを全部洗いましょう!
ゴミはちゃんと洗い流して、傷んでいるものは弾かないとね。
「で、頑丈な厚手の袋を二重にしてその中にオリーブを入れましょう」
「ほい」
「そして……ひたすら揉みます」
「ひたすら?」
「そう、ひたすら。水分とオイルが分離するまで」
「マジかよ」
そう、ここが一番大変な作業なのです。
よ~し揉むぞ~!
「なんか変な感じ」
「感触が?」
「そう」
これ本当に分離するのかな、なんて思いつつ揉む事数十分。
これ、出来た? 分離してる?
「……出来てる?」
「のか?」
よく分からん。とりあえずもうちょっと揉んでみる?
と思ったら、うん、これくらいなら大丈夫でしょ。分離してると思う。
「じゃあこのネットに入れて絞ります。力入れ過ぎはアウトです」
「マジ?」
手袋をしたヴィンスが絞ってくれました。
うわぁ、変な色。ぎゅ~っと液体が出てきたけど、これからあの透き通ったオリーブオイルが出てくるなんて想像出来ないな。あ、まぁネットで調べた時にはちゃんと綺麗なオリーブオイル出てきてた動画見たけどさ。
でもいざ自分でやるとなると心配じゃん?
「こんなもんか」
「うん、じゃあこのまま一日置こうか」
「え? 一日?」
「水分と油分が分離して油が上に浮いてくるの」
「へぇ、面白いもんだな」
「でしょ?」
という事で続きは明日です!
はい、次の日になりました。
え、早すぎ? そんなの気にしない気にしない。
「さて続きといきましょう」
「へぇ、上と下に分かれてる」
「上が油、下が沈殿物」
「じゃあ上がオリーブオイル?」
「そう、掬い上げて漉します」
「おっけー」
用意したのが、コーヒーを豆で淹れる時に使われるコーヒードリップとコーヒーフィルター。ドリップにフィルターをセットする。
本来ならここには砕いたコーヒー豆を入れるのだが、今日はオリーブオイルを入れます。
掬ったオリーブオイルをドリップの中に。
ぽた、ぽた、と一滴一滴ゆっくりと下にセットした容器に入っていく。
「……結構時間かかるな」
「オリーブオイルを作るのには結構時間と労力がいるんだよ」
「これ、とんかつ揚げたら美味そう」
「苦労した分ね」
「そう、それ」
もうヴィンス君の頭の中はとんかつなのね。
そんな話をしていても全然たまらないオリーブオイル。早く全部漉せないかな。
でもこれは根気のいる作業だし。頑張ろう。
そして、ようやく全部漉すことができた。
と言っても、まだオリーブは残っているからまたやらなきゃいけないんだけど。
今日だって、これったけのオリーブオイルしか作れなかった。
これじゃあとんかつ揚げられない。
「俺、オリーブオイル係やるわ。とんかつ揚げるのに結構必要だろ」
「え、まじ?」
「この前言ってたさ、かつ丼? 食いたい」
「お願いします」
「よっしゃ」
という事で、ヴィンスがオリーブオイル係となりました。
どんだけ食べたいのよ。
「……とんかつ、唐揚げ、メンチカツ、コロッケ」
「めんちかつ? ころっけ?」
「めっちゃ美味しいの作ってあげる」
「まじ? よっしゃあ!」
料理に一番必要な油。こんなに苦労しないと作れないなんて、昨日今日で十分味わった。
よろしくお願いします、ヴィンス様。
「あち”~~~~~溶けそうだよシャロン君ん”~~~~~!」
マジで死にそうです。海の上ってこんなに暑いの? それともこの異世界が異常気象なの?
そんな時、何かが落ちる音がした。
「……お前、何してんの」
「は?」
ちょっと遠くから、ヴィンスの声がした。
今私が何をしてるのかって? 大きなバケツを見つけたから氷と水を入れて足を突っ込んでただけ。あぁあと手にはアイスね。
でも、何でそんな反応なのよ。
口、あんぐりしてるけど。
「……それ、船の外でやるなよ。あと誰か見てるとき以外」
「は?」
「おいシャロンこっち来い」
と、言われたけれどシャロン君はヴィンスに見向きもしなかった。聞いてないふり、と言ったほうがいいか。
「シャ~ロ~ン~!!」
と言われても、そっぽを向いていて。え、何々これどういう状況よ。
「どしたの」
「……」
心なしか、ヴィンスさんほっぺた赤くなってません? 暑いから?
「……それ、お前の国じゃどうだか知らないけど、こっちじゃ足出すの、裸見せてるのと一緒だからな」
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
え、うっそ、なにそれ!?
じゃあ短パン履けないじゃん!! こんな夏に短パン履けないとか地獄でしょ!!
「……スケベ」
「それはこっちのセリフだアホ。さっさと仕舞え」
「え、やだ」
「んだと?」
「熱中症で死んじゃう」
「……はぁぁぁ、あと5分な」
「10分」
「経ったら仕舞え」
「はーい」
ちぇ、氷水冷たくて気持ちよかったのに。
……あ。
じゃあ浅い氷水ならズボン履いてても大丈夫? 今私スカートでめくってるけど、ズボンで足首ちょっとまくればOKじゃない?
という事でやってみました。
「ヴィンス~! これならOK?」
「……はいはい、降参。だけど船だけだからな。外じゃダメだからな」
「は~い!」
やったぁ! ヴィンスからOKもらえた!
これで夏を越せそうです。
「それより、お前今日やる事あったろ」
「あ、そういえば」
暑さで忘れてたよ。
ほら、と渡してくれたタオルで足を拭き、サンダルを履いた。そして冷暗所に。
冷暗所に置いてある袋。結構大きいんだけど、中身は……
「これで油作るのか」
「うん、オリーブって言うの」
そう、これからオリーブオイルを作ります!
そろそろ油がギリギリになってきたし、もうこんなに集まったから作っちゃおうと思ってたんだ。
「こんなにいっぱい使うのか」
「こんなにあっても出来る油は少しなんだよ」
「マジかよ」
「で、これも根気のいる作業ですのでヴィンスさんよろしくお願いします」
「まぁそうだろうと思った」
「けど量が量だから私も一緒にやるから安心してね」
という事で、オリーブを全部洗いましょう!
ゴミはちゃんと洗い流して、傷んでいるものは弾かないとね。
「で、頑丈な厚手の袋を二重にしてその中にオリーブを入れましょう」
「ほい」
「そして……ひたすら揉みます」
「ひたすら?」
「そう、ひたすら。水分とオイルが分離するまで」
「マジかよ」
そう、ここが一番大変な作業なのです。
よ~し揉むぞ~!
「なんか変な感じ」
「感触が?」
「そう」
これ本当に分離するのかな、なんて思いつつ揉む事数十分。
これ、出来た? 分離してる?
「……出来てる?」
「のか?」
よく分からん。とりあえずもうちょっと揉んでみる?
と思ったら、うん、これくらいなら大丈夫でしょ。分離してると思う。
「じゃあこのネットに入れて絞ります。力入れ過ぎはアウトです」
「マジ?」
手袋をしたヴィンスが絞ってくれました。
うわぁ、変な色。ぎゅ~っと液体が出てきたけど、これからあの透き通ったオリーブオイルが出てくるなんて想像出来ないな。あ、まぁネットで調べた時にはちゃんと綺麗なオリーブオイル出てきてた動画見たけどさ。
でもいざ自分でやるとなると心配じゃん?
「こんなもんか」
「うん、じゃあこのまま一日置こうか」
「え? 一日?」
「水分と油分が分離して油が上に浮いてくるの」
「へぇ、面白いもんだな」
「でしょ?」
という事で続きは明日です!
はい、次の日になりました。
え、早すぎ? そんなの気にしない気にしない。
「さて続きといきましょう」
「へぇ、上と下に分かれてる」
「上が油、下が沈殿物」
「じゃあ上がオリーブオイル?」
「そう、掬い上げて漉します」
「おっけー」
用意したのが、コーヒーを豆で淹れる時に使われるコーヒードリップとコーヒーフィルター。ドリップにフィルターをセットする。
本来ならここには砕いたコーヒー豆を入れるのだが、今日はオリーブオイルを入れます。
掬ったオリーブオイルをドリップの中に。
ぽた、ぽた、と一滴一滴ゆっくりと下にセットした容器に入っていく。
「……結構時間かかるな」
「オリーブオイルを作るのには結構時間と労力がいるんだよ」
「これ、とんかつ揚げたら美味そう」
「苦労した分ね」
「そう、それ」
もうヴィンス君の頭の中はとんかつなのね。
そんな話をしていても全然たまらないオリーブオイル。早く全部漉せないかな。
でもこれは根気のいる作業だし。頑張ろう。
そして、ようやく全部漉すことができた。
と言っても、まだオリーブは残っているからまたやらなきゃいけないんだけど。
今日だって、これったけのオリーブオイルしか作れなかった。
これじゃあとんかつ揚げられない。
「俺、オリーブオイル係やるわ。とんかつ揚げるのに結構必要だろ」
「え、まじ?」
「この前言ってたさ、かつ丼? 食いたい」
「お願いします」
「よっしゃ」
という事で、ヴィンスがオリーブオイル係となりました。
どんだけ食べたいのよ。
「……とんかつ、唐揚げ、メンチカツ、コロッケ」
「めんちかつ? ころっけ?」
「めっちゃ美味しいの作ってあげる」
「まじ? よっしゃあ!」
料理に一番必要な油。こんなに苦労しないと作れないなんて、昨日今日で十分味わった。
よろしくお願いします、ヴィンス様。
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