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第五章 太陽さんご無沙汰です
◇21 デジャヴった
しおりを挟む魔法道具の樽を見つけて数日後。
牛乳も生クリームもあるから、今日はケーキでも焼こうかと思っていた。バターは油で代用できるのをいくつか調べておいたしね。
そうキッチンに向かおうとしていたその時、キッチンから出てきたヴィンス、
「ナオ」
真顔で私を呼んだ彼。手に何か持っていて。
それはタッパか?
______________
アイテム:魔法のタッパ
固形食を入れるためのタッパ。
乳製品専用。
少量の固形食を入れ3日間冷蔵保存すると増えます。
量は無限大、賞味期限なし。
雑菌などの心配なし。
ただし、要冷蔵。
______________
デジャヴった。
マジですか。
「ナオ、ウチの冷蔵庫の中に入ってる固形乳製品は」
「ヨーグルト、ミックスチーズ」
「バターは何時なくなった?」
「……一昨日」
遅かったぁぁぁぁぁ!! 一昨日見つかればよかったのに!!
そうだよ、もうこれくらいしかないから半分こしてトーストしたパンに塗って食べようって言ったよ。それ言ったの私だよ。
しかもタッパ3つ見つかったみたいだし。ちょうどバター入れて丁度だよ。はぁ、タイミング悪すぎ。
「とりあえず、ヨーグルトとミックスチーズ、入れるか」
「うん」
あ、因みに言うとミックスチーズは私の家の冷凍庫に入れてあったものです。チーズ好きだから取っておいたんだよね。増えるなら万々歳だ。
けれど、私は気が付いた。そうだ、そういえばそれがあった!
ちょっと待ってて! とキッチンにあったノートを持って自室に走った。スマホを付けて……検索!!
「ヴィンスっっ!!」
「うぉ!?」
ヴィンスのいるキッチンに直行。勢い余って危うくヴィンスにぶつかるところだったが今はそれどころじゃない。
「作ろう!!」
「……バターか」
「うんっ!!」
「作れるのか」
「作れますっ!! たぶんだけど!!」
私の手には、洗った空のペットボトル。そう、それとこれが必要。
生クリームだ!
「でも、生クリームの種類が分からないから成功するかどうか分からないけど、やる?」
「そりゃやるだろ、リベンジマッチだ」
あ、一回バター作り失敗してるからね。負けず嫌いって事ね。まぁ私もそうだけど。
結構体力いるから、ヴィンスさんよろしくお願いします!
「じゃあこの中に冷やした生クリームを入れます」
「あとは?」
「いえ、そのままふたを閉めます」
「は?」
「そして、振ってください」
「どれだけ」
「いっぱい」
「……マジかよ」
「代わりばんこにしよ」
「いや、俺やる。こういうのは俺の仕事だろ」
あ、やりたいんだ。目が光ってる。何かよく分からない事やらせることになるんだけど、興味津々な感じ?
さ、力強く振って頂きますっ!!
「はい、どうぞ」
「よっしゃ」
めっちゃ気合いを入れて振り出したヴィンス。まぁこのあとホイップ状になるんだけど、そこからも振らないといけないし。
「音しなくなったぞ。ホイップだよな、これ」
「えっ早っ!?」
「そうか?」
「じゃあ、もっと振ってください」
「もっと?」
「うん、もっと。もし中身が振れなかったら外に出て温めて。外真夏だからいけるでしょ」
「りょーかい」
これ、絶対私一人じゃ中々出来なかったかも。これ結構重労働だよね。いや~一家に一台欲しいヴィンス様だわ。ありがとうございます。
「液体になったぞ」
「じゃあもうちょっと振って。それでおしまい」
振り続けると、ホイップになり、その後分離して塊と液体になるのだ。
という事で、私はハサミを持って待機。うんうん、よさそう。
「どうだ」
「おっけー!」
じゃあ、ペットボトルの口を開けて液体を取り出し、ペットボトルを切って塊を取り出します。
「よしっ、完成っ!」
「これで?」
「うん!」
一口味見をしてみたら……うん、バターだ。
______________
食材:手作り無塩バター
食用バター。
牛乳から分離したクリームを練って固めた食品。
賞味期限は2~3日程度。
要冷蔵。
______________
うん、システムウィンドウもこういってるから成功って事だよね!
「賞味期限が2~3日でギリギリだけど大丈夫だよね」
「冷蔵庫に入れておけばいいだろ」
じゃあさっさと魔道具タッパに入れて冷蔵庫に入れましょう!
「こっちの液体は?」
「飲んでみる?」
「いいのか?」
「いいよ。あ、私の分も残しといてね」
残った液体を飲んだヴィンスは……ちょっとびっくりしていた。
「薄い牛乳みたいな……」
「生クリームが分離したものだよ」
「へぇ……」
うん、私も初めて飲んだけど、これも好きかも。美味しい。
バター作りって初めてだったけど、結構楽しかったな。これでバターは無限大になったけど、もう一回やってみたい気持ちもある。今度は私が振ります。頑張ります。
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