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第四章 幻想的で怖すぎる深海

◇19 シャロン君と仲良くなろう大作戦

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 新しく入った新人クルー、シャロン君。あ、人じゃないか、鳥か。わしだっけ。

 ただ今、仲良くなろうと頑張ってる最中です。


「シャ~ロン君! 何が食べたい? お肉? 野菜?」

「……」

「あ、魚好き? でもごめんね、今魚食べられないの」


 首を傾げるシャロン君。あ、やっぱりお魚食べたかった?


「……シャロンは雑食だぞ」

「好きなものは?」

「肉。だけど野菜にしろ」

「え?」

「どーせお前ここに来るまでずっと肉食ってたろ。野菜食え、野菜を」


 あら、ちゃんと栄養面を考えてるのね。まぁ飼い主ではあるから責任は持たないといけないし。

 でも、野菜って言っても結構体おっきいからたくさん食べるかな。私が知ってる普通のワシより3倍はあるよね。


「どのくらい食べる? そのまま食べる? 野菜炒めとかにした方がいい? 野菜いっぱいあるから遠慮しないでね!」

「ただ洗ってそのまま出してくれればいい」

「えっ、いいのそれで」

「気にするな」

「でも、雑食でしょ? 何でも食べるんでしょ? なら私作ってあげたい!」

「やんなくていい」

「え~」

「そんなにシャロンに構わなくていいから」

「それより俺の飯を作れって言いたいの?」

「……そうは言ってない」


 なんかヘソ曲げてません? ただ仲良くなりたいだけなのに。邪魔しないでよ。

 すると、甲板の端の上に乗っていたシャロン君が私の目の前まで来てくれた。芝生に降りてきて、私を見上げてる。

 かっこいい、かっこいい! わしってちゃんと見たことなかったけど、こんなにかっこいいのね! いや、異世界だから違う種類なのかな。いや、それにしてもかっこいい。

 触っていい? って聞くと首を傾げてきて。え、可愛いんですけどって思いつつ頭を撫でたら……え、なんか嬉しそうなんですけど!! え~可愛い可愛い!!

 触り心地いい……!! ふさふさしてる!! いつまででも触ってられる!!

 こ、これは……クセになるな。

 ……なんか、あっちにいる人超不機嫌なんですけど。視線をだいぶ感じる。まぁ、放っておけばいっか。


「野菜炒め、食べたい?」


 そう聞いたら、頷いてくれた。なぁんだ食べてくれるじゃん! というかちゃんと話通じてる! 意思疎通が出来てる! 嬉しい!

 いっぱい食べたい? って聞いてみたらまた頷いてくれた。うんうん、頑張ってたくさん作ります!

 待っててね! と頭をなでなでしてからルンルンでキッチンに向かった。


「で、どーしたのかなヴィンス君は」

「……」


 無言で、その人が後ろから近づいてきた。

 いつもなら、こんなふうに後ろから軽く抱きつかれると心臓どっくんどっくんするけれど、なんか不機嫌だし……可愛いといいますか。


「ヴィンス君は何が食べたいですかー」

「野菜炒め」

「あら、とんかつはいいのね」

「え、まじ?」

「まじまじ」

「やった」


 はい復活。機嫌治ったな。てか分かりやすっ。これ、俗に言う嫉妬ってやつよね。うわっ、可愛くないですかちょっと。

 昨日は一緒にいたいって告白されて心臓バクバクで殺されそうになったけど、嫉妬させるのいいわ。シャロン君を利用するわけではないけれど、また嫉妬させてみようかしら。楽しそう。


「え、野菜炒め先?」

「豚肉、持ってきて」

「あとは?」

「パン、卵、薄力粉、キャベツ、にんじん、ピーマン、もやし」

「了解」


 よし、行った。てか、目が光ってたけどそんなにとんかつ食べたかったのか。

 いっぱい頼んだけど、ヴィンスなら一回で全部持ってきそうだな。

 この前ヴィンスが食べたのは冷凍食品。けど今回はちゃんと一から作るから、頑張って美味しく作ろう!

 あ、因みに言うと揚げ物はあまりやりたくなかった。油は無限じゃないし。

 けど今回、買い物であれを見つけて買ったのだ。オリーブを!

 そんでもって畑に埋めたら芽を出して実がなったから、オリーブオイルを作ることにしたのだ。まぁうまくいく保証はないけど、ヴィンスがとんかつ食べたそうだったから頑張ってオリーブオイル作ります!

 と言っても、もっと集まってからだけど。オリーブオイル作るのにはだいぶオリーブ必要になるらしい。

 ま、油もうないってわけじゃないし、いいよね。




「わぁお、全部食べちゃった。足りなかった?」


 おっきいお皿に山盛りにした野菜炒め、数分で消えた。どんだけの大食いなんだ、シャロン君は。

 まぁ、私たち二人を持ち上げるだけのパワーを持ってるんだからそりゃ食いっぷりはいいはずよね。

 お腹いっぱい? と聞いたら頷いていたのでよしとしよう。


「で、ヴィンス君は満足ですか」

「美味い」

「あ、そうですか。そりゃよかったです」

「俺もだけど、シャロンもナオに胃袋掴まれたな」

「そう?」

「めっちゃ嬉しそうだし」

「そうなの!?」


 え、めっちゃ嬉しいんですけど!! 美味しかったの? じゃあもっと美味しいの作っちゃう!!

 実は、冷暗所には野菜とかが山積みになってる。私達が食べる量より多く畑に野菜が実ってるってことだ。

 だから、シャロン君にはたっくさん野菜を食べてもらわないとね! あ、もちろんお肉も卵もだけど。もし海上に上がれたらお魚もたくさんね!

 これからもっと楽しくなりそうな予感。嬉しいなぁ。
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