異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫

文字の大きさ
上 下
19 / 29
第四章 幻想的で怖すぎる深海

◇19 シャロン君と仲良くなろう大作戦

しおりを挟む

 新しく入った新人クルー、シャロン君。あ、人じゃないか、鳥か。わしだっけ。

 ただ今、仲良くなろうと頑張ってる最中です。


「シャ~ロン君! 何が食べたい? お肉? 野菜?」

「……」

「あ、魚好き? でもごめんね、今魚食べられないの」


 首を傾げるシャロン君。あ、やっぱりお魚食べたかった?


「……シャロンは雑食だぞ」

「好きなものは?」

「肉。だけど野菜にしろ」

「え?」

「どーせお前ここに来るまでずっと肉食ってたろ。野菜食え、野菜を」


 あら、ちゃんと栄養面を考えてるのね。まぁ飼い主ではあるから責任は持たないといけないし。

 でも、野菜って言っても結構体おっきいからたくさん食べるかな。私が知ってる普通のワシより3倍はあるよね。


「どのくらい食べる? そのまま食べる? 野菜炒めとかにした方がいい? 野菜いっぱいあるから遠慮しないでね!」

「ただ洗ってそのまま出してくれればいい」

「えっ、いいのそれで」

「気にするな」

「でも、雑食でしょ? 何でも食べるんでしょ? なら私作ってあげたい!」

「やんなくていい」

「え~」

「そんなにシャロンに構わなくていいから」

「それより俺の飯を作れって言いたいの?」

「……そうは言ってない」


 なんかヘソ曲げてません? ただ仲良くなりたいだけなのに。邪魔しないでよ。

 すると、甲板の端の上に乗っていたシャロン君が私の目の前まで来てくれた。芝生に降りてきて、私を見上げてる。

 かっこいい、かっこいい! わしってちゃんと見たことなかったけど、こんなにかっこいいのね! いや、異世界だから違う種類なのかな。いや、それにしてもかっこいい。

 触っていい? って聞くと首を傾げてきて。え、可愛いんですけどって思いつつ頭を撫でたら……え、なんか嬉しそうなんですけど!! え~可愛い可愛い!!

 触り心地いい……!! ふさふさしてる!! いつまででも触ってられる!!

 こ、これは……クセになるな。

 ……なんか、あっちにいる人超不機嫌なんですけど。視線をだいぶ感じる。まぁ、放っておけばいっか。


「野菜炒め、食べたい?」


 そう聞いたら、頷いてくれた。なぁんだ食べてくれるじゃん! というかちゃんと話通じてる! 意思疎通が出来てる! 嬉しい!

 いっぱい食べたい? って聞いてみたらまた頷いてくれた。うんうん、頑張ってたくさん作ります!

 待っててね! と頭をなでなでしてからルンルンでキッチンに向かった。


「で、どーしたのかなヴィンス君は」

「……」


 無言で、その人が後ろから近づいてきた。

 いつもなら、こんなふうに後ろから軽く抱きつかれると心臓どっくんどっくんするけれど、なんか不機嫌だし……可愛いといいますか。


「ヴィンス君は何が食べたいですかー」

「野菜炒め」

「あら、とんかつはいいのね」

「え、まじ?」

「まじまじ」

「やった」


 はい復活。機嫌治ったな。てか分かりやすっ。これ、俗に言う嫉妬ってやつよね。うわっ、可愛くないですかちょっと。

 昨日は一緒にいたいって告白されて心臓バクバクで殺されそうになったけど、嫉妬させるのいいわ。シャロン君を利用するわけではないけれど、また嫉妬させてみようかしら。楽しそう。


「え、野菜炒め先?」

「豚肉、持ってきて」

「あとは?」

「パン、卵、薄力粉、キャベツ、にんじん、ピーマン、もやし」

「了解」


 よし、行った。てか、目が光ってたけどそんなにとんかつ食べたかったのか。

 いっぱい頼んだけど、ヴィンスなら一回で全部持ってきそうだな。

 この前ヴィンスが食べたのは冷凍食品。けど今回はちゃんと一から作るから、頑張って美味しく作ろう!

 あ、因みに言うと揚げ物はあまりやりたくなかった。油は無限じゃないし。

 けど今回、買い物であれを見つけて買ったのだ。オリーブを!

 そんでもって畑に埋めたら芽を出して実がなったから、オリーブオイルを作ることにしたのだ。まぁうまくいく保証はないけど、ヴィンスがとんかつ食べたそうだったから頑張ってオリーブオイル作ります!

 と言っても、もっと集まってからだけど。オリーブオイル作るのにはだいぶオリーブ必要になるらしい。

 ま、油もうないってわけじゃないし、いいよね。




「わぁお、全部食べちゃった。足りなかった?」


 おっきいお皿に山盛りにした野菜炒め、数分で消えた。どんだけの大食いなんだ、シャロン君は。

 まぁ、私たち二人を持ち上げるだけのパワーを持ってるんだからそりゃ食いっぷりはいいはずよね。

 お腹いっぱい? と聞いたら頷いていたのでよしとしよう。


「で、ヴィンス君は満足ですか」

「美味い」

「あ、そうですか。そりゃよかったです」

「俺もだけど、シャロンもナオに胃袋掴まれたな」

「そう?」

「めっちゃ嬉しそうだし」

「そうなの!?」


 え、めっちゃ嬉しいんですけど!! 美味しかったの? じゃあもっと美味しいの作っちゃう!!

 実は、冷暗所には野菜とかが山積みになってる。私達が食べる量より多く畑に野菜が実ってるってことだ。

 だから、シャロン君にはたっくさん野菜を食べてもらわないとね! あ、もちろんお肉も卵もだけど。もし海上に上がれたらお魚もたくさんね!

 これからもっと楽しくなりそうな予感。嬉しいなぁ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

処理中です...