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第三章 初めての陸地
◇15 出航っ!!
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朝。
外はだいぶ明るい。うわぁ、眩しっ。
てか、よく私部屋の向こう側にあるベッドでイケメン寝てるのによく寝れたな。まぁ、疲れてたってのもあるんだろうけれど。
「ふわぁ~っ……」
「はよ」
「あ、うん、おはよ」
うわ、起きてた。隣のイケメン起きてたよ。寝顔見られた? うわぁ恥ずかしっ。
顔洗ってくるね、といそいそと外に出ようと思ったけれど……
「ナオ、髪」
「あっ」
そういえば私、男設定だった。一応帽子の中に長い髪入れてたんだった。
……でも、困ったぞ。帽子被ってたら顔洗えない。
「待ってろ、お湯持ってくるから」
「……お願いします」
結局ヴィンスに頼ってしまいました。
私、ずっとヴィンスに頼りっぱなしだなぁ。と言っても、それしか方法がなかったってのもある。
海から拾ってもらったから恩返しがしたいって言われたけれど、もう恩返しは終わったような気がする。
「ほら、ナオ」
「あ、うん、ありがとう」
ヴィンスが持って来てくれたお湯が入った洗面器。あとタオルも。
初めてこの世界の宿に泊まったけれど……楽しむどころの騒ぎではなかった。
今度はそういうのなしで宿とかに泊まりたいな。うん。
宿を出た私達は、また港の市場に戻った。残りの買い物を済ませてしまおうという事になったのだ。
「肉に、ヨーグルトに、バターに、牛乳に、生クリームか」
「……いいの? 生クリームと牛乳」
「食べたいんだろ? アイスクリーム」
「……本当にいいの?」
「お金の余裕はあるから遠慮すんな」
「ありがとうございます」
そう、今は初夏。だからアイスクリームが食べたくなってしまった。手作りアイスクリームを調べてみたんだけど、その二つがないと作れないから困ってたんだけど、いいんですか。
まぁ、ヴィンスも甘いものは普通に好きみたいだし。だから美味しいものを作らせていただきます。
生クリームと牛乳は、大きな瓶に入ってるみたい。結構大きな瓶だ。
ほら、よくあるコーヒー牛乳が入ってる瓶あるじゃん。あれより2倍くらいかな。私じゃこれ一つ抱えるくらいしか出来ない。一体これを買ってく人達はどんな力持ちなのだろうか。
まぁでも、一応エコバッグがあるからいいけど。でも人前じゃ入れられないからヴィンスに持ってもらう事になるけれど。
あと、問題はお肉です。
「肉、食いたいか」
「うん食べたい」
「即答かよ」
「そういうヴィンスは? この前とんかつだいぶ美味しそうに食べてませんでしたか?」
「……」
ほーら図星だ。ずっと魚とか卵とかだったからお肉食べたいよね。
という事で精肉屋さんに行ってみたんだけど……
「鶏肉、牛肉、豚肉それぞれ5kg」
「へっ」
「まいどっ!」
マジすかヴィンスさんよ。そんなにお肉食べたかったんですか。
「冷凍すればOK」
「それ料理するの誰だと思ってるの?」
「手伝う」
「あ、はい」
「肉食いたくなってまた国に寄って面倒ごとに巻き込まれるの、嫌だろ」
「買いましょう」
いや、ドヤ顔しないでくださいよ。気持ちは分かるけど。
お店のお兄さんから渡されたお肉普通に抱えてるけどさ、重くない? 大丈夫? 全部で15kgなのに、流石力持ちさんだ。まぁエコバッグに入れてしまえば重くならないけど。早く人目の付かない所で袋に入れちゃいましょう。
「もう買う物はないな?」
「うん、もう十分」
「じゃあ、行くか」
「……う、うん」
「大丈夫だって。一応俺が副船長って事になってるから俺が喋る事になる。だからナオは俺の後ろに立ってればいいから。堂々としてていい」
「託します」
「了解、船長」
「……」
それ、やめてください。
緊張で心臓がドクンドクンと音を立てる中、港に向かった。
あぁ、いるいる。兵隊さんが数名。
「日本王国の方々でしょうか」
「……えぇ、何かご用ですか」
え、怖いんですけど。剣持ってるよ、剣。ファンタジーだなぁ、だなんて言ってていい場合ですか?
と思っていたら、私達の後ろから声をかけられた。
「初めまして、日本王国の副船長殿」
同じものを着てる兵隊さん達と、あととっても綺麗な服を着た……貴族の方? お金かかってそうな服だし、指輪、それ宝石じゃない? 一体いくらしたのよ。
「……初めまして」
「私は、この国の外務省に所属している者でね。日本王国の方々がいらしたと耳にしてこちらに出向いたわけだよ」
「……そうですか。わざわざご足労いただいたようで」
「港に素晴らしい船が入ってきたと聞き一目見ようと来たのだが……いやはや、この世にこんなに素晴らしい船があったとは思いもしなかった。日本王国にこんな船を作る技術があったとはね。とても感心したよ」
でも、日本王国なんて知らないはずなんだけど。あの港を管理してるお偉いさんから聞いたって事だよね。
「ウチの国は貿易が要。だから船はこの国にとってとても重要なものなのだよ。頑丈で足の速い船を作る事に関してはこの国一だと思っていたのだが、それは間違いだったようだ」
「そこまで褒めてくださるとは、嬉しい限りです。ウチの国の技術者達が聞けばきっと喜ぶでしょうね」
「この船は貿易船だろう? どの国と取引しているのかな。ぜひ我々ラモストエリスとも取引してもらいたいものだ」
「確かにこの船〝えぐち〟は日本が誇る一番の貿易船です。ですが、取引関係は国家機密でもありますからね、私の口からは言えませんよ」
……ん?
今、ヴィンス何て言った?
「おっと、それは失言だったな。失礼した。それで、少し話をさせてもらいたいのだが、船長殿がどちらかな」
「船長は今船にいらっしゃいますが……ご用件は副船長である私が聞きましょう」
「ほぅ、直接お会いしたいと思っているのだが……案内してもらえないだろうか」
あ、やっぱりそう来たか。
「では、船長に話を付けて……」
「その必要はない、早く案内してくれないか」
「……」
おっと、船長の返答を待たずに出向くというのか。
「わざわざ外交官の私が来たのだ、よい話も持ってきたのだからここで待たせるなんてことはしないだろう?」
「……」
「日本王国は聞いた事のない国だ。さぞかし外交には疎い事だろう。我々貿易大国であるラモストエリス国とは良い関係でいたほうが得策だと思うのだが」
うわぁ、マジか。そう来るのか。
でも、船長は今ここにいる。こんなちっこい青年みたいなやつ(男装中)が船長ですだなんて絶対信じてもらえない事だろう。さて、どうするか……
「……なるほど、我々としては魅力的な話のようだ」
「だろう、では早く船に……」
「だが……礼儀のなってない失礼な外交官がいる国とは、あまりお付き合いはしたくないな」
「なッ!!」
「貴様ッ!!」
え、ちょっとちょっとちょっと!? ヴィンス何てこと言ってるの!?
待って周りの兵隊さん達剣抜いちゃったよ!?
「ほぅ、思い通りにならないなら武力を取るか。だが……」
……へっ?
何が起きたか、分からなかった。
キィィィィィィン、と金属と金属がぶつかる音がした。
そして数秒後、私がヴィンスに肩に担がれている事が分かった。
肩に担がれて、ジャンプして、囲まれていた兵隊さん達から逃れた。
当然、兵隊さん達は私達を追いかける。
「へっ!?」
「しっかり掴まってろ」
「ひゃい!?」
船のある所とは反対方向に走り出したヴィンス。ちょっと待ってどこに行くのよ!? と思った次の瞬間。
「シャロンッッッ!!!」
走りながら、そう叫んだヴィンス。一体それはなんだ、と思っていたら……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
そ、空飛んでる!? たっ高い高い高いっ!! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
「ナオっ! シャロンに入船許可っ!!」
「へぁっ!? どっどうぞどうぞぉぉ!!」
「乗れっ!!」
もうこれはジェットコースターだ!! マジで怖いジェットコースターだ!! だなんて馬鹿な事を考えていたら、あれ、と、止まった?
「え、船……?」
「出航させろ!」
「しゅっ出航ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ぼぉぉぉぉぉっ、そんな音と共に船が動き出した。
下からさっきの貴族さん達の声がしたような、しなかったような。でもとりあえず、私は息を整えたい。マジで怖かった。落ちるんじゃないかって思ってた。マジで怖いって、あれは怖いって。
てか、早く降ろしてくれませんかね、ヴィンスさんよ。
外はだいぶ明るい。うわぁ、眩しっ。
てか、よく私部屋の向こう側にあるベッドでイケメン寝てるのによく寝れたな。まぁ、疲れてたってのもあるんだろうけれど。
「ふわぁ~っ……」
「はよ」
「あ、うん、おはよ」
うわ、起きてた。隣のイケメン起きてたよ。寝顔見られた? うわぁ恥ずかしっ。
顔洗ってくるね、といそいそと外に出ようと思ったけれど……
「ナオ、髪」
「あっ」
そういえば私、男設定だった。一応帽子の中に長い髪入れてたんだった。
……でも、困ったぞ。帽子被ってたら顔洗えない。
「待ってろ、お湯持ってくるから」
「……お願いします」
結局ヴィンスに頼ってしまいました。
私、ずっとヴィンスに頼りっぱなしだなぁ。と言っても、それしか方法がなかったってのもある。
海から拾ってもらったから恩返しがしたいって言われたけれど、もう恩返しは終わったような気がする。
「ほら、ナオ」
「あ、うん、ありがとう」
ヴィンスが持って来てくれたお湯が入った洗面器。あとタオルも。
初めてこの世界の宿に泊まったけれど……楽しむどころの騒ぎではなかった。
今度はそういうのなしで宿とかに泊まりたいな。うん。
宿を出た私達は、また港の市場に戻った。残りの買い物を済ませてしまおうという事になったのだ。
「肉に、ヨーグルトに、バターに、牛乳に、生クリームか」
「……いいの? 生クリームと牛乳」
「食べたいんだろ? アイスクリーム」
「……本当にいいの?」
「お金の余裕はあるから遠慮すんな」
「ありがとうございます」
そう、今は初夏。だからアイスクリームが食べたくなってしまった。手作りアイスクリームを調べてみたんだけど、その二つがないと作れないから困ってたんだけど、いいんですか。
まぁ、ヴィンスも甘いものは普通に好きみたいだし。だから美味しいものを作らせていただきます。
生クリームと牛乳は、大きな瓶に入ってるみたい。結構大きな瓶だ。
ほら、よくあるコーヒー牛乳が入ってる瓶あるじゃん。あれより2倍くらいかな。私じゃこれ一つ抱えるくらいしか出来ない。一体これを買ってく人達はどんな力持ちなのだろうか。
まぁでも、一応エコバッグがあるからいいけど。でも人前じゃ入れられないからヴィンスに持ってもらう事になるけれど。
あと、問題はお肉です。
「肉、食いたいか」
「うん食べたい」
「即答かよ」
「そういうヴィンスは? この前とんかつだいぶ美味しそうに食べてませんでしたか?」
「……」
ほーら図星だ。ずっと魚とか卵とかだったからお肉食べたいよね。
という事で精肉屋さんに行ってみたんだけど……
「鶏肉、牛肉、豚肉それぞれ5kg」
「へっ」
「まいどっ!」
マジすかヴィンスさんよ。そんなにお肉食べたかったんですか。
「冷凍すればOK」
「それ料理するの誰だと思ってるの?」
「手伝う」
「あ、はい」
「肉食いたくなってまた国に寄って面倒ごとに巻き込まれるの、嫌だろ」
「買いましょう」
いや、ドヤ顔しないでくださいよ。気持ちは分かるけど。
お店のお兄さんから渡されたお肉普通に抱えてるけどさ、重くない? 大丈夫? 全部で15kgなのに、流石力持ちさんだ。まぁエコバッグに入れてしまえば重くならないけど。早く人目の付かない所で袋に入れちゃいましょう。
「もう買う物はないな?」
「うん、もう十分」
「じゃあ、行くか」
「……う、うん」
「大丈夫だって。一応俺が副船長って事になってるから俺が喋る事になる。だからナオは俺の後ろに立ってればいいから。堂々としてていい」
「託します」
「了解、船長」
「……」
それ、やめてください。
緊張で心臓がドクンドクンと音を立てる中、港に向かった。
あぁ、いるいる。兵隊さんが数名。
「日本王国の方々でしょうか」
「……えぇ、何かご用ですか」
え、怖いんですけど。剣持ってるよ、剣。ファンタジーだなぁ、だなんて言ってていい場合ですか?
と思っていたら、私達の後ろから声をかけられた。
「初めまして、日本王国の副船長殿」
同じものを着てる兵隊さん達と、あととっても綺麗な服を着た……貴族の方? お金かかってそうな服だし、指輪、それ宝石じゃない? 一体いくらしたのよ。
「……初めまして」
「私は、この国の外務省に所属している者でね。日本王国の方々がいらしたと耳にしてこちらに出向いたわけだよ」
「……そうですか。わざわざご足労いただいたようで」
「港に素晴らしい船が入ってきたと聞き一目見ようと来たのだが……いやはや、この世にこんなに素晴らしい船があったとは思いもしなかった。日本王国にこんな船を作る技術があったとはね。とても感心したよ」
でも、日本王国なんて知らないはずなんだけど。あの港を管理してるお偉いさんから聞いたって事だよね。
「ウチの国は貿易が要。だから船はこの国にとってとても重要なものなのだよ。頑丈で足の速い船を作る事に関してはこの国一だと思っていたのだが、それは間違いだったようだ」
「そこまで褒めてくださるとは、嬉しい限りです。ウチの国の技術者達が聞けばきっと喜ぶでしょうね」
「この船は貿易船だろう? どの国と取引しているのかな。ぜひ我々ラモストエリスとも取引してもらいたいものだ」
「確かにこの船〝えぐち〟は日本が誇る一番の貿易船です。ですが、取引関係は国家機密でもありますからね、私の口からは言えませんよ」
……ん?
今、ヴィンス何て言った?
「おっと、それは失言だったな。失礼した。それで、少し話をさせてもらいたいのだが、船長殿がどちらかな」
「船長は今船にいらっしゃいますが……ご用件は副船長である私が聞きましょう」
「ほぅ、直接お会いしたいと思っているのだが……案内してもらえないだろうか」
あ、やっぱりそう来たか。
「では、船長に話を付けて……」
「その必要はない、早く案内してくれないか」
「……」
おっと、船長の返答を待たずに出向くというのか。
「わざわざ外交官の私が来たのだ、よい話も持ってきたのだからここで待たせるなんてことはしないだろう?」
「……」
「日本王国は聞いた事のない国だ。さぞかし外交には疎い事だろう。我々貿易大国であるラモストエリス国とは良い関係でいたほうが得策だと思うのだが」
うわぁ、マジか。そう来るのか。
でも、船長は今ここにいる。こんなちっこい青年みたいなやつ(男装中)が船長ですだなんて絶対信じてもらえない事だろう。さて、どうするか……
「……なるほど、我々としては魅力的な話のようだ」
「だろう、では早く船に……」
「だが……礼儀のなってない失礼な外交官がいる国とは、あまりお付き合いはしたくないな」
「なッ!!」
「貴様ッ!!」
え、ちょっとちょっとちょっと!? ヴィンス何てこと言ってるの!?
待って周りの兵隊さん達剣抜いちゃったよ!?
「ほぅ、思い通りにならないなら武力を取るか。だが……」
……へっ?
何が起きたか、分からなかった。
キィィィィィィン、と金属と金属がぶつかる音がした。
そして数秒後、私がヴィンスに肩に担がれている事が分かった。
肩に担がれて、ジャンプして、囲まれていた兵隊さん達から逃れた。
当然、兵隊さん達は私達を追いかける。
「へっ!?」
「しっかり掴まってろ」
「ひゃい!?」
船のある所とは反対方向に走り出したヴィンス。ちょっと待ってどこに行くのよ!? と思った次の瞬間。
「シャロンッッッ!!!」
走りながら、そう叫んだヴィンス。一体それはなんだ、と思っていたら……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
そ、空飛んでる!? たっ高い高い高いっ!! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
「ナオっ! シャロンに入船許可っ!!」
「へぁっ!? どっどうぞどうぞぉぉ!!」
「乗れっ!!」
もうこれはジェットコースターだ!! マジで怖いジェットコースターだ!! だなんて馬鹿な事を考えていたら、あれ、と、止まった?
「え、船……?」
「出航させろ!」
「しゅっ出航ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ぼぉぉぉぉぉっ、そんな音と共に船が動き出した。
下からさっきの貴族さん達の声がしたような、しなかったような。でもとりあえず、私は息を整えたい。マジで怖かった。落ちるんじゃないかって思ってた。マジで怖いって、あれは怖いって。
てか、早く降ろしてくれませんかね、ヴィンスさんよ。
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