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第三章 初めての陸地

◇14 お貴族さん達ってよく分からない

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 あれから黒のローブを購入し身に着け、港から離れた場所を歩き回り、ようやく見つけた格安の宿。

 と言っても、全然ボロッちくない。私が想像していたものより断然いい。これ本当に格安?


「ごめんな、一部屋しか取れなくて」

「いいよ、お金節約しないとね」


 まさかのイケメンと相部屋ですよ。私絶対一睡も出来ないと思う。


「それでだ、まずは明日他に必要なものを購入しよう。魔道具があるから荷物を全部そのまま入れておけば何があっても荷物の心配はない」

「アイツ等は?」

「そうだな……とりあえずそのまま行こう。きっとさっき買い取ってくれた貴族の旦那から話は聞いている事だろうから、船長は今船にいると分かって話しかけてくるだろう。
 会わせろと言われる可能性もあるし、どこかに連れてかれる可能性もあるな」

「これ、やばいやつ?」

「まぁ、簡単にはいかないのは当然だが……話の内容によるが、最悪強行突破も考えてる」

「強行突破、ですか……」

「穏便に済ませるよう努力はするが、なぁに、大丈夫。俺が何とかするから」

「……うん、ありがとう」

「よし、いい子だ」


 と、頭を撫でられてしまった。子ども扱いされてるな。と言い返したかったのだけど、もう私の命綱はヴィンスに握られてるから何も言えない。


「命、預けさせて頂きます。ヴィンス様」

「あははっ、大船に乗ったつもりでいな」

「船だけに?」

「そ。船だけに」


 なんか……さっきまで不安だったけど、ちょっとホッとしたな。ありがとう、ヴィンス。

 私、ヴィンスに頼ってばっかだな。でも頼るしかないしな。この異世界の事全く知らないし。



 ちょっと行ってくるな、と外出したヴィンス。ちょっと見回りに行ってくるらしい。まぁアイツ等私達を探してるみたいだし。でもヴィンス大丈夫かな。私、ヴィンスの事ちゃんとは知らないし……どうなんだろう。ちょっと不安ではある。

 まぁ私は何にも出来ない凡人だしな。運動音痴ではないけれど、剣とかそういうの触った事ないし。剣道もやってなかったし。


「ヴィンス、帰ってこないなぁ……」


 ……ヴィンス大丈夫かな。捕まったりしてないかな。あ、いや、あの人達が何を考えてるのか分からないけれど。

 あの船を寄こせ、とでも言われるのかな。それか……この国に留まらせられちゃったり。何やらされちゃうのか分からないから本当に怖い。

 お偉いさん、あ、貴族様か。わがままで欲でまみれてるだのなんだのってヴィンス言ってたな。そんな人達になんて絶対捕まりたくない。

 貴族、かぁ。お金持ちの人達って事だよね。あんな兵隊さん達雇えるくらいの凄い人って事か。あの港町を管理してる、ジャムを買い取ってくれた人の屋敷、凄かった。一体どれだけお金を費やせばあんな立派なお屋敷を持てるんだろう。

 使用人さんとかもいっぱいいるだろうし、凄いな。

 じゃあ、私達を探してる貴族の人って、一体どんな感じなんだろう、そういうのってマンガとかでしか知らないなぁ。

 そしたら、コンコン、とこの部屋のドアがノックされた。その相手はヴィンスだった。


「ただいま」

「おかえり、大丈夫だった?」

「うん、近くにはいなかった。たぶん大丈夫だ」

「そっか」


 だから安心して寝な。と言ってくれた。まぁ、ちょっと不安ではあったけど……近くにヴィンスがいてくれるのであればちょっとは寝れるかも。

 じゃあおやすみ、そう挨拶をかわしてベッドに潜り込んだ。

 寝れるかな、そう思ってはいたけれど……案外普通に瞼が重くなっていった。




 その時、私は知らなかった。

 私が眠った後、ヴィンスが窓から出て行っていた事を。

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