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第二章 なんてものを釣り上げてしまったんだ
◇10 side.ヴィンス
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side.ヴィンス
海に流された俺を拾ってくれたのは、世間知らずな女性だった。
見たことのない立派な船に一人で暮らす、20代くらいの女性。
彼女には謎が多すぎた。世間を知らなさすぎるし、俺の事も全然警戒していない。それに、この船の船長のはずなのにこの船の事もあまりよく分かっていない。
手も綺麗だし、力仕事にも慣れてないし、知識もある。彼女が持っていたノートを覗き見たが、字だって書けている。まぁ、俺が読めない字がいくつかあるが、きっとこれは彼女の故郷の字なのだろう。
じゃあ、どこかの貴族の娘か何かか?
彼女は、故郷はもうないと言っていた。となると、潰された、が普通だろう。という事は、誰かが彼女をこの船に乗せて逃がした、が一番確率が高い。
この船は自動的に動かすことが出来るし、防御力も素晴らしい。だからよく知らない彼女でも大丈夫だと思って誰かが行かせたのか。
入ってはいけない部屋、見たことも聞いた事もない様な魔法道具、掃除をしなくても船内の清潔さを維持できる自動管理システム、酷い嵐でもかすり傷一つ付けられない自動防衛システム。
一体、彼女は、この船は何なのか。そう思って探してはいたけれど……
「ヴィンス! ヴィンス来て! なんかタコみたいなのいる! うにょうにょしてるよぉ!!」
「ナオ、漁は俺がやるって言ったろ」
「あはは、ちょっとやりたくなっちゃったと言いますか……それよりこれ何とかしてくださいますか……!!」
「はいはい」
魚は普通に触れるのに、タコとかイカとかは触れないっていうのも考えものだが。一緒だろ、どっちも。それでも触れず食べられないから海に投げるんだが。
「今日は魚の塩焼きにしよ!」
「本当にいいのか?」
「全然! むしろいっぱいあるから食べなきゃ!」
「じゃあ手伝うよ。その魚は俺が運ぶから」
「いいの?」
「こういうのは俺の仕事だろ」
「ありがと、力持ちさん」
なんか、探りを入れようとしてる自分に呆れてきたような。そんな風に最近思えてきた。あの開けてはいけない部屋に侵入しようと機会を伺ってはいたが……なんか、な。
何となく、バカらしく思えてきた。
今までとは全く違った場所でこんなに自由でいられるなんて、以前の俺ではこんなことになるとは全く思いもしなかった。
ひゅるるるるるるるるるるる。
そんな鳴き声が微かにした。そして、空を見上げて視界に入ってきたもの。それは……鷲だ。見覚えのある、鷲。俺を見つけたのだろう。
だが、下に降りてこれないようだ。もしかして、この船のせいか。この船の船長はナオだ。きっと、ナオが許可しないと船には乗れないのかもしれない。俺は、ナオが拾ったわけだから乗れたのだろうが……
今ナオはキッチンにいる。この鷲には気が付いてない。よく見てみると、鷲の足には何か括りつけてあるな。
これは無理だな、そう思い、ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、と指笛を鳴らした。
「ヴィンス?」
「どうした、ナオ」
「ん? なんか聞こえなかった?」
「いや? 海の音じゃないか?」
「そっか」
鷲は、行ったな。きっと、これで俺のいる位置を知られた。まぁ、ようやく見つけてもらえて良かったんだが……
何となく、残念な気持ちになった。
だから、だろうか。
「……あ、あの、その、おはよ……」
「はよ」
昨日、ナオにキスをしてしまった。
自分じゃあり得ないようなことをしてしまったとは思うけれど、まぁでもやってしまったとは思ってない。後悔もしていない。
「風邪、ひかなかったか。昨日甲板結構寒かったろ」
「へっ、あ、うん、大丈夫!」
何故だろうか。だけど、昨日、いつも陽気な彼女がどこかに行ってしまうのではないのか、と感じた。
それでは困る。
じゃあ何故困るんだ?
こんなすごい船を所持しているから? 利用出来るから? だからこの船の船長である彼女を捕まえておいた方がいいから?
「あ、実ってるぞ」
「……へ?」
「大豆」
「……あ、ほんとだ!」
さぁ、どうだろうな。
まぁ、自分でもよく分かってないから困りものだが。
「じゃあこの後豆腐作ろっか!」
「豆腐?」
「え、知らない? 白くてぷるぷるしてるの」
「……ゼリーみたいなものか?」
「ちょっと違うかな。じゃあ朝ご飯食べたら作ろっか。あとで海水汲まなきゃ!」
いや、もう分かってるのかもしれない。
自分の中に、答えはあるのかもしれない。
「……海水?」
「ほら、私が作る塩は海水から作ってるって言ったでしょ? その時に出来る液体を使うの」
「……今から塩、作るのか。俺、手伝っていいのか?」
「いいっていいって、むしろ一緒に作りたい!」
……色々と、危なっかしくて呆れるな。
だから彼女からは目が離せない。
これから買い物をする為ラモストエリス国に行く事になる。だが、陸地に到着したら気を付けないとな。変な輩に絡まれたりしたら大変だ。
ただでさえ騙されそうな性格だし、こんな立派な船を傲慢な貴族共に見られたら手に入れようと彼女に漬け込むに決まってる。
俺は置いてもらってる身だし、色々と見ちゃいけないものもだいぶ見てるからな、用心棒もやらないと割に合わない。
それに今、この船で俺はクルー、彼女は船長。なら、当たり前か。
海に流された俺を拾ってくれたのは、世間知らずな女性だった。
見たことのない立派な船に一人で暮らす、20代くらいの女性。
彼女には謎が多すぎた。世間を知らなさすぎるし、俺の事も全然警戒していない。それに、この船の船長のはずなのにこの船の事もあまりよく分かっていない。
手も綺麗だし、力仕事にも慣れてないし、知識もある。彼女が持っていたノートを覗き見たが、字だって書けている。まぁ、俺が読めない字がいくつかあるが、きっとこれは彼女の故郷の字なのだろう。
じゃあ、どこかの貴族の娘か何かか?
彼女は、故郷はもうないと言っていた。となると、潰された、が普通だろう。という事は、誰かが彼女をこの船に乗せて逃がした、が一番確率が高い。
この船は自動的に動かすことが出来るし、防御力も素晴らしい。だからよく知らない彼女でも大丈夫だと思って誰かが行かせたのか。
入ってはいけない部屋、見たことも聞いた事もない様な魔法道具、掃除をしなくても船内の清潔さを維持できる自動管理システム、酷い嵐でもかすり傷一つ付けられない自動防衛システム。
一体、彼女は、この船は何なのか。そう思って探してはいたけれど……
「ヴィンス! ヴィンス来て! なんかタコみたいなのいる! うにょうにょしてるよぉ!!」
「ナオ、漁は俺がやるって言ったろ」
「あはは、ちょっとやりたくなっちゃったと言いますか……それよりこれ何とかしてくださいますか……!!」
「はいはい」
魚は普通に触れるのに、タコとかイカとかは触れないっていうのも考えものだが。一緒だろ、どっちも。それでも触れず食べられないから海に投げるんだが。
「今日は魚の塩焼きにしよ!」
「本当にいいのか?」
「全然! むしろいっぱいあるから食べなきゃ!」
「じゃあ手伝うよ。その魚は俺が運ぶから」
「いいの?」
「こういうのは俺の仕事だろ」
「ありがと、力持ちさん」
なんか、探りを入れようとしてる自分に呆れてきたような。そんな風に最近思えてきた。あの開けてはいけない部屋に侵入しようと機会を伺ってはいたが……なんか、な。
何となく、バカらしく思えてきた。
今までとは全く違った場所でこんなに自由でいられるなんて、以前の俺ではこんなことになるとは全く思いもしなかった。
ひゅるるるるるるるるるるる。
そんな鳴き声が微かにした。そして、空を見上げて視界に入ってきたもの。それは……鷲だ。見覚えのある、鷲。俺を見つけたのだろう。
だが、下に降りてこれないようだ。もしかして、この船のせいか。この船の船長はナオだ。きっと、ナオが許可しないと船には乗れないのかもしれない。俺は、ナオが拾ったわけだから乗れたのだろうが……
今ナオはキッチンにいる。この鷲には気が付いてない。よく見てみると、鷲の足には何か括りつけてあるな。
これは無理だな、そう思い、ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、と指笛を鳴らした。
「ヴィンス?」
「どうした、ナオ」
「ん? なんか聞こえなかった?」
「いや? 海の音じゃないか?」
「そっか」
鷲は、行ったな。きっと、これで俺のいる位置を知られた。まぁ、ようやく見つけてもらえて良かったんだが……
何となく、残念な気持ちになった。
だから、だろうか。
「……あ、あの、その、おはよ……」
「はよ」
昨日、ナオにキスをしてしまった。
自分じゃあり得ないようなことをしてしまったとは思うけれど、まぁでもやってしまったとは思ってない。後悔もしていない。
「風邪、ひかなかったか。昨日甲板結構寒かったろ」
「へっ、あ、うん、大丈夫!」
何故だろうか。だけど、昨日、いつも陽気な彼女がどこかに行ってしまうのではないのか、と感じた。
それでは困る。
じゃあ何故困るんだ?
こんなすごい船を所持しているから? 利用出来るから? だからこの船の船長である彼女を捕まえておいた方がいいから?
「あ、実ってるぞ」
「……へ?」
「大豆」
「……あ、ほんとだ!」
さぁ、どうだろうな。
まぁ、自分でもよく分かってないから困りものだが。
「じゃあこの後豆腐作ろっか!」
「豆腐?」
「え、知らない? 白くてぷるぷるしてるの」
「……ゼリーみたいなものか?」
「ちょっと違うかな。じゃあ朝ご飯食べたら作ろっか。あとで海水汲まなきゃ!」
いや、もう分かってるのかもしれない。
自分の中に、答えはあるのかもしれない。
「……海水?」
「ほら、私が作る塩は海水から作ってるって言ったでしょ? その時に出来る液体を使うの」
「……今から塩、作るのか。俺、手伝っていいのか?」
「いいっていいって、むしろ一緒に作りたい!」
……色々と、危なっかしくて呆れるな。
だから彼女からは目が離せない。
これから買い物をする為ラモストエリス国に行く事になる。だが、陸地に到着したら気を付けないとな。変な輩に絡まれたりしたら大変だ。
ただでさえ騙されそうな性格だし、こんな立派な船を傲慢な貴族共に見られたら手に入れようと彼女に漬け込むに決まってる。
俺は置いてもらってる身だし、色々と見ちゃいけないものもだいぶ見てるからな、用心棒もやらないと割に合わない。
それに今、この船で俺はクルー、彼女は船長。なら、当たり前か。
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