上 下
2 / 29
第一章 海の上にぽつん

◇2 扉の先は……異世界ぃ!?

しおりを挟む
 勤めている会社から帰ってきて、起きたら変な扉が出現して、その先にあったのは誰もいない大きな船。

 船の外の景色は、当然海。

 360°、どこまでも、海。


「なーんか、どこか陸地ないかな」


 止まったままの船。どこかに進んで陸地に行ってみたい気持ちはある。そしたら、何か必要なものや食糧なんかも手に入る。

 と言っても、通貨ってどんなものなんだろう。日本語は通じるだろうか。

 気付いてはいる。扉の先のこの世界は、自分のいた世界と違う所なんだって。だって、こんなシステムウィンドウだなんてあるわけないし、船が勝手にお掃除とか色々やってくれてるみたいだけど、そんな船あるわけない。

 地球と異世界を繋ぐ扉。凄すぎる。

 でももし陸が見つかったとしても、港に入っていいかどうかの許可が必要になってくるはず。お金が必要になったとしても持ってないし、言葉が通じなかったら許可申請すら出来ない。

 なんか、詰んだ気がする。

 そう思いつつ、小さいシャベル(なんか探したらあった)を持ち昨日見つけた畑に向かった。



 ______________
 
 栽培可能区域です!

 ______________



 いきなり出てきたシステムウィンドウ。こんなの出るんだ。やっぱり異世界は違うなぁ。と思いつつよっこいしょとしゃがみ作業を始めた。

 種なんてないけど、野菜から出てくる種を埋めたら出てくるかな。そんなのあったっけ。



 ______________

 レベルがアップしました!

 ______________




 え? レベルアップ? 何それ。

 確かに私のシステムウィンドウ、ステータス的なものにレベルが書いてあったけどさ。



 ______________

 栽培 Lv.1

 ______________



 栽培レベルが上がっちゃった。耕しただけなんだけど。そんなのでレベル上がっちゃうとか、いいの? だって、まだ畑の3分の1しかたがやしてないんだけど。

 じゃあこれ全部やったらどうなるの? という疑問が出てくる。だって、レベル上げとか楽しそうじゃん? ということで気合いを入れてやってみた。



 ______________
 STATUS
 名前:江口奈央 Lv.3
 職業:船長
 称号:なし
 ______________
 栽培 Lv.3
 ______________
 自動管理システム
 自動防衛システム
 ______________



 こういうことか。

 マジかよ、チョロいな。じゃあ種植えて芽が出て実がなって収穫したらどれだけレベル上がってるのさ。恐ろしくなってきたよ。

 だけど困った。たがやしたはいいものの、何を植えたらいいものやら。

 そんな時、またまたシステムウィンドウが出現。その内容に目が飛び出そうになった。



 ______________

 一部を埋めて育てることが可能です!

 ______________



 は? いや、は? なにそれ、じゃあトマトのヘタとか埋めたらトマト実るの? マジ? じゃあ今日のお昼ご飯はトマト決定。

 私はすぐに、家にある冷蔵庫に直行した。よし、トマト発見。あ、きゅうりも埋めてみる?

 もしこれで芽が出なくても、まぁそれはそれでね。てか地球じゃそんなものあり得ない事だし。もし出なかったら次の事を考えよう。





「はぁ~、最っ高」


 ウチにあった小さなローテーブルを持ち出し甲板に置き、お昼ご飯を持ってきた。ちょっと重かったけど頑張った。

 けど、海を眺めながらの食事だなんて最高すぎ。こんなの知らなかったよ。

 一応料理は好きだけど、ずっと一人での食事だったからなぁ。まぁ両親がいた頃も楽しく食事出来たけど、一人でもこんなに満たされるなんて思ってもなかった。

 と言っても、最低限の量でしか出来ないんだけどね。あれしか食糧ないから、制限しなきゃ。


「船が揺れないって事は、自動防衛システムが作動してるおかげってことかな?」


 そのおかげで船酔いとか一切なし! ほんとよかったぁ!

 あ、そういえばまだあの船橋の方行ってなかったよね。ほら、一番高い所にある場所。どんな風になってるんだろう。機械とかいっぱいあるのかな。でも、ここは異世界。もしかしたら変わったものがあるかもしれない。

 この後行ってみようかな。行き方分からないけれど。迷子にならないよう気を付けなきゃな。まぁでも私は方向音痴という訳ではないから大丈夫だと思う、うん。


 ご馳走様でした、と手を合わせ後片付けをした。家から持ってきたこのローテーブルはまた戻すの大変だから近くの空いてる部屋に置いておこう。


「……ここ?」


 船の地図とか置いてあればいいのにさぁ。でも最初ここ大体見回った時にこの先は見なかったんだよね。というかこんな所に階段あったんだ。位置的に、ここか?

 わくわくしながら船橋に向かった私は、扉を発見した。


「あった!」


 ちょっと重い扉を何とか開けた。これ結構大きいな。

 やっと入れる、そう思っていた。機械がいっぱいなのかな、ここから外を見渡したらきっと楽しい風景が待ってる、そう思ってた。

 けれど、扉を開けた瞬間……言葉を失った。



 ――水晶だ。



 私の身長よりやや小さめの水晶が、部屋の真ん中にある台の上に浮いていた。

 それは、青色の淡い光を放っている。

 部屋の壁はガラス張り。ただ、それだけだった。

 ここは異世界。確かに、これもあり得る事だ。もしかしてこの水晶が、この船を動かしてるのかな。

 何となく、触りたくなって。そーっと、優しく触れた。


「え、何何何!?」


 そしたら、システムウィンドウが出現したのだ。目の前に沢山。


「なに、これ……?」


 表示されたのは、この異世界の世界地図や、この船の内部の地図。この異世界の説明なんかも出てきた。

 この世界は〝ミュージス〟と呼ばれるらしい。こちらで言う〝地球〟みたいな?

 ここには、〝魔法〟というものが存在するけれど、戦いに使っているとかそう言うものではなく、魔道具を作って生活に役立てているようだ。

 この世界は言語や通貨は基本全国共通。そこはすごく助かる。

 世界地図には国の名前も書いてあり、国一つ一つの説明書きが表示されてた。

 まぁでも多すぎるからこれは後でゆっくり読もう。


「……異世界だな」


 なんか、ここが異世界だってことを改めて実感した気分だ。

 今、私のいた現実世界から切り離され、こちらでしか生活できない。

 なら、こっちの事をよく理解して生活していかなければならない。


「……よし、頑張ってみるか!」


 会社を辞めてこれからどうしようかと思っていたけれど、何となくワクワクしてきた。よし、楽しく、有意義に! そんな生活をしてみせる!

 そう、決意した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?

下菊みこと
恋愛
世界でも獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。その筆頭公爵家に生まれたのが主人公、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌだった。わがまま放題に育っていた彼女は、しかしある日突然原因不明の頭痛に見舞われ数日間寝込み、ようやく落ち着いた時には別人のように良い子になっていた。 エリアーヌは、前世の記憶を思い出したのである。その記憶が正しければ、この世界はエリアーヌのやり込んでいた乙女ゲームの世界。そして、エリアーヌは人族の平民出身である聖女…つまりヒロインを虐めて、規律の厳しい問題児だらけの修道院に送られる悪役令嬢だった! なんとか方向を変えようと、あれやこれやと動いている間に獣人族である彼女は、運命の番を発見!?そして、孤児だった人族の番を連れて帰りなんやかんやとお世話することに。 果たしてエリアーヌは運命の番を幸せに出来るのか。 そしてエリアーヌ自身の明日はどっちだ!? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】スクールカースト最下位の嫌われ令嬢に転生したけど、家族に溺愛されてます。

永倉伊織
恋愛
エリカ・ウルツァイトハート男爵令嬢は、学園のトイレでクラスメイトから水をぶっかけられた事で前世の記憶を思い出す。 前世で日本人の春山絵里香だった頃の記憶を持ってしても、スクールカースト最下位からの脱出は困難と判断したエリカは 自分の価値を高めて苛めるより仲良くした方が得だと周囲に分かって貰う為に、日本人の頃の記憶を頼りにお菓子作りを始める。 そして、エリカのお菓子作りがエリカを溺愛する家族と、王子達を巻き込んで騒動を起こす?! 嫌われ令嬢エリカのサクセスお菓子物語、ここに開幕!

処理中です...