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◇side.テオ
皇室の天使、リンティ皇女殿下から大役を任せられた僕は、すぐさま皇帝陛下の元へ。ニコニコした顔で、手には皇女様が作られた花束。それを見た陛下は、何やら疑わしいものを見た様な顔をしていて。
「陛下にお届け物です」
「……何だ」
「花束ですよ」
目の前に置いた花束。皇女様が大好きなアネモネの花。いろいろと色がありすぎてだいぶ賑やかだ。ちょっと、いや、だいぶ寄れてしまっていて不格好なリボン。これを贈った相手は果たして陛下に見抜けるだろうか。
「誰だ」
「皇女殿下から、です」
ピクリ、と眉が動いた。今までプレゼントなんて数え切れぬほどされてきた陛下。貴族、さらには他国から贈られたものまで。だが、全く興味を示さず僕達に処理させていた。まぁ、燃やせ、捨てろの言葉ばかり貰いそう処理していた、が正解か。
だが今回は、そう言えないだろう。何たって、リンティ皇女殿下(天使)からのプレゼントなのだから。
「花瓶を持ってこさせろ」
「かしこまりました」
ほらね。そう言うと思いましたよ。
以前、皇女様が風邪をひかれた際、陛下に皇女様が好きな花をお教えした。アネモネだ。だから、お見舞いの品にもアネモネの花束を用意した。
そして今回も、皇女様が好きなアネモネの花束を陛下にプレゼントした。
自分の好きなものを相手に贈る。それがとても素敵な事だという事が陛下にも伝わっただろうか。
「お見舞い品のお返し、という事ですね」
「……そうか」
皇女様がこちらに来てから、どんどんいつもの陛下らしからぬ行動ばかりなさる。それだけ、皇女様に影響されてるという事だ。
本当の、血の繋がった親子。父親と娘。しかも娘は天使。そりゃ心を揺さぶられるに決まってる。
皇帝陛下と皇后陛下の関係は、あまり良いものではなかった。こんな性格の陛下だ、皇后陛下はいつも皇室で怯えていらっしゃった。まぁ、何時もあんな血生臭い事をしていたらそうなるに決まってる。きっとそれが原因で、皇后陛下はこの城を去ったのだろう。
城を去った皇后陛下。それを聞いた皇帝陛下は、さして興味のなさそうな顔をしていた。ただ、「そうか」の一言。捜索命令すら出さなかった。
皇后陛下のやりたいようにさせてやれ、という陛下の優しさ。……とは考えられなかった。だって、あの陛下だぞ? ないない。この結婚だって、周りに言われてしたようなものだ。周りが煩いから仕方なく、というやつだ。
そもそも、皇帝陛下は物事に何も興味を示さない人物だ。仕事はちゃんとやる。皇帝陛下としての自覚もある。まぁやり方が血生臭いのは難点ではあるが。その他には何もない人だ。
だから、今回の陛下の様子に周りは戸惑いを隠せないでいる。一体陛下はどうなってしまったのだろうか。とね。
いつもの怖いオーラのようなものはある。でも、皇女様が関わるとそれが瞬く間に消えてしまう。それが不思議でならないのだ。
皇女様は陛下に激似だ。皇后陛下とは全然似ている所はない。あぁ、笑った様子が何となぁく皇后陛下に似ているような、ないような。それくらいだ。だから、皇后陛下の面影を感じているという事ではないようだ。というか、そんな事はしない人か。
「……このままでは、枯れてしまうか」
「少ししたらドライフラワーにいたしましょうか」
「……あぁ」
おぉ、陛下のそんなお言葉一生聞かないと思っていたのに! 花になんて全く興味がないと思っていたのに! さすが皇女様。将来大物になるぞ。皇女様が振り向いた瞬間に皆惚れてしまうのではないだろうか。皆皇女様にお会いする時の為にキャンディなどをポケットに入れている事はもう知っている。今でこれなんだ。陛下、これからが大変ですよ。
花瓶は、陛下の執務室の作業机にそっと置かれる事になった。あとで、皇女様にお伝えせねば。大層お喜びになりましたよって。きっと素敵な笑顔を見せて下さるに違いない!
「あぁ、そういえば。先程お会いした際、以前お見舞い品としてお渡ししたクマのぬいぐるみもお持ちしていましたよ」
「……」
「とても大事そうに抱えていらっしゃいました。大層お気に召したようですね」
「……そうか」
そう言って手を動かし出した陛下。内心嬉しい癖に。と、思っていたら。
「ラメロス商会を呼べ」
「……え?」
「予算は5憶でいい。アイツに好きなものを選ばせろ」
「あ、の……」
ラメロス商会。世界一の商会であり、あらゆる分野で他国と繋がっている。きっと陛下がお呼びしたとあれば血相を変えて商会長が駆け込んで来ることだろう。遺書でも書いてくるか? 何か頼まれれば意地でも次の日、いや、その日のうちに取り揃えることだろう。
でも陛下、流石に5憶はないでしょう。10憶はいかないと。
「陛下、それでは皇女様は困ってしまいます。沢山ありすぎると何を選んでいいのか混乱してしまうと思われます」
「気に入れば買えばいいだろう」
「そうじゃありません。見た事も聞いた事もないものを出されても困ってしまいます」
あぁ、分かってないなこれは。好きなものを買わせれば喜ぶって思ってるのか。常識はずれな陛下には分からんだろうな。
でもまぁ、何とかなるだろう。
皇室の天使、リンティ皇女殿下から大役を任せられた僕は、すぐさま皇帝陛下の元へ。ニコニコした顔で、手には皇女様が作られた花束。それを見た陛下は、何やら疑わしいものを見た様な顔をしていて。
「陛下にお届け物です」
「……何だ」
「花束ですよ」
目の前に置いた花束。皇女様が大好きなアネモネの花。いろいろと色がありすぎてだいぶ賑やかだ。ちょっと、いや、だいぶ寄れてしまっていて不格好なリボン。これを贈った相手は果たして陛下に見抜けるだろうか。
「誰だ」
「皇女殿下から、です」
ピクリ、と眉が動いた。今までプレゼントなんて数え切れぬほどされてきた陛下。貴族、さらには他国から贈られたものまで。だが、全く興味を示さず僕達に処理させていた。まぁ、燃やせ、捨てろの言葉ばかり貰いそう処理していた、が正解か。
だが今回は、そう言えないだろう。何たって、リンティ皇女殿下(天使)からのプレゼントなのだから。
「花瓶を持ってこさせろ」
「かしこまりました」
ほらね。そう言うと思いましたよ。
以前、皇女様が風邪をひかれた際、陛下に皇女様が好きな花をお教えした。アネモネだ。だから、お見舞いの品にもアネモネの花束を用意した。
そして今回も、皇女様が好きなアネモネの花束を陛下にプレゼントした。
自分の好きなものを相手に贈る。それがとても素敵な事だという事が陛下にも伝わっただろうか。
「お見舞い品のお返し、という事ですね」
「……そうか」
皇女様がこちらに来てから、どんどんいつもの陛下らしからぬ行動ばかりなさる。それだけ、皇女様に影響されてるという事だ。
本当の、血の繋がった親子。父親と娘。しかも娘は天使。そりゃ心を揺さぶられるに決まってる。
皇帝陛下と皇后陛下の関係は、あまり良いものではなかった。こんな性格の陛下だ、皇后陛下はいつも皇室で怯えていらっしゃった。まぁ、何時もあんな血生臭い事をしていたらそうなるに決まってる。きっとそれが原因で、皇后陛下はこの城を去ったのだろう。
城を去った皇后陛下。それを聞いた皇帝陛下は、さして興味のなさそうな顔をしていた。ただ、「そうか」の一言。捜索命令すら出さなかった。
皇后陛下のやりたいようにさせてやれ、という陛下の優しさ。……とは考えられなかった。だって、あの陛下だぞ? ないない。この結婚だって、周りに言われてしたようなものだ。周りが煩いから仕方なく、というやつだ。
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だから、今回の陛下の様子に周りは戸惑いを隠せないでいる。一体陛下はどうなってしまったのだろうか。とね。
いつもの怖いオーラのようなものはある。でも、皇女様が関わるとそれが瞬く間に消えてしまう。それが不思議でならないのだ。
皇女様は陛下に激似だ。皇后陛下とは全然似ている所はない。あぁ、笑った様子が何となぁく皇后陛下に似ているような、ないような。それくらいだ。だから、皇后陛下の面影を感じているという事ではないようだ。というか、そんな事はしない人か。
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花瓶は、陛下の執務室の作業机にそっと置かれる事になった。あとで、皇女様にお伝えせねば。大層お喜びになりましたよって。きっと素敵な笑顔を見せて下さるに違いない!
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「……」
「とても大事そうに抱えていらっしゃいました。大層お気に召したようですね」
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そう言って手を動かし出した陛下。内心嬉しい癖に。と、思っていたら。
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「……え?」
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「あ、の……」
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「陛下、それでは皇女様は困ってしまいます。沢山ありすぎると何を選んでいいのか混乱してしまうと思われます」
「気に入れば買えばいいだろう」
「そうじゃありません。見た事も聞いた事もないものを出されても困ってしまいます」
あぁ、分かってないなこれは。好きなものを買わせれば喜ぶって思ってるのか。常識はずれな陛下には分からんだろうな。
でもまぁ、何とかなるだろう。
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