最強陛下の育児論〜5歳児の娘に振り回されているが、でもやっぱり可愛くて許してしまうのはどうしたらいいものか〜

楠ノ木雫

文字の大きさ
6 / 11

◇6

しおりを挟む
 ◇side.テオ

 皇室の天使、リンティ皇女殿下から大役を任せられた僕は、すぐさま皇帝陛下の元へ。ニコニコした顔で、手には皇女様が作られた花束。それを見た陛下は、何やら疑わしいものを見た様な顔をしていて。


「陛下にお届け物です」

「……何だ」

「花束ですよ」


 目の前に置いた花束。皇女様が大好きなアネモネの花。いろいろと色がありすぎてだいぶ賑やかだ。ちょっと、いや、だいぶ寄れてしまっていて不格好なリボン。これを贈った相手は果たして陛下に見抜けるだろうか。


「誰だ」

「皇女殿下から、です」


 ピクリ、と眉が動いた。今までプレゼントなんて数え切れぬほどされてきた陛下。貴族、さらには他国から贈られたものまで。だが、全く興味を示さず僕達に処理させていた。まぁ、燃やせ、捨てろの言葉ばかり貰いそう処理していた、が正解か。

 だが今回は、そう言えないだろう。何たって、リンティ皇女殿下(天使)からのプレゼントなのだから。


「花瓶を持ってこさせろ」

「かしこまりました」


 ほらね。そう言うと思いましたよ。

 以前、皇女様が風邪をひかれた際、陛下に皇女様が好きな花をお教えした。アネモネだ。だから、お見舞いの品にもアネモネの花束を用意した。

 そして今回も、皇女様が好きなアネモネの花束を陛下にプレゼントした。

 自分の好きなものを相手に贈る。それがとても素敵な事だという事が陛下にも伝わっただろうか。


「お見舞い品のお返し、という事ですね」

「……そうか」


 皇女様がこちらに来てから、どんどんいつもの陛下らしからぬ行動ばかりなさる。それだけ、皇女様に影響されてるという事だ。

 本当の、血の繋がった親子。父親と娘。しかも娘は天使。そりゃ心を揺さぶられるに決まってる。

 皇帝陛下と皇后陛下の関係は、あまり良いものではなかった。こんな性格の陛下だ、皇后陛下はいつも皇室で怯えていらっしゃった。まぁ、何時もあんな血生臭い事をしていたらそうなるに決まってる。きっとそれが原因で、皇后陛下はこの城を去ったのだろう。

 城を去った皇后陛下。それを聞いた皇帝陛下は、さして興味のなさそうな顔をしていた。ただ、「そうか」の一言。捜索命令すら出さなかった。

 皇后陛下のやりたいようにさせてやれ、という陛下の優しさ。……とは考えられなかった。だって、あの陛下だぞ? ないない。この結婚だって、周りに言われてしたようなものだ。周りが煩いから仕方なく、というやつだ。

 そもそも、皇帝陛下は物事に何も興味を示さない人物だ。仕事はちゃんとやる。皇帝陛下としての自覚もある。まぁやり方が血生臭いのは難点ではあるが。その他には何もない人だ。

 だから、今回の陛下の様子に周りは戸惑いを隠せないでいる。一体陛下はどうなってしまったのだろうか。とね。

 いつもの怖いオーラのようなものはある。でも、皇女様が関わるとそれが瞬く間に消えてしまう。それが不思議でならないのだ。

 皇女様は陛下に激似だ。皇后陛下とは全然似ている所はない。あぁ、笑った様子が何となぁく皇后陛下に似ているような、ないような。それくらいだ。だから、皇后陛下の面影を感じているという事ではないようだ。というか、そんな事はしない人か。


「……このままでは、枯れてしまうか」

「少ししたらドライフラワーにいたしましょうか」

「……あぁ」


 おぉ、陛下のそんなお言葉一生聞かないと思っていたのに! 花になんて全く興味がないと思っていたのに! さすが皇女様。将来大物になるぞ。皇女様が振り向いた瞬間に皆惚れてしまうのではないだろうか。皆皇女様にお会いする時の為にキャンディなどをポケットに入れている事はもう知っている。今でこれなんだ。陛下、これからが大変ですよ。

 花瓶は、陛下の執務室の作業机にそっと置かれる事になった。あとで、皇女様にお伝えせねば。大層お喜びになりましたよって。きっと素敵な笑顔を見せて下さるに違いない!


「あぁ、そういえば。先程お会いした際、以前お見舞い品としてお渡ししたクマのぬいぐるみもお持ちしていましたよ」

「……」

「とても大事そうに抱えていらっしゃいました。大層お気に召したようですね」

「……そうか」


 そう言って手を動かし出した陛下。内心嬉しい癖に。と、思っていたら。


「ラメロス商会を呼べ」

「……え?」

「予算は5憶でいい。アイツに好きなものを選ばせろ」

「あ、の……」


 ラメロス商会。世界一の商会であり、あらゆる分野で他国と繋がっている。きっと陛下がお呼びしたとあれば血相を変えて商会長が駆け込んで来ることだろう。遺書でも書いてくるか? 何か頼まれれば意地でも次の日、いや、その日のうちに取り揃えることだろう。

 でも陛下、流石に5憶はないでしょう。10憶はいかないと。


「陛下、それでは皇女様は困ってしまいます。沢山ありすぎると何を選んでいいのか混乱してしまうと思われます」

「気に入れば買えばいいだろう」

「そうじゃありません。見た事も聞いた事もないものを出されても困ってしまいます」


 あぁ、分かってないなこれは。好きなものを買わせれば喜ぶって思ってるのか。常識はずれな陛下には分からんだろうな。

 でもまぁ、何とかなるだろう。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

処理中です...