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第十一章 冬が来る
◇113 今日のお昼ご飯はまさかの……
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今日の夜はナカムラ家の皆さんをご招待しての誕生日パーティー。その準備のため使用人の皆さんは全員本邸の方へ。勿論マリアも、そしてジルベルトもいない。
だって、護衛がいなくたって強い人達二人がいらっしゃるし。この国最強の剣士様がいらっしゃるし。
という事は、別邸には私とお母様、お父様とお兄様しかいないのだ。
そして今、私達がいる場所。それは……厨房!
「あら、皆準備してくれたのね」
「これなら私達でも簡単に出来るな」
お昼の時間になって、お昼ご飯を作りに行こうとお母様がそう言い出したのだ。いや、お母様、冗談ですよね。そう思っていたけど、お父様もやる気満々。しかもここまで完璧に準備されているとは。
「安心しなさい、アヤメ。私達は任務の遠征で料理には慣れているから大丈夫」
「私だってやった事はあるわよ。どこかの誰かさんの為にお菓子とか、簡単なお昼ごはんも作った事あるもの。ま、ほぼ全部断られちゃって自分で食べたんだけどね」
「……全部、ではなかっただろう」
「ふ~ん、そうだったかしら?」
「……」
あらら、お母様可哀想に。確か、その頃のお父様って生真面目で頑固だったんだっけ。少しは受け取ってあげても良かったんじゃないですか?
「……昔の話はやめよう」
……逃げたな。というかお兄様、一人で作業始めてません? 全く興味なしですか、流石ですね。
さて、今日のメニューは……おぉ、パスタとサラダ、スープですか! ちゃ~んと紙にレシピが書かれてる。この字は……もしやタクミかな。結構あの人字綺麗なんだよね、羨ましい。
「じゃあ私とアヤメちゃんはサラダをやりましょうか。ついでにスープの準備もしましょ!」
「ではパスタは私達がやろう」
「はい、父上」
うわぁ、腕まくりして野菜洗ってる……! これ、写真、いや、絵か。写してもいいよね、超激レアだよね、これ! マリア~! 魔道具持ってきて~!
とっても慣れた手つきで包丁を扱うお父様達。対して私はレタスなるものをちぎってちぎって山にしています。あぁ、私も包丁を使わせてもらえたらなぁ。ちょっと悲しいです。
「あら、上手に出来たわね」
「ちぎっただけです」
「うふふ、そんなにムスッとしないの。可愛いお顔が台無しよ?」
子ども扱い……
その後、ペットボトルのような容器に用意されていた材料を入れて蓋をして、シャカシャカ振っています。そう、ドレッシングです。本格ドレッシングよ!
それからスープも完成、後は温めるだけになり、あとはパスタを茹でるだけ。あ、実はエバニスもパスタに入ってるの。嬉しいなぁ~。
「よし、いいかな」
パスタを投入~! グツグツお湯が沸騰している中で踊り始めた。
このパスタを見ると、パスタマシーンがあるって事よね。裕孝さんが考案して作ったのかな。見てみたいな。私見た事ないからやらせてほしいかも。結構力いりそうだけど。
あ、使った道具洗わなきゃ、と思っていたらもう既にお兄様が洗い終わっていた。お兄様、手早い。
「ほんとこれ便利よね~、長いから手袋の中に水が入る事もないし」
そう、私が考案したゴム手袋がこの厨房にも用意されていたのだ。これ、洗い物をするには必須アイテムだもんね。
あ、そういえば庭師の皆さんも使ってくれてるみたいなの。土に触って作業する時、爪の間に土が入ってしまっていたからとても便利だと喜んでくれていた。
「よし、出来たぞ」
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
すかさずパスタを移すボウルとザルを渡したお兄様。いやぁ、素早いな。
お皿に盛って、その上にソースを乗せて、スープも温めて、サラダにはドレッシングをかけて。よーし、完成!
じゃあお部屋に運びましょうか、と台車に乗せて部屋に向かった。
「いただきます!」
皆声を揃えていただきますをし、まずはスープから。ん~いい味出てる~! とっても美味しいです!
「ん~美味しい♡ 達成感があるから余計ね」
「プロの料理も素晴らしいが、これもいいな」
ドレッシングも上手く出来たみたい。いっぱい振ったからね。
パスタも美味しいし、エビもぷりぷり! ん~最高ね♡
またお母様達と一緒に作りたいなぁ。来年の誕生日? 楽しみ~!
「あ、そういえば、フレッドは結婚どうするの?」
お兄様、婚約者いないからなぁ。プリシラ嬢達は好きみたいだけど雲の上の人って言ってた。だからそれなりに高い地位のご令嬢じゃないといけないって事かな?
お兄様は、考えている様な顔をしてから、私を見てこう言った。
「誰がいい」
「……えっ?」
「アヤメが選べ」
「え”っ!?」
わ、私が選ぶんですかぁ!? え、何で私!? 普通お兄様が選ぶんでしょ!?
「お前の姉になるやつだからな」
「いやいやいや、これは本人のお兄様が……」
「あらあらあら、フレッドは本当に妹思いねぇ。見ててほっこりするわぁ」
「フレッド、アヤメを困らせるな」
妹思いって言うんですかこれ!! ただ面倒臭がってるってだけなのでは!?
「……アヤメが親しくしてるメルト家の令嬢はどうだ」
「え”っカっカリナですかっ!?」
というか、何で私に聞くんですかぁ!? だって、お兄様の奥さんになる方でしょ!! 私が選んでどうするんですか!!
と、とりあえず、この話は後にしましょう、もうちょっと考えてみては? と丸め込んだ。ちゃんと丸め込められたのかどうかは分からないけれど……とりあえずカリナ、逃げて。あとで一言そう言っておこう。
とにかく、私たち家族で作ったお昼ご飯はとっても美味しかったです。また作りたいな。
その後は、沢山お喋りをした。私達が出会う前の出来事、お母様達が知らない、私の故郷の話。お父様、お母様、お兄様の、私の知らない話。色々とお母様に暴露されて恥ずかしがっているお兄様やお父様の新鮮な姿も見れて楽しかった。
こんな誕生日、今までなかった。ママが誕生日プレゼントを毎年絶対用意してくれていたけれど、一日中一緒にいる事なんてなかった。ちょっと寂しかったけれど、我儘は言えなかった。
とっても、幸せだ。
だって、護衛がいなくたって強い人達二人がいらっしゃるし。この国最強の剣士様がいらっしゃるし。
という事は、別邸には私とお母様、お父様とお兄様しかいないのだ。
そして今、私達がいる場所。それは……厨房!
「あら、皆準備してくれたのね」
「これなら私達でも簡単に出来るな」
お昼の時間になって、お昼ご飯を作りに行こうとお母様がそう言い出したのだ。いや、お母様、冗談ですよね。そう思っていたけど、お父様もやる気満々。しかもここまで完璧に準備されているとは。
「安心しなさい、アヤメ。私達は任務の遠征で料理には慣れているから大丈夫」
「私だってやった事はあるわよ。どこかの誰かさんの為にお菓子とか、簡単なお昼ごはんも作った事あるもの。ま、ほぼ全部断られちゃって自分で食べたんだけどね」
「……全部、ではなかっただろう」
「ふ~ん、そうだったかしら?」
「……」
あらら、お母様可哀想に。確か、その頃のお父様って生真面目で頑固だったんだっけ。少しは受け取ってあげても良かったんじゃないですか?
「……昔の話はやめよう」
……逃げたな。というかお兄様、一人で作業始めてません? 全く興味なしですか、流石ですね。
さて、今日のメニューは……おぉ、パスタとサラダ、スープですか! ちゃ~んと紙にレシピが書かれてる。この字は……もしやタクミかな。結構あの人字綺麗なんだよね、羨ましい。
「じゃあ私とアヤメちゃんはサラダをやりましょうか。ついでにスープの準備もしましょ!」
「ではパスタは私達がやろう」
「はい、父上」
うわぁ、腕まくりして野菜洗ってる……! これ、写真、いや、絵か。写してもいいよね、超激レアだよね、これ! マリア~! 魔道具持ってきて~!
とっても慣れた手つきで包丁を扱うお父様達。対して私はレタスなるものをちぎってちぎって山にしています。あぁ、私も包丁を使わせてもらえたらなぁ。ちょっと悲しいです。
「あら、上手に出来たわね」
「ちぎっただけです」
「うふふ、そんなにムスッとしないの。可愛いお顔が台無しよ?」
子ども扱い……
その後、ペットボトルのような容器に用意されていた材料を入れて蓋をして、シャカシャカ振っています。そう、ドレッシングです。本格ドレッシングよ!
それからスープも完成、後は温めるだけになり、あとはパスタを茹でるだけ。あ、実はエバニスもパスタに入ってるの。嬉しいなぁ~。
「よし、いいかな」
パスタを投入~! グツグツお湯が沸騰している中で踊り始めた。
このパスタを見ると、パスタマシーンがあるって事よね。裕孝さんが考案して作ったのかな。見てみたいな。私見た事ないからやらせてほしいかも。結構力いりそうだけど。
あ、使った道具洗わなきゃ、と思っていたらもう既にお兄様が洗い終わっていた。お兄様、手早い。
「ほんとこれ便利よね~、長いから手袋の中に水が入る事もないし」
そう、私が考案したゴム手袋がこの厨房にも用意されていたのだ。これ、洗い物をするには必須アイテムだもんね。
あ、そういえば庭師の皆さんも使ってくれてるみたいなの。土に触って作業する時、爪の間に土が入ってしまっていたからとても便利だと喜んでくれていた。
「よし、出来たぞ」
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
すかさずパスタを移すボウルとザルを渡したお兄様。いやぁ、素早いな。
お皿に盛って、その上にソースを乗せて、スープも温めて、サラダにはドレッシングをかけて。よーし、完成!
じゃあお部屋に運びましょうか、と台車に乗せて部屋に向かった。
「いただきます!」
皆声を揃えていただきますをし、まずはスープから。ん~いい味出てる~! とっても美味しいです!
「ん~美味しい♡ 達成感があるから余計ね」
「プロの料理も素晴らしいが、これもいいな」
ドレッシングも上手く出来たみたい。いっぱい振ったからね。
パスタも美味しいし、エビもぷりぷり! ん~最高ね♡
またお母様達と一緒に作りたいなぁ。来年の誕生日? 楽しみ~!
「あ、そういえば、フレッドは結婚どうするの?」
お兄様、婚約者いないからなぁ。プリシラ嬢達は好きみたいだけど雲の上の人って言ってた。だからそれなりに高い地位のご令嬢じゃないといけないって事かな?
お兄様は、考えている様な顔をしてから、私を見てこう言った。
「誰がいい」
「……えっ?」
「アヤメが選べ」
「え”っ!?」
わ、私が選ぶんですかぁ!? え、何で私!? 普通お兄様が選ぶんでしょ!?
「お前の姉になるやつだからな」
「いやいやいや、これは本人のお兄様が……」
「あらあらあら、フレッドは本当に妹思いねぇ。見ててほっこりするわぁ」
「フレッド、アヤメを困らせるな」
妹思いって言うんですかこれ!! ただ面倒臭がってるってだけなのでは!?
「……アヤメが親しくしてるメルト家の令嬢はどうだ」
「え”っカっカリナですかっ!?」
というか、何で私に聞くんですかぁ!? だって、お兄様の奥さんになる方でしょ!! 私が選んでどうするんですか!!
と、とりあえず、この話は後にしましょう、もうちょっと考えてみては? と丸め込んだ。ちゃんと丸め込められたのかどうかは分からないけれど……とりあえずカリナ、逃げて。あとで一言そう言っておこう。
とにかく、私たち家族で作ったお昼ご飯はとっても美味しかったです。また作りたいな。
その後は、沢山お喋りをした。私達が出会う前の出来事、お母様達が知らない、私の故郷の話。お父様、お母様、お兄様の、私の知らない話。色々とお母様に暴露されて恥ずかしがっているお兄様やお父様の新鮮な姿も見れて楽しかった。
こんな誕生日、今までなかった。ママが誕生日プレゼントを毎年絶対用意してくれていたけれど、一日中一緒にいる事なんてなかった。ちょっと寂しかったけれど、我儘は言えなかった。
とっても、幸せだ。
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