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第十一章 冬が来る
◇110 エバニスグラタン
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ナカムラ家が来訪してから二日後、私とお母様とお父様とお兄様の4人でお出かけする事になりました。行き先? 決まってるじゃないですか。
「いやぁ、何ヶ月ぶりかな」
「そうねぇ、それに4人で来るのも初めてよね」
そう、【なかむら】です。お父様達は本当に久しぶりなと思う。あ、私は……数日前にも行きましたね。とは言っても、お父様とお兄様は王城で【なかむら】料理を食べたけれど。
「最後尾はここかな」
「え”っ、げっ元帥!?」
「えっごっご機嫌麗しゅう……!!」
今日も大盛況で列が出来ている為、私達四人は列の最後尾に並んだら、先に来ていた方々はもう大慌て。顎が外れちゃうんじゃないかってくらい口を開けてる人もいれば、目が飛び出ちゃってる人まで。
もうさ、私達が揃って王城の中歩いただけで驚く人達がいるんだからこれも当然よね。
「今日はプライベートだ。だから、気を遣わなくていい」
無理ですっっっ!!!
と、皆さんの心の声が揃って聞こえてきたような気がした。
ここに来る貴族の方々の我儘っぷりは酷かったけど、お父様達が来たって噂が広まれば収まるんじゃないかな? なんて思ったり。
「えっこっ……!?」
リカルドさん、吃驚しすぎ。というか、顔知ってたんだね。まぁ、一度お兄様来てるし、お兄様と顔そっくりだから考えてみれば分かるか。
唖然としていたら、途中で正気に戻ったみたい。すぐに空いている席に案内してくれた。
「さて、今日は何があるのかな」
「私は絶対エバニス料理よ」
「はは、私もそのつもりさ」
メニューの中には……あ、エバニス料理が二種類。あとお肉料理が一つだ。とは言っても、皆さんエバニス料理にしか目がいってないみたい。
「いらっしゃいませ。ご来店いただきありがとうございます」
「忙しそうだな、タクミ君」
「おかげさまで」
タクミが来てくれた。まぁ、お父様達が来てれば来なきゃ駄目だもんね。忙しいのに大丈夫?
「ご注文お決まりでしたら伺いますよ」
「そうね~」
ん~、何がいいかな~。いつもみたいに特別メニュー? 社交界では〝秘密のメニュー〟って言われてるんだっけ。でも、今の私の目に移っているのはメニュー欄に書かれているこの料理。
「グラタン!」
「これはエバニスか?」
「はい」
「じゃあ~、私もそれね!」
「なら私は、春巻きにしよう。フレッドはどうする」
「私も春巻きにします」
おぉ、見事に綺麗に分かれたな。説明は全くしなかったんだけど、出てくるまでの楽しみにしたいらしい。
ではお待ちください、と戻っていったタクミ。
周りを見渡すと、あぁ、皆さん此方をちらちら見てる。耳をこちらに向けてるんだろうなぁ。まぁ、パーティーとかそういうのではいつもの事だからいいんだけどさ。
「そういえば、そろそろアヤメちゃんの誕生日よね」
「あ」
今はもう11月が終わろうとしている。そう、私の誕生日は12月なのだ。ちょっと忘れてたかも。
「アヤメちゃんの誕生日パーティーは前日にしたいと思ってるんだけど、どう?」
「え、前日ですか?」
「そう。当日はアヤメちゃんのしたい事を一緒にしましょ」
「あぁ、私達もその二日間は必ず休みを取るから、家族で一緒に過ごそうか」
家族、皆で……そっか、一日、家族皆で……う、嬉しい……!
「ありがとうございます!」
「えぇ、思いついたらすぐに言ってね」
「はい!」
ん~、何して過ごそうかな~、ここって雪は降るのかな? 雪、積もったら雪だるま作りたい! あ、雪合戦でもする? いや、お父様とお兄様強そうだしなぁ。二人で戦ったら一体どっちが勝つんだろう。
考えていると、リカルドさんが私達の料理を運んでくれた。レディーファースト? で最初に私達のグラタン。それから次に春巻き。ん~美味しそう!
いい感じの焦げ具合、そしてチーズの良い匂い。ん~早くスプーンを入れたい!
「もしかして、この中にエバニスが入ってるのかしら」
「そうです! チーズの下を見てみてください!」
「春巻きも中に入っているのかな、油で揚げているようだ」
「皮がぱりぱりして美味しいですよ!」
スプーンを入れてみると、何やら大きなナニカが。すくい上げてみるとこれまたビックリ。え、ちょっと待って、エビ、多すぎやしませんか!? マカロニとか青い野菜も入ってるけど、一体いくつ入ってるのよこれ! しかも大きいし!
ウチの領地から仕入れてるって聞いたんだけど、あ、なんか味が違う? 隣国から仕入れていたのも美味しかったけれど、こっちも負けずぷりぷりとしてて味もいい。
「ん~エバニスぷりぷりね~♡」
「美味ぁ~!」
「確かにパリパリとしていて美味い。中のこれは一体何だろうか、麺のようだが」
「それは春雨って言うんです」
「ほぉ、エバニスとも相性がいいな」
隣のお兄様も、かぶりついて良い食べっぷり! ちょっと表情筋動いてる! うんうん分かります、美味しいですよね!! ……あれ、もうご飯なくなっちゃった?
でもすかさずナオさんがおかわりを聞いてきた。知らず知らずにお父様のお茶碗も空っぽ。いやぁ、騎士の方々はお腹空いちゃいますよね。
「アヤメの食べたエビフライも今度食べてみたいものだな」
「あ、他にもエバニスのパスタとか、エバニスしゅうまいとか出してるみたいですよ」
「ほぅ、しゅうまいか」
あ、パスタは食べた事あったけどしゅうまいは食べた事なかったんだっけ。今度タクミ達に言ってみようかな。あ、勿論私もお手伝いしますよ! 今度こそ上手に包んでみせますとも!
美味しいエバニス料理でお母様達はもう大満足。今度もまた家族で行こう、と約束もしたのだ。
「いやぁ、何ヶ月ぶりかな」
「そうねぇ、それに4人で来るのも初めてよね」
そう、【なかむら】です。お父様達は本当に久しぶりなと思う。あ、私は……数日前にも行きましたね。とは言っても、お父様とお兄様は王城で【なかむら】料理を食べたけれど。
「最後尾はここかな」
「え”っ、げっ元帥!?」
「えっごっご機嫌麗しゅう……!!」
今日も大盛況で列が出来ている為、私達四人は列の最後尾に並んだら、先に来ていた方々はもう大慌て。顎が外れちゃうんじゃないかってくらい口を開けてる人もいれば、目が飛び出ちゃってる人まで。
もうさ、私達が揃って王城の中歩いただけで驚く人達がいるんだからこれも当然よね。
「今日はプライベートだ。だから、気を遣わなくていい」
無理ですっっっ!!!
と、皆さんの心の声が揃って聞こえてきたような気がした。
ここに来る貴族の方々の我儘っぷりは酷かったけど、お父様達が来たって噂が広まれば収まるんじゃないかな? なんて思ったり。
「えっこっ……!?」
リカルドさん、吃驚しすぎ。というか、顔知ってたんだね。まぁ、一度お兄様来てるし、お兄様と顔そっくりだから考えてみれば分かるか。
唖然としていたら、途中で正気に戻ったみたい。すぐに空いている席に案内してくれた。
「さて、今日は何があるのかな」
「私は絶対エバニス料理よ」
「はは、私もそのつもりさ」
メニューの中には……あ、エバニス料理が二種類。あとお肉料理が一つだ。とは言っても、皆さんエバニス料理にしか目がいってないみたい。
「いらっしゃいませ。ご来店いただきありがとうございます」
「忙しそうだな、タクミ君」
「おかげさまで」
タクミが来てくれた。まぁ、お父様達が来てれば来なきゃ駄目だもんね。忙しいのに大丈夫?
「ご注文お決まりでしたら伺いますよ」
「そうね~」
ん~、何がいいかな~。いつもみたいに特別メニュー? 社交界では〝秘密のメニュー〟って言われてるんだっけ。でも、今の私の目に移っているのはメニュー欄に書かれているこの料理。
「グラタン!」
「これはエバニスか?」
「はい」
「じゃあ~、私もそれね!」
「なら私は、春巻きにしよう。フレッドはどうする」
「私も春巻きにします」
おぉ、見事に綺麗に分かれたな。説明は全くしなかったんだけど、出てくるまでの楽しみにしたいらしい。
ではお待ちください、と戻っていったタクミ。
周りを見渡すと、あぁ、皆さん此方をちらちら見てる。耳をこちらに向けてるんだろうなぁ。まぁ、パーティーとかそういうのではいつもの事だからいいんだけどさ。
「そういえば、そろそろアヤメちゃんの誕生日よね」
「あ」
今はもう11月が終わろうとしている。そう、私の誕生日は12月なのだ。ちょっと忘れてたかも。
「アヤメちゃんの誕生日パーティーは前日にしたいと思ってるんだけど、どう?」
「え、前日ですか?」
「そう。当日はアヤメちゃんのしたい事を一緒にしましょ」
「あぁ、私達もその二日間は必ず休みを取るから、家族で一緒に過ごそうか」
家族、皆で……そっか、一日、家族皆で……う、嬉しい……!
「ありがとうございます!」
「えぇ、思いついたらすぐに言ってね」
「はい!」
ん~、何して過ごそうかな~、ここって雪は降るのかな? 雪、積もったら雪だるま作りたい! あ、雪合戦でもする? いや、お父様とお兄様強そうだしなぁ。二人で戦ったら一体どっちが勝つんだろう。
考えていると、リカルドさんが私達の料理を運んでくれた。レディーファースト? で最初に私達のグラタン。それから次に春巻き。ん~美味しそう!
いい感じの焦げ具合、そしてチーズの良い匂い。ん~早くスプーンを入れたい!
「もしかして、この中にエバニスが入ってるのかしら」
「そうです! チーズの下を見てみてください!」
「春巻きも中に入っているのかな、油で揚げているようだ」
「皮がぱりぱりして美味しいですよ!」
スプーンを入れてみると、何やら大きなナニカが。すくい上げてみるとこれまたビックリ。え、ちょっと待って、エビ、多すぎやしませんか!? マカロニとか青い野菜も入ってるけど、一体いくつ入ってるのよこれ! しかも大きいし!
ウチの領地から仕入れてるって聞いたんだけど、あ、なんか味が違う? 隣国から仕入れていたのも美味しかったけれど、こっちも負けずぷりぷりとしてて味もいい。
「ん~エバニスぷりぷりね~♡」
「美味ぁ~!」
「確かにパリパリとしていて美味い。中のこれは一体何だろうか、麺のようだが」
「それは春雨って言うんです」
「ほぉ、エバニスとも相性がいいな」
隣のお兄様も、かぶりついて良い食べっぷり! ちょっと表情筋動いてる! うんうん分かります、美味しいですよね!! ……あれ、もうご飯なくなっちゃった?
でもすかさずナオさんがおかわりを聞いてきた。知らず知らずにお父様のお茶碗も空っぽ。いやぁ、騎士の方々はお腹空いちゃいますよね。
「アヤメの食べたエビフライも今度食べてみたいものだな」
「あ、他にもエバニスのパスタとか、エバニスしゅうまいとか出してるみたいですよ」
「ほぅ、しゅうまいか」
あ、パスタは食べた事あったけどしゅうまいは食べた事なかったんだっけ。今度タクミ達に言ってみようかな。あ、勿論私もお手伝いしますよ! 今度こそ上手に包んでみせますとも!
美味しいエバニス料理でお母様達はもう大満足。今度もまた家族で行こう、と約束もしたのだ。
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