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第八章 国際サミット
◇65 エビフライ
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今日はカリナと一緒に【なかむら】に来ていた。
「ねぇアヤメ、どうしてあの人ボロボロなのよ。喧嘩でもしたの?」
「あ、はは……」
あの人、とはタクミの事である。ほっぺたとかにガーゼが貼られていたり腕に包帯も巻いているのが見える。厨房にずっといるからお客さんの目にはあまり入らないけれど。
お父様、一体どれだけキツイ指導をしているのだろうか。ジルベルトに一度、お父様の指導ってどんな感じ? って聞いた事あるけれど、目を泳がせて答えてはくれなかった。後で覗いてみましょうか。
私達に気が付いたタクミは、すぐに来てくれた。
「誰と喧嘩したの」
「……鬼と、ですかね」
「鬼?」
カリナさん、鬼って誰よって言いたそうだけどすかさずタクミが「今日はどうしますか」と話を変えた。うん、まぁ、間違ってはない、のかな?
けれど、カリナはメニューを覗いた瞬間、固まってしまったのだ。
「カリナ?」
「……い」
「え?」
「……な、ない……!!」
すっごく悲しい顔でそう言ったカリナ。え、何がないって……あっ。
「あー、すんません」
「あんこ!」
「そう!」
メニューの中のデザートの所に、あんこの使われているデザートが消えていたのだ。ようかんも、あんこのお団子も。なにかあった……!?
「実は、小豆がないんですよ」
「小豆?」
「そう、あんこの材料。スフェーン王国から持ってきてるんですけど、今そのルートが大荒れで中々通れなくて困ってるんです」
「……」
いや、カリナさん。そんな絶望した顔しないで。あんこ大好きなのは知ってるけど。もう一人あんこ好きな人も知ってるけど。今日ようかん買っていこうって思ってたんだけど、カステラにしようかな。
「そのルートってオリコット王国を通ってるんでしょ?」
「はい、俺らは隣のセオリシア王国を通る事が出来ないので、そっちを通るしかないんです」
「ほんっと面倒ね~」
「……ごめん、全く話が見えません」
「あぁ、アヤメは知らないんだっけ。昔、スフェーン王国とセオリシア王国が喧嘩したのよ。と言っても、セオリシア王国がカンカンに怒っちゃって一方的って感じね」
い、一方的?
「スフェーン王国はセオリシア王国と、もう一つの隣国であるラレスティン王国と友好関係を築いていたの。でもある時、セオリシアとラレスティンが喧嘩しちゃって。それがスフェーン王国に飛び火しちゃったってわけ。
それで、どっちの肩を持つか選択しなくちゃならなくなったんだけど、仕方なくスフェーンはラレスティンの方を選んだの。当時、スフェーンの王女がラレスティンに嫁ぐ事が決まっていたから仕方なかったのよ。
でも、そのせいでセオリシアの国王は怒っちゃって、貿易関係諸々切っちゃったのよ」
「う、わぁ……」
いくら何でもやりすぎじゃないですか。その時の王様っていったいどんな人だったんだろう。
「でもこれは100年前の話なんだ。だから解消することが出来なくもなさそうなんだけど、俺らには何もできないわけだ」
「そ、か……」
え、スフェーン王国可哀想。というか、一体セオリシアとラレスティンは何で喧嘩したんだろう。その理由知りたいな。
「もしセオリシアを通ることが出来るなら、今まで20日かかってた所を半分でこっちに来れるって事になるんだよな」
「そんなに!?」
「それだけ大回りをしてるって事よ」
そっか、スフェーンってこことは隣国じゃない。セオリシアの向こう側だったっけ。だからそんなに時間がかかっちゃうのね。
確か、今は彼らの叔父さんがこの国の商会、レストリス商会と手を組んでいるって言ってた。となると、今結構困ってると思う。
どうにか、ならないかなぁ。
「それで?」
「エビフライ食べたいです」
「おっけ、カリナじょ…」
「白玉団子」
「いや、そっちじゃなくて飯聞いてるんですけど」
「ん~、このコロッケ食べてみたい」
「コロッケ定食ね」
カリナ、どれだけあんこが食べたかったんだろう。まぁ、気に入ってくれてよかったけど。
「あ、そうだ。この前炊飯器買ったじゃない? ウチの料理長達が取扱説明書とレシピを熟読して食事に出してくれたんだけどね、もうお父様達だいぶ気に入っちゃって。今度ここに連れてくる約束もしてるんだ~♪」
「ほんと!」
「うんうん! お母様はね、ペメレとカロットの入った炊き込みご飯が好きみたい! 私もそれがお気に入りでね!」
ペメレとはキノコの一種、味はまいたけ寄りかな? カロットは人参の事である。
最近は、レストリス商会の方で炊飯器の売れ行きが右肩上がりだそうだ。特に貴族の人達がこぞってお買い求めしてくるのだとか。その理由は一つ。ついこの前の王城での会食でご飯が出たらしい。料理はいつも通り、だけどパンの代わりにご飯が出たそうだ。
そのため、ウチの専属魔道具師であるロレンさんは毎日大忙しだ。
勿論、【なかむら】も大盛況。だから、夜営業も始めたらしい。今のスタッフは4人だからまぁ何とか、と言っていて。でも、色々とスフェーン王国から持ってきてもらってたものが今ないから四苦八苦してるんじゃないかな。大変そう。
大荒れか……早く収まるといいな。
とりあえず、エビフライは超絶美味しかったです。熱々揚げたてのエビフライをはふはふさせながら味わった。外はサクサク、中はぷりぷりでもう美味しすぎてほっぺたが落っこちそうで。いや、もう落っこちたかもしれない。それから、ソースに付けて食べるとまた味が変わって最高でした。
「ねぇアヤメ、どうしてあの人ボロボロなのよ。喧嘩でもしたの?」
「あ、はは……」
あの人、とはタクミの事である。ほっぺたとかにガーゼが貼られていたり腕に包帯も巻いているのが見える。厨房にずっといるからお客さんの目にはあまり入らないけれど。
お父様、一体どれだけキツイ指導をしているのだろうか。ジルベルトに一度、お父様の指導ってどんな感じ? って聞いた事あるけれど、目を泳がせて答えてはくれなかった。後で覗いてみましょうか。
私達に気が付いたタクミは、すぐに来てくれた。
「誰と喧嘩したの」
「……鬼と、ですかね」
「鬼?」
カリナさん、鬼って誰よって言いたそうだけどすかさずタクミが「今日はどうしますか」と話を変えた。うん、まぁ、間違ってはない、のかな?
けれど、カリナはメニューを覗いた瞬間、固まってしまったのだ。
「カリナ?」
「……い」
「え?」
「……な、ない……!!」
すっごく悲しい顔でそう言ったカリナ。え、何がないって……あっ。
「あー、すんません」
「あんこ!」
「そう!」
メニューの中のデザートの所に、あんこの使われているデザートが消えていたのだ。ようかんも、あんこのお団子も。なにかあった……!?
「実は、小豆がないんですよ」
「小豆?」
「そう、あんこの材料。スフェーン王国から持ってきてるんですけど、今そのルートが大荒れで中々通れなくて困ってるんです」
「……」
いや、カリナさん。そんな絶望した顔しないで。あんこ大好きなのは知ってるけど。もう一人あんこ好きな人も知ってるけど。今日ようかん買っていこうって思ってたんだけど、カステラにしようかな。
「そのルートってオリコット王国を通ってるんでしょ?」
「はい、俺らは隣のセオリシア王国を通る事が出来ないので、そっちを通るしかないんです」
「ほんっと面倒ね~」
「……ごめん、全く話が見えません」
「あぁ、アヤメは知らないんだっけ。昔、スフェーン王国とセオリシア王国が喧嘩したのよ。と言っても、セオリシア王国がカンカンに怒っちゃって一方的って感じね」
い、一方的?
「スフェーン王国はセオリシア王国と、もう一つの隣国であるラレスティン王国と友好関係を築いていたの。でもある時、セオリシアとラレスティンが喧嘩しちゃって。それがスフェーン王国に飛び火しちゃったってわけ。
それで、どっちの肩を持つか選択しなくちゃならなくなったんだけど、仕方なくスフェーンはラレスティンの方を選んだの。当時、スフェーンの王女がラレスティンに嫁ぐ事が決まっていたから仕方なかったのよ。
でも、そのせいでセオリシアの国王は怒っちゃって、貿易関係諸々切っちゃったのよ」
「う、わぁ……」
いくら何でもやりすぎじゃないですか。その時の王様っていったいどんな人だったんだろう。
「でもこれは100年前の話なんだ。だから解消することが出来なくもなさそうなんだけど、俺らには何もできないわけだ」
「そ、か……」
え、スフェーン王国可哀想。というか、一体セオリシアとラレスティンは何で喧嘩したんだろう。その理由知りたいな。
「もしセオリシアを通ることが出来るなら、今まで20日かかってた所を半分でこっちに来れるって事になるんだよな」
「そんなに!?」
「それだけ大回りをしてるって事よ」
そっか、スフェーンってこことは隣国じゃない。セオリシアの向こう側だったっけ。だからそんなに時間がかかっちゃうのね。
確か、今は彼らの叔父さんがこの国の商会、レストリス商会と手を組んでいるって言ってた。となると、今結構困ってると思う。
どうにか、ならないかなぁ。
「それで?」
「エビフライ食べたいです」
「おっけ、カリナじょ…」
「白玉団子」
「いや、そっちじゃなくて飯聞いてるんですけど」
「ん~、このコロッケ食べてみたい」
「コロッケ定食ね」
カリナ、どれだけあんこが食べたかったんだろう。まぁ、気に入ってくれてよかったけど。
「あ、そうだ。この前炊飯器買ったじゃない? ウチの料理長達が取扱説明書とレシピを熟読して食事に出してくれたんだけどね、もうお父様達だいぶ気に入っちゃって。今度ここに連れてくる約束もしてるんだ~♪」
「ほんと!」
「うんうん! お母様はね、ペメレとカロットの入った炊き込みご飯が好きみたい! 私もそれがお気に入りでね!」
ペメレとはキノコの一種、味はまいたけ寄りかな? カロットは人参の事である。
最近は、レストリス商会の方で炊飯器の売れ行きが右肩上がりだそうだ。特に貴族の人達がこぞってお買い求めしてくるのだとか。その理由は一つ。ついこの前の王城での会食でご飯が出たらしい。料理はいつも通り、だけどパンの代わりにご飯が出たそうだ。
そのため、ウチの専属魔道具師であるロレンさんは毎日大忙しだ。
勿論、【なかむら】も大盛況。だから、夜営業も始めたらしい。今のスタッフは4人だからまぁ何とか、と言っていて。でも、色々とスフェーン王国から持ってきてもらってたものが今ないから四苦八苦してるんじゃないかな。大変そう。
大荒れか……早く収まるといいな。
とりあえず、エビフライは超絶美味しかったです。熱々揚げたてのエビフライをはふはふさせながら味わった。外はサクサク、中はぷりぷりでもう美味しすぎてほっぺたが落っこちそうで。いや、もう落っこちたかもしれない。それから、ソースに付けて食べるとまた味が変わって最高でした。
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