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第六章 カーネリアン王国の夏
◇51 スフェーン王国の騎士さん
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私達は今、とある場所に向かっている。
ついさっき偶然聞いてしまった事の真偽を確かめるためだ。
その場所に近づくたび、男性達の力強い声が聞こえてくる。そう、行き先はここの鍛錬場だ。
ここアドマンス家は専属騎士団を持つことの出来る家。首都にも、もちろん領地の屋敷にも騎士団はいる訳で。ここはそんな騎士達が毎日の鍛錬をする場所である。
どうしてここに来たのかって? それはですね……
『そういえば、あのナカムラ男爵家の方々が鍛錬場に行く所を見ましたよ』
『え?』
『騎士団長様と話をしていました。何かお願いをしていたように見えましたよ?』
と、いう話を聞いたからだ。え、もしかして、とも思ったけれど……そういうのって聞いた事なかったし。しかもナカムラ家の方々、って言った。そこにはナナミちゃんも入ってるって事だよね。一体どういう事なんだろうか。
「おぉ、アヤメお嬢様」
「あ、こんにちは、団長様」
「団長様だなんて、ニコラスとお呼びください」
端から見た騎士団さん達は、さっきから聞こえてた以上に熱の入った掛け声。剣の素振り? あっちでは実際に対人で戦ってるみたい。あ、でも木刀ね。怪我しちゃうから当たり前か。
でも、見回しても私の探している二人はいない。まさかね、と思っていたし、あのメイドさんの見間違いだったのかな。
それで、如何しました? と団長さんが聞いてくれて。
「ナナミちゃんとタクミ君、ナカムラ兄妹って見ませんでした?」
「あぁ、ナカムラ男爵家の方々ですね。つい先程までいらっしゃいましたが、今は馬小屋に向かわれましたよ」
「え? 馬小屋?」
「はい。馬に乗りたいそうでして」
じゃあ馬小屋に行ってみよう。団長さんに教えてくれてありがとうございますとお礼を言い、ジルベルトに馬小屋まで案内してもらった。あ、そういえばジルベルトは鍛錬しなくてもいいのかな。私の事ずっと護衛してるもんね。後で話してみようかな。
やっと馬小屋に着いた。結構大きいのね。まぁでもウチには騎士団がいるからこんな大きさなのは当たり前なんだと思うけど。と思っていたら、遠くから声が聞こえてきて。
「あ、いた!」
「あ、ほんとですね」
遠くから、馬を走らせているナナミちゃんとタクミ君を発見。へぇ、2人って馬に乗れるんだ。タクミ君はまだしも、ナナミちゃんが乗れるなんて。普通貴族の女性って馬には乗らないって聞いたんだけど、そっちの国では普通だったのかな。乗馬クラブとか?
二人の馬に乗る姿、結構かっこいいな。
二人は、私が見ていた事に気が付いたらしい。私の方へ馬を走らせてきた。手を振ってきたから、私も手を振り返して。
「二人って馬乗れるんだね」
「あぁ、まぁね。ウチの家族全員乗れるよ」
「馬に乗れなきゃ何にも出来ないからな」
「へぇ~、かっこいいね!」
「……」
「ほんと? アヤメちゃんに褒められると嬉しいなぁ~!」
どうしてこんな所に? と聞かれてしまい、何て言ったらいいのか、と少し考えたけれど……洗いざらい話してしまった。あぁ、そういう事ね、と笑っていて。
「ついさっきまで私達鍛錬にお邪魔させてもらってたの」
「……え?」
鍛錬に、お邪魔させてもらってた? じゃあ、一緒に鍛錬してたって事?
「何だよ、意外?」
「うん」
「うわぁ、即答。酷っ」
「ナナミちゃんは?」
「私? 私もだよ」
え、ナナミちゃんも!? ナナミちゃんもあの男性陣の中に混ざって剣振ってたの!?
「あ、知らないんだっけ。私達のママ元近衛騎士団の団長なの」
「……え?」
え、二人のお母様が、近衛騎士!? えぇえ!? しかも女性!?
「ウチの領地は大きな森があってさ、領地に沢山作ってる畑を荒らす大型動物が何匹もいてね。ママが定期的に狩ってくれるの」
「へ、へぇ……」
「俺らも小さい時から叩きこまれて狩りに行かされてるってわけ」
あ、でもお肉が美味しい動物ばかりなんだよね~と笑顔で語るナナミちゃん。いやいやいや、普通そんな事言わないですよ女の子が。しかも、え、二人のお母様が、騎士ですか。何だか、ドラマのありそうな話ですね。
というか、ナカムラ一族がドラマがありすぎるのか。だって、おばあさまが王様の初恋相手なんでしょ? やばいな、ナカムラ一族。
「鍛錬を怠ると領地にいるママに睨まれそうだからこうしてお願いしたわけよ」
「母上を怒らせるととりあえず手が付けられなくなるからな、半殺しにされる」
「うんうん、ガチで怖いからね、ママ」
ん? 睨まれる? 二人の国って、ここから20日かかる道のりだって言ってなかったっけ。しかも、半殺し?
どれだけ凄いお母様なんだろうか。会ってみたいような、ないような。
「馬、乗ってみる? 乗った事ないでしょ?」
「いいの?」
「うんいいよ、怖かったら乗るだけにすればいいし」
「ナナミじゃ不安じゃねぇの?」
「はぁ?」
あ、兄妹喧嘩始まっちゃった感じ? でも見ててほっこりするというか、何というか。
「お嬢様、私の馬に乗りましょう」
「え?」
「お二人はこの馬達に乗ったのは今日だけです。私でしたら自分の馬を熟知していますから、もし何かあったとしても対応できますし、元々私の馬は大人しいので他人でも乗せてくれるでしょう」
あ、そっか。馬さんが乗せてくれるかどうかって事にもなるのか。
私、乗っていいのかなって思ったけど、ジルベルトがそう言ってくれるなら……
「じゃあ、いい?」
「はい」
と、いうことになった。それを聞いていたナナミちゃんは、確かに怪我したら大変だもんね。と納得してくれて、タクミ君は……黙っちゃった。
ジルベルトが連れてきてくれた馬は、とっても大きくて、絵本に出てきそうな白馬だった。ここに来る時私達が乗る馬車にこれに乗って付いてきてくれたから知ってはいたけど、改めて見ると、かっこいいな。
「こんにちは」
と、挨拶しては見たものの、じーっと私を見てて。それからふいっとそっぽ向かれちゃった。え、乗っていいの? ダメ?
「他の騎士達曰くツンデレだそうですから、気にしなくても大丈夫です」
「あー、なるほど」
なでなでジルベルトが頭を撫でるとなんか嬉しそう。悔しいな、なんか。
先に、ジルベルトが乗って。それから手を伸ばしてくれた。よっこいしょ、と馬さんに乗せてくれて。私重かったでしょ、ごめんね。
「うわっ、たっか……!?」
「すぐなれますよ」
「これで走るんでしょ? 落とされそう」
でも、この子は全然安定して乗れるそうだ。それだけお利口って事? ツンデレのくせに優しいのね。
「名前は?」
「トワです」
ナナミちゃん達もこんなに大きな馬は乗った事が無いみたい。領地にはいるみたいなんだけど、二人のお母様専用の馬だそうだ。
「黒でカッコいいんだよ~!」
「昔は暴れ馬って言われてたみたいだけど、母上が躾直したって聞いた」
「へぇ~」
このまま歩くのは怖いから、もう降りようと思ったら、今度はタクミ君が受け止めてくれるみたい。手を伸ばしてくれた。
「思いっきりいくけど、大丈夫?」
「余裕」
「重いよ?」
「大男ならまだしも、アヤメなら全然大丈夫だっつの。俺を何だと思ってるんだよ」
と、言われてしまったので、よっ! っと思いっきり降りた。ちゃーんと受け止めてくれました、ありがとうございます。トワさんは蹴ってないから多分大丈夫よね。
「ありがと」
「だから言ったろ、余裕だって」
「力持ち!」
ありがと~! とトワさんにも言ってみたら、次はそっぽ向かれなかった。良かったぁ~!
高くてちょっと怖かったけど、楽しかったな。ありがとう、ジルベルト。
今日は、二人の意外な一面とナカムラ一族家の凄さを感じられた一日だった。
その日のお風呂では、ナナミちゃんと一緒に入りお母様の武勇伝を聞かせてもらった。
この屋敷くらいの大トカゲを一人で倒したとか、大型モンスターの大軍を食い止めたとか。より一層彼女達のお母様が凄い人なんだって思ってしまった。
ついさっき偶然聞いてしまった事の真偽を確かめるためだ。
その場所に近づくたび、男性達の力強い声が聞こえてくる。そう、行き先はここの鍛錬場だ。
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『え?』
『騎士団長様と話をしていました。何かお願いをしていたように見えましたよ?』
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「おぉ、アヤメお嬢様」
「あ、こんにちは、団長様」
「団長様だなんて、ニコラスとお呼びください」
端から見た騎士団さん達は、さっきから聞こえてた以上に熱の入った掛け声。剣の素振り? あっちでは実際に対人で戦ってるみたい。あ、でも木刀ね。怪我しちゃうから当たり前か。
でも、見回しても私の探している二人はいない。まさかね、と思っていたし、あのメイドさんの見間違いだったのかな。
それで、如何しました? と団長さんが聞いてくれて。
「ナナミちゃんとタクミ君、ナカムラ兄妹って見ませんでした?」
「あぁ、ナカムラ男爵家の方々ですね。つい先程までいらっしゃいましたが、今は馬小屋に向かわれましたよ」
「え? 馬小屋?」
「はい。馬に乗りたいそうでして」
じゃあ馬小屋に行ってみよう。団長さんに教えてくれてありがとうございますとお礼を言い、ジルベルトに馬小屋まで案内してもらった。あ、そういえばジルベルトは鍛錬しなくてもいいのかな。私の事ずっと護衛してるもんね。後で話してみようかな。
やっと馬小屋に着いた。結構大きいのね。まぁでもウチには騎士団がいるからこんな大きさなのは当たり前なんだと思うけど。と思っていたら、遠くから声が聞こえてきて。
「あ、いた!」
「あ、ほんとですね」
遠くから、馬を走らせているナナミちゃんとタクミ君を発見。へぇ、2人って馬に乗れるんだ。タクミ君はまだしも、ナナミちゃんが乗れるなんて。普通貴族の女性って馬には乗らないって聞いたんだけど、そっちの国では普通だったのかな。乗馬クラブとか?
二人の馬に乗る姿、結構かっこいいな。
二人は、私が見ていた事に気が付いたらしい。私の方へ馬を走らせてきた。手を振ってきたから、私も手を振り返して。
「二人って馬乗れるんだね」
「あぁ、まぁね。ウチの家族全員乗れるよ」
「馬に乗れなきゃ何にも出来ないからな」
「へぇ~、かっこいいね!」
「……」
「ほんと? アヤメちゃんに褒められると嬉しいなぁ~!」
どうしてこんな所に? と聞かれてしまい、何て言ったらいいのか、と少し考えたけれど……洗いざらい話してしまった。あぁ、そういう事ね、と笑っていて。
「ついさっきまで私達鍛錬にお邪魔させてもらってたの」
「……え?」
鍛錬に、お邪魔させてもらってた? じゃあ、一緒に鍛錬してたって事?
「何だよ、意外?」
「うん」
「うわぁ、即答。酷っ」
「ナナミちゃんは?」
「私? 私もだよ」
え、ナナミちゃんも!? ナナミちゃんもあの男性陣の中に混ざって剣振ってたの!?
「あ、知らないんだっけ。私達のママ元近衛騎士団の団長なの」
「……え?」
え、二人のお母様が、近衛騎士!? えぇえ!? しかも女性!?
「ウチの領地は大きな森があってさ、領地に沢山作ってる畑を荒らす大型動物が何匹もいてね。ママが定期的に狩ってくれるの」
「へ、へぇ……」
「俺らも小さい時から叩きこまれて狩りに行かされてるってわけ」
あ、でもお肉が美味しい動物ばかりなんだよね~と笑顔で語るナナミちゃん。いやいやいや、普通そんな事言わないですよ女の子が。しかも、え、二人のお母様が、騎士ですか。何だか、ドラマのありそうな話ですね。
というか、ナカムラ一族がドラマがありすぎるのか。だって、おばあさまが王様の初恋相手なんでしょ? やばいな、ナカムラ一族。
「鍛錬を怠ると領地にいるママに睨まれそうだからこうしてお願いしたわけよ」
「母上を怒らせるととりあえず手が付けられなくなるからな、半殺しにされる」
「うんうん、ガチで怖いからね、ママ」
ん? 睨まれる? 二人の国って、ここから20日かかる道のりだって言ってなかったっけ。しかも、半殺し?
どれだけ凄いお母様なんだろうか。会ってみたいような、ないような。
「馬、乗ってみる? 乗った事ないでしょ?」
「いいの?」
「うんいいよ、怖かったら乗るだけにすればいいし」
「ナナミじゃ不安じゃねぇの?」
「はぁ?」
あ、兄妹喧嘩始まっちゃった感じ? でも見ててほっこりするというか、何というか。
「お嬢様、私の馬に乗りましょう」
「え?」
「お二人はこの馬達に乗ったのは今日だけです。私でしたら自分の馬を熟知していますから、もし何かあったとしても対応できますし、元々私の馬は大人しいので他人でも乗せてくれるでしょう」
あ、そっか。馬さんが乗せてくれるかどうかって事にもなるのか。
私、乗っていいのかなって思ったけど、ジルベルトがそう言ってくれるなら……
「じゃあ、いい?」
「はい」
と、いうことになった。それを聞いていたナナミちゃんは、確かに怪我したら大変だもんね。と納得してくれて、タクミ君は……黙っちゃった。
ジルベルトが連れてきてくれた馬は、とっても大きくて、絵本に出てきそうな白馬だった。ここに来る時私達が乗る馬車にこれに乗って付いてきてくれたから知ってはいたけど、改めて見ると、かっこいいな。
「こんにちは」
と、挨拶しては見たものの、じーっと私を見てて。それからふいっとそっぽ向かれちゃった。え、乗っていいの? ダメ?
「他の騎士達曰くツンデレだそうですから、気にしなくても大丈夫です」
「あー、なるほど」
なでなでジルベルトが頭を撫でるとなんか嬉しそう。悔しいな、なんか。
先に、ジルベルトが乗って。それから手を伸ばしてくれた。よっこいしょ、と馬さんに乗せてくれて。私重かったでしょ、ごめんね。
「うわっ、たっか……!?」
「すぐなれますよ」
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でも、この子は全然安定して乗れるそうだ。それだけお利口って事? ツンデレのくせに優しいのね。
「名前は?」
「トワです」
ナナミちゃん達もこんなに大きな馬は乗った事が無いみたい。領地にはいるみたいなんだけど、二人のお母様専用の馬だそうだ。
「黒でカッコいいんだよ~!」
「昔は暴れ馬って言われてたみたいだけど、母上が躾直したって聞いた」
「へぇ~」
このまま歩くのは怖いから、もう降りようと思ったら、今度はタクミ君が受け止めてくれるみたい。手を伸ばしてくれた。
「思いっきりいくけど、大丈夫?」
「余裕」
「重いよ?」
「大男ならまだしも、アヤメなら全然大丈夫だっつの。俺を何だと思ってるんだよ」
と、言われてしまったので、よっ! っと思いっきり降りた。ちゃーんと受け止めてくれました、ありがとうございます。トワさんは蹴ってないから多分大丈夫よね。
「ありがと」
「だから言ったろ、余裕だって」
「力持ち!」
ありがと~! とトワさんにも言ってみたら、次はそっぽ向かれなかった。良かったぁ~!
高くてちょっと怖かったけど、楽しかったな。ありがとう、ジルベルト。
今日は、二人の意外な一面とナカムラ一族家の凄さを感じられた一日だった。
その日のお風呂では、ナナミちゃんと一緒に入りお母様の武勇伝を聞かせてもらった。
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