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第六章 カーネリアン王国の夏
◇50 海
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「……わぁ、海だ……!」
一面に広がる、海。今日は太陽が出てるからとてもキラキラしてる。
ここは屋敷の敷地内。海岸があるだなんて知らなかったし、どれだけ敷地内が広いのか分からないくらい凄い。
「初めてだっけ」
「うん」
わ~い! と元気よく海岸に走っていったナナミちゃん。アヤメちゃんもおいで~! と言って手を振ってきた。
「アイツはしゃぎすぎだな、アヤメも行こ」
と、タクミ君は言ってくれたけど……私の足は途中で止まってしまった。
「お嬢様?」
「……私もうちょっとここで見てようかな。とっても綺麗で見ていて楽しいし。あ、代わりに貝殻取ってきてよ。とっても綺麗なやつ!」
ほらほら、とマリアとタクミ君の背中を押した。ジルベルトも! と言って。でも3人は行ってくれなくて。やっぱり駄目だった?
「……おっきい貝殻、見つけてきてください」
「え?」
そう言ったのはタクミ君だった。
「海に近づけないビビり令嬢は俺が見てますから」
と。ちょっと、それどういう事です? もうちょっとここで見たいって言っただけじゃん!
でも、ではすぐ拾ってきますからね、と二人は行ってくれた。
「なーにビビってんの?」
「……ビビってないもん。遠くから見たほうが綺麗で楽しいし」
ふ~ん、とニヤニヤしながら地面に座ったタクミ君。こんな行動をした私をどう思ったのだろうか、と思いつつ私も隣に座った。
折角、濡れないようマリアがひざ丈の洋服用意してくれたのに。ごめんね、マリア。
「水苦手?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……ここから見たほうがとっても広く見渡せるし」
「ふぅん。まぁ確かに綺麗だな。
実は妹がさぁ、あ、ナナミの一つ下の方な。水が苦手でさ。小さい時、一回田んぼに落っこちた事あんの。だから川も海も苦手なんだよ」
「怪我、しなかった?」
「ちょっと擦りむいただけで問題なし」
そっか、良かった。小さいとき田んぼに落ちただなんて、絶対怖かっただろうね。
「イズミって言うんだけどさ、ナナミの一つ下だからアヤメと同じ16歳だ。その歳になっても水が苦手だなんて、どっかの誰かさんとちょっと似てるな」
「……違うって言ったじゃん」
「本当か?」
「ほんと」
絶対疑ってるでしょ。本当だもん、苦手ってわけじゃない。
「……プール、って知ってる?」
「何それ」
「人が泳げるくらいの大きさの水槽みたいなやつ。学校の授業で泳ぎ方習うんだけど、私受けた事ないの。主治医の先生に、ダメって言われちゃって」
「ふぅん」
「……海水浴も、途中で倒れたら大変だからって……別に怖くはないんだけど、何かあったら、って思うと……」
先生にダメって言われちゃってたから、海に入ったら怒られちゃいそうな感じがして。あの時よりだいぶ元気になったから大丈夫だと思うんだけど。でも、何となく……怒られちゃう、かなって思っちゃって。おかしいよね。
ママを困らせちゃうからプールとか海とかはダメ、っていう考えがずっと頭の中にあるからかな。そんな感じ?
と、思っていたら隣に座ってたタクミ君がいきなり立ち上がった。そして、私の両手を掴んで引っ張って立ち上がらせられて。
「じゃあ俺がいれば大丈夫だろ」
「え?」
「医者は何かあったら大変だって言ったんだろ? じゃあ何かあったら俺が引き上げてやるよ。それにちょっと足を海に付けるだけなんだから、深い所に行かなきゃOKだろ?」
「あ……」
「手、離さないから安心しろ」
と言われ、手を引っ張り海の方へ連れてかれてしまったのだ。
「お嬢様!」
途中で靴を脱いで、マリアがそれを受け取ってくれた。
「あ……」
「怖いか?」
そう聞かれたけど、初めて踏んだ海岸の砂。こんな感じなんだ、って驚いてしまって。
「ほら」
両手をしっかり掴まれ、ゆっくりと歩き、そして海の水が足に流れてきた。
「うわっ冷たっ。こんなに気温あるのにこんなに冷たいのかよ」
「あっ」
水、戻ってっちゃった。でもまた流れてきて。
「どう?」
「……すごい、ね」
初めて体験した、海。
「……楽しいね」
「そう? そりゃよかった」
流れてきては、戻っていって、それがとても不思議で、とても心地良くて。
海の音も聞こえてきて、匂いもして。
テレビとかの映像でしか見た事がなかったけれど、実際とじゃ全然違う。
海水が向こうに戻る時引っ張られる感じがするけれど、タクミ君がしっかり手を持ってくれてるから大丈夫だって思える。だからこうやって足踏みも出来る。
「ふふっ」
自分の知らない、新しくて楽しい体験。
「ありがと、タクミ君」
「楽しそうで何よりだよ」
あはは、と笑っていたら……うわっ!? とタクミ君が驚いていて。何だ何だと思ってたら、ナナミちゃんが水をタクミ君に向けて飛ばしていた。足で蹴って、かな?
「お前なぁ……アヤメがいるんだぞ」
「アヤメちゃんにかかるほど下手くそじゃないんでね。お兄ちゃんが避けなきゃかからないし?」
「てめぇ……」
ちょっといいか、と言われたと思ったら、いきなり抱えられてしまって。知らず知らずに水の届かない場所まで移動させられてしまっていた。降ろされたかと思ったら勢いよく彼は海に戻っていって。ナナミちゃん向けて水を蹴り飛ばしていたのだ。
「あぁ!?」
「お返しだ馬鹿」
「やったなこのっ!!」
「下手くそ~!」
なぁんて事が始まってしまって。激しいな、普通に遊ぶのとではレベルが違い過ぎる。これはびしょびしょになる予感?
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫。それより……凄いね」
「そ、そうですね……」
マリア、引いてる?
案の定、二人はびしょ濡れで戻ってきた。
「うわ、びしょびしょだぁ」
「アイツのせい」
「こっちのセリフ」
「あはは、ほらタオル」
マリアが持ってきていたタオルでも拭ききれず、風邪をひく前に戻りましょうかという事になったのだ。取り敢えず着いたらお風呂ですね。
あはは、楽しかったなぁ。また行きたいな。
一面に広がる、海。今日は太陽が出てるからとてもキラキラしてる。
ここは屋敷の敷地内。海岸があるだなんて知らなかったし、どれだけ敷地内が広いのか分からないくらい凄い。
「初めてだっけ」
「うん」
わ~い! と元気よく海岸に走っていったナナミちゃん。アヤメちゃんもおいで~! と言って手を振ってきた。
「アイツはしゃぎすぎだな、アヤメも行こ」
と、タクミ君は言ってくれたけど……私の足は途中で止まってしまった。
「お嬢様?」
「……私もうちょっとここで見てようかな。とっても綺麗で見ていて楽しいし。あ、代わりに貝殻取ってきてよ。とっても綺麗なやつ!」
ほらほら、とマリアとタクミ君の背中を押した。ジルベルトも! と言って。でも3人は行ってくれなくて。やっぱり駄目だった?
「……おっきい貝殻、見つけてきてください」
「え?」
そう言ったのはタクミ君だった。
「海に近づけないビビり令嬢は俺が見てますから」
と。ちょっと、それどういう事です? もうちょっとここで見たいって言っただけじゃん!
でも、ではすぐ拾ってきますからね、と二人は行ってくれた。
「なーにビビってんの?」
「……ビビってないもん。遠くから見たほうが綺麗で楽しいし」
ふ~ん、とニヤニヤしながら地面に座ったタクミ君。こんな行動をした私をどう思ったのだろうか、と思いつつ私も隣に座った。
折角、濡れないようマリアがひざ丈の洋服用意してくれたのに。ごめんね、マリア。
「水苦手?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……ここから見たほうがとっても広く見渡せるし」
「ふぅん。まぁ確かに綺麗だな。
実は妹がさぁ、あ、ナナミの一つ下の方な。水が苦手でさ。小さい時、一回田んぼに落っこちた事あんの。だから川も海も苦手なんだよ」
「怪我、しなかった?」
「ちょっと擦りむいただけで問題なし」
そっか、良かった。小さいとき田んぼに落ちただなんて、絶対怖かっただろうね。
「イズミって言うんだけどさ、ナナミの一つ下だからアヤメと同じ16歳だ。その歳になっても水が苦手だなんて、どっかの誰かさんとちょっと似てるな」
「……違うって言ったじゃん」
「本当か?」
「ほんと」
絶対疑ってるでしょ。本当だもん、苦手ってわけじゃない。
「……プール、って知ってる?」
「何それ」
「人が泳げるくらいの大きさの水槽みたいなやつ。学校の授業で泳ぎ方習うんだけど、私受けた事ないの。主治医の先生に、ダメって言われちゃって」
「ふぅん」
「……海水浴も、途中で倒れたら大変だからって……別に怖くはないんだけど、何かあったら、って思うと……」
先生にダメって言われちゃってたから、海に入ったら怒られちゃいそうな感じがして。あの時よりだいぶ元気になったから大丈夫だと思うんだけど。でも、何となく……怒られちゃう、かなって思っちゃって。おかしいよね。
ママを困らせちゃうからプールとか海とかはダメ、っていう考えがずっと頭の中にあるからかな。そんな感じ?
と、思っていたら隣に座ってたタクミ君がいきなり立ち上がった。そして、私の両手を掴んで引っ張って立ち上がらせられて。
「じゃあ俺がいれば大丈夫だろ」
「え?」
「医者は何かあったら大変だって言ったんだろ? じゃあ何かあったら俺が引き上げてやるよ。それにちょっと足を海に付けるだけなんだから、深い所に行かなきゃOKだろ?」
「あ……」
「手、離さないから安心しろ」
と言われ、手を引っ張り海の方へ連れてかれてしまったのだ。
「お嬢様!」
途中で靴を脱いで、マリアがそれを受け取ってくれた。
「あ……」
「怖いか?」
そう聞かれたけど、初めて踏んだ海岸の砂。こんな感じなんだ、って驚いてしまって。
「ほら」
両手をしっかり掴まれ、ゆっくりと歩き、そして海の水が足に流れてきた。
「うわっ冷たっ。こんなに気温あるのにこんなに冷たいのかよ」
「あっ」
水、戻ってっちゃった。でもまた流れてきて。
「どう?」
「……すごい、ね」
初めて体験した、海。
「……楽しいね」
「そう? そりゃよかった」
流れてきては、戻っていって、それがとても不思議で、とても心地良くて。
海の音も聞こえてきて、匂いもして。
テレビとかの映像でしか見た事がなかったけれど、実際とじゃ全然違う。
海水が向こうに戻る時引っ張られる感じがするけれど、タクミ君がしっかり手を持ってくれてるから大丈夫だって思える。だからこうやって足踏みも出来る。
「ふふっ」
自分の知らない、新しくて楽しい体験。
「ありがと、タクミ君」
「楽しそうで何よりだよ」
あはは、と笑っていたら……うわっ!? とタクミ君が驚いていて。何だ何だと思ってたら、ナナミちゃんが水をタクミ君に向けて飛ばしていた。足で蹴って、かな?
「お前なぁ……アヤメがいるんだぞ」
「アヤメちゃんにかかるほど下手くそじゃないんでね。お兄ちゃんが避けなきゃかからないし?」
「てめぇ……」
ちょっといいか、と言われたと思ったら、いきなり抱えられてしまって。知らず知らずに水の届かない場所まで移動させられてしまっていた。降ろされたかと思ったら勢いよく彼は海に戻っていって。ナナミちゃん向けて水を蹴り飛ばしていたのだ。
「あぁ!?」
「お返しだ馬鹿」
「やったなこのっ!!」
「下手くそ~!」
なぁんて事が始まってしまって。激しいな、普通に遊ぶのとではレベルが違い過ぎる。これはびしょびしょになる予感?
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫。それより……凄いね」
「そ、そうですね……」
マリア、引いてる?
案の定、二人はびしょ濡れで戻ってきた。
「うわ、びしょびしょだぁ」
「アイツのせい」
「こっちのセリフ」
「あはは、ほらタオル」
マリアが持ってきていたタオルでも拭ききれず、風邪をひく前に戻りましょうかという事になったのだ。取り敢えず着いたらお風呂ですね。
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