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第六章 カーネリアン王国の夏
◇49 押し花
しおりを挟む今日は押し花作り。この屋敷の庭師に、切られてしまったお花を貰い部屋でマリアと押し花作りの準備をしている。
「これは、レメディンで、こっちはワレディオで」
「ふふ、このままでは植物博士になってしまいますね」
「あはは、そうだね」
あ、でもそれもいいかも。自分専用の植物図鑑作ってみようかな。
植物図鑑を開いて、貰ったお花とを見比べて名前を探しながらアイロンで押し花にしていく。結構これが楽しいの。
地球でも花は好きだったけど、こっちに来てもっとお花が好きになった。だから押し花を作る作業がこんなに楽しいんだけどね。
マリアと二人で作業していたら、コンコンッ、とこの部屋のドアがノックされた。ノックしてきたのはナナミちゃんだった。
「やっほ~、あ、お仕事中?」
「大丈夫だよ~」
彼女の手には、お皿。クッキー?
「それ、あれでしょ! 【クローバー】!!」
「そうそう、お花もらったから押し花にしちゃおうかなって」
目をキラキラさせて見てきて。そっか、押し花を作り始めたのはこっちでは私が初めてなんだっけ。だからこんな目をしてるのか。
そんなナナミちゃんに、やる? って言ってみた。すっごく吃驚していて、いいの? って。
「簡単だから大丈夫だよ、ほら」
「あ、ありがとう」
と、マリアが隣に持ってきてくれた椅子に座ったナナミちゃん。全然押し花の作り方知らないもん、不安になるよね。
「どのお花がいい?」
「じゃあ……これ!」
「おっけー、じゃあ……」
と、説明しながら隣でゆっくり手本を見せる。同じように隣で一緒に作業をするナナミちゃん。ここにお花を乗せて、これで被せて、とやっていき、アイロンで当てる。それを何度か繰り返し……
「うん、おっけー!」
「やったぁ、綺麗に出来た!」
ナナミちゃんは手先が器用みたい、とっても上手に押し花が完成した。料理やってるからかな? あ、違う?
それから、持ってきていたラミネーターで一緒に栞を作った。とっても可愛らしいピンクの押し花が完成。とってもセンスが良くて吃驚しちゃった。
「【クローバー】の製作者さんと一緒に栞作れるなんて光栄でした」
「あはは~」
もう雇いたいくらい上手だもん。そのセンスを分けてほしいな。
「実は今ね、新しい切手のデザインを考えててね」
「【フラワーメール】?」
「そう。だから、ここのお花を使ってみようかなって今思ってて」
ナナミちゃんも、何度も【フラワーメール】を利用してくれてるみたいで。と言っても送り相手は私なんだけど。結構楽しいお手紙を送ってくれるの。私もちょっと苦手ではあるけれどお手紙を返してやり取りしてる。
「いいじゃんいいじゃん! アドマンス領にしか咲いてないお花とかあるんでしょ? とっても素敵!」
「ほんと?」
「うん!」
ここには首都の庭にはないお花がたくさんある。だからここに滞在する期間でいくつか作ってみようかな。今まで作った切手とはまた違ったデザインになるようにして。そうした方が切手を選ぶ際楽しいもんね。
「あ、そうだ、これ。お兄ちゃんと焼いたから食べよって思って持ってきたの」
「あはは、ありがと」
クッキーそっちのけで押し花やっちゃってた事に、三人で笑ってしまった。休憩しましょうか、とマリアが言ってくれて中断、クッキーを頂く事にした。
これ、何クッキーだろう? アーモンドみたいな食感のが入ってる。甘い何かも。チョコ、とは違った……何だろ?
「ネケメの実を入れてみたんだ、どう?」
「何だか、アーモンドみたい。甘くて美味しいね」
「ネケメの実はよく実を粉砕して粉にして使う事が多いのですが、こんな使い方をするのは初めて見ました」
さすが料理人、しかも料理革命を起こした方のお孫さんだ。こんなに美味しいクッキーを作り出しちゃったなんて。美味しいなぁ、ふふ。
と思っていたら、ほっぺたをツンツンされてしまった。ナナミちゃんに。
「……可愛い」
「ん?」
「その気持ち、分かります」
「え?」
ちょっと、2人共? 私抜きで話さないでくださいません?
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