上 下
49 / 115
第六章 カーネリアン王国の夏

◇49 押し花

しおりを挟む

 今日は押し花作り。この屋敷の庭師に、切られてしまったお花を貰い部屋でマリアと押し花作りの準備をしている。


「これは、レメディンで、こっちはワレディオで」

「ふふ、このままでは植物博士になってしまいますね」

「あはは、そうだね」


 あ、でもそれもいいかも。自分専用の植物図鑑作ってみようかな。

 植物図鑑を開いて、貰ったお花とを見比べて名前を探しながらアイロンで押し花にしていく。結構これが楽しいの。

 地球でも花は好きだったけど、こっちに来てもっとお花が好きになった。だから押し花を作る作業がこんなに楽しいんだけどね。

 マリアと二人で作業していたら、コンコンッ、とこの部屋のドアがノックされた。ノックしてきたのはナナミちゃんだった。


「やっほ~、あ、お仕事中?」

「大丈夫だよ~」


 彼女の手には、お皿。クッキー?


「それ、あれでしょ! 【クローバー】!!」

「そうそう、お花もらったから押し花にしちゃおうかなって」


 目をキラキラさせて見てきて。そっか、押し花を作り始めたのはこっちでは私が初めてなんだっけ。だからこんな目をしてるのか。

 そんなナナミちゃんに、やる? って言ってみた。すっごく吃驚していて、いいの? って。


「簡単だから大丈夫だよ、ほら」

「あ、ありがとう」


 と、マリアが隣に持ってきてくれた椅子に座ったナナミちゃん。全然押し花の作り方知らないもん、不安になるよね。


「どのお花がいい?」

「じゃあ……これ!」

「おっけー、じゃあ……」


 と、説明しながら隣でゆっくり手本を見せる。同じように隣で一緒に作業をするナナミちゃん。ここにお花を乗せて、これで被せて、とやっていき、アイロンで当てる。それを何度か繰り返し……


「うん、おっけー!」

「やったぁ、綺麗に出来た!」


 ナナミちゃんは手先が器用みたい、とっても上手に押し花が完成した。料理やってるからかな? あ、違う?

 それから、持ってきていたラミネーターで一緒に栞を作った。とっても可愛らしいピンクの押し花が完成。とってもセンスが良くて吃驚しちゃった。


「【クローバー】の製作者さんと一緒に栞作れるなんて光栄でした」

「あはは~」


 もう雇いたいくらい上手だもん。そのセンスを分けてほしいな。


「実は今ね、新しい切手のデザインを考えててね」

「【フラワーメール】?」

「そう。だから、ここのお花を使ってみようかなって今思ってて」


 ナナミちゃんも、何度も【フラワーメール】を利用してくれてるみたいで。と言っても送り相手は私なんだけど。結構楽しいお手紙を送ってくれるの。私もちょっと苦手ではあるけれどお手紙を返してやり取りしてる。


「いいじゃんいいじゃん! アドマンス領にしか咲いてないお花とかあるんでしょ? とっても素敵!」

「ほんと?」

「うん!」


 ここには首都の庭にはないお花がたくさんある。だからここに滞在する期間でいくつか作ってみようかな。今まで作った切手とはまた違ったデザインになるようにして。そうした方が切手を選ぶ際楽しいもんね。


「あ、そうだ、これ。お兄ちゃんと焼いたから食べよって思って持ってきたの」

「あはは、ありがと」


 クッキーそっちのけで押し花やっちゃってた事に、三人で笑ってしまった。休憩しましょうか、とマリアが言ってくれて中断、クッキーを頂く事にした。

 これ、何クッキーだろう? アーモンドみたいな食感のが入ってる。甘い何かも。チョコ、とは違った……何だろ?


「ネケメの実を入れてみたんだ、どう?」

「何だか、アーモンドみたい。甘くて美味しいね」

「ネケメの実はよく実を粉砕して粉にして使う事が多いのですが、こんな使い方をするのは初めて見ました」


 さすが料理人、しかも料理革命を起こした方のお孫さんだ。こんなに美味しいクッキーを作り出しちゃったなんて。美味しいなぁ、ふふ。

 と思っていたら、ほっぺたをツンツンされてしまった。ナナミちゃんに。


「……可愛い」

「ん?」

「その気持ち、分かります」

「え?」


 ちょっと、2人共? 私抜きで話さないでくださいません?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫
恋愛
 突然異世界の船を手に入れてしまった平凡な会社員奈央。私に残されているのは自分の家とこの規格外な船のみ。  ガス水道電気完備、大きな大浴場に色々と便利な魔道具、甲板にあったよく分からない畑、そして何より優秀過ぎる船のスキル!  これなら何とかなるんじゃないか、と思っていた矢先に吊り上げてしまった……私の好みドンピシャなイケメン!!  何とも恐ろしい異世界ライフ(船)が今始まる!

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!

枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」 そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。 「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」 「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」  外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜

楠ノ木雫
ファンタジー
 まだ16歳の奥村留衣は、ずっと一人で育ててくれていた祖父を亡くした。親戚も両親もいないため、一人で遺品整理をしていた時に偶然見つけた腕輪。ふとそれを嵌めてみたら、いきなり違う世界に飛ばされてしまった。  目の前に浮かんでいた、よくあるシステムウィンドウというものに書かれていたものは『勇者の孫』。そう、亡くなった祖父はこの世界の勇者だったのだ。  そして、行方不明だと言われていた両親に会う事に。だが、祖父が以前討伐した魔王の心臓を渡すよう要求されたのでドラゴンを召喚して逃げた!  追われつつも、故郷らしい異世界での楽しい(?)セカンドライフが今始まる!  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

処理中です...