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第五章 恋の行方

◇42 デビュタント

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 あれから日が経ち、ついに私のデビュタントの日が来てしまった。


「とってもお似合いですよ! お嬢様!」

「お美しい……!」

「わぁ~、すごいね。大変身!」

「お嬢様が元々お美しいからですよ」

「え?」


 いつも出かけるのとは全然違うお洋服、あ、ドレス? 青色の素敵なドレスを着せてくれた。普通ならもっとドレスって重いみたいなんだけど、リアさんが軽量化された素敵なドレスを用意してくれた。

 あ、ちゃんと装飾品もついてるの。とってもキラキラしてて綺麗なの。そんなにいらないよ、とは言ったけど、これくらいはないと! とマリア達が付けてくれた。

 鏡の中のこの人は誰? と思えるくらい大変身。朝早起きして何時間もかけたから、長い時間頑張ってくれたマリア達のお陰だ。ありがとう、みんな。


「も~ウチの娘はほんっとうに何着ても似合うんだから~!」


 お母様に会った瞬間抱きしめられてしまった。お母様もとてもお綺麗ですよ、と言ったらもっと褒められてしまった。


「とてもよく似合ってるよ」

「ありがとうございます、お父様」


 フレッドもそう思うだろ? と隣の人に振ったお父様。そう、今回はお兄様まで参加する事になったのだ。普段はパーティーなんて行かないくせに~、ってお母様に言われてた。珍しいこともあるものだね。

 じゃあ、仕事は休んじゃった感じ?


「いいと思います」

「それだけ?」

「……」


 はぁ、とお父様とお母様の深いため息。そういうの思ったことないんだろうなぁ。


「お兄様、カッコいいですよ!」

「……」

「いつもと違う装いだから、ビックリしちゃいました。お兄様イケメンだからより一層カッコ良いです!」

「……そうか」


 ……あれ、照れた? 褒めちぎれ作戦成功?

 もうちょっと褒めちぎろうかしら、と思っていたらカフスボタンが目に入って。あれ、見覚えがあるぞ。と思ったら、あれ、お父様もそれ付けてるの? 私作ったやつだよね。お仕事用じゃなかったの?

 そう聞きたかったけど、そろそろ行きましょう、と言われてしまい馬車に乗り込んだのだった。

 あ、因みにお母様も私も押し花髪飾りです。ヘアクリップね。絶対これね、ってお母様に言われたので。いいのかな? って思ったけど、まぁいっかって流してしまった。



 今回のパーティーは昼間に行われる。夜じゃないらしい。普通パーティーって夜なんじゃ? あ、私の読んでた本がそういうのが多かったからか。

 王城に着き、入口の門に到着すると、王宮の人が目が飛び出すほど吃驚していた。あ、分かった。お父様とお兄様がいるからだ。私とお母様しか参加しないと思ってたんじゃないかな。

 案内された会場は、カリナが言っていた通りとっても素敵な会場だった。中は、とっても広いし豪華だ。すごい、こんな所で私デビュタントしていいだなんて、いいのかな?

 お父様の爵位は王族より一つ下の階級だから、会場入りするのは主催者である王妃様より先だけど貴族の皆様達より後だ。だから、もう沢山の貴族の皆さんが揃っているみたい。と言っても、普通のパーティーより半分くらいの人数だそうだ。

 入った瞬間、揃ってる貴族の皆様の視線は私達に向けられていて。だいぶ怖かった。ギラギラしてません?

 お兄様のご登場に驚く人達。お母様に馬車の中で教えてもらったんだけど、一年に2回? とても重要なパーティー以外は全く姿を現さないらしい。

 うわ、ご令嬢達怖くありません? 今お兄様にエスコートされてるけど、逃げた方がいい?

 と、思っていたら離してもらえなかった。


「離すな」

「……はい」


 え、道連れ? 道連れですか?


「今日は私達から絶対離れちゃダメよ?」

「え?」

「体調は良いみたいだが、何かあれば大変だろう。だから、絶対私達の近くにいなさい」

「は、はい……」


 あ……お兄様、お母様、お父様のガッチリガード的な? まぁ、ありがたいですけど。

 待ってましたと言わんばかりにどんどん貴族の皆様が挨拶に来た。勿論、自分の娘、息子の紹介付きだ。お友達に如何ですかな? とか。もれなくお母様とお父様が玉砕させていってるけど。
 

「お久しぶりです、アドマンス公爵」

「あぁ、メルト伯爵。あのパーティー以来か」


 メルト伯爵と一緒に来たのは、カリナだ。娘と仲良くしてくださってありがとうございます、そう言っていて。こっちの方こそ、色々と教えてもらってるからこっちがお礼を言いたい。


「今日のドレス、とっても素敵よ」

「カリナだってとっても似合ってるよ。もしかして、【ブティック・シェリシア】?」

「そう!」


 リアさんのブティックのドレスだったみたい。毎日着てるから、何となく分かっちゃうのよね。いいのかな、これ。

 少しすると、大きな声が聞こえてきた。王妃殿下、第一王女殿下のおなーりー、と。今回の主催者だ。けど、第一王女殿下もですか。


「よくいらっしゃいました、アドマンス公爵、侯爵夫人、アルフレッド子息、そしてアヤメさん」

「王妃殿下にご挨拶いたします、本日はご招待いただきありがとうございます」


 と、お父様の言葉に私達も会わせて頭を下げた。そんな肩苦しい事はしなくていいのよ、と言われて私達は頭を上げた。


「アヤメさんは初めてでしょう。私の娘、ミレイアよ」

「初めまして、ミレイア・ラミス・ラスティウスです」


 とっても綺麗な、王妃様とよく似た女性だった。慌てて私もご挨拶を。私が後になってしまってごめんなさい。と思ったけれど、お二人は気にしていないようで。いいのかな?

 彼女には年下の婚約者がいるそうだ。その相手は隣国の王太子で、今こちらに留学中だそう。彼女は今20歳。相手の方は15歳でまだ成人していない。だから、こちらに留学し卒業後隣国へ嫁ぎ式を挙げると決められたそうだ。

 年下の人と結婚かぁ~、しかも5歳差でしょ? どうなんだろう、やっぱり気にしちゃったりする?


「少しの間となってしまうけれど、どうか仲良くしてくださいな」

「わ、私でよければ、喜んで」

「ふふ、ありがとう」


 凄い美人だ、微笑んだら男子はイチコロだな。あ、お兄様は例外だったみたい。無表情だ。元々表情筋仕事してないけれど。


  その後も、色々な貴族の方々が私達の元へやってきた。私の事業の話とか、お友達の話とか。今度お茶会を開くから招待状を送りたいと思っているのです、とかもね。

 遠くの方から、グループとなっているご令嬢達の視線もあった。きっと、私とお話したいのかな? この前王宮でバッタリ会った人もいるし。2回目の時の方ね。でも、お母様達がいらっしゃるから近づけないのだろうか。でもさ、私もここから動くなと言われちゃってるから、ダメなんだよね。ごめんね。


「疲れたか」

「え? あ、いえ」


 疲れたら言え、とお兄様が心配してくださった。そういえば、お兄様って婚約者いなかったよね? そういうのって全然興味なさそうだけれど、いずれは結婚しなきゃいけないでしょ? 政略結婚とか? 貴族の結婚ってそういうのだよね?

 だとしても、お兄様だったらもう引っ張りだこだろうね。今向けられてるご令嬢達のこのギラギラした眼を見れば分かるもん。

 結婚かぁ、私国王様達に目を付けられてるみたいだけどお父様達が私の気持ちを尊重するって言ってくれたし、王太子殿下は今想い人がいるわけだし。

 でも、結構問題があるらしくて。王族の結婚って、爵位が伯爵以上のご令嬢のみらしいの。殿下の想い人は子爵令嬢、中立派だからそこら辺は大丈夫なんだろうけれど、それだと結婚出来ないって事だ。いやぁ、難ありですね。でも、愛の力で何とか出来るでしょ!

 その日のデビュタントは、何事もなく終わることが出来た。疲れたけれど、熱も出さなかったよ!

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