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第五章 恋の行方
◇41 新しい従業員さん
しおりを挟む今日も、【お食事処・なかむら】に赴いていた。けど、今日はカリナも一緒である。
【なかむら】のお店の話をしたところ、一緒に行きたいと言い出して約束して。それが今日となったのだ。
「わぁ! 全然見た事ない雰囲気ね!」
「でしょ!」
中に入ってみると、やっぱり今日も大盛況みたい。だけど、あれ? 見た事のない人達が、【なかむら】の制服であろう着物のようなものを着てる。あ、もしかして新しい従業員さんかな。2人の女性と男性だ。
「あらいらっしゃい、おねーさん達は2人かな?」
「あ、はい」
「おっけ~!」
とってもフレンドリーな大人のお姉さん。綺麗なラベンダー色の髪を高い位置でツインお団子にしてて可愛い。あともう一人は背の高い男の人。髪は深緑色かな。どちらも日本人顔じゃないから、ナナミちゃん達の兄妹とかではないらしい。
ナナミちゃんとタクミ君がいないって事は、厨房にいるのかな。と思いつつ席に座った。
あ、ナナミちゃんが私達に気が付いたみたい。厨房から顔を覗かせてて、私に手を振ってきた。振り返すとまた戻ってしまって。忙しいから大変だよね。と、思ったら今度はタクミ君が。あ、来た。
「いらっしゃい」
「こんにちは、今日もいっぱいだね」
「おかげさまで?」
「あはは」
カリナにはもうタクミ君達の事は説明してあるから、私はカリナをタクミ君に紹介した。お友達連れてきたよって。
「今日どうする?」
「いい?」
「約束したの忘れたのか?」
「……揚げ出し豆腐」
「おっけ、ご令嬢は?」
「私? ん~……」
タクミ君からの説明を聞いて、カリナはミートソーススパゲッティを注文していた。んじゃ待ってな。と戻っていった。
「本当に仲良しなのね」
「何回もここに食べに来てるしね」
「いんや~? それだけじゃないでしょ?」
「え?」
凄くニヤニヤされてるけど、別にそういうのってなくない?
特別に作ってもらってるんでしょ? とも言われたけれど、聞かれるから食べたいの言ってるだけだし……顔? 見たいからとか何だとかって言われたら、ね。恥ずかしいけど。
でも、あの新しい従業員さん達。とっても仲が良いのね。
「ねぇ、新しい従業員さん?」
「みたいだね」
「……あのお姉さん、さっきの人と距離近いね。彼女とか?」
「さぁ?」
さっきの席に案内してくれたお姉さん、とってもフレンドリーだったけど、タクミ君と距離近いね。ナナミちゃんにもだけど、それは女同士だからなのもあるだろうし。
でも、近いな。チュー出来ちゃうんじゃ? ってくらい。あ、仕事中だからそういう考えはないか。すみません。
「あの二人付き合ってるのかな。あ、職場恋愛ってやつ?」
「もしかしたら婚約者かもしれないよ? タクミ君貴族だもん」
「婚約者と一緒に仕事? うわすご!」
「毎日職場で婚約者と顔合わせるのか~、やば、めっちゃ美味しいじゃん」
「分かるぅ~!」
そんな時、ポキッと何かが折れる音がした。この席、実は厨房から一番近い席なんだよね。もしかして……あ、タクミ君こっち見てる。やっぱり、聞かれてた?
「あ、やば、あの人怒ってる?」
「目が笑ってない」
厨房からは、ナナミちゃんの声が。おにーちゃーん、菜箸折らないでよー! と。え、そんなに怒っちゃった感じ?
……辛いの、入れられないよう祈っておこう。一応手を合わせて、ごめんね、と顔で謝っておいた。不機嫌顔でどっか行っちゃったけど、大丈夫、かな?
「はい、おまちどうさんっす」
「ありがとうございます」
「わぁ!」
もう一人の男性従業員さんが持ってきてくれた料理。も~美味しそう! 揚げ出し豆腐なんていつぶりかな? ん~もう見ただけで美味しいです!
カリナはいつも通りのナイフとフォーク、対する私はお箸だからとても気になっているようで。だから、使っている所を見せてあげた。こうやって、こうやって、ぱくっ! 一口食べると小さい音でパチパチ拍手をしていた。まぁ、これすぐ使える訳じゃないしね。
「一口いかが?」
「ちょーだい♪」
カリナも気に入ってくれたみたい、美味しそうに食べていた。あ、もしかしてこんな感じだった? 私って。ご飯食べる時。
と思ってたら、さっきのフレンドリーなお姉さんが来て、私達の前にお皿を置いた。あれ、これって……白玉ぜんざい?
「おねーさん達可愛いからサービスね♪」
「え?」
「いいの?」
「いいのいいの、どーぞ食べて!」
わ~い! これ、もしかしてアイス? ん~! 美味しい! 甘いものは本当に最高だよね! あ、甘いものと言えば、早くお兄様も連れてこなきゃ。
「あ、そういえばさ、デビュタントするんだったよね?」
「うん、王妃様がパーティーを開いてくださるの」
「へぇ~」
そう、数日後に私のデビュタントが行われる事が決まったのだ。もっと遅らせてもいいのよ? とお母様には言われたけれど、でも王妃様にああ言われちゃなぁ、って思って。だから今準備中です。
「王城のキュリストホールが会場みたいね。とっても綺麗な所なのよ。でも、特別な日にしか使われない場所なの」
「えっ!?」
そこは、大国の使節団をお呼びした時とか、王族の結婚披露宴会場とか、そういうビックイベントの時しか使われない場所なのだとか。え、私そんな所でデビュタントしちゃっていいの? そういえば、お母様困ってたような顔してたけれど、そういう事だったのね。
「私も一応呼ばれてるから、何かあれば力になるわね」
「うん、ありがと」
何とも恐ろしい激動の日となるであろうデビュタント。怖いなぁ。まぁ、お母様もお父様も一緒に来て下さるみたいだし、何とかなる、かな?
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