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第五章 恋の行方
◇36 派閥
しおりを挟む今日もいい天気、お庭のお花達も元気よく花開いている。
「こんにちは、ドルトさん」
「こんにちは、お嬢様。ご機嫌如何ですか」
「ふふ、とっても元気ですよ」
「それは良かった」
今日もドルトさんからお花を貰った。実は、新しくお庭を作る事になった。この前殿下からお花を貰ったこともあったし、私のブランドの事もあるからだ。
ドルトさんが大変になってしまうのではないか、と思ったけれどこれは本人からの提案だった。それに、もう一人庭師が加わった事もあった。ドルトさんのお孫さんだ。
彼は、カミロさんというらしい。因みに21歳だ。ドルトさんはもう70歳でご高齢な為、今彼にお仕事を教えていずれはここを継がせたいと思っているのだとか。
彼は細身だけどとっても力持ち。この前だって肥料が入った大きな袋を3つも重ねて抱えて運んでた。すごいな、あれ結構重そうだったのに。私絶対一つでも持ち上げられないよ。
新しいお庭も、ドルトさんとカミロさんが頑張って作ってくれている最中だ。楽しみだなぁ。
という事で、今日も押し花作りです。あ、でも実はお母様に相談もしなきゃいけなくて。
「全部燃やしましょ♪」
「えっ」
私の手にあるのは、沢山のお手紙。全て、男性から送られてきたものである。
その多くは、釣書。縁談のお話である。お相手は、私と同じくらいの人や、22歳も年上の人、更には7歳も年下の人まで様々だ。
その他にも、こちらにお邪魔していいかとか、お茶会(お見合い)の招待状、演劇のチケットまで届いた。一緒に行きましょう、ですって。まだ顔すら知らない方なのに。だいぶすっ飛ばしてますけど。
「私達の可愛い可愛いアヤメちゃんを、何処の馬の骨かも分からない男に任せるなんて言語道断よ!」
「あ、はは……」
お母様、抑えて。
まぁ、私も嫌ではある。貴族の中ではこれは普通のことなのかもしれないけど、私はまだそういう常識が理解出来ていない。きっと、私の事はアドマンス家のご令嬢で今事業を二つも立ち上げた異世界人、としか見てないんだと思う。
そんな人達と会ってお話しするのは、正直ごめんだ。だったら王太子殿下と恋バナしてた方が断然いい。むしろそっちがいい。殿下、ご令嬢とお話できたかな? 頑張って話しかけましょ! って一昨日手紙に書いたけど。
「手紙の他にプレゼントも送られてきたんでしょ? じゃあ、そのまま送り返した方がいいわ。お断りの手紙はマリアに書いてもらいなさい」
「はい」
よろしくお願いします、マリア。まだ私そういうのよく分からないから。
「まだ、アヤメちゃんはデビュタントをしてないから、いつかは社交界に出なくてはいけないわ。でも、そんなに急がなくてもいいわ、大丈夫よ」
「……はい、ありがとうございます」
デビュタントとは、社交界に初めて出る若い女性のこと。これをすれば、大人のレディとなるのだ。だから私はまだまだお子ちゃまだって事。
普通なら、成人すればデビュタントをする事になる。この国では16歳で成人。私も16歳だけど、でもここに来たばかりだから、今はこの星に慣れるまでの期間と思ってもらえるだろう。
でも、それをずっとというわけにはいかない。だから、色々と準備をしておかなきゃ。
「いーい? 貴族界には〝派閥〟というものが存在するの」
「派閥?」
次の日、遊びに来てくれたカリナに社交界などのことを聞いてみた。
社交界に入るならまずはこれを知った方がいい、と。
派閥は、3つ存在するらしい。〝王族派〟〝貴族派〟〝中立派〟だ。
「まずは、〝王族派〟ね。王族、国王陛下がこの国を収めることが正しいという考えを持つ者達の集まりよ。今のこの状態のことを言うわね。アヤメの家であるアドマンス家、そしてこの国にいる侯爵家7家の中のうち3家がその王族派よ」
そっか、ウチは王族派なのね。知っている侯爵家の方はいる? と聞かれて。私が知っているのは、財務省のナジアンス侯爵様と、近衛騎士団団長であるフェレール侯爵様とラル夫人。ラル侯爵様には会った事がないけれど、この3人だ。
「フェレール侯爵様は王族派、ラル侯爵様は王族派、そしてナジアンス侯爵様は中立派よ。中立派は、王族派にも貴族派にも属していないの。いわゆる傍観者ね。何も意見せず、どんなやり方であってもこの国が平和であればいいという考えを持っている人達よ。あ、因みに私の家、メルト伯爵家も中立派よ。
あとルセロ侯爵は知ってるわよね。ルイシーナ令嬢の家よ。その方は〝貴族派〟なの。我々高位貴族こそがこの国の政権を動かすにふさわしいという考えを持つ方達よ」
王族派に、貴族派に、中立派か。確か日本でもそういうのあったっけ。難しくて政治とかってよく分からなかったけれど、この話をするって事は社交界や女性間の中でも派閥は影響してくるって事だよね。難しいなぁ。
「国にとって、軍事力はとても重要となってくるの。この国で王族主義を保っていられるのは、王族派であるアドマンス公爵家とフェレール侯爵家あってこそなのよ」
「騎士団総括と、近衛騎士団団長って事ね」
「そう、だから貴族派は政治に対して強くは出られない状態なのよ」
へぇ~、私政治とかよく分からないけれど、この国は平和だなって感じてはいる。どれをもって平和かと言われたら難しいけれど、首都の皆さんを見る度元気があって活気があって。だから、この平和が続いてくれるといいなって思う。
「だから、社交界でお付き合いをする方々がどういう人なのかを考えて接した方がいいわ」
「なるほど」
マリアに、私に届いた手紙を持ってきてもらってカリナに見せると、王族派が多かった。あと、中立派。王族派の中で一番権力を持っている人だからだそうだ。
公爵家には、専属の騎士団が存在する。あと、フェレール侯爵家。普通、騎士団を持つことは王家から許されていない。国王陛下からの絶対的信頼を受けている証という事らしい。
またまた、この家の凄い所を見つけてしまった。
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