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第五章 恋の行方
◇34 コロッケ定食
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今日も、私は【なかむら】に来ていた。もちろん今回も私のブランド【クローバー】で稼いだお金を持ってきた。今日もマリアとジルベルトも一緒に食べようってお願いしたから奢ってあげるね?
この前のように、今日もお店は沢山のお客さんでにぎわっていた。あ、席が一つ空いてる。良かったぁ。
ナナミちゃんに、いらっしゃい! って言われたけれど、お客さんに呼ばれちゃって急いで行ってしまって。本当に忙しそう。
「二人は何にする?」
「そうですね……」
今日のメニューは、唐揚げ定食、コロッケ定食、ハンバーグ定食だ。二人には私からメニューの説明をしてあげた。以前海鮮丼を食べた二人は、もうワクワクしながらメニューを覗いていて。ふふ、このお店気に入っちゃったみたいだね。私も嬉しいな。
二人も決まった所で、ちょうどいいタイミングでタクミ君が来てくれた。
「今日はどうする?」
「え?」
「いいよ」
え、こんなに忙しそうなのに他のもの作ってくれるの? いや、でも……
そう思っていた所で、近くの席の声が聞こえてきた。
「わたくし、あの人に接客していただきたいわ」
と。それはナナミちゃんに言っているようで。見たところ、貴族のご令嬢さん達みたい。あの人、とはタクミ君の事らしい。
「お客様、申し訳ございませんが……」
「何よ、客の要望が聞けない訳?」
「ですが……」
あらら、我儘ご令嬢じゃないですか。面倒な。これじゃナナミちゃん可哀想だ。ただでさえ忙しいのに我儘を言われたら迷惑の何物でもない。
「私コロッケ定食にするね」
「え?」
「マリアも一緒だっけ。あと唐揚げ定食も」
「……うん、おっけ」
ごめんな、と一言残してその我儘ご令嬢の所に行ったタクミ君。そりゃ、忙しいのに無理はさせたくありませんよ。だって従業員は2人だけしかいないんだし。と、思っていたら……
「人気ですね、あの方」
「そうだね、やっぱイケメンだから?」
「なるほど」
ナナミちゃんと代わったタクミ君に、我儘ご令嬢はもう質問ばかり。名前は? 年齢は? あの子は妹よね? 彼女は? とか。プライベートばっかり。
でも、メニューはお決まりじゃないようですので後ほどお聞きしますねと一言残して厨房に戻っていってしまった。おぉ、これって慣れてる感じ?
うんうん、気持ちは分かる。この星の男性ってホント顔が整った人ばっかりだよね。お兄様だってお父様だってあの団長さんだって顔整い過ぎて周りの女性の皆さん釘付けだもん。タクミ君もイケメンだし。世の中の女性が放っておかないよね。
「でも、ナナミちゃんも人気だよ?」
「あ、確かにそうですね」
この前来た時、若いお客さんが多いなぁ~って思ったけれど、そういう事だったのね。中々テーブルにいるお客さんから離れられないでいる。これじゃあ出来た料理も運べないし注文した料理を厨房にいるタクミ君に伝えに行けない。ナナミちゃんも可愛いから気持ちは分かるけどさ。
「私、手伝う?」
「ダメです」
「……即答ですか」
「ダメですよ、奥様に怒られてしまいます。例え今日体調が良くても、お嬢様はお身体が弱いのですから、ご無理は絶対になさらないでください」
マリアぁ……でも、大変そうなのに放っておけないもん。面倒臭いお客さんばっかだし。
「でしたら、お嬢様の代わりに私がやります」
「え?」
「私、お嬢様の専属メイドですよ? これくらいどうって事ありません」
と、立ち上がって行ってしまった。ジルベルトに、お嬢様をよろしくお願いします、と一言残して。あ、メイド魂に火がついちゃった感じ? でも、許可が出るだろうか。
「……行っちゃった」
「きっと、お嬢様の気持ちがよく分かるから自分で言い出したんじゃないですかね? 余程お嬢様に仕事をさせたくなかったみたいですね」
「うん……」
お、マリアさん出動だ。OKが出たみたいね。一体何を言ったんだろうか。
それにより、タクミ君が一切外に出てこなくなった。それを見た我儘ご令嬢は、不満顔を浮かべてる。あらら、でも仕事中なんだから駄目でしょ、ルールを守らなきゃ。
「はい、お嬢様。お待ちどうさまです」
「ありがと、マリア」
「様になってますね」
「私はお嬢様の専属メイドですよ? これくらいやってのけなければ務まりませんよ」
あ、はい。そんなに目を光らせて言わなくてもいいと思うんだけど。あ、行っちゃった。頑張れ~マリア~!
ではマリアさん、お先に失礼しますね。いただきます。
「ん~~~!」
これ、クリームコロッケだ! うんうん、このサクサク感! クリームも濃厚! コロッケ一口、そしてすぐにご飯を一口! ん~~~!! 最高です!!
「これが唐揚げですか……!」
「結構ご飯に合うでしょ」
「はい……!!」
ほんとジルベルトは食べっぷりがいいね。見てて和むよ。ガタイもいいから食べる量も凄いよね。
「コロッケ、半分食べる?」
「えっ!? あ、いえ、お嬢様のですから……」
「別にいいって、ほら」
「あ、でしたら、私の唐揚げも良ければどうぞ」
「やった!」
ん~! 唐揚げもすっごく美味しいですっ! お弁当に入れたいおかずランキング第一位なだけある! 最高!
「それが、お箸ですか」
「うん、ジルベルトは初めてだっけ?」
「はい。実際に使用している所を見るのはこの前のどんぶりの時が初めてです。お嬢様の故郷のカトラリーですよね?」
「うん、私の生まれた国の文化なの。日本食の中にある麺料理は、このお箸で食べるのに最適なの」
「フォークとは違うのですか」
「うん」
こうやってつまんで、ってジェスチャーで教えてあげた。伝わったかな? 説明するの私ちょっと苦手なのよね。だから、ラミネーターの説明とかちょっと苦戦したんだけど。
ジルベルトはだいぶ興味を持ったみたい、あとでお箸を購入したいと言い出した。
ふと、周りを見てみるとさっきの我儘ご令嬢はデザートをチビチビと食べていて。もしかして営業終了までいるつもりなのかな。まぁ、今マリアが助っ人に入っているから私達もそういう事になっちゃうんだけど。席をずっと使ってて悪い気もしてたけど、周りのお客さんも減ってきたみたい。混んでる時間が過ぎたのかな。
と、思っていたらマリアが帰ってきた。自分が注文していたコロッケ定食を持って。
「ただいま戻りました」
「お疲れ様! 凄く様になってたよ!」
「そうですか? お嬢様の専属メイドになる前と似たような仕事でしたので、少し慣れていただけですよ」
あ、ご飯の時料理を持ってきてくれる仕事してたって事? なるほど、確かにちょっと似てるかも。
では失礼しますね、いただきます。と手を合わせてご飯を食べ始めたマリア。私達も、デザートを頼んだ。因みに頼んだのはあんみつです。美味しいよね~!
と、思っていたら。あの我儘ご令嬢がお怒りの所が丁度見えてしまった。
「何よ! 帰れって言いたいの?」
「営業時間がもうそろそろで過ぎてしまいますので」
「まだ残ってる人達がいるじゃない!」
「あの方々はこの店の関係者です」
まぁ、一応間違ってはいない? ここの支援者の娘だし、私。でも、ご令嬢は私の髪色を見て信じたみたい。
「じゃっじゃあ私もここで働くわ!」
えっ、ここで働く? あの我儘ご令嬢が? え、本当に?
そんな時、すかさず、厨房にいたタクミ君が出てきた。
「ここでは、特別調理道具を扱える人しか働けませんよ」
「何よそれ!!」
さ、おかえりになってください。とあれよあれよという間に帰らせてしまったのだ。え、強いなタクミ君。
さっき言ってた特別調理道具って、箸の事を言ってるんじゃないかな。あ、因みにマリアはお箸が使えます。お豆もつかめます。教えたら簡単に使えるようになってしまいました。天才だった。すごい、マリア。
「悪かったな、煩かっただろ」
「ううん、気にしないで」
「マリアさん助かりました~!」
「いえ、微力ながらお役に立てて光栄です」
ここの従業員として雇いたいくらいでしたよ~、とナナミちゃんが言っていて。駄目だよ! マリアは私の専属メイドだもん!
今日の曜日は、ここの近くにある人気店の定休日だからいつも以上に忙しい日なのだそうだ。なるほどなるほど。二人はもうドッと疲れた様な顔をしている、お疲れさまでした。
「でも、従業員増やす事になったからそれまでの辛抱なの」
「へぇ~、お箸使える人?」
「そ。ウチの領地から呼んだんだ」
へぇ~! ナカムラ領からって事は、じゃあ知り合いなのね。会ってみたいな。どんな人なんだろう。
今日はありがとう、とお礼のおやつも貰っちゃって。お代もいらないと言われてしまった。今日マリアが働いてくれたから、だそうだ。
また食べに来るね、と手を振って屋敷に戻ったのだ。
この前のように、今日もお店は沢山のお客さんでにぎわっていた。あ、席が一つ空いてる。良かったぁ。
ナナミちゃんに、いらっしゃい! って言われたけれど、お客さんに呼ばれちゃって急いで行ってしまって。本当に忙しそう。
「二人は何にする?」
「そうですね……」
今日のメニューは、唐揚げ定食、コロッケ定食、ハンバーグ定食だ。二人には私からメニューの説明をしてあげた。以前海鮮丼を食べた二人は、もうワクワクしながらメニューを覗いていて。ふふ、このお店気に入っちゃったみたいだね。私も嬉しいな。
二人も決まった所で、ちょうどいいタイミングでタクミ君が来てくれた。
「今日はどうする?」
「え?」
「いいよ」
え、こんなに忙しそうなのに他のもの作ってくれるの? いや、でも……
そう思っていた所で、近くの席の声が聞こえてきた。
「わたくし、あの人に接客していただきたいわ」
と。それはナナミちゃんに言っているようで。見たところ、貴族のご令嬢さん達みたい。あの人、とはタクミ君の事らしい。
「お客様、申し訳ございませんが……」
「何よ、客の要望が聞けない訳?」
「ですが……」
あらら、我儘ご令嬢じゃないですか。面倒な。これじゃナナミちゃん可哀想だ。ただでさえ忙しいのに我儘を言われたら迷惑の何物でもない。
「私コロッケ定食にするね」
「え?」
「マリアも一緒だっけ。あと唐揚げ定食も」
「……うん、おっけ」
ごめんな、と一言残してその我儘ご令嬢の所に行ったタクミ君。そりゃ、忙しいのに無理はさせたくありませんよ。だって従業員は2人だけしかいないんだし。と、思っていたら……
「人気ですね、あの方」
「そうだね、やっぱイケメンだから?」
「なるほど」
ナナミちゃんと代わったタクミ君に、我儘ご令嬢はもう質問ばかり。名前は? 年齢は? あの子は妹よね? 彼女は? とか。プライベートばっかり。
でも、メニューはお決まりじゃないようですので後ほどお聞きしますねと一言残して厨房に戻っていってしまった。おぉ、これって慣れてる感じ?
うんうん、気持ちは分かる。この星の男性ってホント顔が整った人ばっかりだよね。お兄様だってお父様だってあの団長さんだって顔整い過ぎて周りの女性の皆さん釘付けだもん。タクミ君もイケメンだし。世の中の女性が放っておかないよね。
「でも、ナナミちゃんも人気だよ?」
「あ、確かにそうですね」
この前来た時、若いお客さんが多いなぁ~って思ったけれど、そういう事だったのね。中々テーブルにいるお客さんから離れられないでいる。これじゃあ出来た料理も運べないし注文した料理を厨房にいるタクミ君に伝えに行けない。ナナミちゃんも可愛いから気持ちは分かるけどさ。
「私、手伝う?」
「ダメです」
「……即答ですか」
「ダメですよ、奥様に怒られてしまいます。例え今日体調が良くても、お嬢様はお身体が弱いのですから、ご無理は絶対になさらないでください」
マリアぁ……でも、大変そうなのに放っておけないもん。面倒臭いお客さんばっかだし。
「でしたら、お嬢様の代わりに私がやります」
「え?」
「私、お嬢様の専属メイドですよ? これくらいどうって事ありません」
と、立ち上がって行ってしまった。ジルベルトに、お嬢様をよろしくお願いします、と一言残して。あ、メイド魂に火がついちゃった感じ? でも、許可が出るだろうか。
「……行っちゃった」
「きっと、お嬢様の気持ちがよく分かるから自分で言い出したんじゃないですかね? 余程お嬢様に仕事をさせたくなかったみたいですね」
「うん……」
お、マリアさん出動だ。OKが出たみたいね。一体何を言ったんだろうか。
それにより、タクミ君が一切外に出てこなくなった。それを見た我儘ご令嬢は、不満顔を浮かべてる。あらら、でも仕事中なんだから駄目でしょ、ルールを守らなきゃ。
「はい、お嬢様。お待ちどうさまです」
「ありがと、マリア」
「様になってますね」
「私はお嬢様の専属メイドですよ? これくらいやってのけなければ務まりませんよ」
あ、はい。そんなに目を光らせて言わなくてもいいと思うんだけど。あ、行っちゃった。頑張れ~マリア~!
ではマリアさん、お先に失礼しますね。いただきます。
「ん~~~!」
これ、クリームコロッケだ! うんうん、このサクサク感! クリームも濃厚! コロッケ一口、そしてすぐにご飯を一口! ん~~~!! 最高です!!
「これが唐揚げですか……!」
「結構ご飯に合うでしょ」
「はい……!!」
ほんとジルベルトは食べっぷりがいいね。見てて和むよ。ガタイもいいから食べる量も凄いよね。
「コロッケ、半分食べる?」
「えっ!? あ、いえ、お嬢様のですから……」
「別にいいって、ほら」
「あ、でしたら、私の唐揚げも良ければどうぞ」
「やった!」
ん~! 唐揚げもすっごく美味しいですっ! お弁当に入れたいおかずランキング第一位なだけある! 最高!
「それが、お箸ですか」
「うん、ジルベルトは初めてだっけ?」
「はい。実際に使用している所を見るのはこの前のどんぶりの時が初めてです。お嬢様の故郷のカトラリーですよね?」
「うん、私の生まれた国の文化なの。日本食の中にある麺料理は、このお箸で食べるのに最適なの」
「フォークとは違うのですか」
「うん」
こうやってつまんで、ってジェスチャーで教えてあげた。伝わったかな? 説明するの私ちょっと苦手なのよね。だから、ラミネーターの説明とかちょっと苦戦したんだけど。
ジルベルトはだいぶ興味を持ったみたい、あとでお箸を購入したいと言い出した。
ふと、周りを見てみるとさっきの我儘ご令嬢はデザートをチビチビと食べていて。もしかして営業終了までいるつもりなのかな。まぁ、今マリアが助っ人に入っているから私達もそういう事になっちゃうんだけど。席をずっと使ってて悪い気もしてたけど、周りのお客さんも減ってきたみたい。混んでる時間が過ぎたのかな。
と、思っていたらマリアが帰ってきた。自分が注文していたコロッケ定食を持って。
「ただいま戻りました」
「お疲れ様! 凄く様になってたよ!」
「そうですか? お嬢様の専属メイドになる前と似たような仕事でしたので、少し慣れていただけですよ」
あ、ご飯の時料理を持ってきてくれる仕事してたって事? なるほど、確かにちょっと似てるかも。
では失礼しますね、いただきます。と手を合わせてご飯を食べ始めたマリア。私達も、デザートを頼んだ。因みに頼んだのはあんみつです。美味しいよね~!
と、思っていたら。あの我儘ご令嬢がお怒りの所が丁度見えてしまった。
「何よ! 帰れって言いたいの?」
「営業時間がもうそろそろで過ぎてしまいますので」
「まだ残ってる人達がいるじゃない!」
「あの方々はこの店の関係者です」
まぁ、一応間違ってはいない? ここの支援者の娘だし、私。でも、ご令嬢は私の髪色を見て信じたみたい。
「じゃっじゃあ私もここで働くわ!」
えっ、ここで働く? あの我儘ご令嬢が? え、本当に?
そんな時、すかさず、厨房にいたタクミ君が出てきた。
「ここでは、特別調理道具を扱える人しか働けませんよ」
「何よそれ!!」
さ、おかえりになってください。とあれよあれよという間に帰らせてしまったのだ。え、強いなタクミ君。
さっき言ってた特別調理道具って、箸の事を言ってるんじゃないかな。あ、因みにマリアはお箸が使えます。お豆もつかめます。教えたら簡単に使えるようになってしまいました。天才だった。すごい、マリア。
「悪かったな、煩かっただろ」
「ううん、気にしないで」
「マリアさん助かりました~!」
「いえ、微力ながらお役に立てて光栄です」
ここの従業員として雇いたいくらいでしたよ~、とナナミちゃんが言っていて。駄目だよ! マリアは私の専属メイドだもん!
今日の曜日は、ここの近くにある人気店の定休日だからいつも以上に忙しい日なのだそうだ。なるほどなるほど。二人はもうドッと疲れた様な顔をしている、お疲れさまでした。
「でも、従業員増やす事になったからそれまでの辛抱なの」
「へぇ~、お箸使える人?」
「そ。ウチの領地から呼んだんだ」
へぇ~! ナカムラ領からって事は、じゃあ知り合いなのね。会ってみたいな。どんな人なんだろう。
今日はありがとう、とお礼のおやつも貰っちゃって。お代もいらないと言われてしまった。今日マリアが働いてくれたから、だそうだ。
また食べに来るね、と手を振って屋敷に戻ったのだ。
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