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第一章 異世界に続く穴に入っちゃった!
◇7 アルフレッドside
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近衛騎士団の騎士団長執務室。この部屋の主である団長が、書類を持ってきた俺に向かって「そういえば、」と話し出した。前から、プライベートの話はやめてくださいと何度言っても聞いてくださらず、今日もかと呆れてしまった。
「お前、妹が出来たんだって?」
いずれ聞かれると思っていたが、やはりそうか。
「……何です、団長」
「お前はほんと無関心だなぁ。ちょっとは妹の事を考えて家に帰ってやればいいものを」
「私の仕事を増やす団長に言われたくありませんね」
「お前は仕事が早いんだから終わらせて帰ればいいだろ? それくらい余裕あるじゃないか」
妹が出来た。そんな手紙をもらったのはつい数日前の事。そして、その話題はすぐこの王宮にも広がった。
俺は職場である騎士団の宿舎に泊まることが多い。帰る時間があるなら仕事に回す。そっちのほうが楽だからだ。
だが、妹が出来たとあっては一度戻って顔を合わせなければならない。団長も段々煩くなってきて、鬱陶しいから早めに行ったほうがいい。
だから、仕方なくタウンハウスに足を向けた。
妹になったのは、アヤメという名の女性。本名はオクムラ・アヤメと言うらしい。
16歳と聞いていたが普通よりやや背が低い。12、13と言われてもおかしくないくらいだ。重い病を患っていると聞いていたから、そのせいかと理解した。
彼女が異世界人だという事も知っている。黒髪に、黒い瞳。ここではとても珍しい容姿だ。
確か、他国にこんな容姿をした者達がいると聞いた。80年前に異世界人が現れた国だとも。もしかしたら、同じ星の人物だったのかもしれない。
いきなり、全く知らない異世界に来たんだ、不安や戸惑いもあっただろう。だが母上達がいるのであれば多少不便があっても安心出来ると思う。
そう思っていた。
「お前はッ!!」
「う”っ……」
次の日の朝、俺を探していたらしい父上が、鬼の形相で俺の頭上に一発拳を思い切り入れてきた。俺は目覚めはいい方だったが、これで十分目が覚めた様な気がする。それだけ強烈な一発だった。
「アヤメに騎士団員にするような挨拶をしてどうするんだ!!」
「……」
「家族になった妹なんだぞ、自覚していないのか」
「……申し訳、ございませんでした」
「次、アヤメを困らせたら分かっているな」
「……肝に銘じます」
そんなつもりは、なかったのだが……もう少し考えて挨拶をしたほうが良かったか。
この朝の騒動を目撃していたらしい団長に、一日中笑われたのは言うまでもない。
「女性との付き合い方すら知らないお前に妹か~、い~ね~」
「口より手を動かしてください」
「後で会わせてくれよ、そのアヤメちゃんとやらに」
「私ではなく、父上である元帥にお願いします」
「ちぇ~、つまんねぇの」
面白がらないでいただきたいんだが。
しばらくは、この話題が尽きないだろうな。面倒ではあるが、仕方ない。
そう溜息をつき部屋を出た。
「大通りに、公爵家の馬車を見かけたぞ」
鍛錬の最中、外から帰ってきた同僚にそう聞かされた。母上か。あまり外出せず公務をなされている方だが、何かあったのか。
「何、何かあるのか?」
「……いや、何もない。どこに向かっていた」
「どこに? そうだな……あの方向じゃ、レストリス商会か? あれだよ、花専門店の方」
「……そうか」
レストリス商会? しかも花? 母上がそんな所に行くとは思わない。となると、妹か? だが、彼女は病弱。だから外出はしないはずだ。
いや、だが今は回復傾向に向かっていると父上から聞いたな。となると、もしかしたら彼女かもしれない。
もし妹だったとしても心配性の母上の事だ、どうせ世話係や護衛も付けているはず。なら気にしなくていい。
と、思っていたのに数十分後には大通りに足を向けていたのだ。
大通りで、馬車に乗っていた貴族達の喧嘩騒動が起きているという話を聞いた。それを聞いた時はもう足が動いていた。
「アルフレッド様?」
レストリス商会の前に見えた、アドマンス家の馬車。事件に巻き込まれていなかったようだ。いや、すぐに収まってもう事件後なのかもしれない。
「ここに来る前、何もなかったか」
「は、はい」
「母上か?」
「いえ、アヤメお嬢様でございます。今は中でお買い物をされています」
「そうか」
「如何いたしました?」
「……いや」
タイミングよく出てきた妹は、とても嬉しそうな顔をしていた。いい買い物が出来たようだ。
「あ、あの、アルフレッドさん……?」
「用事は済んだか」
「……え? あ、はい。これから帰るところです、が……」
「ならいい。体調は?」
「あ、大丈夫、です」
「そうか」
顔色はいいようだ。なら心配いらない。
妹を馬車に乗せ、俺はその場を離れた。
馬者にも、騒動のあった2番通りは通らないよう言いつけておいた。
「……アルフレッドさん、か……」
団長にはああ言われたが、関心が無いわけではない。自分の妹、家族になったんだ、兄としての役割もきちんとするつもりだ。
兄、という立ち位置がどの辺りなのか、まだ理解出来ていないところもある。だが彼女は身体の弱い女性だ、気にかけてやればいいのだろう。
そう思いながら、王宮に戻っていった。
「お前、妹が出来たんだって?」
いずれ聞かれると思っていたが、やはりそうか。
「……何です、団長」
「お前はほんと無関心だなぁ。ちょっとは妹の事を考えて家に帰ってやればいいものを」
「私の仕事を増やす団長に言われたくありませんね」
「お前は仕事が早いんだから終わらせて帰ればいいだろ? それくらい余裕あるじゃないか」
妹が出来た。そんな手紙をもらったのはつい数日前の事。そして、その話題はすぐこの王宮にも広がった。
俺は職場である騎士団の宿舎に泊まることが多い。帰る時間があるなら仕事に回す。そっちのほうが楽だからだ。
だが、妹が出来たとあっては一度戻って顔を合わせなければならない。団長も段々煩くなってきて、鬱陶しいから早めに行ったほうがいい。
だから、仕方なくタウンハウスに足を向けた。
妹になったのは、アヤメという名の女性。本名はオクムラ・アヤメと言うらしい。
16歳と聞いていたが普通よりやや背が低い。12、13と言われてもおかしくないくらいだ。重い病を患っていると聞いていたから、そのせいかと理解した。
彼女が異世界人だという事も知っている。黒髪に、黒い瞳。ここではとても珍しい容姿だ。
確か、他国にこんな容姿をした者達がいると聞いた。80年前に異世界人が現れた国だとも。もしかしたら、同じ星の人物だったのかもしれない。
いきなり、全く知らない異世界に来たんだ、不安や戸惑いもあっただろう。だが母上達がいるのであれば多少不便があっても安心出来ると思う。
そう思っていた。
「お前はッ!!」
「う”っ……」
次の日の朝、俺を探していたらしい父上が、鬼の形相で俺の頭上に一発拳を思い切り入れてきた。俺は目覚めはいい方だったが、これで十分目が覚めた様な気がする。それだけ強烈な一発だった。
「アヤメに騎士団員にするような挨拶をしてどうするんだ!!」
「……」
「家族になった妹なんだぞ、自覚していないのか」
「……申し訳、ございませんでした」
「次、アヤメを困らせたら分かっているな」
「……肝に銘じます」
そんなつもりは、なかったのだが……もう少し考えて挨拶をしたほうが良かったか。
この朝の騒動を目撃していたらしい団長に、一日中笑われたのは言うまでもない。
「女性との付き合い方すら知らないお前に妹か~、い~ね~」
「口より手を動かしてください」
「後で会わせてくれよ、そのアヤメちゃんとやらに」
「私ではなく、父上である元帥にお願いします」
「ちぇ~、つまんねぇの」
面白がらないでいただきたいんだが。
しばらくは、この話題が尽きないだろうな。面倒ではあるが、仕方ない。
そう溜息をつき部屋を出た。
「大通りに、公爵家の馬車を見かけたぞ」
鍛錬の最中、外から帰ってきた同僚にそう聞かされた。母上か。あまり外出せず公務をなされている方だが、何かあったのか。
「何、何かあるのか?」
「……いや、何もない。どこに向かっていた」
「どこに? そうだな……あの方向じゃ、レストリス商会か? あれだよ、花専門店の方」
「……そうか」
レストリス商会? しかも花? 母上がそんな所に行くとは思わない。となると、妹か? だが、彼女は病弱。だから外出はしないはずだ。
いや、だが今は回復傾向に向かっていると父上から聞いたな。となると、もしかしたら彼女かもしれない。
もし妹だったとしても心配性の母上の事だ、どうせ世話係や護衛も付けているはず。なら気にしなくていい。
と、思っていたのに数十分後には大通りに足を向けていたのだ。
大通りで、馬車に乗っていた貴族達の喧嘩騒動が起きているという話を聞いた。それを聞いた時はもう足が動いていた。
「アルフレッド様?」
レストリス商会の前に見えた、アドマンス家の馬車。事件に巻き込まれていなかったようだ。いや、すぐに収まってもう事件後なのかもしれない。
「ここに来る前、何もなかったか」
「は、はい」
「母上か?」
「いえ、アヤメお嬢様でございます。今は中でお買い物をされています」
「そうか」
「如何いたしました?」
「……いや」
タイミングよく出てきた妹は、とても嬉しそうな顔をしていた。いい買い物が出来たようだ。
「あ、あの、アルフレッドさん……?」
「用事は済んだか」
「……え? あ、はい。これから帰るところです、が……」
「ならいい。体調は?」
「あ、大丈夫、です」
「そうか」
顔色はいいようだ。なら心配いらない。
妹を馬車に乗せ、俺はその場を離れた。
馬者にも、騒動のあった2番通りは通らないよう言いつけておいた。
「……アルフレッドさん、か……」
団長にはああ言われたが、関心が無いわけではない。自分の妹、家族になったんだ、兄としての役割もきちんとするつもりだ。
兄、という立ち位置がどの辺りなのか、まだ理解出来ていないところもある。だが彼女は身体の弱い女性だ、気にかけてやればいいのだろう。
そう思いながら、王宮に戻っていった。
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