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■99 ガイアからの贈り物
しおりを挟む殿下の成人の儀が明日となり、私は一度領地に戻りイアンの様子を一度見てからまた首都のタウンハウスに戻った。そして、丁度戻ったタイミングでお客様が来訪してきて。客間に案内するようスティーブンに伝え私も着替え向かった。
文官、騎士団長、そして国の錬金術師の3人が訪れてきた。3人は、この国の隣国のそのまた向こうに位置するドファース国の者達らしい。サーペンテインには成人の儀に出席する他に、私に会う目的もあったのだとか。
「サーペンテイン国の賢者様にお願いがあり来訪いたしました」
「お願い、ですか」
「はい。今、我がドファース国は干ばつ問題に頭を悩ませているのです」
その影響で他の災害も起こり、作物も作れず困っているようだ。そのせいで貧困層も増え続けている。
今は何とか輸入という方法で持ちこたえている状態ではあるけれど、ずっと他国に頼ってばかりではいられない為早急に問題を解決しないといけないらしい。
この問題に、賢者である私の知恵を貸してほしいと来たらしい。
「雨は?」
「3ヶ月に1回の頻度です。と言っても、小雨しか降りません」
「そうですか……」
参考になるかどうかわかりませんがと国の地図と土を出してきた。この場所の土らしい。
確かに、カラカラだ。以前未開拓地でこんな土を見たことがある。強い日差しと暑さで気が滅入りそうになり、水を何度も何度も飲んだけど満たされずずっと喉が乾くような体験をした覚えがある。
早く抜け出そう、とその時は走ったけれどこの人達は生まれた故郷だ。これは国民の生活がかかった問題である。
「そうですね……やはり直接見なければどうにもなりません」
「ッ……」
私のこの言葉に、暗い顔をしている3人。これで突き放されると思っているのだろうか。いや、言い方を間違ったか。
「ですから、一度訪問させてください」
「……えっ……」
「ほ、訪問ですか……!?」
「はい、難しいでしょうか……?」
「「いえっ!!」」
来てくれるだなんて夢にも思っていなかったようだ。とても泣きそうな顔をしていて、それだけ切羽詰まっていたのだろう。
詳しい日程などについては後ほど、という事になった。
「ありがとうございます……!!」
「こ、これで国民達が救われます!!」
そ、そこまで言われるとプレッシャーというか、何というか。でも、ここまで喜んでくれているんだからちゃんと最善を尽くします。
「本来、錬金術とは我々人間達が豊かに生活出来るようにと大地の女神ガイアから贈ってくださった贈り物です。これは当たり前の事ですよ」
「け、賢者様ッ……!!」
「感謝いたしますッ!!」
困っている方々がいるのなら、手を貸さずにどうするんだ。これはその為の力なのだから。
そう、これは本来そういった事に使うための力だ。
自身の欲を満たす為に、だなんて使ってはいけないもの。
それを、私の弟子達にはずっと教えてきた。
……人を傷つける事に使ってはいけないものなのだ。
成人の儀が終わったらすぐに自国に帰って国王陛下にお伝えいたします、とおっしゃって帰っていった。
「そうだな……ジョシュとローレンスも連れていこっかな」
どんな状況となっているのかはやっぱり行ってみないと分からない。彼らの話だと、死者が多数出ているのだとか。早く日程を立てて訪問したいな。
今考えられる対処は、聖水の雨を降らせること。
聖水は人間を癒すように、土地を潤すことも出来る。以前、あの北の森や領地の湿地帯でも同じ事をした。
小国で土地が小さいと言っても、簡単には終わらない規模だと予測できる。ちょっと骨は折れるかもしれないけれど……まぁ何とかやってみよう。あとであのマナ蓄蔵の鉱石に私のマナを貯めておこうかな。
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