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■95 モンスター襲来
しおりを挟むラッパの鳴る音と共に、参加者達はドルアンの森へ入っていく。そんな男性達を見送ってから、私達は用意された席へ向かった。
私の座る丸テーブルの席にはこぞって女性達が集まってきた。
「お久しぶりでございますわ、モストワ卿」
なかなかお目にかけないものですから、心配いたしましたわ。とか……今度わが家でサロンを開くのでモストワ卿も如何です? とか……モストワ卿の錬金術をぜひ拝見したいですわ。とか。
因みに錬成して、透明な鉱物を花瓶に生けた薔薇の形に模ったものを作って見せた。いつぞやのディナーの時作ったものと同じようなものだ。まぁ皆さん喜んでくださっているようで安心した。……ほめ過ぎでは、と思う発言が多々あったが。
「そういえば、スラモスト公爵夫人。そろそろ出産日だそうですよ」
「あらあら、それは大変ですわね」
スラモスト公爵夫人は、陛下の妹君だ。年初めの会議にも出席していた。確かに私もお見かけしていない。
マギーさんも結構大変だったから、今頃夫人も頑張っている事だろう。
「出産と言えば、ターメリット家のマグダレン嬢は、今どうしていらっしゃるかご存じですか? モストワ卿」
「今、私の領地の屋敷で子育て中です」
今、ターメリット家はあの件で大変だろう。侯爵は貴族裁判にかけられている最中。アスタロト公爵は、本気で潰すつもりらしい。因みにアンジェリーナ嬢も今日は不参加。当たり前か。と言っても、アスタロト公爵は参加して今森の中だけれど。
ご婦人達やご令嬢達と談笑している時、また誰かがやってきた。私に挨拶をしてきたけれど、知らない人だ。そして知っていた人がお久しぶりですねとあいさつをしていて。けど、すぐに私の視線は彼女の胸元にあるネックレスに。
「……素敵なネックレスですね」
「ありがとうございます」
赤く輝く石が嵌められていたネックレス。隣のご令嬢に、それはガーネットですかと聞かれていて。本物だそうだ。けれど……
「それ、見せて頂いても?」
その言葉に、不思議に思いつつも外して見せてくれた。そして、
「これ、違いますよ。錬金術で偽装して作られたものです」
私のその言葉に、周りは動揺していて。一番顔をこわばらせているのはその持ち主である彼女だ。ちょっとストレートに言い過ぎたか。ちょっと申し訳ない事をしてしまったようだ。
唐突にすみませんと一言謝罪してから、だいぶ精密に作られているものですから、騙されるのは仕方ない事ですと言っておく。
私が偽装硬貨を見破った件を知っているらしい。あれも沢山の人達が騙されていたようだからね。その為、批難する方がいない。と言っても何も言えないが正解か。
これは、貰い物らしい。着けた時を私が聞いた為不安がる彼女達。馬車で同席した令嬢に勧められて、付けていたものと交換したそうだ。その令嬢は今は姿が見えない。近くにいた第一騎士団に理由を作り探してもらうよう伝えておいた。
そんな時、遠くから女性の悲鳴が聞こえてきた。その方向に視線を送ると、
「えっ……モッモンスターッ!?」
「キャァァァァァァァァァッ!!」
巨大なモンスターがこちらに向かってきていて、私はすぐに杖を取り出した。
『展開』
〝カヴェアの種〟『Terra』
〝ロルトスの種〟『Terra』『Ignis』『Tonitrua《トニトルス》』
鉄縄で縛りあげる。動きを封じた所で、上空に大きく鋭利な突起のついた金属を作り出し重力に乗せ降ろしモンスターに突き刺さった。
この一撃でモンスターの身体を突き破り動かなくなったのだった。
向かってきていたのはこの一匹だったがもう来ないとも言い切れない。
そしてすぐに錬成陣を展開、先程彼女から渡されたネックレスを処理をし始め、出てきたのは黒い物体。それを私はすぐに消滅させた。
そんな様子を見ていた女性達は顔を真っ青にしていて、座り込んでしまう方もいた。
大丈夫ですから、ここで大人しくしていてください。そう言い聞かせ陛下の元へ向かった。
「陛下っ!!」
「おぉ、ステファニー殿」
陛下も先程の惨状を知っていたらしく、こちらは大丈夫だと言ってくれた。ここに、結界を張った方がいいと判断し陛下に許可を頂きに来たのだ。勿論陛下は承諾してくれて、どうか皆さん一ヵ所に集まってくださるよう伝え集まった場所に結界を張って。
「陛下、森に入る許可を頂きたいです」
「お主が、か」
「はい。……何だか、胸騒ぎがします」
本来なら、この場合私は陛下の近くで待機し騎士団達を向かわせるのが正しい判断だ。
「ここはレベルの低いものばかりのはずだが……あれはギルドではA級で編成されたパーティーに依頼するレベルのモンスターだ」
「えぇ、ですので様子を見てまいります。こちらには私の聖獣を待機させます、魔法が使えるので何かあれば守れることでしょう。もし何かあれば鳴き声で私に知らせてくれるので、その時はすぐに戻ってまいります」
「分かった、気を付けて。フレッド達の無事も確認してくれ」
「畏まりました」
すぐに、私は結界を抜けたのだった。
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