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■80 聖夜祭パーティー

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 聖夜祭の夜にはパーティーが行われる。当然私も参加しなければいけないのだが……


「で、殿下……」

「どうした、私では不満か?」


 エスコートに殿下が出てきたのだ。部屋の外で待ち伏せされて、では行こうかとさも当然のようにエスコートし出して。


「祈りを捧げた賢者の君をエスコートするのは王太子である私の役目だと思うのだが」

「……ご令嬢達の視線が痛くなってしまうのですが……」

「気にしなくていいさ」


 ……これは、拒否権がないな。どうやっても逃げられない。


「では、よろしくお願いします。……殿下」

「あぁ」


 ……なんだか、楽しんでいませんか?




 案の定、視線がぐっさぐっさ刺されて、私は逃げた。けど、


「ご機嫌麗しゅう、賢者殿」


 モストワ男爵、としてではなく賢者としていろいろな人にあいさつをされた。

 賢者殿が祈りを捧げてくださったお陰でここサーペンテインは安泰ですな。だとか、賢者様がこの国にいてくださっているお陰で安心していられます、とか。そんな言葉を言ってくる。

 そして、王宮術師であり貴族でもある人達も何人かいて。知らない人という事は他の領地からここに戻ってきた人達なのだろう。あとでお話をさせてください、とせがまれたり、尊敬していますと言われたり。

 あぁあと、祈りを捧げている最中に金色の錬成陣が展開されたいたようですが、何をされていたのですか。とも。その件に関しては軽く流しておいた。それ、私じゃなくてお師匠様が展開して、私はお言葉を頂いていただけですと言えば、面倒なことになりそうだと思ったからだ。


「そういえば、近いうちに第2首都スモーラナ地方へ向かう道がもう一ヵ所使えるようになるのだとか」


 いきなり、周りにいた貴族の一人がその話題を出してきた。


「聞きましたぞ。何でも、原因であった大量のモンスターを第二騎士団が討伐しているのだとか」

「ほほぉ。毎年スモーラナ地方で毎年行われる祭りを見ようと訪れる者達で、1本しかなかった道がずっと渋滞状態でしたから、助かりますな。さすが王宮騎士団だ」

「あぁ、そういえばモストワ卿の領地と隣のソリア領の間でしたね。これならモストワ卿も安心ですな」


 あそこに発生しているモンスターは、私の領地の湿地帯から溢れているモンスターだ。きっと、この事を分かっていて話しているのだろう。領地問題でもある案件を、陛下が私に派遣してくださった騎士団のお陰で解決させてもらっている、という事を言いたいのだろうか。

 こんな錬金術しか出来ない小娘に、領地問題を解決出来るわけがないと遠回しで言っているのか。所詮、陛下に助けて貰わないとできるわけがない、と。陛下はお優しい、とでも言いたいのか。


「……そうですね、安し…」


「モストワ卿の助力あっての事ですよ」


「……!?」


 後ろからそんな声が掛けられた。


「ね、モストワ卿?」

「……ダルベルト伯爵……!!」


 あ、そうだ。この人も伯爵だ。こんな大切なパーティーに出ない訳ないか。ここの警備は、他の人達がしているという事……?


「我々が上手くモンスター討伐を出来ているのは、モストワ卿のお陰です。と言っても、我々の力はモストワ卿に敵いませんがね」


 だいぶ手を貸してくださっている事が少し恥ずかしいくらいです、と。いえ、第二騎士団の方々が来てくださらなかったら上手くいっていません。今湿地帯が安心できるような状態になっているのは、貴方方がいてくださったお陰です。


「それは、どういった意味でしょうか」

「錬金術を、戦闘に利用しているという事ですよ。そうですね……私が知っている中では、ワームに、ワイバーン、ウガルルムまで一人で討伐してしまいましたよ」


 まぁ、確かに倒した。けど、周りの人達は信じられないと言った顔をしている。まさか、と思っている事だろう。きっと、今言われた事とこの小娘が結びつかないのだろうね。


「錬成の速さ、判断能力、それに経験値も素晴らしい。さすが、賢者様と言った所でしょうか」


 あの、そんなに褒めないでください。過大評価しすぎだという事は分かっているのですが、そこまで言われてしまうとすごく嬉しくて顔が緩みそうです。……という私の心境に気が付かれてしまったらしい、凄くニコニコ顔を向けてくる。

 今度モストワ卿の錬成を見てみたいものですな、と一言残して行ってしまった。


「あの……ありがとうございます」

「いえ、本当のことを言ったまでですから」

「でも、過大評価しすぎですよ」

「そんな事はございません。賢者様のお陰で我々は何度も助かっていますから」


 感謝してもしきれませんよ、とまたまたキラキラした笑顔を向けてきた。貴族スマイル……それともイケメンスマイル……?


「あぁ、そういえば。今日のドレス、とてもお似合いですよ。お綺麗です」

「……」

「……やはり、ステファニーさんは褒められ慣れていないようですね?」

「……」


 だって……750年間全然褒めてくれるような人物がいなかったんだもん。と言うより、あのお師匠様が褒めてくれる事なんてほぼなかったし。それからはルシルと旅してたし。


「ククッ」

「笑わないでくださいよぉ……」

「これは失礼。あぁ、ダンスが始まるようですよ」

「あ”……」

「私とワルツなんて如何ですか、レディ?」

「……私、下手ですよ……?」

「構いません」


 じゃ、じゃあ……よろしくお願いします。と差し出されていた手を取った。

 ……絶対足を踏まないようにしなきゃ。絶対。


 彼の手を取り、音楽に合わせてステップを踏む。


「お上手ではないですか」

「デビュタントの後も猛特訓しましたから」


 スティーブンにあの日何回踊ったかを聞かれてまたダンスレッスンが入ってしまったのだ。絶対今後も踊る機会がおありでしょうから、と鬼のようにレッスンをしてくれた。


「では練習した成果が出ているという事ですね」

「あそこまで頑張った甲斐があったという事ですね! ……?」


 何かを感じた。

 誰かに呼ばれたような。

 聞こえたわけじゃない。

 けれど、感じた。

 この、方向は……


「どうしました?」

「……ちょっと、席外しますね」

「え?」


 曲が終わり、頭を下げた。どこへ? と言われたけれどちょっとサマンサに用が出来たので、と彼の元を離れた。さて、ルシルちゃんは確かサマンサの所だよね。

 すぐに会場を出て、さてどこだと探そうとした時、丁度外廊下に出たタイミングでルシルちゃんが来てくれた。一体どこから来たんだ。と言うより、もしかして何かに気が付いた?


「この方向は……」


 私はすぐに、ルシルの背に乗った。

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