大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫

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■65 湿地帯の現状

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 ギルバートさんから、湿地帯に向かわせた偵察部隊が戻ってきたと報告を受けた。

 任務で他の湿地帯には行った事もある彼らだけれど、深くまでは行けなかったらしい、その理由は……


「ポイズンスネークに、フロッグですか」

「はい、奥に行くにつれて増えてきて……」


 ポイズンスネークは、猛毒を持つモンスターだ。牙に噛みつかれたらかなりのダメージを受けてしまう。そして、フロッグは巨大なカエルだ。飛びかかってきたり、長い舌で捕まえられてしまう事がある。こちらは麻痺毒を持つモンスターだ。

 その他にも、群れで生息するモンスターやら一匹狼で強力なモンスターやらとそれはもう酷いものだったらしい。あぁ、頭が痛い……もっと奥になると一体どうなっているのだろうか。きっと酷いことになっているのだろう。それに、気になる事もあるし。


「とは言っても、策をきちんと練り少しずつ討伐していけば大丈夫でしょう」

「長期戦になりそうですね」


 これは、もっとポーションを作らなければならないな。マルギルさんの方への発注を多くして、皆にも協力してもらった方がいいかも。





 私達人間がモンスターを狩る理由。

 生活の為。物理的な被害を防ぐ為。そして、自然を壊さない為だ。

 モンスターと自然との相性は良くない。それは、モンスターが自然を壊してしまうためだ。破壊、汚染。そして、自然を作る役目を持っている生き物たちを殺したり、喰らってしまう。

 モストワ領の湿地帯は、モンスターの巣窟だ。モンスター率が高すぎる為、自然破壊は当たり前の事となってしまっている。手前辺りであんなことになっているのだ。きっと奥はもっと酷いことになっているだろう。

 領地では色々と問題点があるけれど、結局は湿地帯を何とかしなければという事になってしまうのだ。だから、これが解決できればきっと領民達は楽に生活できるようになるだろう。湿地帯とは、本来は人間の生活を豊かにしてくれるものなのだから。


「賢者様がいれば最強ですね」

「えっ」

「そうですよ! 賢者様がいればモンスターなんて一捻りですよ!」

「えぇえ!?」


 背中はお守りいたしますっ!! と声を揃えて、力も籠った声で言ってくる。目をキラキラさせて期待のまなざしを向けてくるのは、ちょっとは慣れたけれど緊張してしまいますって。そんな期待されてもそんなに役に立ちませんって。皆さんがいてこそですって。私はただの錬金術師です。

 ……とは言わせてもくれなかった。








「男爵様、おひとりですか……」


 違うよ、第二騎士団さんと一緒だよ。と言ってもスティーブンは渋った顔を浮かべるだけだった。大丈夫だって、以前にも一緒に戦ったことがあるし。ウガルルムとか、あの森でだって一緒に討伐したし。というより私だってモンスター狩れるもんっ!! 


「大丈夫、私がこの国に来る前だって沢山モンスター狩ってたもん。……知人に、モンスターの巣窟に落とされたり、モンスターの沢山いる海に突き落とされたり、ね……」

「えっ……」


 あははー、これも良い思い出だよね。お師匠様が超鬼畜だって分かってたけどさ。これはさすがにさ。しかも、突き落とされた上に杖を上に残しちゃったこともあったっけー……あははー、笑えない。あれは本当に死ぬかと思った。


「それでも生きてたんだから大丈夫だって、信じてよ」


 この話はマズかっただろうか、今度は顔を真っ青にして何か言いたそうな顔だ。周りにいて聞いてしまっていた騎士さん達も口をポカーンとしているし。その知人の方ってまさか、と気が付いてしまった方が一人いるが。アルさん、何を聞きたいのでしょうか?


「賢者様は必ず守ります」

「守らせていただきます!!」

「モンスターなんかに指一本触れさせませんっ!!」

「騎士様方、どうか男爵様の事をお願いいたします」


「「「はいっ!!」」」


 え?? 

 あれ、おかしいな。
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