66 / 110
■65 湿地帯の現状
しおりを挟むギルバートさんから、湿地帯に向かわせた偵察部隊が戻ってきたと報告を受けた。
任務で他の湿地帯には行った事もある彼らだけれど、深くまでは行けなかったらしい、その理由は……
「ポイズンスネークに、フロッグですか」
「はい、奥に行くにつれて増えてきて……」
ポイズンスネークは、猛毒を持つモンスターだ。牙に噛みつかれたらかなりのダメージを受けてしまう。そして、フロッグは巨大なカエルだ。飛びかかってきたり、長い舌で捕まえられてしまう事がある。こちらは麻痺毒を持つモンスターだ。
その他にも、群れで生息するモンスターやら一匹狼で強力なモンスターやらとそれはもう酷いものだったらしい。あぁ、頭が痛い……もっと奥になると一体どうなっているのだろうか。きっと酷いことになっているのだろう。それに、気になる事もあるし。
「とは言っても、策をきちんと練り少しずつ討伐していけば大丈夫でしょう」
「長期戦になりそうですね」
これは、もっとポーションを作らなければならないな。マルギルさんの方への発注を多くして、皆にも協力してもらった方がいいかも。
私達人間がモンスターを狩る理由。
生活の為。物理的な被害を防ぐ為。そして、自然を壊さない為だ。
モンスターと自然との相性は良くない。それは、モンスターが自然を壊してしまうためだ。破壊、汚染。そして、自然を作る役目を持っている生き物たちを殺したり、喰らってしまう。
モストワ領の湿地帯は、モンスターの巣窟だ。モンスター率が高すぎる為、自然破壊は当たり前の事となってしまっている。手前辺りであんなことになっているのだ。きっと奥はもっと酷いことになっているだろう。
領地では色々と問題点があるけれど、結局は湿地帯を何とかしなければという事になってしまうのだ。だから、これが解決できればきっと領民達は楽に生活できるようになるだろう。湿地帯とは、本来は人間の生活を豊かにしてくれるものなのだから。
「賢者様がいれば最強ですね」
「えっ」
「そうですよ! 賢者様がいればモンスターなんて一捻りですよ!」
「えぇえ!?」
背中はお守りいたしますっ!! と声を揃えて、力も籠った声で言ってくる。目をキラキラさせて期待のまなざしを向けてくるのは、ちょっとは慣れたけれど緊張してしまいますって。そんな期待されてもそんなに役に立ちませんって。皆さんがいてこそですって。私はただの錬金術師です。
……とは言わせてもくれなかった。
「男爵様、おひとりですか……」
違うよ、第二騎士団さんと一緒だよ。と言ってもスティーブンは渋った顔を浮かべるだけだった。大丈夫だって、以前にも一緒に戦ったことがあるし。ウガルルムとか、あの森でだって一緒に討伐したし。というより私だってモンスター狩れるもんっ!!
「大丈夫、私がこの国に来る前だって沢山モンスター狩ってたもん。……知人に、モンスターの巣窟に落とされたり、モンスターの沢山いる海に突き落とされたり、ね……」
「えっ……」
あははー、これも良い思い出だよね。お師匠様が超鬼畜だって分かってたけどさ。これはさすがにさ。しかも、突き落とされた上に杖を上に残しちゃったこともあったっけー……あははー、笑えない。あれは本当に死ぬかと思った。
「それでも生きてたんだから大丈夫だって、信じてよ」
この話はマズかっただろうか、今度は顔を真っ青にして何か言いたそうな顔だ。周りにいて聞いてしまっていた騎士さん達も口をポカーンとしているし。その知人の方ってまさか、と気が付いてしまった方が一人いるが。アルさん、何を聞きたいのでしょうか?
「賢者様は必ず守ります」
「守らせていただきます!!」
「モンスターなんかに指一本触れさせませんっ!!」
「騎士様方、どうか男爵様の事をお願いいたします」
「「「はいっ!!」」」
え??
あれ、おかしいな。
8
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。

RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!
アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」
ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。
理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。
すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。
「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」
ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。
その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。
最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。
2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。
3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。
幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。
4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが…
魔王の供物として生贄にされて命を落とした。
5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。
炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。
そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り…
「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」
そう言って、ノワールは城から出て行った。
5度による浮いた話もなく死んでしまった人生…
6度目には絶対に幸せになってみせる!
そう誓って、家に帰ったのだが…?
一応恋愛として話を完結する予定ですが…
作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。
今回はHOTランキングは最高9位でした。
皆様、有り難う御座います!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる