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■53 失敗は成功のもと
しおりを挟む朝から、私宛に手紙が来た。複数あって、いつもの領地の件だったりが多かったけれど、その中に違った手紙が2通あった。
モルティアート家の夫人からの、お茶会のお誘い。以前招待するわねと言っていらっしゃったから、それだろう。
あとは、王宮から。陛下から、というと……何かの招待状かな? と思ったけれど、違かったようだ。
「モストワ領の湿地帯視察にこちらの騎士を遠征に行かせたいとの事です」
「湿地帯?」
陛下は、こうおっしゃったらしい。今現在、このサーペンテイン王国の第2の首都であるスモーラナ地方。首都からそちらに向かう為の道が途中から1本となってしまっている。
以前は2本であったが、近くにある湿地帯がこんな状態になってしまい、通るたびにモンスターに襲われる事となってしまい通る者達はほぼいない状態になっている。
最近は、それを狙い山賊達がそれを利用し魔鉱車を襲っている事が多々あるらしい。だから、この湿地帯を何とかしてほしいとの事だ。
「……とは言っても、恐らく男爵様に手を貸す口実だと思われます」
「口実?」
「今、こちらは警備兵が人事不足です。男爵様が領主となり、そして今のこの現状からだと、まず取り締まることが最優先となります」
そうか、それを知っていて陛下が助力をしてくれるという事か。でもそのまま向かわせるのには周りが騒ぎ立ててしまいかねない。だからこういった口実を作ってくれた。
陛下……感謝します。一度直接お礼を申し上げたい。あとで、ちゃんと返事をしよう。
そんな時、床が少し揺れた。何か大きな物音も。これは……もしや、と思ったら正解だったらしい。すぐにこの部屋のドアがノックされた。
「男爵様!!」
「ししょー……」
「師匠……」
焦って書斎に来たジョシュ、ローレンス、あと侍女だ。
「ほら、謝るのよ」
「「ごめんなさい……」」
侍女さんが言うには、錬金術の練習中に練習部屋の壁を壊してしまったらしい。一体何をしたんだ。
練習部屋に行ってみると、だいぶ壁が抜けてしまっていて。何とまぁ派手に壊してくれたものだ。
跡を見ると、これは蔓か。錬成したら思った以上に大きく錬成してしまい風魔法で動かそうとしたら制御できなくて、と言ったところか。壁を突き抜けて外まで飛び出している。
「威力の大きいものは外でやりなさいって言ったよね?」
「はい……」
「ごめん、なさい……」
「これだと、込めるマナの量も多すぎたんじゃないかな。マナの量はちゃんと調節をしなさいって言ったでしょ」
「むずかしくて……」
「とりあえず、次やる時には外でやりなさい」
「「はぁい……」」
まぁ、ちゃんと謝ってくれたからこれくらいにしようか。と、収納魔法陣を開き自分の杖を取り出した。
『展開』
まずは蔓だね。この大きなものを何とかしなきゃ。
『Aqua』
『Terra』
『Creare』
蔓、水魔法、土魔法でランドアという小さく黄色の花をつける植物を錬成。鉢に納めた。
「観賞用にどこかに飾って」
「畏まりました」
さぁ、次。この部屋の壁だ。
〝ワロドーラの種〟
『Terra』
『Ventus』
『Creare』
部屋の壁が、みるみる内に塞がれていき元通りに。けど、これはあくまで応急処置。あとでスティーブンにお願いしよう。修理屋さんを呼んでくれるはずだから。
「全く……罰としてここの掃除は勿論、明日一日皆の手伝いをしなさい。ちゃーんという事を聞くんだよ。当然錬金術は使っちゃダメだからね」
「「………」」
「返事は?」
「「はぁい……」」
「よろしい。明日はこの子達の事よろしくね」
「畏まりました」
まぁ、私も今まで色々と失敗したからねぇ。覚えが結構あるよ。建物の中じゃなくて外でだったけれど。だいぶ怒られたな……
ま、失敗して成長するものだ。今度時間が空いたら見てあげよう。
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