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■41 あの日の子供達

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 建物の中は、外から見たよりも脆くなっている所が何ヶ所か見えた。こんなに子供達がいるからちょっと危ないな。

 そして、長いテーブルのある部屋へ招かれた。どうぞ、とイスに座るよう促されて。エマと名乗った、マルギルさんよりちょっと若い女性の方がお茶を出してくださった。


「あの、実はここにいる子達は私達とは全く血の繋がりのない子達なのです」

「拾われた、と聞きました」

「えぇ。……貴方方は、この領地の現状を知っていますか」


 現状。さっき聞いた通りだろうか。


「この領地は、納めなければならない税金が高すぎて皆生まれた子供を報告せずに捨ててしまう事が多いのです。ここにいる子達の何人かがそれです。後は、領主がどこからか連れてきて捨てたと思われます」

「……」

「ひでぇ事すんだな、今の領主様ってのは」

「町の様子を見ればわかります」

「ま、一目瞭然だな」 

「……お願いです。どうか、ここの事は言わないで欲しいのです。この家の事も、子供達の事も」


 成程、バレてしまえばこの子達の分の税金を払わされてしまう。ここの建物からしてもお金がない事は分かる。けど、どうして食べていけているのだろうか。税金を納めていないにしても、食料や水、衣服と掛かるものは沢山ある。こんなに人数がいるんだ、結構かかるだろうに。


「分かりました、お約束しますよ」

「ありがとうございます……!」


 見たところ、冒険者のようには見えない。まるでお嬢様のような、か弱そうな人に見える。他に支援者がいるのだろうか。


 外が暗くなってきていて、今日はどうぞ泊っていってくださいと誘われたのでお誘いに甘えた。

 ルシルに乗って帰るのは嫌だと言われてしまったから魔鉱車を捕まえなければいけないけれど、こんな時間じゃ魔鉱車はない。助かった。



「おねーちゃん  あのときのみせて!!」

「え、あの時??」

「てつのぼうけしちゃったやつ!」

「きれーな、まるいのでたでしょ?」

「あぁ、陣の事かな」

「じん?」

「そう、錬金術って言うんだけれど……ほら、『展開』」


 手に出現させた陣を凝視しては目をキラキラさせてくる。何とも珍しいものを見て好奇心が湧いているのだろうか。

 あの双子の女の子達以外にも他の子供達が集まってきて、違うのもやって! とねだられて。収納魔法陣から材料を出した。何もない所から物を出したものだから、子供達は、わぁぁ!! と拍手までしてきた。やっぱり、錬金術を知らない人からすると不思議な事に見えるのかな。


「ほーら、あったかい毛布だよ。どうぞ」

「わー!」

「どこからだしたの!?」

「錬成で作ったんだよ、一人ずつ持っていっていいよ」

「もらっていいの!?」

「その為に作ったんだよ」

「わーい!!」

「ありがと! おねーちゃん!!」


 何だか、ジョシュアを見ているようだ。ジョシュより少し下の歳だもんね。何か、嬉しいな。とっても健気で、無邪気で、素直で。そんな子達が、捨てられてしまったのだと思うと……とても心が痛い。


「人気者じゃねぇか、錬金術師さんよ」

「喜んでくれる事をするのは、とっても嬉しいですから」

「まぁそんなもんだろ。

 ……何考えてんだ、おめぇさんよ。手ぇ出していい所といけねぇ所の区別くらい出来んだろ」

「まぁ、そうですけど」


 けれど、こんな現状を知ってしまうと、思う所はある。あのパンのお店の女性は、生まれ故郷だからこんな土地でも離れられないんだよねぇ。と言っていた。


「ねーねーおねーさん! もっとみせてー!」


「うん、ちょっと待ってね」

「おい」

「分かってますよ。じゃあマルギルさん、おやすみなさい」

「……おう」


 知らないふりなんて、出来ないんだよなぁ……





 湿地帯は、人間にとって暮らしを豊かにしてくれる場所だ。

 生活や農業にも使える水もあり、錬成に必要な木や植物なども沢山ある。




  〝モンスターさえいなければ〟


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