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■34 ジョシュア、王宮へ
しおりを挟む「本当に、いいの?」
「……うんっ」
あれから、何度も王宮に赴いていた。そして今日も、朝から準備をしていて。
ルシルと一緒にジョシュアにお留守番をしてもらおうと思ったけれど、彼は一緒に行きたいと言い出した。極度の人見知りのはずなのに、それだけ寂しい思いをさせてしまっていたのだろうか。
まぁ、モワズリーさんから一緒に来てもいいと許可は貰ってはいるけれど……
「知らない人達が何人もいるけれど、大丈夫?」
「うんっ」
思いっきり頭を縦に振る。可愛いけれど、やっぱり心配だ。
でも、まぁ本人が言ってるのだからいっか。ルシルと一緒に居てくれればいいし。
「じゃあ、行こっか」
「うんっ!」
左手を出すと嬉しそうに小さな右手で握ってきたジョシュア。そんなに嬉しいのか。
「おはようございます」
もうすでに作業に取り掛かっている皆さん。ちょっと今日は遅かったかな。
「おはようございます」
「おはようございます、モワズリーさん。あの、今日はこの子を連れてきたんですけど、大丈夫ですか?」
「あぁ、以前おっしゃっていた子ですね」
「ご挨拶、できるよね」
「ジョシュア、です」
「レドモンド・モワズリーでございます。よろしくお願いします」
あらあら、後ろに隠れちゃった。まぁ王宮で保護していた時は心を開いてくれなかったって殿下が言ってたから、予測はしていたけれど……やっぱり連れてくるのは失敗だったか。
まぁ、これからの為には必要なことだし、何かあったら私がフォローに入ろう。
「ごめんなさい、ちょっとコミュニケーションが苦手な子なんです」
「大丈夫ですよ、訳は聞いておりますから。あ、この件に関しては私しか知りませんのでご安心を」
「ありがとうございます」
モワズリーさんと同じ白い外衣を羽織り、変質モンスターの死骸に近づいた。
「ステファニー様、こちらを」
「ありがとうございます」
「あの……お聞きしてよろしいでしょうか」
「何でしょう」
「この子は……」
「あぁ、訳あって今預かっている子なんです」
私の足元にいるジョシュアをちゃんと自己紹介させてなかったな。
「術師ですか……?」
「はい、これから基礎を教える予定です」
「徒弟、という事ですよね。羨ましい……あの、私も、」
「え?」
「そしたら僕も!!」
「僕も……!!」
「駄目、でしょうか……あ、徒弟でご迷惑でしたら弟子に……」
「わっ私も!! 錬金術師様の弟子に!!」
「えぇーっと、ん?」
隣から、小さな手が私の手を掴んで手を繋いできた。悲しそうな顔をしている。嫌なのだろうか。まぁ確かに、この子は人が苦手。でも私に懐いてくれるのだから術師は大丈夫だと思ったのけれど、違かったらしい。
「ごめんなさい。弟子にだなんて、私に皆さんの師匠は務まりませんよ」
「でっですがっ……錬金術師様のお話は毎回身に染みるものばかりです。務まらないだなんてっ……」
「口を慎みなさい」
「ッ……」
「ステファニー様がお困りですよ」
この状況を見て来てくださったモワズリーさん。助かりました。
その言葉に、申し訳ございませんと眉を下げ謝罪してくる術師達。そして自分達の作業に戻っていった。
「申し訳ございません、ステファニー様。きつく言いつけておきますので、お許しください」
「あっ、いえいえ。大丈夫ですから」
「お許しくださりありがとうございます」
ちょっと、嫌な空気になっちゃったかな。今度からこの子をここに連れてくのはやめた方がいいだろうか。先程の事で皆さんのジョシュアに対する視線が冷たい。
どうしてだろうか……私が断ってしまったから……?
はぁ、この手のものはとても苦手だ。
「申し訳ありません」
「はい?」
いきなり謝ってきたモワズリーさん。何かあったっけ。
「ステファニー様に徒弟が出来たと聞いたからでしょう。先程のように皆ステファニー様の弟子になれればと躍起になっているのです。申し訳ありません……」
「弟子だなんて、私なんてまだまだ未熟な術師ですよ」
「そんな事はございませんよ、とても素晴らしい技術をお持ちです。ステファニー様が未熟だとおっしゃるのでしたら、我々はひよっこです」
「そんな、皆さんとても素晴らしい技術の持ち主ですよ。私もここに来れて沢山学ばせてもらっています」
「はは、ありがとうございます」
今まで人のいない未開拓地をうろうろしていたけれど、ここサーペンテイン王国に来てからたくさんの発見があった。
来て良かったって心から思う。
こんなに心優しい人達とも知り合いになれたしね。
「誰かに教えるっていう事がとても苦手なんです。ジョシュアに今色々と教えている所ですが、中々上手くいかなくて、あはは」
「そうですか……」
だって、最初にお師匠に教えてもらった時なんて遥か昔の記憶だもん。まぁ、彼はとても優秀だから何とかやっているっていう状況だ。
本当に難しい。
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