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■31 アズライト
しおりを挟むそれから、すぐに騎士団の方々が来てくださり伯爵らはお縄についた。
「ご協力感謝いたします、ステファニーさん」
「いえ、早く来てくださりありがとうございます」
「いえいえ、それで、取り調べをしたいのですが……」
ダルベルトさんが視線を向けたのは、私が抱いているこの少年。ジョシュアだ。
だけど、私の服を強く掴んで顔を向けずに隠している。こんなに懐いてくれたことは嬉しいのだけれど、これでは騎士団の方々が困ってしまう。
「ジョシュア?」
「……」
「事情聴取ですよね? 私も一緒じゃダメですか?」
「構いませんよ」
ではこちらです、と魔鉱車を用意してくれたいたらしい。一緒に乗る事になった。
そして、一緒に乗ったダルベルトさんに説明。あの部屋の中にあった偽装品の事も。
だけど、本人にあの森にあった水晶の事を聞いても知らない様子だった。
あれから数日、またまたお茶会として王太子殿下に呼ばれた。
まぁでも、会話の内容は以前のあのモノリア伯爵邸の事なんだけれども。
「アズライトと、伯爵がそう言ったのですか?」
「あぁ、そう呼んでいた」
数ヵ月前にそのアズライトと名乗る人物に出会い提案をされたらしい。伯爵が以前奴隷として捕まえていたジョシュアには錬金術の才能があるから偽装技術を教えてやる。その代わり教育料として金を払えと。
社交界の時期で装飾品が売れるし、ポーションが馬鹿売れするように仕向けると言われて了承した。
あの森で発見した水晶もその人物の仕業だという。
「という事は、アズライトは腕の立つ錬金術師という事ですね」
「そうなるな」
「……あの、ジョシュアは……」
「こちらで身元を調べてはみたが見つからなくてな」
「奴隷……」
私は、あの時の奴隷商の件を思い浮かべた。一体どんな扱いをされてしまっていたのだろうか。
「この後、会ってやってくれないか」
「え? ジョシュアにですか?」
「中々心を開いてくれなくてな、君に頼みたい」
王宮から帰るとき、ジョシュアに別れを告げるとすごく悲しそうな顔をしてきてだいぶ帰りづらかった。
それから色々と忙しくて今日まで王宮に来なかったから、彼とも会っていない。
「それと、もしよければ彼の事を任せてもいいだろうか」
「え? 私が、いいんですか?」
「あぁ、彼もそれを望んでいると思う。同じ錬金術師でもあるからな」
「嬉しいです、ありがとうございます」
アズライトの事はこちらに任せてくれと言われた時、ずんずんとこちらに向かってくるご令嬢が見えてきた。
ちょっと怒ったようなご令嬢が私達がいる木陰のベンチに到着してしまってちょっと、いやだいぶ驚いてしまった。
「ご機嫌麗しゅう、殿下?」
「久しいな、ターメリット侯爵令嬢」
「あら、いつものように呼んでくださらないのですか? アンジーって」
「愛称では一度も呼んだことはないのだが」
「まぁ、ご冗談を。それで、こちらのご令嬢は?」
やばい、こっちに向ける視線が凄く鋭い。見定めるかのように顔やら何やら凝視されて怖いよ。殿下に助けを求めてもよいのだろうか。
「私は侯爵令嬢ですわ、そちらが先に名乗るのが礼儀ではないですの?」
え、何て名乗ればいいの? 貴族の方への挨拶ってどうしたらいいの?
「ターメリット侯爵令嬢。こちらは訳あって名乗ることは出来ないが、賓客である。その意味は、分かるな」
「ッ!?」
貴賓。それは大切な客人という事。そしてこの国の王太子殿下が紹介している為、王宮の客人ということになってしまう。
いいのかな、そんな凄いものでは無いのだけれど。
どうしたらいいのか分からず、とりあえず笑顔。すると、キッとした表情を見せてから笑顔に変わる。
「……それは失礼いたしました。私は、アンジェリーナ・ターメリット侯爵令嬢で御座います」
「えっと、はじめまして」
「……何とお呼びすればよろしいでしょうか」
え、えぇーっと。ステファニーはマズいよね。
すると、隣にいた王太子殿下が耳打ちをしてくれた。
「ティファニー、とお呼びください」
「分かりました、ティファニーさん」
笑顔が、怖いよぉぉぉぉ……!!
「おや、ティファニー嬢。顔色が少し悪くなってしまっているな」
「え?」
知らず知らずに右頬に殿下の手が触れていて、吃驚してしまった。
「陽射しに当たりすぎたようだな、では私達は失礼する」
視線が怖い、背中からグサグサ刺さってるよ……
貴族の人ってこんなに怖いんだぁ……
「さ、侍女に案内させるからジョシュアの所へ行ってやってくれ」
「あ、はい……」
「どうした」
「貴族って、怖いですね……」
「ククッ、そうか」
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