大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫

文字の大きさ
27 / 110

■26 お茶会

しおりを挟む

 あれから数日後、殿下との約束だったお茶会の為に王宮に赴いていた。

 殿下からの報告によると、商会には大量の偽装白金貨が発見された。商会の会長はそれを聞き青ざめていたらしい。

 だが、商会は色々な所と取引をしていて一体どこから流れ込んできたのかがまだ分からないでいる。


「……まさか、こうなるとはな。助かったよ」

「いえ、ですが大事に至らなくて安心しました」


 ここ、サーペンテイン王国は偽装硬貨は固く禁じられている。まぁ、当たり前だ。

 だから、もし犯人が見つかったら重い刑で罰せられるだろう。

 早く解決してくれるといいんだけど……


「……それで、殿下」

「ん?」

「最近、殿下に関する噂を聞いたんです」

「ほぅ、どんな?」


 その笑顔は、分かっているな。


「婚約者のいない王太子殿下が、最近頻繁に招いてお茶をしているご令嬢がいるらしくて、もしかしたらその方が婚約者に選ばれるのではないかと」

「ほぅ、興味を引く噂だな」

「……図りました?」

「さぁ?」

「殿下!」

「ククッ、悪かったよ」


 ほらやっぱり! 可笑しいと思ったんだ、ご多忙な殿下がわざわざ私の為に何度もお茶の時間を空けて下さるなんて!


「黙っていてすまないな。だが、こちらにも事情というものがあるんだ」

「事情、ですか……」

「君も言っていただろう、王宮に貴族令嬢の出入りが多くなったと。私もそろそろ婚約者を決めなければいけない為、文官やら貴族のやつらが煩くてね。それに、とある令嬢の態度に困っていてな」


 とある、というのは候爵家の令嬢らしくて、勝手に王太子殿下の婚約者気取りをしているらしい。本人である殿下は全くその気はないらしくて。それは、大変ですね。


「公務中に休憩を取ろうにもその時間を狙って押しかけられては敵わないからな」


 成程、私を使って休憩時間を作っていたわけか。でも、私が来ないと休憩できないって……お疲れ様です。


「君には感謝しているよ。そのお陰で周りが少しだが静かになったし、令嬢の矛先が名前の知らぬご令嬢になったからな。だが、君は貴族ではないから君自身には悪影響はない。それに君としても私と情報交換ができているから、得だと思っているのだが」

「……そ、ですね」

「勝手にしてしまったことは謝ろう。だが、このまま続けてくれると助かる」

「……殿下のお力になれるのでしたら」

「あぁ、ありがとう」


 やっぱり、この親子は策士だ。


「何だったら、このまま婚約者になってくれても良いのだが?」

「でっ殿下!?」

「私はそれでも構わないぞ?」

「ご、ご冗談を……」

「ククッ」


 なんてことを言い出すんだ、この人は……そんな事になったら大問題だ。
















 賢者ステファニーとのお茶会がお開きになり、フレデリック王太子殿下は自室の執務室へ足を向けていた。


「無事、魔鉱車に乗られお見送りいたしました。殿下」

「ついさっきターメリット侯爵令嬢を見かけたが、見つかってはないな」

「はい」

「そうか」

「それと、つい先程王宮騎士団から報告書が」

「2日前のゴーレム討伐か」

「恐らく」


 4日前に、ゴーレムが2匹発見された。

 普段は好戦的ではないモンスターのはずだが、様子がおかしく、まるで興奮しきったように暴れていると報告が上がった。

 場所が場所なだけに、早急に処理しなければならないと騎士団を要請した。

 何か、引っ掛かる。

 まるで、あの時の瘴気のようだ。

 だが、報告ではそんなものは無かったとあった。

 これは、デイムに相談すべきだったな。次に訪れるのは3日後だったか。


「……!?」


 向こうから、足音が聞こえてくる。カツカツとヒールの音を鳴らした音だ。これは、見なくても分かる。

 くるっと向きを変え、本来なら左に行くべき曲がり角を右に。


「殿下」

「何、今日中に片をつけるべきものが山程あるからな。構ってられない」

「分かりました」


 この大陸には、大きな国は3つ。我が国と、スピネル帝国、ヘリオドール王国だ。その三国は、隣接した位置にある。

 そして、スピネル帝国には大賢者様が2名、そしてヘリオドール王国には1名いる。

 だがこの国には、1人もいない。2国とは和親を組んではいるが、それは表面上。錬金術に必要な素材が豊富なこの国を乗っ取ろうと思えば簡単にできてしまう。


「賢者か……」


 ウガルルムを一人で倒し、奴隷の件も、モルティアート侯爵領の疫病事件の件も、彼女が解決した。そして、あの北の森の浄化は彼女がしたことだと私は踏んでいる。

 随分前にお亡くなりになられた第三の席ヒューズ・モストワ大賢者。私の勘ではあるが、彼の後継者となるのではないだろうか。

 大賢者達は、金の瞳に両手の甲に刻印がある。それは、称号をもらったと同時に出現するもの。だが、彼女の瞳は青で、手の甲には印は無かった。


「この国に留まってくれたのは良いことだが、だがそれではこの国に繋ぎ止めておくには弱すぎる」


 スピネル帝国の、第1の席の方は帝国の相談役。そして、第2の席の方は女性である為に皇妃となり今は上皇后だ。

 ヘリオドール王国も、第4の席の方は王国内の術師達を集め団を率いている。

 だからこそ、彼女にはここに居てもらわなくてはならない。


「やはり、婚約者になってもらうのが手っ取り早いか?」

「確かに、それが一番最適だと思われます」

「まぁ、下手をすればそこで機嫌を悪くさせてしまいここを去ってしまうだろうな」

「成人式までもう時間がありませんよ」

「はぁ、面倒な……」


 隣国の姫を娶るか、候爵家の令嬢を娶るか。選択肢はあるにはある。


「賢者殿とのお茶会は、とても楽しまれているようですね」

「まぁ、心休まる時間ではあるな」

「成程」

「違う意味で興味を引く女性ではあるかな」

「珍しいですね」

「自分でも驚いてはいるよ」


 3日後がとても楽しみだ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

処理中です...