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■21 お茶会
しおりを挟む「「「お待ちしておりました! デイム・ステファニー!!!」」」
う、わぁ……
術師の仕事部屋に行くと、王宮術師の皆さんがお出迎えしてくださった。
いや、そんな並んで頭下げなくていいですから。皆さんお忙しいでしょ……?
あれから何度も顔を出しているけれど、毎回毎回これをやられてしまう。いいのに、別に。
「お忙しい中来てくださりありがとうございます」
こちらをどうぞと丁寧に飲み物を出してくださった。ありがとうございます。
「それで、ステファニー様の陣についてお聞きしてもよろしいでしょうか」
「あ、これですか?」
『展開』
そう唱えて掌に出現した陣。
「以前話した通り、我々はこれを使用します」
術師の一人が見せてくれた、分厚い本。中には沢山の陣が刻まれたページが。錬成陣、魔法陣、魔法混合錬成陣、他諸々。
以前私も紙ではなかったけれど暗記して出現させていた。が、ある時お師匠様に言われたのだ。
『そーんな毎回毎回陣を選んでたら面倒だろう。自分で使いやすく組み込んで自分専用を作れ』
と。
いや、お師匠様がこれ全部覚えろって言ったんじゃないですか。とも思ったけど、確かにそうだ。と納得。何百年もかけて作り出した。
「これ、実は多重陣なんですよ」
掌にあった陣を分解。縦に何枚もの陣が出てくる。そう、まぁ簡単に言えば上手く重ねていたという事だ。そう単純じゃないんだけどさ。ここに来るまで凄く頑張ったんだから。
見ていた術師達は「おぉぉぉぉ!!」と声を揃えて驚いた顔をしていて。
「数えたことはないですけど、どんどん追加していったらこんなになってしまったんですよ。あはは」
「なんと!! 思いつきもしませんでした!!」
「仕組みをお教えいただけませんか?? あっ申し訳ございません!! 術師にとってとても大切なものをっ……」
「いえいえ、でもこれは私専用に作ったものですからこれをこのまま使用しようとしたとしても使えませんよ」
「何故でしょうか?」
「陣とは、身体中にあるマナを外へ放出させる為の出口です。でも、一人一人マナの形状も出口の形も、外に放出するための経路も違います」
「成程、自分に合った陣ではないといけないという事ですね」
「我々が使用するものは誰でも使う事の出来る万人向けのものという事でしょう」
「はい」
話し込んでいると、部屋に侍女さんが訪れていた。
「デイム・ステファニー、王太子殿下がお呼びです」
「えっ……?」
王太子殿下が、私を……??
「ご、ご招待いただき、ありがとう、ございます、殿下」
「あぁ、来てくれて嬉しいよ。さ、座ってくれレディ」
庭の木陰に用意されたテーブルとイス。そして、テーブルには美味しそうなお菓子が並んでいた。知らないお菓子もある。
侍女さんに連れられて着いた場所には呼んだ本人がいなくて。それからすぐにドレスに着替えさせられてしまい、ここに連れてこられてしまったという訳だ。
「……あの、ドレスをご用意してくださりありがとうございました」
「あぁ、気にするな。気に入ってくれただろうか」
「はい、でも、何故……?」
「あぁ、それは君の為にだ」
「え?」
「まぁ、私の為でもあるかな。とにかく、気にしなくていいさ」
深くてあまり周りから私の顔が見えない帽子まで用意してくださった。それに、着替えを手伝ってくださった侍女さんに聖獣様をお預かりいたしますと言われてしまった。
あぁ、殿下とのお茶会にはふさわしくない格好だったからかな。周りの目もあるし。納得。
「それにしてもぎこちないな。只のお茶会なのだから、肩の力を抜てくれてかまわない。ここには私達しかいないからな」
殿下にはお見通しでしたか。いや、分かりやすかったか。
「そうだ、家が完成したと聞いたのだが」
「はい、本当にありがとうございました」
「その様子じゃ、気に入ってくれたようだ。陛下にも伝えておこう」
家は、ちょっと大きいけど住みやすい家を作ってくださった。広い部屋を一つ作ってもらい、そこを研究室にしようと思っていて。それと温室も作ってくださった。遠慮したけれど、結構大きなものを作ってくださったのだ。
まぁ、ありがたく使わせて頂こう。魔法などを使って温度調整などをすればなんでも育てられることだし。
「今度、術師達を連れて採取に行くと聞いた。馴染みのいる第二騎士団を派遣しようと思っているのだが、それで良いか?」
「ありがとうございます、助かります」
そう、何時も納品しているポーションの材料を採取するのに同行させてくださいと頼まれた。必死に頼み込んでくるものだから、断れずに了承してしまったのだ。
「ここ、サーペンテイン王国は錬金術師は少ないが素材は集まっている。鉱山や森などが沢山あるからな。宝の持ち腐れだったが、君が来てくれて助かっている。最近は術師達も活気づいているよ」
「お役に立てているのならとても嬉しいです」
ここ、王城には最近週に2~3回のペースで来ている。というより、来てくれとお願いされてしまっている。
ギルドにも顔を出して指定依頼と討伐依頼としてルシルのご飯をゲットして、王城に出向き、ポーションを作って王城とモダルさんのお店に納品。そして自身の錬金術の研究。そんな生活をしている。
あぁ、そういえばまたマルギルさんからの指定依頼でミラノルキノコ採取が来ていたな。つい最近納品したのに。装飾品を専門としているお店に沢山注文が来ているのだろうか。貴族とか?
「そういえば、最近王城の出入りが多いですね。貴族様達でしょうか」
「そうだな、この時期は毎年そうなる」
「時期?」
「社交界シーズンというものだ。貴族が領地から首都にあるタウンハウスに移動してきて夜会などを開くのだ」
「あぁ、だからですね。最近、装飾品に使う素材の採取依頼がギルドにたくさん来るんです」
「あぁ、恐らくそうだろう」
社交界なんて、全く分からない世界だね。
それから、色々とお話をしてお茶会は終わった。最後にもう一回だけ術師達の仕事場へ赴いてから王城を後にした。
けれど、一体どういった意味で私は呼ばれたのだろうか。
それを聞くのを忘れてしまった。
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