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■14 瘴気の正体
しおりを挟むそれから、また北の森に赴いた。森の中心部に入って行くにつれて瘴気が濃くなってるみたい。どんどん、瘴気の濃い所へ歩いていくと、瘴気で徐々に体が重くなってく。でも、これくらいならまだ大丈夫。
「あった」
見つけたのは、巨木。だけど、他とは比べ物にならない位に大きく、周りにある木々に枝が絡まっている。
そして、木が真っ黒になるほどに瘴気が中から漏れ出している。
「さて、この巨木の中にあるのかな?」
この前錬成したナイフを取り出し、巨木の幹に突き刺した。次の瞬間、噴き出すかのように溢れ出す瘴気。だけど予測していたから聖水を作り出し私との間に水の壁を作って防ぐことが出来た。
まぁ、ナイフを握っていた手、腕は真っ黒だけど、仕方ない。ビリビリと痛みはするけれど耐えられないほどじゃない。後で聖水を浴びればいいだけ。
どんどん突き刺していくと、奥に空洞があることに気がついた。何かあるのだろうか?
丸く、くり抜くようにナイフを動かすと……
「うわっ!?」
ぱかっと開けた次の瞬間、中から真っ黒い液体が流れ出てきただはありませんか。
「うげっ、匂いやばっ……」
「大丈夫ッ!?」
「えっ!?」
いきなり後ろから聞こえる聞き慣れた声。ついこの前会った人だ。
「ランディさん……?」
えっ、何でこんな所へ? ここは立ち入り禁止だけれど、結界破ってきたの? あ、私が言っちゃダメか。でも、私の結界も張ってあった気がするんだけど……
「大丈夫!?」
「あ、はい、大丈夫です」
……おや?
待ってて、今ポーションを。そう言われた時に、先程開けた穴に何かが入っている事に気が付いた。
ほら使って。そう差し出されたポーションを受け取ることなく、くり抜いた穴に手を突っ込んだ。
「ちょっステファニーちゃんッ!?」
「あ、あった」
何か片手でやっと掴めるような大きさの硬い鉱物のようなものを発見して、取り出した。
「え……!?」
これは、
もしや、
「〝悪魔の心臓〟!!」
「え!?」
硬く鉱物となっているそれは、恐らく長年の時を経てこの姿になったのだろう。それにしても大きい。
「お師匠様から聞いただけだったけれど、流石本物!!」
バチバチと触れている手から痛いほどに伝わる禍々しいマナ。
「悪魔の心臓……?」
「あ、触れないほうがいいですよ。凄いマナですから」
「じゃあステファニーちゃんは何でそんなもの普通に持ってるのさ!?」
「私は大丈夫ですよ、慣れてますから」
「笑顔で言わないで……」
「え?」
別に本当の事なんだけどなぁ。
それより、こんな所にいて大丈夫なのだろうか。私が穴を開けてしまったからさっき以上に瘴気が濃くなっちゃってるし。
「大丈夫ですか? 顔、真っ青ですよ」
「あ、あぁ……大丈夫」
HPポーションを一気飲みしているけれど、ちょっと辛そう。先に戻ってください、と言いたい所だけれど、きっとこの様子だと戻ってくれない気がする。なら早く終わらせなきゃ。
「……それで、〝悪魔の心臓〟って?」
「あ、これですか。これは、そのままの意味ですよ」
確か、600年前に悪魔と人間とのちょっとした争いがあった。これは、その時に残ったものだろう。
悪魔は、モンスターとは違って完全に心臓を潰さなければ死なないという特性を持っている。
「恐らくこの心臓の持ち主は、身体が回復不可能になるくらいの傷を食らってしまったのでしょうね。だから、これだけが残った」
傷つけられた心臓が、600年の時を経て少しずつ回復していった。けれど、器となる身体がない為にこの巨木を代わりにした。
だが、この巨木ではこの膨大なマナを留めておくことは出来ない。
「なるほど、だから外に漏れだしてしまった」
「はい、悪魔のマナは我々とは違って毒素が混ざっていますから、それが瘴気となって我々に影響を与えてしまったわけです」
この毒素は、モンスターにとっても色々な意味で毒だ。体を蝕み、狂わせる。
だから、おとなしいモンスターも凶暴化していたのだ。
「それ、どうするの?」
「え?」
鋭い視線でそう問われた。
これは、危険な代物だ。凄まじい毒素を含んだマナ。上手く利用すれば、災厄と言っても過言ではないことを起こすこともできる。
「安心してください」
「え?」
『展開』
『Ignis ・ Terra』
『Creare』
悪魔の心臓が、火魔法と土魔法を巻き込んだ聖水に飲みこまれていく。すると聖水は色を変え、青紫色に変色。そして、液体と心臓が離れる。
液体は、すぐに黒い鉱物に形を変えた。
そして心臓は、白く透明な色に変わった。
「はい、これで大丈夫です」
「これは?」
「毒素だけを錬成素材として抜き取り、錬成しました。これは、黒曜鉱石。主に武器を作成する際に使うことができます。大丈夫、毒素はありません。それと……」
〝カドラスの種〟
『Aqua』
私の持つ心臓の丁度下に、地面から植物が生えた。それは、徐々に茎が成長していき私の手の高さまで伸びてくる。そして芽を出し黄色の花びらを広げていく。どんどん大きくなっていき、私が放した心臓を包んだ。
そして、花は茎と離れた。茎から下は枯れていく。
「これは?」
「残ったマナを閉じ込めました。さっき毒素だけを抜き取ったのでこれは純粋なマナのみです」
「それ、どうするの?」
これには、大量のマナが蓄蔵されている。今の時代マナが多い人物は数十人しかいないと聞いた。
「そうですね……まぁ、使い道がありませんから保存しておきましょうかね。いつか、使う日が来るまで」
「……大きな力を持つものは、時に脅威となりうる」
「え?」
「それは、ステファニーちゃん自身もそうだ。だけど……」
「?」
「まぁ、ステファニーちゃんなら大丈夫そうだね」
「え? 何でです?」
「ん? 何でだろうね。でも、大丈夫だって思ったから。さ、ここだけじゃないよね?」
「……はい、じゃあ次に行きましょう」
それから、森の中を探し回って3ヵ所発見。すべて処理した。
多分これで全部。もう他に強い瘴気は感じられない。
「さ、あとは後片付け」
「この漂っている瘴気?」
「はい。――『展開』」
地面に、杖を思いっきり突き刺す。そして、昨日頑張って埋めた翠水晶と連結。
〝カヴェアの種〟
『Creare』
空に、雨雲を錬成。聖水の雨を降らせ、瘴気を洗い流したのだ。
「やっぱり、君は――」
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